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『ミス・サイゴン』(19)

2014.8.24(Sat.)12:00~14:45
 2階L列10番台・笹本キム

2014.8.24(Sat.)17:00~19:45
 2階G列30番台・昆キム

2014.8.26(Mon.)18:15~21:00
 1階A列30番台・笹本キム

帝劇my楽、終わりました。

「ミス・サイゴン」では自身3度目となるマチソワとなった24日の土曜日(過去、2012浜松・2013盛岡でマチソワ経験あり)はなんだか感覚が麻痺してしまったのか、「最新演出って何でそこかしこに窮屈な制約がいっぱいあるんだろう」と疑問符を持ちながらの観劇。

最新演出版って、理屈に拘りすぎている印象があるんです。物語の軸はしっかりしていて欲しいけれど、演出トリビア知らないとわからないようなことって、本末転倒な気がして。演出のこだわりも悪くはないけれど、それをネタバレせずに伝わらないと、正直意味がないように思うんです。
例えば「ヌードルボーイ」は、”あの結婚式の場が「日常」の中で行われていることを示すもの”と言っていましたが、それ、本当に必要かと。

「ドリームランド」がかつては狂乱の場所。そして結婚式という束の間の幸福な時を経て、トゥイが乱入してきたことでそこは阿鼻叫喚の場となる(犠牲は出ていませんが)。米軍撤退の後、GI目当てのバーだったそこは朽ち果てるが、エンジニアは隠していた”偽物”を見つけ出し、再起への礎とする、そこにキムがタムを連れて駆け込んでくる・・・

派手さは失っても、いつにあっても確かにそこは「夢」の起点。という作りはとても良いと思うのですが、それ以上のサイドストーリー、要らなかった気がするんですけどね。なんかわざわざ変えようとしたものほど、変えなくていいものに思えて。演出家さんは「変えることはいいことだ」とおっしゃっていますが、「変えないことは勇気」でもあると思うんですけどね。

2012年に正に熱狂的に迎えられた新演出版。めぐろから始まって地方を経由しての青山劇場公演、そして盛岡大楽。その時の熱気は本当に凄かったわけですが、それを経ての満を持しての帝劇公演なはずの今回、前回並みの熱気が出ているかというと、正直そこまで行っていないと思えて、それが自分にとっての帝劇公演が終わっても、その理由がまだ理解できずにいます。

「ミス・サイゴン」という作品は、後味が悪いといわれるけれども、自分ではそこまでそうは思えなくて。

『責任』ということをきちんと考えさせてくれる作品という意味で、ミュージカルとして興行される価値を持った作品だと思っています。アメリカという「国」が、クリスを初めとしたアメリカ人に対してさえ無責任であったこと、「国」のために戦ったが、帰国したらアメリカという「共同体」から蚊帳の外に置かれたこと。

クリスはミュージカル界3大ヘタレを襲名して長いですが、それにしたところでキムやタムに対してきちんと責任を取ろうとした点においては誠実であったし。

戦争という大きな波の中では、個人が誠実であろうとしても自ずと限界があることをこの作品は示しているように思えてきます。

・・・

26日ソワレは、帝劇サイゴン唯一の最前列。普段はミミ役の郁代さんがちょうどお休みにあたって痛恨ではありましたが(チケット発売後にアンサンブルスケジュール決めるのはやはりおかしいと思う)、その分、笹本キムに絞って物語を見られた感があり、一昨日に感じていたもやもやもかなり解消されました。

というのも、笹本キムの鬼気迫る感が凄まじい。2004年以来、何十回と見てきている笹本キムですが、正直、彼女のキムは”綺麗に作ってしまう”という枠から中々抜け出られない印象があって、いつも「あと少し!」と思い続けてきた面があって。(エポではそれを感じたことがないので、エポは彼女にとって割合作りやすい方の役じゃないかと思います。)

