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2014年9月

『三文オペラ』

2014.9.21(Sun.) 13:00~16:25
新国立劇場中劇場 1階9列40番台(センターブロック)

初日が明けてずいぶん経って、普通だと最低でも最初の週末に入れるはずが、日程の都合がつかずこの日に。

『ベガーズ・オペラ』を見ているので最低限の基礎知識はありますが、『三文オペラ』自体は初見。
『ベガーズ・オペラ』だと、乞食がすべての役を演じる、という劇中劇構成ですから、良いところのお嬢様のルーシーも含めてみんな乞食が演じていますが、こちら『三文オペラ』は乞食は乞食、良家は良家と区別されています。

主人公・マクヒースを取り合う2人の女性、乞食階級出身のポリー・ピーチャムはベガーズでは笹本玲奈さん、今回はソニンちゃん。上流階級出身のルーシー・ブラウンはベガーズでは島田歌穂さん、今回は大塚千弘さん。島田歌穂さんは今回は酒場のジェニー役ですが、かなり重要な役回り。

今回の見所は何といっても2幕M16「焼き餅の二重唄」。

ポリーの背伸びしまくりの強がりと、ルーシーの見下ろしぐあいが最強で痺れます。ポリーなソニンちゃんは良い意味ですれっからしな蓮っ葉感がワイルドでいいし、ちーちゃんは何といってもあの上から目線の天才ぶりがすごすぎる(笑)。
お嬢様の品格もあるし、その高飛車感が鼻につくところもみせながら、でもどこか抜けている感じ成り上がりぽくて素敵(笑)。前作の「カルメン」のカタリナもそうですけど、お嬢様女優の本領発揮です。ソニンちゃんが薄いブルー、ちーちゃんがピンクという、色合いにもコントラストがはっきりしていますが、ちーちゃんのピンクはむちゃくちゃ可愛いけど、どっちかというと真っ白の方がいいような気がしました。

どことなく気の強いエポニーヌ気の強いコゼットが直接対決しているように見えたところもツボでした(笑)。

2人のパワーがちょうどいい按配なんですよね。
どっちが圧勝するわけでもなく、ちょっとのことで趨勢が変わるから、お互い全力で行かないと負けるというところがいいなと。

このシーンの時、ルーシーが自分の長いスカートをひらひらさせて、ポリーに「あなたはこんな長いスカートはけないでしょー」って挑発してるところ、ソニンちゃんがtweetで言っていたのが印象的だったのですが、あれ、階級の違いを示しているんだそうで。
ルーシーは良いところのお嬢様だから、スカートが長くても、歩いていても汚れるようなところを歩いていない。でもポリーは貧民街に暮らしているから、スカートが長いと、歩いていて汚れちゃう。だからスカートが短い。
・・・で、それをいいことにソニンちゃんが足出して、「あなたのスカートだとこんな綺麗に足出せないでしょ-」って挑発してて、ルーシーが逆手に取られて、ちーちゃんが結局足出してるところに笑いました。もはや次元が高いんだか低いんだか分からない戦い(笑)。

マクヒースが牢獄につながれ、脱出した時に、ポリーのところにもルーシーのところにも来ていない、と分かったときの共闘ぶりが面白すぎ。ルーシーのクッションネタ、ポリーも真面目に信じてたんだ・・・(笑)あれをさらっと見せちゃうルーシー、さすがすぎです。

この作品を観ていて男性目線で興味深かったのは、マクヒースが逃亡しようとする場面。「マクヒースが逃げるとしても木曜日に娼婦の館に行くのは決まっている。そのいつもの行動を変えることは奴にとって我慢ならないはずだ」ということを見抜いているシーリア・ピーチャム、そしてジェニー。

それを聞いたときに男性目線的には、「うん、男性って単純な生き物だもんね」と(笑)。
男性的な視点からすると、男性って基本的に過去の延長で未来を考えるので、過去の動向に左右されることが多い気がします。「前例があります。ありません。」というお役所用語に典型的に表現されていますが、過去の行動を否定することは、過去の自分も否定するからなかなかその選択肢を取りにくい、という面がある気がします。そこを飛び越えて、過去に囚われず未来を決断できるのがいわゆる名経営者とかいうことなるんだろうなと思いはします。

マクヒースも盗賊団の親玉という位置からすれば、恐らく「過去に囚われないタイプ」であったとは思いますが、それでも恐らくは心の安らぎである「娼婦の館」へ通う行為が彼にとっての隙であり、墓穴であったと。

マクヒースの位置づけはある意味両面があって、稀代の大悪人という面と、貧民街のヒーローであるという面。
この舞台ではAパターンエンディングとBパターンエンディングを続けてラストに持ってきていて。

前者がAパターンと申しますかの、「女たちの裏切りにあい、友人のブラウン(警視総監)も庇いきれず、ピーチャムの怨念(娘のポリーを持って行かれた)が彼を断頭台に引きずり上げた」というパターン。

「ピーチャムはやり過ぎたんだ。欲を追いすぎたんだ」という女の声は、前者を象徴していて、マクヒースの成功こそが、他者の嫉妬を買い、支配階級・乞食階級両方が自らを守るためにマクヒースを”共通の生け贄”として引きずり出す。

後者がBパターンと申しますかの、「マクヒースは支配階級に対する英雄であり、反逆は支配階級に対する正当な行為であり、女王の名においてその行為を認めさせる」というパターン。

パンフレットを読んでいたりすると、今回の特徴はBパターンの存在をもってして、「『三文オペラ』の意義は、『支配階級からの圧政』を予見した上での『反逆の重要性』」を見せようとしたのかなと。

・・・

上演時間3時間25分(うち休憩20分)。2幕途中で休憩が入る形態で実際は3幕構成という珍しいパターン。
ただ全体的な印象としてちょっと長すぎる感。

19日間(休演日除く)の上演期間のうち、平日ソワレはわずか4回。
仕事の後、平日ソワレでこの作品を観るエネルギーは正直なくて。

近年、どんどん減っている平日ソワレの動向を見るにつけ、「本格的な芝居」であったとしても、「作品のエッセンスを残しつつ、コンパクトにする」ことは考えられて良いのではないかと正直思います。
芝居と興行のバランスは、永遠のテーマでもあるのでしょうが。

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『Espoir~希望をもって~』(2)

2014.9.20(Sat.) 17:00~20:20
東京国際フォーラムホールC 14列40番(上手端)

2日間3公演の千秋楽、行って参りました。
この日は15時まで仕事だったので、マチネは見られませんでしたが、初日と楽を見られたので満足。

やはり、初日は固かったのだなと思わせる、楽の驚くほど滑らかな進行と完成度。
楽にして初日が出たような感じはありました(爆)。

この回は新国立劇場『三文オペラ』に出演中の大塚千弘さん、田中利花さんが出演されるということで2幕が変則構成。

セットリストを再掲しますと、20日夜は2幕がこうなっていました。

18.ランベス・ウォーク/ミー&マイ・ガール
  (東宝ジュニア(57名))
19.ダンスはやめられない/モーツァルト!(20日夜のみ)
  (大塚千弘)

