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『あいのおはなし』

2014.12.30(Tue.) 14:20~16:10
銀座・博品館劇場 B列20番台(上手側)

サクシードプロジェクト、第2弾作品との由。

混み合う銀座の町並みをかき分けつつ、かなりぎりぎりで到着すると、劇場へのエレベーターは大混雑。
劇場フロアに上がってからも、チケット当日受け取りで長蛇の列。遅刻しそうだった自分は救われましたが、それにしても入場列を捌ききれずに20分も遅れての開演というのは、あまり記憶にありません。

今年の観劇納めになる作品がこの作品。この日が千秋楽ですが、30日までやってもらえて本当に良かったです。
昨日が楽なら見られないところでした(私は昨日が仕事納め)。

主人公・アイを演じるのは平川めぐみさん。今年は『ウレシパモシリ』の聖役・ポール役、『虹のプレリュード』、『マザー・テレサ あいのうた』に続いて4作・5役目で拝見することになります。

アイは就職先も見つけられず、父は若い娘と再婚、恋人は友人に取られそう・・・な、どっちを向いても八方ふさがりな女性。
笑顔を心がけて生きてはきたけれど、もう何もかもが嫌になって、自分で人生を終わらせようとしている女性。

この作品では、生と死の間に「プレイランド」という場所があって、そこで24時間を過ごす。
そこで今までの人生を振り返る時間をもらえる。

・・・「もらえる」といっても今のアイはネガティブの中に生きていて、「どうせ私なんて」と自分を卑下するばかり。
どれだけ頑張っても、いいことなんてない。そう思い込んでいる表情は、見ていてとても辛くなります。

めぐみさんは笑顔が素敵だからこそ、無理に笑おうとしている姿が痛々しくて。でも、袋小路に入っているときって、周囲の誰もが自分のことを嫌っている、思ってくれていない、って思うものなんですよね。普段なら笑顔でみんなの真ん中にいるタイプの彼女が、どんどん他人を遠ざけていく様は、痛々しくも、なんだかとってもリアルに感じて。

自分に対しての他人の思いって、自分じゃ見られないわけで。でもこういう風に世界を分けると、他人も自分に対してどう思っているかを見られるし、気づかなかった点が見えてくる。いつもはクールに接している父が、自分に本当に深い愛情を与えてくれていたことを知って。いつもは冗談言い合っている恋人未満の彼が、自分のことを本当に心配して、自分のことを本当に必要としてくれている姿を観て。そして自分にとって大切な存在の亡き母が、自分の強がりと、心のずれに気づかせてくれて。

母は、「いつも笑っていて」と娘に教えたことが、娘にとってプレッシャーになっていたことを後悔していたんじゃないかなって。「いつも笑っていて」というのは「作り笑いをしてまでいつも笑っていて」という意味じゃなくて、「心から笑っていられるように過ごすことが幸せの鍵」ってことで。
「幸せだから笑うんじゃない、笑うから幸せなんだ」って言葉は素敵だなぁと思う。

若い頃の初恋の彼に教えてもらった沢山のことも、アイにとって大切な思い出だったのに、でも今のアイはそれを忘れかけていて。プレイハウスの管理者的なポジションにいる青木結矢さん演じるモックがいみじくも言った「『どうせ』『だって』・・・そういう言葉は『闇』の世界の大好物」って言葉は、なるほどなぁと。

アイが嵌っていた袋小路に対して、それ自体に対して責めることがない空気が素敵だなって。
迷ったり悩んだり、それは当たり前のこと。
自分だけの視野から、周囲のみんなからの視野も含めた生き方をできれば、きっと人生はもっと豊かになる、かのようなメッセージが素敵。

幸いというか、この日は年末最後の観劇ということもあって、客席からとてもニュートラルに見られたので、「この瞬間で自分は泣くんだ」というタイミングが、自分で予想しないところで複数回来て、それが新鮮でした。

人はいつも強がって生きていて、でも人はいつもどこか甘えたい生き物で、でも人はそれでも生きていく生き物で・・・無理をしないで人生を楽しむにはどう生きたらいいんだろう、そんなことを考えさせてくれる素敵な作品でした。

