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2014年7月

『ミス・サイゴン』(16)

2014.7.27(Sun.) 17:00~19:45
帝国劇場2階I列40番台(上手側)

本公演2回目の観劇は、初の昆キム。

この日は元々マチソワのつもりでしたが、体力的な面を考えてマチネはお嫁に出してソワレのみに。
結果からすると色々な意味でそれが良かったような気がします。

昆キムは予想したとおり、2004年の玲奈キムにかなり似ています。
「17歳で全く分からぬまま都会に出てきて」戸惑う様をナチュラルに出すのは、舞台経験を積めば積むほど難しくなってくるようで、そのフレッシュさとの出会いは一期一会のようなところがあるのでしょうね。

「夢があるのよ、果てない夢が」と歌われていますが、恋も愛も夢も、キムの持っていたものがいったいどのようなものだったのか、推し量りにくいのが若いキムの特徴であり、”売り”なのかなと思います。

ただ、当時の玲奈キムとはっきり違うのは、何しろ昆ちゃんは小さいので、岡ジョンが昆キムを振り回している様は・・・本当に飛んでいきそうで、さすがに心配になりまくります。
ただ、この日はクリスが若い上野さんだったのでバランスは良かったです。”お互いに初めての相手”といった風が自然に出ていて。

ドリームランドでジョンがエンジニアに対して、「あのクリス、クレイジー」と言っています(今回から)。
何がクレイジーなのかと思えば、恐らくは「(女の子取っ替えひっかえのジョンにしてみれば、)女の子に見向きもしないクリスはクレイジー以外の何物でもない」のかと(苦笑)。

クリスがキムとの子供の存在をすぐ信じたのは、それこそクリスにとってキムが「Only One」だったからのだろうなと・・・

それに比べてジョンはといえば「ブイドイ」で『生まれながらに背負う罪はない』と、語りかけているわけですが、裏を返せば自身が『生きてきて罪を犯した』からこそブイドイ活動に関わっていると・・・。

相手がキムと特定されているクリスが苦しんで、相手が特定されていない(か、特定されているように描かれていない)ジョンが苦しんでいるように見えない、という図式は何だか不思議な気がします。ジョンにしてみればキムに情が移っているのでしょうが、クリスに大上段から説教できる身なのかどうかが、ちょっと疑問です(苦笑)。

今回版で唯一はっきりいいなと思うのは、クリスとエレンの間で、タムについての結論が出た上で、ジョンが入ってくるところ。2人で結論を出していない間にずかずかと入ってくるのは、いくら親友といえどデリカシーがないと思っていたので、「2人にしようか?(席を外そうか?)」とジョンが言うところ含めて好き。

ここでキムが声を重ねますが、今回版からキムの出位置が下手端の舞台袖からになって、これも好きです。

幸いというか、今回は舞台が妙に暗いので、ここから出てくるとキムの足が一部見えなくなったりして、なんだかそれが『タムを引き取ってくれることが、私の現世でのただ一つの心残りを消してくれる』ことを暗示しているような気がして。あの時点で”覚悟”を感じさせて、それが胸に迫ります。闇の中にキムが吸い込まれていくような、そしてそれをキムが選んでいるように見えるんですよね。

・・・

昆キムは既に見た方から「恋も愛も知らないように見える」と言われ(爆)そこまではさすがに思わなかったですが、特にこの日のトゥイが神田君だったためか、中学生の恋愛のような初々しさを感じました。つまるところ、

中学生の恋愛→昆キム
高校生の恋愛→玲奈キム
(大学生の恋愛→新妻キム)
社会人の恋愛→知念キム

といった違いは感じずにはいられませんでした(爆)

・・・

この日の市村エンジニアは、正直25日の初日と変わった様子は見せず、いつもの通りエンジニアを生きておられましたが、終演後、今期はこの日を最後にお休みされることを発表されました。

本編ではお休みされることを微塵も見せず演じきられたことが、市村さんらしいなと。
プレビューも明け、初日も明け、一区切りついた休演日前の発表。
出来うる最大の配慮をされてお休みに入られる市村さんが、快復されますことを心から祈念しております。

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『ミス・サイゴン』(15)