20.夢にも思わなかった/アンナ・カレーニナ
  (瀬奈じゅん、遠野あすか)
21.セリョージャ/アンナ・カレーニナ
  (一路真輝)
22.命をあげよう/ミス・サイゴン
  (昆夏美)
23.ブイ・ドイ/ミス・サイゴン
  (今井清隆)
24.永遠の瞬間/レベッカ(20日夜のみ)
  (大塚千弘)

25.プリンスは出ていった/モーツァルト!
  (高橋由美子)

・・・このセットリストを見て自分含めて友人全員が言ったのが、

「なぜ『ダンスはやめられない』がM24じゃいけないのか」

という話(笑)

普通に『モーツァルト!』でくっつくし、順番だっておかしくないのに。
聞き終わっても謎は解けませんでした(爆)。

M19のコンスタンツェは実に9年ぶり(本人は10年ぶりと仰っていましたが、2005年10月名古屋・中日劇場、11月博多座公演です)。
当時、名古屋・博多でしか見られないということで名古屋に夜行日帰り(確か夜行で行って夜行で帰った・・・今じゃできないですw)したことを思い出します。今までコンスタンツェ全員を拝見していますが、私にとってのベストコンスタンツェがちーちゃんなことは、今でも変わらないことを、この日聞いて再認識。

ちょっと気になったのはドレスが黒だったこと。何の方針なのかわかりませんが、2幕はほとんどの女性キャストが黒のドレスを着用。たまに区別付かない人とかいたりして(爆)。コンスタンツェといえばやはり燃える赤のイメージなので、そこはちょっと残念。

あともう一つ思ったこと。本編で見た当時は、まだちーちゃんも若かったし、若さゆえの危うさというのが絶妙だったんですね。自分に自信が持てない女性が、音楽家である夫を必死に支えようとしても空回りし、自分の存在意義を疑うというのがコンスタンツェという女性。
それからすると、当時に比べるとちーちゃんはすごく成長しているので、そういう危うさといったものは前よりはずいぶん減っていて、役と役者の巡り合わせみたいなものを感じたりしました。

それからするとM24の「わたし」役は不思議なぐらい、初見から印象が変わらない役。初演からもう5年以上経っているのに、変わらないピュア感が印象的。多分、「追い求めようとする姿」が、ちーちゃんのそれとシンクロしていて、きっとそれは年齢が経ても変わらないものなのかなと。当たり役と言われる役は、役のコアと役者のコアが不可分に結びついているものなのだろうなということを強く痛感します。

という意味で、由美子さんの「プリンスは出ていった」(モーツァルト!)もまさにその属性を持った役。
東京国際フォーラムもそこまで音響でいいとは思えませんが、それでも帝劇に比べれば音響に関しては大きな差。
この日の由美子さんは過去の本公演含めてもかなり良い方のコンディションに、このホール。
なぜ今年は出演されないのだろう、ということを観る側に感じていただけただけでも、このコンサートに出て、この曲を歌った意味はあるのだと思います。

この日の変更は、ちーちゃんソロ2曲が追加されたほか、レミの「ワンデイモア」のパート変更。テナ妻はこの公演のみ田中利花さん(残り2公演は春風さん)。

ワンデイモアのメインはレミ出演キャストが演じられていて、今井さん(バルジャン)、村井さん(ジャベール)、戸井さん(マリウス)、斉藤さん・辛島さん(コゼット)、昆ちゃん(エポニーヌ)、杉山さん(アンジョルラス)でしたが、ぱっと見るとマリウスがコゼットを2股かけている(笑)ように見えるという・・・実際には、斉藤コゼットと歌うパートと辛島コゼットに歌うパートに分かれているんですけどね。なんか過去コゼットと現在コゼットみたいに見えてみたり。

このメンバーで聞きたかった曲と言えば、「ミス・サイゴン」の「今も信じてるわ」を昆ちゃんと由美子さんでやって欲しかったな-。

・・・

アンコールのメンバーご挨拶は、初日に「全員に聞きます」と一路さんが宣言されていましたが、初日が一路さん・瀬奈さん・今井さん、この日マチネが昆ちゃん・斉藤さん、そしてこの日ソワレがちーちゃん・由美子さん・村井さんということで合わせて8人。

ちーちゃんは一路さんから「公演中なのに駆けつけてくれて」と前振りがあってのご挨拶。

「私事ですが」と言い出したもんだから、舞台上と客席に大きな衝撃が走る(苦笑)

が、「私は今、新国立劇場で『三文オペラ』という作品に出演していまして、今日も13時開演で16時30分に終わって、『5分で着替えて』と言われて(笑)。急いでこちらに着いて、皆さんが1幕歌われているのを準備しながら聞いて、2幕から入らせていただきました。本当に不安でいっぱいだったのですが、東宝芸能のみんなと会えて、一緒に歌っていると本当に家族みたいで、安心して歌うことが出来ました。ありがとうございました」

・・・という実に安定の素敵なご挨拶。

ちーちゃん、舞台は「私事」じゃなくて「仕事」だと思うよ(笑)

そして次が、我らが挨拶問題児(爆)な由美子さん。

一路さんから振られて、何とカンペを取り出す由美子さん。会場内笑。

一路さん「なんで?(笑)」

由美子さん「ミュージカルのコンサートで歌うことって実は初めてで緊張しちゃって。言うこと忘れちゃうと思って」
 「で、分からなくなりそうだったんでマネージャーさんに書いてもらって

村井さん「お前の創造じゃないのかよ(会場内笑)」

由美子さん「自分の気持ちを汲んで書いていただきまして」

・・・という、一路さん初め各位を撃沈させまくるやりとりが。

こっちはハラハラして気が気じゃありませんでしたが、後で友人に聞いたら一路さんも、ちーちゃんも爆笑しまくっていたそうで、そりゃそうだよなぁ(笑)。

いやまぁ、聞き終わって思ったのは、一路さん、芳雄氏から「由美子さんに挨拶は・・・」という引き継ぎはされていなかったのだなと(爆)

それにしても、恐らく一番挨拶しにくい立場だったちーちゃんがここまできっちり挨拶されたのに、一回りも上の方がちゃんとした挨拶一つ出来ないというのは、慣れているとはいえかなり悲しかったです。私、同い年ですが、いつ話振られても挨拶出来るぐらいの気持ちの準備はありますよ・・・

女優さんのパワーって、「どういったものを表現したいか」というものをどう全面に出すか次第だと思っていて、特に小劇場でのパワフルな若い女優さんのパワーをここのところ見ていることもあって。それに比べると、由美子さんの”伸び悩んでいる感のある立場”というのは、その辺りとも無縁ではないのではと感じざるを得ません。

そんな複雑な思いを感じつつも、それは横に置いておいて。

この日、9月20日は実は村井國夫さんの誕生日。「920」で「くにお」とのことで、この日が古稀(70歳)。
ハッピーバースデーソングが流れる空気がなんかいかにも家族という感じでほんわかしたなー。
村井さんの「これから続けていくことが大事」ってメッセージも印象的。
ま、実は村井さん今は東宝芸能じゃないんですけど(8月からキューブ所属)。

・・・

色々なところで感じることはありはしたものの、特に楽は総じてまとまりのある素敵な出来で、また同じような機会がありますことを願っています。その時はもう少し長い稽古時間を取って、初日から今回の楽のレベルのものを見せてほしいです。

終演後の募金列では昆ちゃん、由美子さん、千弘ちゃん、村井さん、一路さんにお声がけでき幸せでした。
特にヴィヴィットに反応してくれた千弘ちゃん、嬉しかったです(^^)。

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『Espoir~希望をもって~』(1)

2014.9.19(Fri.) 18:30~21:00
東京国際フォーラム ホールC
3階1列1桁番台(下手側)

東宝芸能創立50周年記念チャリティコンサート第1日、行って参りました。
結構な曲数があらかじめ発表されていたので、予想外の曲というのは少なかったのですが、まずはセットリストから。
ネタバレになりますので、お気になさる方は回れ右で!




