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『三文オペラ』

2014.9.21(Sun.) 13:00~16:25
新国立劇場中劇場 1階9列40番台(センターブロック)

初日が明けてずいぶん経って、普通だと最低でも最初の週末に入れるはずが、日程の都合がつかずこの日に。

『ベガーズ・オペラ』を見ているので最低限の基礎知識はありますが、『三文オペラ』自体は初見。
『ベガーズ・オペラ』だと、乞食がすべての役を演じる、という劇中劇構成ですから、良いところのお嬢様のルーシーも含めてみんな乞食が演じていますが、こちら『三文オペラ』は乞食は乞食、良家は良家と区別されています。

主人公・マクヒースを取り合う2人の女性、乞食階級出身のポリー・ピーチャムはベガーズでは笹本玲奈さん、今回はソニンちゃん。上流階級出身のルーシー・ブラウンはベガーズでは島田歌穂さん、今回は大塚千弘さん。島田歌穂さんは今回は酒場のジェニー役ですが、かなり重要な役回り。

今回の見所は何といっても2幕M16「焼き餅の二重唄」。

ポリーの背伸びしまくりの強がりと、ルーシーの見下ろしぐあいが最強で痺れます。ポリーなソニンちゃんは良い意味ですれっからしな蓮っ葉感がワイルドでいいし、ちーちゃんは何といってもあの上から目線の天才ぶりがすごすぎる(笑)。
お嬢様の品格もあるし、その高飛車感が鼻につくところもみせながら、でもどこか抜けている感じ成り上がりぽくて素敵(笑)。前作の「カルメン」のカタリナもそうですけど、お嬢様女優の本領発揮です。ソニンちゃんが薄いブルー、ちーちゃんがピンクという、色合いにもコントラストがはっきりしていますが、ちーちゃんのピンクはむちゃくちゃ可愛いけど、どっちかというと真っ白の方がいいような気がしました。

どことなく気の強いエポニーヌ気の強いコゼットが直接対決しているように見えたところもツボでした(笑)。

2人のパワーがちょうどいい按配なんですよね。
どっちが圧勝するわけでもなく、ちょっとのことで趨勢が変わるから、お互い全力で行かないと負けるというところがいいなと。

このシーンの時、ルーシーが自分の長いスカートをひらひらさせて、ポリーに「あなたはこんな長いスカートはけないでしょー」って挑発してるところ、ソニンちゃんがtweetで言っていたのが印象的だったのですが、あれ、階級の違いを示しているんだそうで。
ルーシーは良いところのお嬢様だから、スカートが長くても、歩いていても汚れるようなところを歩いていない。でもポリーは貧民街に暮らしているから、スカートが長いと、歩いていて汚れちゃう。だからスカートが短い。
・・・で、それをいいことにソニンちゃんが足出して、「あなたのスカートだとこんな綺麗に足出せないでしょ-」って挑発してて、ルーシーが逆手に取られて、ちーちゃんが結局足出してるところに笑いました。もはや次元が高いんだか低いんだか分からない戦い(笑)。

マクヒースが牢獄につながれ、脱出した時に、ポリーのところにもルーシーのところにも来ていない、と分かったときの共闘ぶりが面白すぎ。ルーシーのクッションネタ、ポリーも真面目に信じてたんだ・・・(笑)あれをさらっと見せちゃうルーシー、さすがすぎです。

この作品を観ていて男性目線で興味深かったのは、マクヒースが逃亡しようとする場面。「マクヒースが逃げるとしても木曜日に娼婦の館に行くのは決まっている。そのいつもの行動を変えることは奴にとって我慢ならないはずだ」ということを見抜いているシーリア・ピーチャム、そしてジェニー。

それを聞いたときに男性目線的には、「うん、男性って単純な生き物だもんね」と(笑)。
男性的な視点からすると、男性って基本的に過去の延長で未来を考えるので、過去の動向に左右されることが多い気がします。「前例があります。ありません。」というお役所用語に典型的に表現されていますが、過去の行動を否定することは、過去の自分も否定するからなかなかその選択肢を取りにくい、という面がある気がします。そこを飛び越えて、過去に囚われず未来を決断できるのがいわゆる名経営者とかいうことなるんだろうなと思いはします。

マクヒースも盗賊団の親玉という位置からすれば、恐らく「過去に囚われないタイプ」であったとは思いますが、それでも恐らくは心の安らぎである「娼婦の館」へ通う行為が彼にとっての隙であり、墓穴であったと。

マクヒースの位置づけはある意味両面があって、稀代の大悪人という面と、貧民街のヒーローであるという面。
この舞台ではAパターンエンディングとBパターンエンディングを続けてラストに持ってきていて。

前者がAパターンと申しますかの、「女たちの裏切りにあい、友人のブラウン(警視総監)も庇いきれず、ピーチャムの怨念(娘のポリーを持って行かれた)が彼を断頭台に引きずり上げた」というパターン。

「ピーチャムはやり過ぎたんだ。欲を追いすぎたんだ」という女の声は、前者を象徴していて、マクヒースの成功こそが、他者の嫉妬を買い、支配階級・乞食階級両方が自らを守るためにマクヒースを”共通の生け贄”として引きずり出す。

後者がBパターンと申しますかの、「マクヒースは支配階級に対する英雄であり、反逆は支配階級に対する正当な行為であり、女王の名においてその行為を認めさせる」というパターン。

パンフレットを読んでいたりすると、今回の特徴はBパターンの存在をもってして、「『三文オペラ』の意義は、『支配階級からの圧政』を予見した上での『反逆の重要性』」を見せようとしたのかなと。

・・・

上演時間3時間25分(うち休憩20分)。2幕途中で休憩が入る形態で実際は3幕構成という珍しいパターン。
ただ全体的な印象としてちょっと長すぎる感。

19日間(休演日除く)の上演期間のうち、平日ソワレはわずか4回。
仕事の後、平日ソワレでこの作品を観るエネルギーは正直なくて。

近年、どんどん減っている平日ソワレの動向を見るにつけ、「本格的な芝居」であったとしても、「作品のエッセンスを残しつつ、コンパクトにする」ことは考えられて良いのではないかと正直思います。
芝居と興行のバランスは、永遠のテーマでもあるのでしょうが。

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