2014.7.25(Fri.) 18:00~21:10
帝国劇場 2階I列50番台(上手側)

最新演出版『ミス・サイゴン』この日が初日です。

プレビューは7月21日から始まっていますが、あえてプレビュー期間の初見は避けてこの日が初見。
最新演出版への変更点は断片的に聞こえては来ていましたが、自分で感じた初感を大事にしたくて。

サイゴンは2004年から見続けていますが、自分にとってのキムと言えば、去年2013年までキムを演じていた新妻聖子さんの役というイメージが強く、この日初日となった笹本玲奈さんはどちらかといえばエポの印象の方が強くて。が、この日の笹本キムを見て、新妻キムとは違う新しいキムを、確かに確立したことに感動して。

新妻キムは旧演出型というか、エネルギッシュ&パワフルで、どのクリスに対しても引っ張る印象がありました。それに対して、笹本キムは元来の「共演者との呼吸で芝居を作っていく」方向性が、上手いこと新演出版ならびに新演出版スタッフと合ったような印象。新演出版になってより魅力が増したキムといった感があります。

・・・

1幕は随所に歌詞変更が見られますが、舞台そのものの展開に大きな変更はない印象。実際、女性キャストの衣装が生々しくなっていたりとかに「リアル」という名の暴走みたいなところも感じられはしますが、物語を大きく変えるほどのインパクトは感じず、ちょっと意外。もっと変わっているかと思っていたので。ただ全体的に音は小さい(帝劇向けのマイク音量にできていない印象)のと、舞台が暗いので、目を凝らさないと見えないところが多かったりします。

2幕に入って一番大きく印象が違うのがエレンの立ち位置。「キムとエレン」で2人が対峙した後のエレンは、驚くほどにキムに対して同情的で、「クリスのためには自分が身を引くのが正しいのかもしれない」とまで思っている。驚くほどに自己犠牲的で、今まであった「キムに対して負けたくない」という思いが一切感じられず。とはいえ、クリスが帰ってきてみるとクリスに「なんで言ってくれなかったの!」ってぶち切れているあたり、立ち位置が一環していないような気もしますが。

キムと対峙して、冷静に落ち着こうとしてはみたけれど、クリスの顔を見たら「今まで言ってくれなかった」ことに対する責める気持ちが先行して、結果、クリスが逆ギレして(爆)、「ごめん、いいすぎた」とエレンが反省する・・・感じでしょうか。

エレンの役どころって、いかにしてキムのエゴ的な側面を浮かび上がらせるところにあるように思うのですが、旧演出版だと「正妻であることを武器に、上から畳みかける」面があったのが、新演出版・最新演出版では「大人の人間性で、自分の存在感を目上に見せる」ように変わってきている感じがします。

今回、歌詞変更が多すぎて、全部を覚えていられなかったのですが、内容的に強く印象に残ったのが、「キムとエレン」でキムが歌う(というか叫ぶ)シーン。

 旧新演出版 もしあなたが「本当『の』妻」というのなら

 最新演出版 もしあなたが「本当『に』妻」というのなら

たった一語の助詞の違いなのに、自分には凄く響きました。

旧新演出版の「本当の妻」という表現には、キムにとって「自分はクリスの妻である」という前提が強く感じ取れます。クリスの本当の妻の座は私のものであるから、あなた(エレン)がクリスの本当の妻であるというのなら、クリスはそのことを私に直接言うべきであると。

最新演出版の「本当に妻」という表現には、キムにとって「自分はクリスの妻である」という自信が揺らいでいる様子が感じられて。自分は3年にもわたって放っておかれ、目の前には自ら「クリスの妻」を名乗る女性が実際にいる。あなた(エレン)が本当にクリスの妻だというのであれば、自分がクリスの妻であることを貫き通すのは難しいのかもしれない。クリスのためを思うなら、この女性と結ばれた方がいいのかもしれない、と。

期せずしてここでエレンが「クリスを思うならキムに(自分の)座を譲るべき」と思っている感情と、キムが「クリスを思うならエレンに(自分の)座を譲るべき」と思っている感情がリンクしていて、でもその両方の思いに応えない、応えようとしない、応えなきゃならないと思っていない・・・からこそ、クリスが常にこの作品の客席から指弾される存在なのだろうなと思います(苦笑)。