セットリスト ※敬称略

ACT.1
1.またshowが始まる/キス、ミー、ケイト
  (全員)
2.So In Love/キス、ミー、ケイト
  (一路真輝、今井清隆)
3.TaKe Me To Heaven/シスターアクト
  (瀬奈じゅん、春風ひとみ、辛島千恵、
   遠野あすか、宇野まり絵、RiRiKA)
4.世界が終わる夜のように/ミス・サイゴン
  (昆夏美、石井一彰)
5.アデレードの嘆き/ガイズ&ドールズ
  (高橋由美子)
6.踊り明かそう/マイ・フェア・レディ
  (遠野あすか、宇野まり絵、RiRiKA)
7.ブロードウェイの子守唄/42nd Street
  (春風ひとみ、辛島千恵、宇野まり絵、RiRiKA、
   戸井勝海、石井一彰、杉山有大)
8.Herro,Young Lovers/王様と私
  (一路真輝)
9.I Do! I Do! / My Cup Runneth Over/I Do! I Do!
  (村井國夫、春風ひとみ)
10.Bring Him Home/レ・ミゼラブル
  (今井清隆)
11.愛と死の輪舞/エリザベート
  (一路真輝)
12.私だけに/エリザベート
  (瀬奈じゅん)
13.虹/ローマの休日
  (斉藤由貴)
14.トラディション~サンライズ・サンセット
  /屋根の上のヴァイオリン弾き
  (全員)

ACT.2
15.I Wish My Way/イーストウィックの魔女たち
  (一路真輝、瀬奈じゅん、高橋由美子)
16.サウンド・オブ・ミュージック メドレー
  (斉藤由貴、村井國夫、東宝シンデレラ)
17.舞妓はレディ/映画「舞妓はレディ」
  (上白石萌音、辛島千恵、宇野まり絵、RiRiKA、
   石井一彰、杉山有大)
18.ランベス・ウォーク/ミー&マイ・ガール
  (東宝ジュニア(57名))
19.※曲名略(20日夜のみ)
  (大塚千弘)
20.夢にも思わなかった/アンナ・カレーニナ
  (瀬奈じゅん、遠野あすか)
21.セリョージャ/アンナ・カレーニナ
  (一路真輝)
22.命をあげよう/ミス・サイゴン
  (昆夏美)
23.ブイ・ドイ/ミス・サイゴン
  (今井清隆)
24.※曲名略(20日夜のみ)
  (大塚千弘)
25.プリンスは出ていった/モーツァルト!
  (高橋由美子)
26.Stars/レ・ミゼラブル
  (村井國夫)
27.エリザベート メドレー
 27-1.パパみたいに(村井國夫、昆夏美)
 27-2.嵐もこわくない(辛島千恵)
 27-3.最後のダンス(辛島千恵、瀬奈じゅん)
 27-4.私が踊る時(瀬奈じゅん、遠野あすか)
 27-5.夜のボート(一路真輝、戸井勝海)
 27-6.愛のテーマ(一路真輝、瀬奈じゅん)

Encore
28.One Day More/レ・ミゼラブル
  (全員)

29.You'll Never Walk Alone/回転木馬
  (全員)


・・・

まずは全体的な印象から。

正直言ってしまうと1幕はペースを掴むのに相当苦労していた感じで、1幕ではっきり良いと思えたのはラストの「サンライズ・サンセット」。ここは長女・ツァイテルが由美子さん、次女・ホーデルが昆ちゃん、三女・チャヴァが辛島さんという組合せでしたが、由美子さん・昆ちゃんが並んだ上にあのソロの連続ですから、相当痺れました。
よくよく見ると、ファンテーヌ・エポニーヌ・コゼットの並びだったのですね。

M3のシスターアクトはさすが瀬奈さん本役だけあってエネルギーがすごかったですが、客席が付いていけなかったですね・・・ここで盛り上げようという意図はあったのだと思いますが、2幕のランベスがここに来てるとかなり印象が違ったかも。

M4は昆ちゃん本役(キム)のサイゴンですが、うん、昆ちゃんはむちゃくちゃ良いのですよ。
でも、やっぱりこの曲はクリスがどれだけ受け止められるかだと思いますのでね、彼だとね、うん、ちょっとね、だいぶね、たくさんね(以下略)。
普通にクリスが戸井さんで良かったと思うのですよ。昆ちゃんは今回のサイゴンで相手役をかなり選ばれてますが(一番特徴的なのはトゥイが神田くん固定)、あまりそういうの気にしなくてもいいぐらいになったんじゃないかなと思う。しっかりした相手なら・・・(毒)

M5、久しぶりの由美子さんのアデレード(アデレイド)ですが、この曲をまったく説明なしにソロでやらせちゃうのはさすがにちょっと厳しい・・・何とかこなしていたけど正直、客席暖まってない中でこの曲、正直気の毒すぎる感じ。ソロいただけるのなら、実はファンテ経験者が他にいないんだから、普通に「夢やぶれて」で良かったのになぁ。あとは、2幕からだとファンタスマゴリック(宇野まり絵さん、RiRiKAさん)がMCに入っていて、結構客席が暖まったので、1幕この辺からそういうのがあっても良かったのになぁと。

1幕の中で珠玉だったのはM10。今井さんバルジャンの慈愛に満ちた嘆きの歌は素晴らしかったです。今井さんは事実上のソロ2曲で、2幕のM23のサイゴンもさすがの一言。今井さん、今回の安定度、抜群です。

M13、このメンバーに入っちゃうとさすがに由貴さんは歌声も細いし、気の毒な感じ。普通に歌を歌うなら良いのでしょうが、役の上で歌うともなると、歌声が出る+αが必要なわけで、聞いててとっても不安になりました。今回、途中でご挨拶が入る時間があり、この日は沢口靖子さん、20日は水野真紀さんが担当されますが、ポジション的には20日を水野さんと分け合った方が良かったのではないかと・・・。

