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『マザー・テレサ 愛のうた』

2014.11.18(Tue.) 19:00~20:50
シアター1010 ミニシアター 最前列

”コンサート形式でマザー・テレサの生涯を送る”と銘打たれたミュージカル座の新作。

北千住・シアター1010の劇場(11階)ではなく、稽古場に併設された10階のミニシアター(実際に入口には「稽古場1」とあります)での上演。収容人数が100人前後のため、星組の初日ともなったこの日、当日券も出ない完全完売状態での上演となりました。

自分自身もスケジュールが合わず見られるか分からずに確保していませんでしたが、先週たまたま公式を見ていたところ、たった1席の戻り席があり、なんとか確保できて拝見できて良かったです。

役柄的なネタバレがありますので、お気にされる方は回れ右でお願いします。




マザー・テレサを演じるは土居裕子さん。いかにしてマザー・テレサのハートを伝えるかがこの役の、この作品の肝だと思いますが、強さも柔らかさも同時に出せるのは土居さんしか思いつきません。芯の強さで、相手を根負けさせる交渉力。ふわっとした雰囲気で相手を包み込む説得力。マザー・テレサを演じることを受けることへの責任の重さを感じる、と土居さんはこの作品のパンフレットで語っておられますが、作品中でマザー・テレサが唯一重圧に押しつぶされそうになるシーンでは土居さんの心情とマザー・テレサとしての思いとがシンクロして感じられもしたのでした。

マザー・テレサはほぼ全編に亘り「愛を与える」側にいますが、そのテレサの心を導くきっかけとなったシスター・テレーザを演じているのが平川めぐみさん。テレーザとしてバイオリン演奏(初見)も聞かせてくれます。月組・星組の2チーム体制にあって、女性キャストではマザー・テレサの土居さんと、めぐみさんだけがシングルキャスト。シングルキャストになっているだけあって、めぐみさん演じるテレーザが土居さん演じるテレサに愛を与えて、その後のシーンではテレサがめぐみさん演じる女性に愛を与えるというシーンが輪廻しているように感じるのが、今回の物語の一つの軸なんでしょうね。「愛を”与える”」といっても、それは「上下関係ではない」ということが、マザー・テレサの思いの固い部分だと思いますし。

それにしてもめぐみさん、今回の「愛のうた」といい、次回の「あいのおはなし」(主演)といい、「愛」に縁がありますね。

マザー・テレサをとりまく修道女の皆さまの思いの純粋さも伝わってきてとても素敵。絵空事になりかねない物語に説得力を持たせているのは、ひとを包み込む愛を、作り手や演じ手が持っているからなのだろうなと感じさせられます。

今回、印象的なのは男性陣のみなさまの出色な存在感。
進行役を務める光枝さんの確立された存在感からくる説得力は安心以外の何物でもありませんし。
妹を心配してこそ、妹を止めようとする兄を演じる及川さんは、それでいて精神的な幼さも感じさせて適役。
演奏も担当されながら、テレサの一番の理解者として存在するtekkanさんの存在はとても心強いし。
影からテレサを支える阿部よしつぐさんもとても良いです。「愛」ということでは『ウレシパモシリ』と被る部分もありますね。
権力側からテレサを理解するようになる役を2つ演じる五大さんも人の好さを上手く見せて素敵です。

この作品を拝見して思うのが、マザー・テレサという女性の人生を描くとしても、「マザー・テレサは一人にしてあらず」といったところを見せているところと、それを成していたのはマザー・テレサのお人柄だったのだろうなということを自然に見せているところ。邪心なく、ただ自分の信じることを貫き通したからこそ持てた強さが印象的でした。

コンサート形式、といいながら実質的にはミュージカルといってもいいこの作品。作品内で語られたメッセージの中で印象的だったのが、マザー・テレサが仰った「仕事には愛が大事なのです」という言葉。その言葉は、この作品の作り手・演じ手みなが思っている、根幹だったように思えてなりません。

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