・・・

今回、笹本キムを見ていて思ったのは「自信のない『キム』像」だったのですね。

エレンに対して確かに言うべきことは言っているとしても、エレンに対して圧倒的に優位に立てるほどの自信はない。そもそもキムはドリームランドで新入りとして入って以来、自信いっぱいに生きているわけでもなんでもなく、ミス・サイゴンコンテストで落選したとき、他の女の子と違ってそれを全身で悔しがるような少女でもない。クリスと結婚してドリームランドを出ていく時に、いささか手荒い見送りをしている他の女の子に比べれば、明らかに勝ち組だけれども、「自分が勝った」と思うことなど露ほども思わない少女なわけで。

それゆえに、自分のクリスに対する愛情がどれほどのものなのか、それも「自分が3年間放っておかれた」ことで、かねてからの自分への自信のなさが顔を出して、エレンに対してただしがみつくしかなかったのかなと思えて。

観る側の思い込みとして、「キムは強い少女であって、自分の意思のもとに息子を守りきった」というものがあって、その後半は確かに今でも変わってはいないと思うのですが、「息子のためなら強くなれる、実はもともとは自信のない少女」というこの日の笹本キムの存在感は、”新しいキム”を思わせる存在感だったように思います。

・・・

新演出版で気になったのは、「アメリカン・ドリーム」。
なんというか、ごつごつとしたセットに、がやがやしすぎたダンス。

正直、この作品における「アメリカ」って、エンジニアが憧れるほどのものとして描くつもりはないわけで、むしろ「アメリカ」や「(アメリカを目指す)エンジニア」の滑稽さを嘲笑うような面が否定できないように思いますが、それにしても。

エンジニアは「アメリカ」を目指したけれども、手に入れられなかった。
キムは自らの犠牲のもととはいえ、最愛の息子の未来だけは手に入れてあげられた。

自信いっぱいだったエンジニアと、自信がまったくなかったキム。
それでいて、手に入れたのはキムだけというのも、興味深いものがあります。

・・・

この日は特別カーテンコール。
手を繋いだプリンシパルのみなさん。
挨拶しようと一歩前に出た市村さん。
・・・が、それに付いてこうとする玲奈さま。
手を放さなかったんですね。

隣の岡さんが慌てて止めて、「何やってんの」という感じで突っ込んで、玲奈さま苦笑い、優ちゃん笑い、いけやんさん笑い、という面白いことが起こっておりました。

さすが玲奈さま、期待を裏切りません(笑)

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『その後のふたり』

2014.7.19(Sat.) 17:00~18:25
東京グローブ座 D列20番台

『シルバースプーンに映る月』以来1年ぶりの東京グローブ座。
どの駅からも微妙に遠いこの劇場、この日は高田馬場駅から歩きました。

D列ということで、てっきり4列目と思っていたのですが、この作品ではA列~C列は舞台がせり出したことによって消滅しており、なんと最前列でした(笑)。

・・・

物語は「昔の恋人」の「その後」を振り返るストーリー。
男女ふたりとも映画制作に携わっていて、お互いが「別れた後の自分から見た相手を語る」という、かなり突拍子もない物語。

この作品自体は実は3つあって、「小説」(原作本が販売されていました)と「映画」と「舞台」という3つの分野でそれぞれ多少なりともの差異をもって展開されています。

この日、舞台を見てから小説を読みましたが、舞台で印象的だったシーンと小説で印象的だったシーンが違ったりして興味深かったです。小説で印象的だったところが、そもそも舞台では完全になくなっていたりもしましたし。

キャスト替わりの男女ふたりの朗読劇、といえば有名なのはPARCO劇場の「ラブ・レターズ」ですが、あの作品が演じるキャストによって大きくメッセージの伝わり方が違うのと同じく、恐らくこの作品も回替わりキャストの朗読劇ということで、似たような化学反応が起きるのだろうと推察しながら、この日、初観劇。

