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『アルジャーノンに花束を』

2014.9.27(Sat.) 13:00~15:55
天王洲銀河劇場 3階B列30番台(上手側)

再演が発表されて以来、ずっと気になっていたこの作品。
ぼんやりしているうちに、あっという間にチケットがなくなり、行ける日程も限られてきて。

今回は8年ぶりの再演で、今回の客入りからしてそれなりの時期にすぐ再演するとは推定できたけれど、やはり今見ておきたくて、苦手な当日券の列に並ぶことにします。
当日券って、見る気で並んでNGだった場合、それがラストチャンスだと辛いので苦手なのですが、この日はそうも言っていられません。翌日は楽ですし、そもそも自分は別の観劇予定が入っていました(キャラメルボックス『無伴奏ソナタ』)し。

当日券は開演70分前で枚数を超える人数が並んでいる場合、その時点で並んでいる方から抽選で、と書いてあった割になぜか先着で、(1)3階見切れ席、(2)3階立ち見席、(3)キャンセル待ち(但し保証なし)の3択を選ぶ方式。なんとか(1)3階見切れ席の最後の一席を確保できたときにはほっとしました。

・・・

見終わってつくづく思うのは、『評判』が良い作品には、さすがにそれだけの凄さがあるということ。

よく劇場でお会いする方に「今日はどなたがお目当てですか?」と聞かれて「今日は作品なんです。あえて言えば浦井さんですが」と答えて驚かれましたが(苦笑)。
あ、でも見終わったら桜乃彩音さん印象的でした(←娘役好き属性w)・・・もとい。

「幼いチャーリー」「鋭いチャーリー」の2役のようでもあった今回の浦井さん。

それで思うのは今年1月に東京芸術劇場でやっていた『シャーロックホームズ』。
この時は浦井さんは2役で、兄と弟、そして片方は温厚、片方は激しい性格で、今回の役構成ともリンクする気がします。

というのも、浦井さんには性格的に2つの側面があるように思えていて。

一つには、よくStarSで見せる、オープンな面。無邪気で明るくて、疑うことすらしていないように見せる天真爛漫さ。女優さんに「なんで浦井くんはあんなに素直に女優さんを褒めるんでしょう」と、驚きを持って受け入れられる面。

もう一つには、シャーロックの時の弟、そして今回の「鋭いチャーリー」に見られる、信じることを絶対にしない、他人を拒絶する居住まい。

周囲の誰をも笑顔にする天真爛漫な少年が、「かしこくなりたい」と思ったことで動き始める止められない歯車。
素直ゆえに傷つき、純粋ゆえに孤立する。

本当の「かしこさ」は、ただ知識を身につけることで身につくものではなくて、心が伴っていなければ本当のかしこさとは呼べないと気づいた時、チャーリーは本当の意味で「かしこくなる」ことを知ったのかなと。

治療チームの主任の教授(良知くんが演じています)が絵に描いたような上昇志向な人で、そりゃもう見ていていちいち引っ掛かるわけですが、印象的だったのは治療チームの恐らくナンバー2の博士を演じている宮川さん。

宮川さんの複数役のうち一つ役がチャーリーの父親。チャーリーは知能障害ゆえに家族からも距離を置かれ、時が経った後に会いに行った時も、父親は彼がチャーリーであったことに気づきもしなかった。のに対して、博士としては教授に対して、「チャーーリーの意思を尊重すべき」「学会発表は待つべき」と、チャーリーに対する理解者であるかのように行動している。そのコントラストが印象的でした。

実際のところ原作を読んで見れば、博士は自らの研究の発表のタイミングのためにチャーリーを理由として用いているだけではあるので、とりたてて教授と博士がそこまで崇高さに差があるわけではないのですが、こと舞台版を見た限りでは、「チャーリーの理解者」としての博士、「チャーリーの疎外者」としての父親という、両極端さが印象に残りました。

ただ、父親としては「息子のために知らない振りをしている」ようにも見えて、今さら自分が父親を名乗るわけにはいかない、それはしてはならないと、ただお金に執着している”ふり”をしているようにも見えて。その本心はわからなかったけれども、でも、だからこそ妹が過去を詫びてチャーリーと向かい合ってくれたのは本当に嬉しかったな。

いや、チャーリーにとっては詫びてもらったところでどうということはないだろうし、というか詫びてもらいたいわけではないだろうし、でも、ピュアであり続けた彼にとって「自分を自分として受け入れてくれる家族」が、たった1人だけでもいたことは救いだったと思う。

チャーリーにとってすべては「自分を自分として、人間として受け入れてくれる」ための行為だったわけだったのに、実験道具としての「部品」として扱われていく様が物悲しくて、抗えない彼が不憫で。
急激に駆け上がった知能の向上は彼の大切な”笑顔”を奪い去って、周囲から本当の友人をどんどん遠ざけていった。
信頼する先生であり時に恋人だったアリス(キニアン)も遠ざけざるを得ない姿は切なくて。

浦井君のチャーリーがなぜここまで心を打つかといえば、表面的ににこやかな彼も、表面的に激した彼も、すべてはピュアでできているからかなと。傷つくことさえすべて受け入れるかに思える彼だからこその、清々しさだったのかなと思えたのでした。

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