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『カムイレラ』

2014.9.14(Sun.) 13:00~15:20
光が丘/IMAホール
K列20番台(センターブロック)

『ウレシパモシリ』と日程もろ被りで、行けるかどうか心配していたのですが、空白の1日に上手くピースがはまり、当日券での観劇です。当日券は本当は避けるのですが(見たいと思って見られない時の落胆はちょっと辛い。しかも1回きりしか日程が取れないとリベンジできない)、座席に少し余裕があるのは知っていたので、12時に間に合うように到着したら、無事センターブロックが残っていて一安心。

演出の藤倉梓さんの演出第一作ということで、ぜひ見ておきたかったのが第一の理由で、『Ordinary Days~なにげない日々~』で初見、『プロパガンダ・コクピット』も拝見(『sign』を見逃したのが今思っても痛恨)。女優さんとしては『Count Down My Life』で拝見しています。

この作品はアイヌと和人の闘いをテーマにしていますが、このテーマを聞いた時、そして見終わった今でも思うのは、藤倉さんの作品を拝見して思う『覚悟』といったもので。「日本は単一民族の国」という固定観念の前で抜け落ちる先住民族・アイヌをどう取り上げるかというのは、実際ご本人もパンフレットの前書きで書かれていますが、批判もついて回るもの。「そんな簡単な気持ちでテーマにしないで欲しい」と思う方々がいるのは、それは当然のことだと思うし。
その上で、『このテーマと正面から向かい合う覚悟』という「強さ」を藤倉さんの作品には感じます。ぶれない幹というのか。

『プロパガンダ・コクピット』は今でも続く38度線を挟んだ2国を彷彿とさせる物語設定で、いわゆる「意欲作」と言われるものだと思うのですが、その時はちょっと座りが中途半端というか、ふわふわとしている印象を受けたんですね。それはやっぱり他国だからかなと。
それに比べると、『カムイレラ』の場合は根底に「日本人としてこのテーマとしてどう向き合うべきか」があって、場所が日本国内なだけに説得力が大きく違うなと。

その点で「天草・島原の乱」を描いた『SHIROH』にすごく近いものを感じたりしました。

・・・

物語の舞台となるクナシリ(国後島)のアイヌ側のトップの孫娘・キヤを演じた中村百花さん。『21Cマドモアゼル・モーツァルト』のコンスタンツェ役(当時は中村桃花さん)、『ウレシパモシリ』の聖役と拝見して今回が3回目。もの凄い迫力で圧倒されました。藤倉さんに「覚悟」という表現をさせていただきましたが、間違いなくその「覚悟」は百花さんにもはっきりと伝わっていて(百花さん自身も公演前にアイヌを知る旅に行かれているそうですが)、「アイヌにとっての希望」と言われることが理屈じゃなく分かる。確かに感情が止まらなくなり突っ走る瞬間が一度だけあるけれど、基本は冷静沈着で、父親にさえ言うべきことは言う。「トップの孫娘」だからではなく、精神的にも中核な存在ということがはっきり分かる、すごい存在感でした。作品のテーマ曲でもある「カムイレラ」(カムイの風)の澄み渡る歌声も素晴らしかったです。

実質的な相手役となる、幕府からの検分人、中村道生(みちなり)役を演じた小野田龍之介さん。直近で拝見したのは新国立でちーちゃんと共演した『ザ・ビューティフル・ゲーム』ですが、今作ではある意味”へたれ役人”と言いますか(爆)、恐らくはやり手では全然ない役どころ。足滑らせて怪我して、キヤたちに救われたことでアイヌへの恩義を感じている和人。彼もすごく良くて。やり手でないからこそ、本当にアイヌのことを考えていることが伝わって、実際、それは時代の波に押しつぶされるようなものであっても、”アイヌのために生きられることが、自分にとっての生きる意味”の真っ直ぐさが彼だからこそ伝わってきて。

その2人の関係は「アイヌの未来を見つめる」という一点で混じり合っていたように感じて、それが欠片も作り話に見えなかったことが何より印象的。道生がキヤに渡したあるものは、思いと共にキヤに受け継がれていく、そのシーンは感動でした。

キヤの祖父の国後脇長人、ツキノエは戸井勝海さんですが、終わるまで戸井さんだと思わなかった(爆)。何しろ前作が『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のダメ親父だからなぁ(苦笑)。キヤの父親のセッパヤ(菊地まさはるさん)が名前の故なのか(爆)どちらかといえば突っ走り型なのに比べると、ツキノエとキヤの思いってかなり同期しているように見えて。セッパヤも「アイヌの誇り」という思いは同じなのでしょうが、どちらかというとツキノエとキヤは現実的という点でとても似ていて。「苦渋の選択」という言葉で括ってしまえば軽々しいけれども、「生きないでどうなる」という思いは、歴史物を見るときの自分の軸ともかなりシンクロしていて、ツキノエとキヤに同調してしまった感。

アイヌにとって、アイヌを守っていかなければならない”責任”は重くて。
その重さを通じて、「日本」という国において生きていくことの”責任”を考えさせるかのようなメッセージ性の高い作品。
ストレートプレイで演じるとかなり説教的になりそうなテーマを、ミュージカルだからこそ伝えられるのだろうなと思いつつ、「思う」と「実現する」の間にはかなりのハードルがあるのにもかかわらず、このホールサイズにも負けない迫力を見せた藤倉さんの演出の凄さ、そしてキヤと道生を筆頭にしたキャスト陣の迫力に圧倒されました。素晴らしかったです。

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コメント

感想ありがとうございますm(__)m


…あああ、やっぱりこっちも見たかったです(ノД`)・゜・。
分身の術とどこでもドアの両方があったらって思います。

投稿: judy | 2014/09/15 00:22

judyさん>
コメントありがとうございます。

実は14日/15日は大阪サイゴン遠征予定だったのを、15日にウレパモ楽が入ったので急遽空白になったのが14日でした。

ずっと気になっていた作品だったので、観られて良かったです。皆さんがこぞって推薦される理由がよく分かりました。

分身の術って使うと記憶っておかしくならないんですかね?人間って時系列で物を記憶するので、片方は寝てるのかなとか変なこと思ってました(笑)。

投稿: ひろき | 2014/09/15 01:13

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