ネタバレはなるべく避けますが、真っさらで見られたい方はここから回れ右でーーーー。




純哉役は青木玄徳さん。自分的には『仮面ライダー凱武』のプロフェッサー凌馬役が印象に強すぎて、女性になびかない印象がついてしまっているという(苦笑)。最近はストーリーが動いちゃいましたが、ちょっと前までは隣に佃井皆美嬢演じる湊耀子様がおられたじゃないですかー(←守備範囲を広くしすぎて自滅している自分)

七海役は大塚千弘さん。朗読劇としては「ラブ・レターズ」以来2作品目。「ラブ・レターズ」の時は相手役の男性の方が声優さんということで、どことなく自信なさげなメリッサになっていましたが、それに比べるとやっぱり、千弘ちゃんは場数踏んだんだなー、と思う奔放ぶり。
前のめりに突っ走る感じと、ふとした瞬間に不安になる気持ちとの行き来が印象的。

この2人の間には大きな疵が横たわっていて、それ故に2人は繋がっていないようで繋がっている(注:詳細はネタバレになりますので略します)。強気で押す七海だけれど、「2人が別れた」事実が前提にあるからか、時として急速に不安に駆られ、七海らしくなく反省の弁を述べたりして純哉に心配されてみたり。

この「らしくなく」の役作りの前提の強気系キャラがそれは、もうちーちゃんにどんぴしゃりで。
というか、役説明に「お酒飲む」とか「男っぽい」とかいう説明コメントが入ってくる時点で、あぁぁこれ、ちーちゃんのキャラだと(笑)。

2人のペアの関係性は新鮮だったけれども、予想以上に実年齢2歳の差(しかも女性が年上)って大きかったかな。物語上2人が「同い年」ということが大きな意味を持つので、年上の七海が年下の純哉を引っ張るシーンが強く印象に残って、純哉がある意味「一矢報いる」(別に喧嘩しているわけではありませんがw)シーンの印象が薄かったのは、ちょっと残念。

七海がドキュメンタリーを作ることを通して「この後のふたり」を展開しようとしていて、「それは違う」と答える純哉のくだりが小説ではとても印象的。あの七海でも「間違う」んだなということと、だからこそ七海には純哉が必要だったんだなと、納得させる空気が、舞台上でもう少し深められても良かったのかなと。

ずっと押しの一手だった七海がここでふと我に返る、その表情は良かったな。

・・・って書いてみて調べたら、今回の5組のキャストで年齢差が一番ないのがこの、青木さん&大塚さんなんですね(1年半しか離れていない)。この日のマチネの風間トオルさんと白石美帆さんに至っては干支一回り以上違うんですもんね・・・

今回は男性が年上なのが2組(風間&白石ペア、加藤&八坂ペア)、女性が年上なのが3組(青木&大塚ペア、川畑&香寿ペア、松下&安倍ペア)なので、その2パターンで印象が違うのかもしれません。
このストーリーで男性が年上だとどうなるのか、興味が湧きます。

・・・・

それにしてもこの作品の最大のサプライズ、びっくりしました。

その話を聞いて思い出したのは「P.A(プライベートアクトレス)」の第1巻。

「個人的な女優(P.A)」の依頼内容、それは「自分の父親を騙したい」という男性。
その男性の父親は、実は自分の父親でもあって、あちらは本家。こちらは隠し子。
隠し子の自分(女性)と、本家の息子(男性)が付き合えば、「私はあいつに復讐することができる」と呟いた女性主人公。
うぁぁ。

・・・・


この物語は「その後(別れた後)のふたり」を2人がそれぞれ会話(舞台版はビデオレターの交換。小説版は対面しての会話)しますが、「その後」を語り合うことで「付き合った時のふたり」の気づかなかった部分に触れる物語でもあるんですよね。

なんの気なしに続いていた2人の「その時」、2人がともにする機会を失って初めて分かった、「相手に支えられていた部分」の大きさ。

付き合って良かったことも別れて良かったこともある、それを「別れてからしばらく経って振り返る」というのは確かに”普通じゃない”体験なわけで、だからこそ「この後のふたり」がどうなるのかに結論を出さずに、受け手(客席)に任せる感じはなんだかとっても爽やかでした。

