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『くるくると死と嫉妬』(2)

2014.12.3(Wed.) 19:00~21:20
東池袋・あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
C列10番台(センターブロック)

稽古場見学に参加させていただいてから早半月。この日が初日公演です。
様々な人間模様が入れ替わるこの作品、稽古場で見た場面がなるほどこう繋がるのか!と感動することしきり。

展開が早く、伏線があちらこちらに張り巡らされているので、かなり集中してさえ、どことどこがどう繋がるのか見失いかけます。
それだけに、「すぐにすべてを理解できない」ことが観る側の想像力をかき立てさせる作品に思えます。

この作品は初日にしてネタバレなしに楽しさを語れないのですが、ラストネタバレ回避といういつもの手法で語ります。
真っさらでご覧になりたい方は、いつものごとく回れ右でお願いします。





よろしいですね?

では。

舞台で拝見したことがあるメンバーは、丸尾丸一郎さん、青山郁代さん、吉川友さんの3人だけ。それ以外の皆さまは完全初見です。

パンフレットにはネタバレゼロで、blogが文字情報中心の場というのを悲しく思うぐらい、人物関係図が書きたくなります(笑)←手書きでは書きました(爆)

登場人物の中の核になるのが雨宮兄妹。

丸尾丸一郎さん演じる友哉が兄、吉川友さん演じる希歩が妹。

そして彼女は病院に新人研修医として働いており、その病院の先輩医師が中村龍介さん演じる薮田医師。
婦長が青山郁代さん演じる馬場さん。薮田医師と馬場婦長の掛け合いのテンポの良さは必見です。この日二度目ですが、「二の腕」ネタには今回も噴き出しました(笑)
事務担当の男性で徳城慶太さん演じる田丸さん。看護師3人は石原あつ美さん、木本夕貴さん、木川るみさんが演じています。

そんな中起きる交通事故で運ばれてくる重症患者。患者の父親と名乗る人物がやってきて、病院としては急患患者のこれ以上の受け入れを拒絶する中、希歩がその患者を受け入れてしまう。憮然とする馬場婦長、飄々としつつも明らかにやる気なさげな薮田医師。

その薮田医師が引き起こしたとある出来事は、この患者を中心に病院を混乱の渦に巻き込んでいく・・・

といった感じの導入部。

この作品の舞台の大部分を占める”病院”という空間というのは、凄く特殊な空間で、希歩の青臭い正論なんて、まずどれほどの意味も持たないのですね。薮田医師がいみじくも言っているように、「ここに運ばれてきた人の何割かはほっといても助かるし、残りの何割かは自分が助ける術も持たない」というのはあながち絵空事でも何でもないんですね。

助けようと思うけれど、助けられると信じすぎることは身が持たない、と聞いたことがある空間ですが、それゆえに薮田医師や馬場婦長のような”割り切ったポジション”の方がかなりにリアルに近い印象があります。

そしてこのとき、兄の友哉はこの病院に運び込まれていた。消防士である兄は人を助けようとして火の中に飛び込み、半植物状態にあった。その時助けた人は、ストーカーで殺人犯だったという・・・

青臭すぎるように見える希歩の行動。夫が植物状態にある奥さんに対して、臓器移植を申し出る無神経。しかも提供先はその患者をこんな目にあわせた暴走犯だという。奥さんが承諾できようはずもないわけです。

それでも希歩は頭を下げ続ける。そこには元気な頃の兄の面影があるわけなんですよね。

『いい人だから助ける、悪い人なら助けない、そんなの面倒臭いじゃん』

”面倒臭い”は兄の照れ隠しではあるのだろうけれども、「助けられる命なら助かった方が良い」という希歩の思いは、最初はとっても綺麗事に思えたけど、その根底に「兄ならこうする」という思いがあることが見えてからは、何だかとっても希歩がいじらしく見えたりして。兄と見合い結婚した女性に対して『私に嫉妬しても無駄』と言い放つ希歩にとっては、兄にとっての一番が自分でない哀しさも十分分かっていて。