ラストで少し回復したものの、もやもやした1幕に比べると2幕は相当持ち直しました。
M15、イーストウィックの三女がまさかの由美子さん(実年齢だと実は次女です)。珍しく末っ子属性というのを拝見できてとっても面白かったです。一路さん、瀬奈さん、由美子さんの3人とも男性方面の声というのもあるのと、特に一路さんと由美子さんは他の歌い手さんと混じり合わない歌声ですので、ハーモニーというよりは異質感重視という感じでした。一路さんと由美子さんの唯一の共演作『リタルダンド』でも2人の合わない声質が2人の役の性格の違いという意味で使われていたことを思い出しました。

M17は東宝シンデレラ、萌歌ちゃんの映画の曲ですが、これが存外に面白かった。特に上手端の石井一彰氏の踊りのぎこちなさが超ツボに入りました(爆)。センターでそれを従えている感じの萌歌ちゃんという組合せがその笑いを増幅させる(笑)。

M18は普通に昆ちゃんで見たかったのですが、東宝ジュニアでこの曲やったのはむちゃくちゃ正解。手拍子がぽんぽん入ってようやく客席も暖まりモードに。ここあたりからファンタスマゴリックの曲紹介・トークが入り始めて、それもとっても良い効果。動画にも出ていたのでこの日の客層にもそれなりの知名度があったことも幸いして、予想以上にホームなファンマゴ(笑)。
そんな中のランベスはとってもわくわくでした。

M22からM26のうち、この日歌われた4曲はもう最強過ぎる流れ。昆キム「命をあげよう」→今井ジョン「ブイ・ドイ」→由美子ナンネール「プリンスは出ていった」→村井ジャベール「Stars」。この4曲が全部本役で固めてるということに改めて驚かされます。もう由美子さんのナンネールはこの回含めて自分はあと2回しか聞けないんだなと思うと、淋しさがこみあげますが、この日のコンディションはかなり良い状態で、正直、今回もWならできたんじゃないかなぁ・・・

M27はアイディア賞をあげたいぐらいにツボ。何しろこのメドレーには3人のシシィが登場しまして・・・。「パパみたいに」のパートのシシィは何と昆ちゃん。もうびっくりするぐらいどんぴしゃ(^^)。やんちゃでお転婆、いきいきって感じが昆ちゃんにぴったり。これは見られて良かった! 少し成長したシシィを担当するのは遠野さん。その後、「最後のダンス」の瀬奈さんの後、シシィは一路さんに変わって2曲。この構成は面白かったです。東宝芸能らしい企画だなぁと思ったのは、女優さんのタイプが似ているから、幼い頃→若い頃→成長した頃というのが、上手いことつながって聞こえるんですよね。

M28はすごいエネルギーの「ワンデイモア」。今井さんバルジャン、村井さんジャベール、戸井さんマリウス、斉藤さん・辛島さんコゼット、昆ちゃんエポニーヌ、石井さんテナルディエ、春風さんテナ妻という陣容。期待どおりの「ワンデイモア」でしたが、感慨深かったのはこのシーンに由美子さんもいたこと。2004年にファンテーヌ役(このシーンではピエール役)を卒業して以来10年ぶりのこのシーンで、しかもこの曲でソロパートがあったのは今回が初めて。時空を超えてピエール役で叫んでいるようでじーんと来たなぁ。

で。カーテンコールがぐだぐだになるのもとっても”らしい”姿で、そんな中、一路さんが”気合い入れっ”ってやって進行したのがさすがすぎました。全メンバーを3回に分けて一言コメント、という話でこの回は一路さん、瀬奈さん、今井さんのお3方。人数からして20日の2回は1回当たり6人ぐらいになりそう(20日夜は大塚千弘さん、田中利花さん唯一の出演回なので、確実に由美子さんは20日昼だろうな・・・)。

・・・

終演後は、キャストの皆さんがずらっと並ばれての募金列。
募金箱は7つ。手前側に東宝シンデレラの皆さんが並び、3つ目が昆ちゃんの前、5つ目が由美子さんの前でした。はい。
お話しすることまでは叶いませんでしたが、拍手が贈れて良かったです。

1幕終了時点では心配しか浮かばなかった今回のコンサートですが、終わりよければ全て良し・・・とまでは断言できないまでも、それなりの形になって何よりです。

次は20日夜。あの2曲が聞けるーーーー!
そして由美子さんとちーちゃんが上手いこと絡みますように(ちーちゃんは新国立の「三文オペラ」終演(16時25分)後駆けつけるので、出番は2幕(18時30分予定)からになります。そうなると絡むところ超少ない・・・)。

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『ウレシパモシリ』(4)

2014.9.15(Mon.) 15:30~17:45
ザムザ阿佐ヶ谷 2列目上手側

超短期間再演の千秋楽。
この回は本当に売り切れが早くて、発売初日の時点で指定席が一気になくなって、ぎりぎり座椅子なし自由席を押さえた回。

千秋楽ということで、良い意味で遊ぶキャストもいらっしゃいますが、すごかったのが哲治役の中本さん。

ジェルマンさんを家に連れてきて、ひとしきり食事が終わったと思ったら、お母さん役の日野原さんに「甘えますよっと」と言って膝枕をしてもらい、横にいる聖な由佳さんの「何やってるのよもぉ」顔が最強に面白かったです(笑)。

かと思えば、ジェルマンさんが出ていった後、探しにいこうとしている時の1シーン。

哲治「ジェルさんはJKなんだよ」
聖 「JK?」
哲治「JKは3択です(会場内爆笑)」
聖 「3択???」
哲治「1つ目。『女子公務員』(笑)
   2つ目。『ジャカルタ空港』(笑)
   3つ目。『おじいさんが肩の向こうにいる』
・・・で聖さんがびくっと自分の肩の方を振り返って会場内笑い。
聖 「(どう反応して良いかフリーズ)」(笑)
哲治「答えはどれも違います」(笑)

・・・という、もう勢いだけでやってるでしょこれ状態。
こんな真面目なシーンなのに、爆弾ぶちこまれた由佳さん、完全に固まってて噴いちゃいました。

もう一人、笑いの王様、青木さん。もうこの人はどうやったら笑いを止められるのか、客席の期待のさらに斜め上50度ぐらいいっちゃうお方。
警官シーンでは喋ったまま寝だして、哲治さん『起きろー』、警官『ぐー』、聖さん『(笑いを必死にこらえて舞台の死角を向く)』な状態。その直後、留置場から出てきたジェルマンさんな佐藤さんは、包帯を鼻にまでびろーんと伸ばして、またもや聖さんは完全に笑いオチ状態になってるし(爆)。

と、主にほとんど被害者だった聖さんな由佳さん。前回も書きましたが、高嶺の花なのに遊ばれやすいキャラクターというのか、親しみやすいお嬢さまという感じで、「平凡な家庭の風景」という色がかなり濃かった気がします。
哲治さんとの関係も仲の良い兄妹という感じで、寿司を取り合ってウニとイクラは聖が先勝するも、次の具材を哲治がフェイントかけて取って、哲治「どうだ~」→聖「ぶぅー」みたいな感じが微笑ましくて楽しかったです。