2人の中では結論が出ているのかもしれませんが、それをみなまで言わないのが良さなんでしょうね。

キャスト替わりで印象が変わりそうなこの作品。色々な方で見てみたいですね。
ご贔屓さんがらみだと、由美子さんと泉見さんとか、玲奈ちゃんといっくんとか、いかがでしょう。

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『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(3)

2014.7.13(Sun.) 13:00~16:20
シアタークリエ 2列目10番台(センターブロック)

前回、最後列で見ておいてこの日は2列目。

前回は音響の話をとっても執拗に書きましたが(苦笑)、2列目で聞いたら、全く持ってしっくりきていた(笑)。
音の調整をかなり前方でやったってことみたいですね。

この公演唯一の前方席ということもあり、個人的には見分けが付かなかったアンサンブルさんもかなり視認。
平田愛咲ちゃんはいっとう小さいから後ろからでも分かるけれど、見た目が似てるいいめぐさん(飯野めぐみさん)と天野朋子さんは前方でようやく判明。

歌の上では愛咲ちゃんといいめぐさんがリードボーカル的なポジション(実際にもボーカルリーダーはいいめぐさん)ですが、他のアンサンブルさんもそれぞれ担当パートがあってお得感あり(終演後の全員挨拶でいいめぐさんも触れられていました。)。

この日は東京楽とあって、前楽以上にみなさんやりたい放題すぎ(笑)

いつもやりたい放題のひのさんは、恐ろしいほど笑いを持っていっていましたが、舞台上でじたばた暴れている様を、今井さん演じるハンラティが、机で肘付いて落ち着くのを待ってるのも笑えました(^^)。

総合病院で夜勤担当の医師の時に血を見て、客席に向かって○○○するフランク。
今日は何と客席から紙袋が差し出されて大笑い。どうみても差し入れっぽい袋でしたが(^^)。

松岡さん、上手いこと1席に偏らずにシーン毎に場所を変えてますよね。さすが。場所的には1列目センターブロックの上手側(舞台向かって右側)の数席が対象になっています。

自宅にフランクを呼んでのホームパーティー、机の上にあるオードブルのターキーを持ち上げてるあたり、さすがは聖子さんなブレンダ(^^)。

この日、ブレンダの両親に認めてもらったシーンで、フランクがブレンダをくるくる回すシーンはいつもより多く、ほぼ3回転回ってました。そりゃもう軽々と(^^)

それにしても、この日の聖子ブレンダの「Fly,Fly Away」は本当に凄かったです。
多分、今までの聖子さんならこの曲を前にして、歌い上げの誘惑に抗うことはできなかったと思います。
が、この日の聖子ブレンダは明らかに違っていて、まさに役としての叫びそのものでした。

優しさだけしか見えずに育ってきた若い頃。
自らの過ちから、今まで見えていなかった両親の冷たい部分に触れて。
自分に自信が持てなくなって、人生に醒めていた自分。
そんな自分の本当の姿を見つけてくれた彼。
名前がある人たちはみんな横暴で、
名前がない彼の方がずっと純粋。
だから自分にとって本当に必要な彼を、守りたい。
大切な人を守れる強さを持ちたい。
あなたは逃げて。

・・・という思いが、歌詞の一つ一つから伝わってきて。

思えば、聖子さんを初めて見たのは2003年7月6日の『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役。
”歌が上手い人だな”という第一印象はあったものの、それ以上の感想を持つことはなくて。

その後、「ミス・サイゴン」のキム役、「マリー・アントワネット」のマルグリット役を見て、魂と歌が結びついたときの爆発力に魅せられたからこそ、今となっては全作品見るようになったのだと思う。

このブレンダという役は、役柄的には間違いなくWキャストのもうお一方、菊地美香ちゃんの個性がど真ん中で、聖子さんの持ちキャラとしては明確に違うのですが、それでもWキャストに意味があったと思えたのは、前日に美香ちゃんのブレンダを見ていたから。

ナースのところとかホームパーティーのシーンは想像通りの美香ちゃんでしたが、正直このソロを美香ちゃんがここまで歌えているとは思っていなくて。あぁこれは聖子さんがいてこその美香ブレンダなんだろうなと。美香ちゃんはああ見えて負けず嫌いなところがある女性だし、目の前にはっきりとした道が見えたときに、怯むよりは向かっていく人だし。