というのも、兄の思いはもう妹にも妻に向かっているわけでもない。
新垣里沙さん演じる春香との関係の方が大事なんですよね。
印象深いのは春香だけ名字が無くて名前だけ。兄とこの彼女との関係が一回では理解できませんでしたが、昏睡状態にある兄が、現世から夢の世界に幽体離脱しているのではと理解しています。

その”夢”の世界の番人であるかのように存在するのが築山万有美さん演じる「女」。

この女性の動きで、物語の一部が現世と夢とを行き来するのが興味深いです。

現実世界では女性をめった刺しにした男性、その男性は家に火を放ち、消防士として火を消し止めようとした兄は煙に焼かれ昏睡状態にある。

兄の意思を自らの意思で継いで、その「女」に対して懇願する妹。その思いの強さは「女」の心を少しだけ動かし、夢の中では殺人は起こらず、友哉と春香は元の愛し合う関係に戻っていく・・・

・・・

この物語の特徴は、「くるくる」という言葉が表現されているのか、始まりがどこ、終わりがどこといったはっきりした区切りがないことですね。
”すべての物事はつながっている”、そのつながりは”思い”によって作られているのだと感じさせられます。

「死」という極限に直面した人間を通して、「愛」という思いに対する素直な気持ちが生まれる・・・そんな空気を感じさせてくれます。

・・・

登場人物についても少し。

丸尾丸一郎さん。『リンダリンダ』以来2度目ですが、飄々とした感じがこの作品をとっても軽く見せています。何も考えていないようで、実際に何も考えていないと思われる役ですが(笑)、それでも彼のハートは明らかにこの作品の語ろうとしているものの明確な1ピースだと思います。今回も思うけど、何であんなに軽々と存在できるんだろう。

新垣里沙さん。可憐な存在感が素敵です。可愛いだけでなく、存在の確からしさがとても印象的。友哉との後半のシーンは本当にじーんときます。この日は突然のトークショーで司会も務めていましたが、さすがはグループのリーダー経験者、実に慣れた進行ぶりで流石でした。

吉川友さん。『屋根の上のヴァイオリン弾き』以来2度目ですが、その時感じた末っ子感(あの時は三女でした。ちーちゃんの妹)からはずいぶんお姉さんになった感じでしたが、今回、新人研修医という存在にぴったり嵌っていました。正義感の強さがとっても眩しい。あの兄ゆえにこの妹、という部分がもっとはっきり感じられたらいいなぁ。

青山郁代さん。貫禄の馬場婦長を演じています。もう何というか、やりたい放題(笑)。笛吹きも上達され(爆)いざという時の最終兵器感が半端ないです。アリアが短いのは勿体ないけどあのシーンだとあの長さがちょうどなんでしょうね。

急患患者の受け入れを拒みながら、臓器移植の承諾が得られた後の動きの素早さはさすが婦長。患者を救いたくないと思っているわけじゃ決してなくて。救えないのが分かっている時に手を差し伸べるぐらいならば、涙を飲んで次の患者に対してベストを尽くすべきというポジションが、婦長の責任感として痛いほど伝わってきました。

婦長としてはわずかながら押しに迷いがあるように見えたので、もっと自分の意思が強固であっていいんじゃないかなと思ったりしました。何にせよ今までにない役、新鮮で面白いです。
薮田医師役の中村龍介さんとの同級生コンビもナイステンポでした。ラストの2人のシーンはある意味衝撃的。

・・・

1回見ると分からなかったところが知りたくなる、私の場合は稽古場見学含めれば2回なのでようやくアウトラインが見えた程度。次は千秋楽(11日ソワレ)までお預けですが、どれだけ深い理解ができるようになるのか楽しみです。なお、DVDが発売されます(税込み5,400円・送料込み6,000円。12月9日ソワレで収録)。

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