4等船室をどっちが見に行くかというんで哲治が聖を持ち上げて半回転、聖が「きゃーーーーーやめてーーーー!」と叫んでるシーンのインパクトは絶大でした。哲治さんマジで階段の上近くまで持って行って遊んでるし(爆)。

というように、由佳さんの聖の特徴といえば、よく考えると哲治との距離が近いことなんじゃないかと思います。哲治のことを聖がどう思っているかというところからすると、(中村)百花さんの聖からは「ダメ兄貴」というイメージが強いし、(平川)めぐみさんの聖からは「変わり者兄貴」というイメージを受けて。聖から見て哲治への信頼という意味では一番強いのが由佳さんの聖な気がします。それゆえ、「兄がジェルマンさんを大切にする理由」というものが、言葉にしないまでも感覚として共有されていた気がして。ただ、それを言葉に出来ないのが聖、という点で不器用には見えていたわけですけれども。

以前書きましたが、めぐみさんの聖はジェルマン寄りな感じでしたから「私は最初から見抜いていた」という言葉が一番説得力があったのはめぐみさんで、その逆が百花さん(あの言葉を発している瞬間さえ見抜いている風に見えないところさえある)。

ただこの2人はジェルマンを直接見ていたところを感じたのに比べると、由佳さんの聖は「哲治が気にしているジェルマン」という前提を通じてジェルマンを見ていたように思えて。だから哲治抜きでジェルマンが岩手行きを決めようとしたときに、一番狼狽して見えたのは由佳さんの聖で。あの瞬間、”哲治の考え”抜きで決断を迫られたからこそ、聖は一歩大人になれて。だからこそ、本当に自分でした決断だったからこそ、涙を流す直前の表情でジェルマンに「行ってらっしゃい」と言った表情に心を打たれます。由佳さんの聖の表情で魅力的なのは、この「涙を流す直前の表情」と、その後の振りきったときの「ぱぁっとした笑顔」。素敵でした。

笑顔と言えば、印象的なシーンがあって。
殺し屋・古市といえばこの作品の中で「人を信じなくさせられたんだ」と叫んでいますが、その古市を必死で救おうとするジェルマン。ずっと受け入れてもらえない中、実は古市が立ち上がるとき、ジェルマンの肩を借りて立ち上がるシーンがあるんです。その直後でジェルマンが笑顔になるシーンが自分の泣きポイントだったりします。

娼婦3人の中で恐らく一番人への警戒心が強いあい(今回は2回とも椛島さん)の心が溶けていく様も今回はじっと見られて。ジェルマンは人を信じない人に対して人を信じることを伝道して歩いているのかなと思うかのようなシーンが複数あって、哲治と聖の元に居る必要がないと感じたからこそ街に出たようにも思えて。

古市から「いつまで俺についているんだ」と問われて「古市さんの病気が治るまで」とジェルマンは答えていますが、これは「古市が人を信じられるようになるまで」という見方もできるわけですよね。運転手に「古市さん、医者に行かないからいけないや」と言われていますが、古市にとって医者にかかるということは、「自分の命を他人に委ねること」に他ならないのでしょうし、だからこそ「他人を信じられない」古市にとって、医者にかかるという選択肢は端からないということでもあって。

「ジェルマンさんはなんで日本に来たんだろうね」と言うことに対しての答えは、この作品の中で完全には提示されてはいないわけですが、個人的には『他人を他人として尊重する気持ちを伝えたい』『人を信じる気持ちを伝えたい』ことではなかったかなと。前者が『聖の心を変えた』こと、後者が『古市の心を変えた』こと、に代表されている気がしています。

・・・

この日終演後は、この作品の楽曲提供、AKIRAさんのミニライブ。(舞台下手側2列目で舞台をご覧になっていました)
最新CDのタイトル曲「ライフシアター」。「人生は劇場であり演劇である」というテーマは実際その直前まで見ていた『ウレシパモシリ』の世界と当然のことながらリンクして、そのメッセージ性に圧倒されます。

そういえば、ウレパモの終演後ライブといえば、出番のないキャストのみなさんが客席にいらっしゃるというのが定番ですが、自分の席、2列目の上手側端だったため、すぐ右隣がやよいさん(田中里佳さん)、その右が聖さん(河野由佳さん)、前があいさん(椛島歩さん)という状態でした(爆)。

2曲目はキャスト全員を呼び込んでの『ウレシパモシリ』。で、その後のアンコールがすごかった。

『ありがとう』なのですが、何とキャスト・お客さん皆さんが輪になって手を繋いで歌うというAKIRAさん発案での、民族大移動。自分は位置的に舞台に上がる位置にいたので、キャストさんお2人の間に入ることになったのですが(写真が出そうなのでどなたの間だったかは伏せてw)、それにしてもザムザ阿佐ヶ谷の舞台+客席をぐるっと円になった光景(客席はつまり全部空席)はすごかったです。

赤坂ACTシアターで『ファントム』に出演中の演出・阿部義嗣さんも舞台終了後にお子さんを連れて駆けつけられ、『自分が生きている限りこの作品を続けていきたい』と仰っていて、皆さんから大きな拍手が贈られていました。(お子さんはこの日舞台デビューだそうです。AKIRAさんは「幼稚園とかいってライブやると大概子供は泣くんだよ」とおっしゃっていましたが、よしつぐさんのお子さんをAKIRAさんが抱かれてちょっとしたら、やっぱり泣き出してました(笑))

前回は2ヶ月公演、今回は5日間公演。ちょっと極端な感じで、2週間ぐらいがちょうどいい規模ではないかと思うほど、今回は完売がどの公演も早く。実際2回見た自分が言うのも難ですが、ある程度リピーターさんが多かった印象(特に千秋楽は)。
この規模の劇場でやるとどうしてもそうなってしまうのは致し方ないところかと思いますが、作品のパワーがあるからこそ、初見の人にこそ見て欲しい作品。ベストな布陣・環境でこの作品が再演されることを願っています。

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『カムイレラ』

2014.9.14(Sun.) 13:00~15:20
光が丘/IMAホール
K列20番台(センターブロック)

『ウレシパモシリ』と日程もろ被りで、行けるかどうか心配していたのですが、空白の1日に上手くピースがはまり、当日券での観劇です。当日券は本当は避けるのですが(見たいと思って見られない時の落胆はちょっと辛い。しかも1回きりしか日程が取れないとリベンジできない)、座席に少し余裕があるのは知っていたので、12時に間に合うように到着したら、無事センターブロックが残っていて一安心。

演出の藤倉梓さんの演出第一作ということで、ぜひ見ておきたかったのが第一の理由で、『Ordinary Days~なにげない日々~』で初見、『プロパガンダ・コクピット』も拝見(『sign』を見逃したのが今思っても痛恨)。女優さんとしては『Count Down My Life』で拝見しています。