逆に、美香ブレンダの存在感のピュアさは聖子ブレンダにも伝染していて、初日とかに比べれば、はるかにブレンダぽかった。
表情に美香ちゃんとの似た雰囲気を感じるようになったのは初日にはなかった現象だし(ほおづえついているいたずらっぽい表情とか美香ちゃんそっくり)、聖子さんが演じるときにありがちな刺々しさがすっかり薄れていた感じも良かったです。どこかで見た表情かと思ったら、『シルバースプーンに映る月』の美珠希役がこんな感じでしたね。

・・・

松岡さん演じるフランクとのデュエット、「Seven Wonders」の時の雰囲気が凄く好きで。
「私は世界を知らないちっぽけな存在」と思い込んでいるブレンダに、「世界なんて大したことない。君の魅力の前では世界の有名なものなんてこの程度なんだよ」とフランクのユーモアで語りかける歌。フランクがブレンダのことを本当に大切にしているんだなぁということを感じるこの曲が大好きで。

この日松岡さんは随分と色んなところで仕掛けていたけど、この曲だけは何もしていなかったのが嬉しかったな。聖子さんいわく、この曲でネタをぶちこもうと思ったらしいのですが(後述)、いやぁこの曲で仕掛けるのは相当難しいですわ。1幕の間(出ていませんが)そんなことを考えても、このシーンではストーリーに没入していた感じの、この日のブレンダでした。

・・・

この日の東京楽カーテンコールは、なんと「アンサンブル含む全員ご挨拶」。
前日東京楽を迎えた菊地美香ちゃんを聖子さんが呼び込んでの全員集合。Wブレンダが揃うと、インパクト大です。
ちなみに、捌けていくときにふと見たら、身長同じぐらいと思っていた美香ちゃんと聖子さんでは、やっぱり聖子さんがちょいと大きかった(^^)

こういう場合、普通は舞台端から行きますが、何と座長に近い側からということで、一番手は今井さん。

松岡さん「今井さん、どうぞ」
今井さん「おれ?」
聖子さん「順番、紙に書いてあったじゃないですか(笑)」
今井さん「そうなの?俺見てないかも(あわあわ)」
松岡さん「今井さんは凄いんですよ。あのダンスシーンって実は元々今井さんは踊る予定じゃなかったんですが、ご自身が立候補されて『踊ります』って」
今井さん「(テレながら)東京公演で4kg痩せました(拍手)。リバウンドしないように頑張ります。その話したらはるパパが『「ドンブレダイエット本」出せばいいじゃん』って」(この曲が『Don't Break the rules』なので略して「ドンブレ」)
はるパパ「言ったね」
今井さん「そうしたら戸井ちゃんが『丼ダイエット本』出せば?って言い出して(笑)。丼ダイエットって何だよと(爆笑)」

松岡さん「それでは聖子さん、どうぞ」
聖子さん「どうでしたか」
松岡さん「いや、それを俺に聞かれても」
聖子さん「そうそう、松岡さん、
  芝居中いろいろぶっこむの止めてくださいよ!(笑)」
松岡さん「ブロードウェイミュージカルだから本当は変えちゃいけないんですよ。というかぶっこんでないですよ」
聖子さん「えぇーーーーー?(笑)
     仕返ししようと思って『Seven Wonders』で
     『清水寺』とかぶっこもうと思ったんですが(爆笑)」
松岡さん「『飛び込む勇気♪』
   ↑速効返してて聖子さんはじめ一同びっくり

聖子さん「じゃぁ大阪は『通天閣』で」
松岡さん「『日立の持ち物♪』
   ↑速効返してて聖子さんはじめ一同びっくりリプライズ

聖子さん「じゃぁ名古屋大阪では任せました(と、隣の美香ちゃんの肩を叩く)」
美香ちゃん「了解です(笑)」

・・・松岡さんの頭の回転に脱帽です。聖子さんの頭の回転にまさかこれだけの瞬発力でついていかれるとは、流石です。
さて名古屋大阪どうなるか(笑)