作品としては演劇集団キャラメルボックス・ハーフタイムシアターで上演された『水平線の歩き方』が今回の作品に似た感じ。母を亡くし、男1人ラガーマンとして生きてきた男性が、再起不能の怪我をして自棄になり酒を飲んで交通事故を起こし、瀕死の重傷で病室に運ばれた姿を、みんなが取り巻く中、その男性は母と「生と死の間の世界」で対話する・・・という物語だったので、びっくりするぐらいに瓜二つ。

でも、今回の作品で印象が違うのは、『水平線の歩き方』では母親が息子を叱咤するんです。「こちらの世界に来るのは許さない」と。退路を断つことが優しさ、と見せるのに対して、『あいのおはなし』の母親は、娘に対してそうは言わない。あくまで娘に決めさせる。自分で生きることを決めないと、生きてはいけないかと言うかのように。
これは、息子と娘、という点での違いなんだろうなと思います。

・・・

出演者さんはみんなとっても温かいメンバーで、この物語にぴったり。

アイ役、平川めぐみさん。迷う様も、愛される様も、笑顔も、全てがアイ役にぴったり。客席から自然に応援してもらえる佇まい、ハートで演じる様がとても印象的。今回のポジションでまた大きく気持ちの上でも変わったんじゃないかと感じさせられました。

ジョージ役、キムスンラさん。『ウレシパモシリ』での印象が強いので、今回の役は最初は意外でしたが、「身を投げだして愛する」というところは変わらないんですよね。強く歌わなくても伝わってくるものが強かったです。

ヒビキ役、布川準汰さん。アイに惹かれた理由がまっすぐに伝わってきてとても良かったです。最後のサプライズがアイとヒビキのいい関係性って感じで微笑ましかったです。

母・朋子役、山岸麻美子さん。アイ役の平川さんとは『ウレシモパシリ』のポール役という共通点もあり、母と娘という関係性が自然に出ていて好バランス。アイに気持ちが伝わった時の表情、良かったなぁ。

モック役、青木結矢さん。ある意味アイの精神的な支柱でもありつつ、あの面白さは健在。めぐみさんよく笑わないでいられるもんです(笑)。この方がニュートラルなのも良かったな。死に連れて行くのも、生に戻すのも、どちらを選ぶのも「本人次第」。あ、なんかデジャブ感があると思ったら先月の日暮里で見た『ちっぽけなタイヨウ』の岡さんの死神と印象が被ったんでした。

マスターおかみ役、岡田静さん。おかみが「お『神』」という理由だとはまさか思わず(笑)惚れ惚れするぐらい格好良かったです。この方もデジャブ感あったんですが、こちらは今月のあうる『くるくると死と嫉妬』の女役と印象が被ったんでした。

・・・

一年間の観劇納めに相応しい作品と最後に出会えて、なんだかとてもほっこり。
どことなく手作り感が残る作風も、それも含めて愛おしく思えた、2014年46作品目の観劇でした。

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コメント

読ませてもらって、同感同感と頷けますねぇ。
私の一番のお気に入りの場面は、アイと母親がジョージの記憶の力で再会し、抱擁するシーンでした。ウレパモの共演者というよりもミュージカルアカデミー4期生同士の共演というのが、元々すごく不思議な感じがしていました。実際にその場面を見ると、たまらなくいとおしい関係が見えて、そして、そこからアイが心の殻をきれいに破るという姿がとても印象的でした。

投稿: imamura0808 | 2014/12/30 22:00

imamura0808さん>
コメントありがとうございます。

本来は声を交わせないアイとお母さまとの会話は感動的でしたね。

なるほど、4期生同士だとお互いの色んなところを分かり合えてるわけで・・・だからこその思いというのも、その辺から出せていたんでしょうね。

めぐみさんの不器用な性格を一番分かっていたお母さま、という役どころに麻美子さんはぴったりでしたね。

投稿: ひろき | 2014/12/30 23:40

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