この作品はアイヌと和人の闘いをテーマにしていますが、このテーマを聞いた時、そして見終わった今でも思うのは、藤倉さんの作品を拝見して思う『覚悟』といったもので。「日本は単一民族の国」という固定観念の前で抜け落ちる先住民族・アイヌをどう取り上げるかというのは、実際ご本人もパンフレットの前書きで書かれていますが、批判もついて回るもの。「そんな簡単な気持ちでテーマにしないで欲しい」と思う方々がいるのは、それは当然のことだと思うし。
その上で、『このテーマと正面から向かい合う覚悟』という「強さ」を藤倉さんの作品には感じます。ぶれない幹というのか。

『プロパガンダ・コクピット』は今でも続く38度線を挟んだ2国を彷彿とさせる物語設定で、いわゆる「意欲作」と言われるものだと思うのですが、その時はちょっと座りが中途半端というか、ふわふわとしている印象を受けたんですね。それはやっぱり他国だからかなと。
それに比べると、『カムイレラ』の場合は根底に「日本人としてこのテーマとしてどう向き合うべきか」があって、場所が日本国内なだけに説得力が大きく違うなと。

その点で「天草・島原の乱」を描いた『SHIROH』にすごく近いものを感じたりしました。

・・・

物語の舞台となるクナシリ(国後島)のアイヌ側のトップの孫娘・キヤを演じた中村百花さん。『21Cマドモアゼル・モーツァルト』のコンスタンツェ役(当時は中村桃花さん)、『ウレシパモシリ』の聖役と拝見して今回が3回目。もの凄い迫力で圧倒されました。藤倉さんに「覚悟」という表現をさせていただきましたが、間違いなくその「覚悟」は百花さんにもはっきりと伝わっていて(百花さん自身も公演前にアイヌを知る旅に行かれているそうですが)、「アイヌにとっての希望」と言われることが理屈じゃなく分かる。確かに感情が止まらなくなり突っ走る瞬間が一度だけあるけれど、基本は冷静沈着で、父親にさえ言うべきことは言う。「トップの孫娘」だからではなく、精神的にも中核な存在ということがはっきり分かる、すごい存在感でした。作品のテーマ曲でもある「カムイレラ」(カムイの風)の澄み渡る歌声も素晴らしかったです。

実質的な相手役となる、幕府からの検分人、中村道生(みちなり)役を演じた小野田龍之介さん。直近で拝見したのは新国立でちーちゃんと共演した『ザ・ビューティフル・ゲーム』ですが、今作ではある意味”へたれ役人”と言いますか(爆)、恐らくはやり手では全然ない役どころ。足滑らせて怪我して、キヤたちに救われたことでアイヌへの恩義を感じている和人。彼もすごく良くて。やり手でないからこそ、本当にアイヌのことを考えていることが伝わって、実際、それは時代の波に押しつぶされるようなものであっても、”アイヌのために生きられることが、自分にとっての生きる意味”の真っ直ぐさが彼だからこそ伝わってきて。

その2人の関係は「アイヌの未来を見つめる」という一点で混じり合っていたように感じて、それが欠片も作り話に見えなかったことが何より印象的。道生がキヤに渡したあるものは、思いと共にキヤに受け継がれていく、そのシーンは感動でした。

キヤの祖父の国後脇長人、ツキノエは戸井勝海さんですが、終わるまで戸井さんだと思わなかった(爆)。何しろ前作が『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のダメ親父だからなぁ(苦笑)。キヤの父親のセッパヤ(菊地まさはるさん)が名前の故なのか(爆)どちらかといえば突っ走り型なのに比べると、ツキノエとキヤの思いってかなり同期しているように見えて。セッパヤも「アイヌの誇り」という思いは同じなのでしょうが、どちらかというとツキノエとキヤは現実的という点でとても似ていて。「苦渋の選択」という言葉で括ってしまえば軽々しいけれども、「生きないでどうなる」という思いは、歴史物を見るときの自分の軸ともかなりシンクロしていて、ツキノエとキヤに同調してしまった感。

アイヌにとって、アイヌを守っていかなければならない”責任”は重くて。
その重さを通じて、「日本」という国において生きていくことの”責任”を考えさせるかのようなメッセージ性の高い作品。
ストレートプレイで演じるとかなり説教的になりそうなテーマを、ミュージカルだからこそ伝えられるのだろうなと思いつつ、「思う」と「実現する」の間にはかなりのハードルがあるのにもかかわらず、このホールサイズにも負けない迫力を見せた藤倉さんの演出の凄さ、そしてキヤと道生を筆頭にしたキャスト陣の迫力に圧倒されました。素晴らしかったです。

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『シェルブールの雨傘』

2014.9.13(Sat.) 17:30~19:50
シアタークリエ 20列10番台(センターブロック)

原作は有名なフランス映画、舞台版は初演が日生劇場、今年が5年ぶりの再演になります。
劇場が変わったことで、かなりのプラチナチケットになって追加公演まで出る盛況。

「5年経って再演の声がかからないと再演がない」というのを初演キャストの井上氏、香寿さんが口を揃えて仰っていますが、クリエサイズにまとめられた今回の作品、とっても好みな出来です。個人的には初演を見逃しているので、再演で初見です。

客層がクリエにしては男性率が高く、それも50代前後の男性、しかもおひとり様が多いというのがさすがはこの作品の知名度だなぁと。

何より印象的なのは「全編に流れる音楽」。この用語ってよく別の作品でも使われる用語ですが、ことこの作品に関する限り、
まさにその通りで、端的に言うとオーケストラさんの息つく暇がない(爆)。とにかく音楽がずーっと流れ続けています。つまるところ、映画的な作りをそのまま舞台に乗せているということなのでしょうね。同じクリエで井上氏が演じている「ダディ・ロング・レッグス」も全編音楽パターンですが、それでもまだあの作品は息つく暇がまだありますから。

それゆえ、観ている方も気持ちを切られにくいというメリットがあって、舞台上で起きている時系列の流れにとても乗りやすい。あの有名な曲、どことなく退廃的で、フランスのアルジェリア出兵(ギイも戦地に赴く)の時代背景ととても良くマッチしていますよね。あの曲があることで作品のカラーがしっかりできているのは大きいんだなと思います。

作品としては井上氏の今までの登場作品とリンクする箇所が複数あって。兵役に赴いて帰国したがつまはじき扱い、は『ミス・サイゴン』のクリス役そのもので、ジュヌヴィエーヴはキムに見えたり、マドレーヌがエレンに見えたりする瞬間があったりする。ジュヌヴィエーヴとの恋の燃え上がるシーンは『ルドルフ・ザ・ラストキス』(初演)を思い出したり。後者は特に今作のエミリー夫人役を初演に続き演じられている、香寿たつきさんの印象が大きいんだと思うのですが。(ルドルフの時はマリーの後見役というか面倒見役のラリッシュ夫人でしたが、今回、ジュヌヴィエーヴの母親ということである意味同じようなポジションかと。)

今回のジュヌヴィエーヴ役は野々すみ花さん。前回(白羽ゆりさん)に続いて宝塚娘役出身の方がこの役を務められていますが、ふんわりした存在感が、”強すぎない”ジュヌヴィエーヴ役になっていてとても好印象。ぐいぐい攻めていく役とはいえ、きっと強気な人がやるとすごく五月蝿く感じちゃうだろうなぁ・・は、マドレーヌ役の大和田美帆さんが自覚している模様(笑)。
個人的に出過ぎないので物足りない、と言われてしまうのは宝塚娘役出身さんの共通の要素な気がはしますが、この役は求められるポジションにぴったり嵌るというか、ある意味井上氏が男役のポジションというか。

