« 『左手を探しに』 | トップページ | 『青山郁代トーク&ライブ』 »

『レ・ミゼラブル』(17)

2015.4.13(Wed.) 18:15~21:00 ※プレビュー初日
 帝国劇場 1階S列10番台(下手側)

2015.4.17(Sat.) 17:00~20:15
 帝国劇場 1階A列20番台(下手側)※最前列

新演出版の新演出版、レミゼ2015年シリーズがスタートしました。

旧演出版(2003年)からレミゼを見始めた自分ですが、新演出版で沢山「?」となっていたところがほぼ解消されていて、とてもストレスなく見られます。

”生きることに前向きな人々たちの物語”-唯一、ジャベールだけが負の面を背負ってはいますが-がはっきりと浮かび上がる2015年レミゼ。随所に旧演出の良さを混ぜつつ、今まで以上に胸に温かいものを持ち帰らせてくれる印象です。

新演出版からの細かい変更点はいっぱいあるようなのですが、何しろいっぱいありすぎて覚えていられないという(笑)。
その中から印象的なこと、全体の流れを列記してみます。

・流れが滑らか
 新演出版にあった妙な「こだわり」が結構ばっさばっさと削られていて、流れがとても自然に感じられます。
 数箇所、「これ何?」って場所があったりしますが、箇所的には凄い少なくなっています。
 1箇所だけ、バルジャンがジャベールを仕留める(ように見せかける)、あの後、学生がバルジャンに語りかける「正義のために」って言葉だけは違和感がありました。
 政府軍にだって正義があるし、学生にだって正義がある、そしてバルジャンにも正義がある。それらの正義が一致するとは限らないから戦いになる、ということかとも思うのですが、唐突すぎる印象はありました。

・見た目が綺麗
 前回からプロジェクションマッピングは使用されていましたが、光の当て方がとても綺麗。プレビュー初日は1階後方から見たせいもあるかもしれません。土曜ソワレはレミでは記憶にない帝劇最前列から見ましたが、全体的には暗くなっているようです。そういえば、あの文字列は今回復活しなかったですね。

・袖を使いまくり
 下手側袖をここまで使っていた印象がなかったのでちょっとした驚き。土曜ソワレ、目の前でヤン・ジュンモバルと岸ジャベールの対話(ジャベールを逃がす場面)が繰り広げられましたが、ものすごい迫力でした。従来から袖の横を使っているエポニーヌの独白(注:非公認名称)の場所変更はありませんので、エポファンの方の特等席は従前と替わらず、帝劇1階上手端のお一人様席(C列46番)です。

・動線が自然
 このキャラクターが上手から下手へ、逆にこのキャラクターが前方から後方へ・・・が無理なく無駄なく動線が考えられていて、お互いのキャラクターが邪魔しあわない印象があります

・エポニーヌがシャープ
 エポニーヌが盗賊団の中でも出色の存在感というのが余すことなく伝わります。
 玲奈エポがそれをまた巧みにこなすもんで、見ていて清々しいです。

 盗賊団に清々しいもあったもんじゃありませんが。いっそ、玲奈ちゃんで怪盗ものやって欲しいんですよね。

 因みにプレビュー初日現在では玲奈エポは地毛でした。少なくとも綿引エポは長髪でしたので、印象がかなり違います。
 帽子取ったところで玲奈エポを見たバルジャンがそこまで「おおっ」とは反応しないんですよね。ボーイッシュな面が残るエポニーヌなので。

 で、これ複数エポ、つまりプレビューの玲奈エポと本公演の綿引エポを見て思うのですが、玲奈エポのナイフ捌きがまるで経験者レベル(注:個人的に経験はありません)。自分に言い寄ってくる同じ盗賊団のモンパルナスをめいっぱい嫌うのは以前からですが、今回、エポのモンパルナスへのあしらいはそれはそれは壮絶。ナイフを自在に操り、「近寄るんじゃないわよ」オーラが凄い。

 玲奈ちゃんと言えば、現役のミュージカル女優さんで、銃を一番多く撃った女優さんだと思いますが(「ミス・サイゴン」のキム役、「ラブ・ネバー・ダイ」のメグ・ジリー役を合わせると300回近い)、あそこまで敏捷に身体が動くとはさすが。
 ちょうどこの2日間ともマリウスが優一君だったので分かりやすかったのですが、玲奈エポの場合はあの優一マリウスをスピードで翻弄するんですよ(爆)。玲奈エポはマリウスに対して上から見下ろそうとする感じがあるかなと。

 翻って綿引エポ。とにかく感情表現がとっても豊か。笑顔が印象的な分、落ち込んだ時の落差が強く印象的。
「オン・マイ・オウン」もパート毎に表情をとても大きく変えてくるので、エポニーヌの感情がビビットに伝わってきて素敵です。というのも、この日、自分にとって衝撃的なシーンが一幕にあったんです。

 帝劇最前列のA列は、舞台を下から見上げる形になるのですが、そこから見ていたから分かった風景。

 コゼット邸に忍び込もうとする盗賊団を見つけ、危険をマリウス&コゼットに知らせようとするエポニーヌが盗賊団仲間に見つかり、吹っ飛ばされている場面。
 コゼット(この日は清水コゼット)は駆け寄ると、エポニーヌの前に跪き,エポニーヌを心配そうに「下から見上げた」んです。

 今までレミを見てきて、コゼットがエポニーヌを心配したことが見えたことってはっきり記憶になくて、だから衝撃的だったのですが、ここで凄かったのは、「コゼットに心から心配された」エポニーヌがショックを受けたことがありありと見えたこと、そのことが衝撃的でした。