そう思い続けてきた日々が、帝劇楽で予想以上の大化け。とにかく執念を感じさせる目力。トゥイと対峙する時も、今までは「トゥイを撃ちたくない」という思いが表面に出ていたと思う(というか実際も「あなたを撃ちたくない」って言っていた日さえありました)んですが、この日は、「タムを傷つけようとする敵」という観点が最優先。まさに息子のためなら鬼にもなるごとくの鬼気迫る迫力。それに対峙するのは百戦錬磨の泉見トゥイでしたから、もう、もの凄いことに。とにかくお互い一歩も引けない2人の対決が、本当にこの2人、従姉妹で一度は結婚を約束した仲なのか疑いたくなるほどに壮絶。

勝利を確信していた泉見トゥイが勝ち誇る中、揺るぎもしない笹本キムが歌い出すメロディーに細かく揺れていく。
その曲は、自分とキムの間で歌われたことがない(正式な結婚式を挙げていない)ことはトゥイが一番よく知っているわけで、つまりキムには自分以外に男がいるのだと・・・。

トゥイのその地位も、キムを手に入れるために欲した立場だったようにも見えて、「今までの自分は何だったのか」を必死に反芻し、立て直そうとしているように見えたりしました。

そういえば、この日は最前ということもあって色々なものが見えました。

ジョンがキムを舐めるように見回して、クリスに「金やるから手に入れちゃえよ」みたいに言ってるところとか。エンジニアに「上手くやれよ」って言われてジジが嬉しそうにエンジニアを見つめるところとか。

2階席から見下ろす「アメリカン・ドリーム」の札束を模したライトアップも綺麗ですが、前で見るとやっぱり違うなぁと思うのでした。

・・・

この日は、笹本キム、上野クリス、上原ジョンが千秋楽。駒田さん司会のもと、お3方からご挨拶。

上原ジョン「(小声で)ご観劇いただきありがとうございます(客席から「声が小さい!」のかけ声が上がり、客席&舞台に笑い)(少し声を上げて)話すことは既に考えてきてあったのですが、今日舞台に立っておりまして気が変わりました。アメリカ軍の基地で(壁を隔てて)去っていくアメリカ兵、置いて行かれるベトナムの人たち、その姿を見た時に、確かに僕たちがやっているのは舞台でありエンターテインメントであり娯楽ではありますけれども、歴史として起こったことを伝えるということを、僕たちはやっていかなければならないということを胸に刻みました。これから地方公演に参ります。地方公演ももしよろしければ拝見いただければ幸いです。ありがとうございました」

駒田エンジ「もっと声を張ってお願いしますね(笑)」

上野クリス「無事、帝劇千秋楽を迎えることができました。それも、ずっと支えてくださったスタッフの皆さま、そしてカンパニーの皆さま、そして劇場に足をお運びいただきましたお客さまのお陰と感謝しております。日々新鮮な思いで、無心で舞台に立つことだけを心に留めておりました。地方公演も、変わらず丁寧に演じていきたいと思います。ありがとうございました」

笹本キム「私は2004年からこのキム役を演じさせていただいて、その時は10代最後の夏をこの帝劇で過ごしました。そしてそれから10年、今年2014年は20代最後の夏をこの帝劇で過ごしました。(客席笑い)・・・え、何で笑うの(笑)・・・10年間続けてこられたのは正に『奇跡』だと思っています。これから地方公演に参ります。この作品のメッセージを丁寧にお届けできるよう、誠心誠意キムを務めます。皆さま、最後まで応援よろしくお願いいたします」

・・・玲奈ちゃんのキムは、勝手なこちらの思い込みで来期までやるかなと思っていたけれど、どうもこのメッセージを聞くと、本人としては今回で一区切りになることを念頭に置いている気がする。今回、2012年と違って連日満員にはなっていないので、次の公演が決まっている状態じゃないとすると、本来のオリンピックイヤーに戻るなら次は6年後(2020年)。そうなると昆ちゃんはやるだろうけど(29歳)、玲奈ちゃんでさえ35歳(今の知念ちゃんより2つ上)となると、もしかするともしかするのかなと思ったり。なんか切ない思いを感じつつ、でもこの日の玲奈キムの凄さだけは、いつまでも忘れない、と思えた帝劇楽になったことが、何より嬉しかったのでした。

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