サブヒロインにあたるマドレーヌ役、今回は大和田美帆さん(初演はANZAさん)。作品的にとても好感度高くなる役ではありますが、その中でもいいなと思ったのは荒れたギイからの懇願を、ただ無条件に受け入れるところではないところ。
「ちゃんとしないと一緒になんかなりませんよ」という半ば脅しのような条件はさすがだなと。ただ一緒になるだけではもちろん自分も苦労するし、彼のためにもならない。そこの釘の刺し方が、演じる美帆さんの精神的な大人さとリンクして説得力があった感。

この作品名、『シェルブールの”雨傘”』の意味を、見ながらずっと考えていたのですが、「雨傘」とは「庇護」の意味なのかなと。

母であるエミリー夫人の「雨傘」の下で過ごしていたジュヌヴィエーヴが、ギイとの出会いで自我に目覚め、ギイを愛するがゆえに、”彼の子をも含めて愛してくれる”カサールの「雨傘」の中で生きることを決意する。
ずっとジュヌヴィエーヴを守り続けていた母は、新たな「雨傘」に引き継いだことで、自分は娘とは離れて生きていく(実際には理由ははっきりしませんが数年で亡くなっていますが)。

ギイは自分がジュヌヴィエーヴの「雨傘」になれなくなったことに絶望しながらも、マドレーヌに自分の「雨傘」になってくれるように頼む。でもマドレーヌは一緒に「雨傘」を差すことをギイに促し、荒れたばかりだったギイはそれによって立ち直っていく。

それぞれの登場人物の、戦争に巻き込まれた末の紆余曲折という面はあるにせよ、「いかにして自立するか」を「雨傘」という言葉で表現している物語に思えて。

雨傘に頼らなくちゃいけないときもある。でも雨傘に頼ってばかりでは生きる力はどんどん失われていく。
時には雨傘を捨てて、自らの身体で雨を受け止めることも、生きるためには必要だ、と言っているように感じられたのでした。

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『ウレシパモシリ』(3)

2014.9.12(Fri.) 19:00~21:00
ザムザ阿佐ヶ谷 C列センター

「ウレシパモシリ」今年5/6月公演から3ヶ月での超短期間再演。
個人的には3ヶ月ぶり4回目の同作品観劇ということになります。

この日の特徴は新顔の方が多いことで、聖役の河野由佳さん、ジェルマン役の佐藤秀樹さん(前回は哲治役。今回も最初のオファーは哲治役だったそうですbyトークショー)、あい役の椛島歩さん。それに加えて歌2の日野原希美さんも初めて。そういえば前回は3回が3回とも岡村さやかさんを選んで観ていたんでした。

まずはヒロイン・聖役の河野由佳さん。『Ordinary Days』以来です。聖役は前回、中村百花さん(2回)、平川めぐみさん(1回)で由佳さんが3人目。女優さんのカラーがずいぶん色濃く出る役だなと改めて思います。

聖は「社長秘書」という役どころですが、「社長秘書」色が一番強いのは百花さんかなと。あの強気な感じがいかにも社長秘書という感じ。由佳さんもそれに近いのですが、どちらかといえば「会長秘書」という感じ。なんだか「高嶺の花」なのにガツガツしない、上から目線の点もあるのに、どことなく茶化しやすい(爆)。一番庶民的なのはめぐみさん。「副社長秘書」という感じで一歩引いている感じ。

由佳さんの聖で興味深いのが、結構みんな喜んでいじってる、それを許しちゃうチャーミングさがあるというか。哲治が聖を持ち上げるシーンとか、前任者では想像付かなくてびっくり。でも一線は守ってて、最初の方でジェルマンが近づいて来てもおでこを「ぺちっ」といい音立てて止める。いやもういい音すぎて笑っちゃいました。ジェルマンの佐藤さんのおでこが広いせいもあるのだと思いますが(をい)。

前回、百花さんの聖を「ツンデレ」、めぐみさんの聖を「デレツン」と称しましたが、由佳さんの聖はその中間。ニュートラルな感じがしますが、比較的デレツンに近い感。ジェルマンに対する近さは、よりめぐみさんに近い感じ。それでいて由佳さんらしいと思うのは、ジェルマンに対する申し訳ない気持ちの溢れ方が凄く強く伝わってくるところ。ジェルマンの「他の人とは違う」ところに気づいていく流れがとても自然で、「自分が恵まれたところにいた」ということに対する引け目が強くあるのかなって。

聖って、この作品の中ではヒロインのポジションですが、この作品の中での立場は実はメインストリームじゃないんですよね。この作品に出てくる人たちって、基本「市井の人々」で、「恵まれた人々」ではまずない。娼婦だったり占い師だったり、その筋の人たちだったり、殺し屋だったり。昭和32年という時代からして、「高度成長直前の、『まだ皆が豊かさを得られていない時代』」であろうタイミングの、その日その日を必死に生きる人たちが、この作品のメインの登場人物たち。

それに比べれば、聖は恵まれすぎるほど恵まれる立場にいて、ある意味、そういった人たちを蔑むような目線をもっていかねない登場人物。その聖がジェルマンの「ありのままの人たちを知って、その人たちと寄り添って、そして助けたい」という気持ちに引っ張られて、視野を広げていく物語でもあるわけです。ただ、百花さんの聖ほどには上から目線でなく、めぐみさんの聖ほどには最初からジェルマンに心惹かれていた感じでもなく、その中間を行ったバランスはさすがは由佳さんだなと。

ただその分、「男より金(株)」とか、哲治から「結婚できるのか?」と心配される風が、今ひとつリアリティとは離れた部分に感じたのも、これまた正直な感想ではあるのですが(苦笑)。

ジェルマンに気持ちを伝えそうになるシーンで、一番伝えちゃいそうに見えたのが由佳さんの聖でしたが、気持ちを押さえて見送るところの、泣く直前の表情がとても良かったです。

・・・

この日もう一人のお目当てが娼婦の一人、あい役の椛島歩さん。TipTapや、当作『ウレシパモシリ』の受付担当として何度かお話ししていますが、女優さんとして拝見するのは初めて。娼婦3人の中では一番斜に構えて、ジェルマンと一番距離を置く女性ですが、ジェルマンの佇まいと、ポールの存在に心を開いていく様を素敵に演じられていました。

たっぷり2ヶ月あった前回と異なり、今回はわずか5日間。次に拝見するのは楽公演ですが、どんな風に変化しているのかとても楽しみです。

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『綿引さやかトーク&ライブ』

2014.9.9(Tue.) 19:30~21:40
汐留BLUE MOOD

演劇ライターの立花裕人氏がMCを務めるトーク&ライブ、以前から存在は聞いたことがあるのですが、今回初めての参加。
この日のゲストが綿引さやかさん。
ソロライブの参加も実は初めてで楽しみにしておりました。