 エポニーヌにとってコゼットは、宿屋時代の立場が逆転した相手ではあるといえ、エポニーヌにとってコゼットは所詮は「金持ちの小娘」でしかないと思うんです。「金持ちの小娘」であるから、貧しい自分たちのことはわからない。マリウスに本当に必要なのは、あんな小娘じゃなくて自分だ、という思いに支えられていると思うんです。

 でも、そのコゼットが自分を「見上げて」心から心配している、そのことにエポニーヌはショックを受けたように見えて。コゼットは「心も清らかな女性」であることを知ってしまったエポニーヌは、自分が誇れるものなんて何もない・・・だからこそ「みじめな私」という言葉が、いつもの何倍も響いて聞こえてきました。

 玲奈エポの場合、それを知っても最後まで強がろうとする役作りのように思うのですが、綿引エポの場合は、それを知った以上は自分はマリウスの相手としては相応しくないという思いを引きずる役作りに見えました。

 それはエポとコゼの組合せも反映しているように思われて、今回、玲奈エポと若井コゼ、綿引エポと清水コゼという組合せがそれぞれ別々のラインで絶品な相性を感じます(前者がプレビュー、後者が本公演)。このお2組、エポにとってのコゼ、コゼにとってのエポというものの方向性が合っているんじゃないかと思います。

 綿引エポの場合、”片想いも楽しい”って感じで、清水コゼも”恋が楽しい”って感じなので、系統が同じせいもあるのかなと。

 いずれにせよ、それを踏まえてのネーミングで、玲奈エポはスプリンターエポ、綿引エポはシフトチェンジエポ。ということで。

・・・

 今回、「あぁなるほど」と思ったことを1つ。

 ファンテーヌが「まさか」と言うシーンがもともと1箇所ありますが、今回、2箇所に増えています。
 もともとの箇所、ジャベールが淫売の巣窟に駆けつけ、逮捕されそうになるファンテーヌをマドレーヌ市長が救うところは前のまま。
 今回、その直前で自分を買おうとする客が工場長やってたアンサンブルさんというシーン(もともとそういう配役)でも「まさか」が発せられます。

 「まさか」が2つになったことで”輪廻”がはっきり分かりやすくなったかと。自分を貶める”まさか”も、自分を救う”まさか”も受けるファンテーヌ。工場から追い出されるときに助けなかった市長、追い出す当事者の工場長。追い出された場で”工場長”に買われる自分のみじめさゆえに、客に噛みついてまでいくけれども、連れて行かれそうになった自分を、市長は思い出してくれた・・・

 このシーンで、ファンテーヌが市長に唾を吐きかけなくなったのが今回一番良かった変更点。あの唾はいくらファンテーヌであっても自らの品位を落としているようにしか思えなかったし、すがりつき、こぶしで怒りをぶつける今回の演出の方がずっと好きです。

・・・

 この日初見となった清水コゼットについても少し追記。
 パパへの愛情とマリウスへの愛情が見事に両立してる素敵なコゼット。

 思えば、自分が好きなコゼットは今までみんな”パパへの愛情”を忘れないコゼットでした。
 河野由佳コゼ(2003~2006)、菊地美香コゼ(2007~2009)、青山郁代コゼ(2013)と来て今回、清水彩花コゼ。
 その存在にとっても安心しました。

 そんなコゼットのラスト直前、パパを見送りたくなくて、パパにすがりつくコゼ。
 その後ろにいる里ファンテの笑顔が本当に「いい娘に育ってくれて良かった」という安堵の表情で、凄く泣けました。

 バルジャンが立ち上がってからファンテと手を繋ぐのは当たり前なのですが、エポニーヌとぎゅっと手を繋ぐ姿がとっても感動するんです。全ての人に愛を与え、感じられるようになったバルジャン・・・という想いとともに、「エポニーヌがいなければ自分はこの安らかな最期を迎えられていない」という想いが伝わってきてそれも素敵。特にプレビュー初日の吉原バル→玲奈エポへの握手は、見てて分かるぐらい「ぎゅっっ」という強い握手でした。エポニーヌの犠牲がマリウスを生き残らせ、マリウスの存在がバルジャンの生きる意味の完結をもたらしたわけですから。

・・・

今まで以上にとても心温まる「レ・ミゼラブル」、とっても素敵なスタートでした。

|

« 『左手を探しに』 | トップページ | 『青山郁代トーク&ライブ』 »

コメント

綿引さん、そんな表情なさってたんですか。私の席からは清水さんの表情は見てとれて、エポニーヌという名に明らかな反応されていて、宿屋での幼くつらい時代を思い出したのかと理解してました。いろんな席で何度も観たくなるのはそういう気付きがあるからですよね。
ちなみに自分のブログでも書きましたがファンテーヌのまさかは工場長に使ってほしくない派です。
エピローグの里さんファンテーヌの優しく見守る笑顔は絶賛したくなる表情でした。

投稿: 白袴 | 2015/04/21 10:42

白袴さん>
コメント興味深く拝見しました。
席の位置の違いでの印象の違いってかなりありますよね。
役の組み合わせだけではなく席の位置の違いも・・・底なしですね(笑)

里さんは実は今までぴんときたことがないファンテだったのですが、今回はとても感情移入できる表情を見せていただき、素敵でした。

投稿: ひろき | 2015/04/23 13:17

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/61465442

この記事へのトラックバック一覧です: 『レ・ミゼラブル』(17):

« 『左手を探しに』 | トップページ | 『青山郁代トーク&ライブ』 »