体調が戻り途中なので、アルコールはもってのほかなのですが、そんなんこんなんしていたら、ノンアルコールの「ぶどう酒という名のイチゴ水」(*)を頼み損ねる失敗をしてみたり。

(*)『赤毛のアン』で、アンに招かれた夕食会でダイアナが飲んで酔っぱらった「イチゴ水という名のぶどう酒」をひっくり返したそうです(笑)。ちなみに、びびちゃんは「お酒が飲めない」のだそうで、「実際に飲んだらダイアナみたいになります。あれはリアルびびです(笑)」だそうです(爆)。

まずはセットリストから。主催者発表により後日変更があり得ます(爆)。
メドレーの1-2と1-4が抜けてるだけですが。

1.Disney Medley
 1-1.星に願いを/ピノキオ
 1-3.ガストン/美女と野獣
 1-5.Supercalifragilisticexpialidocious/メリー・ポピンズ
 1-6.Part Of Your World/リトルマーメイド
2.memory/キャッツ
3.生まれてはじめて/アナと雪の女王
4.自由を求めて/ウィキッド
5.瞳を閉じて/平井堅
6.糸/中島みゆき
7.On My Own/レ・ミゼラブル

Encore
1.I Will Always Love You

曲の中ではこの中で唯一の持ち歌になるエポニーヌがさすがに素晴らしかったですが(幸運なことにステージから2列目だっため超至近距離でした)、それ以外も曲数を絞っただけあってどれも良かったです。

自分を奮い立たせる時に聞く曲「自由を求めて」の迫力も良かったし、かと思えば「生まれてはじめて」のアナっぷりが意外や意外、ぴったりすぎ。普通、エポニーヌをやる人ならエルサの方が合う先入観がありますが、どうしてどうしてポップな存在感がアナにぴったり。びびちゃんはリアルではお姉さまですが(今年就職された妹さんがお1人)、しっかり者でチャーミングという点は、キャラ的には確かにアナの方が近いですね。

平井堅さんの「瞳を閉じて」は『ON AIR~夜間飛行~』でびびちゃん演じたアヤが歌っていた曲。
実はこの日、サプライズで、MCの立花さんが用意していた、超新星・ユナク氏の映像にびびちゃん絶句(完全に固まって素に戻っていました)・・・が。その後の展開がもっと面白くて。

びびちゃん「完全にアホ顔になってましたよね、私」

立花さん「うん、アホ顔になってた(笑)」

びびちゃん「立花さんとお話してて、『メッセージもらえたら嬉しいね』と言ってたんですよね」

立花さん「言ってましたね」

びびちゃん「でもいただけているなんて話されてなかったですよね」

立花さん「サプライズですから」

びびちゃん「立花さんって凄いんですね!

立花さん「その言葉を待っていました(笑)」

・・・ビバ天然(笑)

・・・・

立花さん「村井さん、『瞳を閉じて』弾けないですよね」

びびちゃん「(村井さんが「無理」と言ってくれることを祈る目)

村井さん「え・・・? 準備してないけど弾けますよ

びびちゃん「!!!(村井さんに「なんでー?」って言ってる目)

立花さん「じゃぁお願いします、『瞳を閉じて』」

びびちゃん「えぇぇぇぇぇ!本当ですか?

・・・という中々面白い漫談を(爆)。

こんな振りでも歌ってましたびびちゃん、さすがです。

あ、村井さんというのはピアニストさん。シアタークリエ公演『Title Of Show』で「いじられるピアニスト」として東宝系の皆さまにも一躍有名になった村井一帆さん。scoreさんのトークショーでの天才的な仕切りでも有名な方でもありますが。

村井さんの演奏についてびびちゃん、「ピアノだけなのに重層的に聞こえる」と仰っていたのはとても印象的でした。

あと意外だったのは村井さん、音大出身とかではなくて国際基督教大学卒なんですね。しかも理系(応用化学科卒)。試験管振ってたそうです。たしかに白衣似合いそう(個人的な勝手なイメージです)。

・・・

この日は「トーク&ライブ」というだけあって、トーク時間が取っても長くて、びびちゃんの今までを振り返る構成。知らない話がいっぱい出てきてとにかく濃い濃い。1つ1つのエピソードが超重量級で、思ったよりずっとやんちゃなんだなとか(笑)。あとは「負けず嫌い」とはちょっと違うびびちゃんの力の源が分かった気がしました。

というのもがっつり「私が私が」というタイプじゃないですよね、彼女の場合。
それなのに、自分を自然にアピールすることに凄く長けてる。大学でミュージカル部を作ってしまうくらいの行動力の持ち主なのに、出てくるエピソードがことごとくちょっとずつ抜けている(怒らないでねw)。
でもそれがすごくチャーミング。

そんなエピソードの中でも一番印象的だったのは、やはりニューヨークでの話。

「ミュージカル女優になることしか考えていなかった」自分が、就職せず事務所に所属し、でもオーディションでは上手くいかない日々。一念発起して向かったニューヨークで見たもの・・・

「あれだけ賑やかなのにとても孤独。とにかく外に出るのが怖かった」

「凄くエネルギーに溢れているけど、その外にはじき飛ばそうとするエネルギーも凄い

そんなニューヨークを肌で感じた後に彼女が感じた物はといえば、

「日本にいるときは他人のことが気になってばかりいた
ニューヨークに行って、凄い人たちを目の当たりにして。
それで思ったのは大切なのは自分なんだなということ。
自分が『どれだけ夢を現実的に追い続けられるか』という
『気持ちの強さ』が大事なんだと」

彼女は大学時代から「夢を叶えるノート」というのを付けているのだそうで、そこには「夢を断定的に書いている」のだそうです。夢を断定的に書くことで、その夢を叶える自分を具体的に自分の中にイメージするのだそうで。昔書いた物を見返してみると、形はどうあれ別の形で叶っているものも多いのだそうです。

彼女はこの日「強く思い続けること」ともう一つ、「人と人とのつながり」を話されていて。とにかく出会った人一人一人が宝物という言葉は、まったく嘘でなくて。ニューヨークで受けたオーディションで上手くいかなかったけれど、その時の音源が別のプロデューサーの方の耳に止まって「One World」(JAL環境テーマソング)に決まったりとかという話は、確かに人と人との縁ゆえのものなのだろうなと。

実際、私がびびちゃんを知ったのはエポニーヌに抜擢されてからだし、それ以前の経緯をこの日知れたことはとっても良かった。それにしても、聞けば聞くほど、ニューヨークで受けた経験があってこその今なんだろうなと、それが肌で感じられたことはとても重くて。

「どうして自分に追い風が吹いてきたかわからない」というかのような初心を保ちつつ、夢を見ることを止めなかったこと。そしてそれをこれからも続けていけることが、彼女の一番の強みなのだろうなと思えたのでした。

どなただったか、「夢を見ることを諦めなかったことが自分の唯一の才能」と言っていた方がいらっしゃいましたが、この日、びびちゃんの言葉の数々で、なんだか同じことを感じずにはいられませんでした。

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