松岡さん「それでは彩吹さん」
彩吹さん「今回お話をいただいた時に、松岡さんのお母さんの役
     ・・・え・・・って止まりまして(笑)」
松岡さん「ですよね。私より年下・・・、いやいや女性の年齢の話は」
彩吹さん「○歳年下なんですよ」(←思いっきりバラしていたw)
    「いい母親とは到底言えなかったと思いますけど、この役で生きられて幸せでした」

松岡さん「それでは戸井さん」
戸井さん「元々は私は彼女(ブレンダを指して)の父親役だったので、今井さんのできることが自分はできることはないだろうと思っていて、今までで一番稽古に入るのが不安でした。でも松岡くんが僕を父親として接してくれてとても嬉しかったです」

松岡さん「それでは治田さん」
治田さん「この作品ではカーテンコールで一言挨拶を持ち回りでしているんですが、私の時に『四カ国語挨拶』をやって・・・好評だったんですが(笑)、facebookで『私は見ていない』というクレーム(笑)がありましたので、今日またやりたいと思います(拍手)」
菊地さん「クレーム言ったの私です(笑)」
(聖子ブレンダの回だったらしい)

はるパパの四カ国語は英語、フランス語、スペイン語、韓国語ですかね?凄かったです。
(ちなみにはるパパはフランス語学科卒だそうです。)

アンサンブルさんもみなさん一言挨拶されていましたが、代表してお2方。
まずはダンスキャプテン/ボーカルキャプテンの飯野めぐみさん。

飯野さん「この作品はアンサンブルみんなにそれぞれ台詞も歌もあり、こういうミュージカルでそういうことって珍しいんです。とても良い経験をさせていただき感謝しています。」

アンサンブルのトリを務めるのは下手端、平田愛咲さん。

平田さん「3役(CA、野球選手、看護婦)でフランクに迫ったのですが90回振られました(笑)(30回公演×3回)。名古屋大阪では振り向かせたいです(笑)」

締めは座長の松岡さんから。
「名古屋・大阪と『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』をしっかりやっていきたいですし、ぜひまた東京にこの作品で戻ってきたい。皆さまのお力であちら方面の会社(クリエ客席から見ると上手側。東宝株式会社本社です)にお声を届けてください(笑)。ありがとうございました」

で幕。

前日は重く感じた物語進行も、千秋楽ということで良い具合に緩んで、ちょうど良い具合になっていました。
音響のストレスもなく、この形でこの作品との出会いに一区切り付けられたのは嬉しかったです。
劇場的には大阪・シアタードラマシティ、名古屋・愛知県芸術劇場のサイズの方が良い気がします。

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『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2)

2014.7.12(Sat.) 18:00~21:00 
シアタークリエ 21列10番台後半(中央)

12日ソワレは菊地美香ブレンダの東京楽。

どうにかWブレンダの違いを見たくて、平日を外して日程調整したら、ここに連続で入れるしかなくなったという。

お2方を見てみると、特に2幕前半はやっぱりこの役は美香ちゃんだよなぁと思うことしきり。
居住まいからして、美香ちゃんはブレンダがそこにいる!だけれども、聖子さんに関しては”ブレンダを演じてる”にどうしてもなってしまうのが、致し方ないところ。
まぁ、美香ちゃんも何気に中身は強者ぽいイメージを最近感じはしますが(爆)、「自分に自信が持てない」ということを聖子さんが表現しようとすると、やっぱり色々とハードルが高いと申しますか・・・(苦笑)。

ただそれもあってか、印象的だったのが、フランクに嘘を付かれていたことが発覚したときの印象が、見る前と違って。

美香ブレンダはなんだか納得していたように見えたんです。
私なんかがフランクみたいな人に選ばれるはずがない。少しだけでもいい夢見せてくれてありがとう。あなたに幸せが訪れますように」みたいな感じの「Fly,Fly Away」に聞こえたし、その後、医師と結婚したことにさほどの違和感を感じなかったんです。

それに対して聖子ブレンダは嘘を付かれていたことを引きずっていて、「なぜ私を選んでくれなかったの。私は捨てられてしまった。私は私の足で歩いて行かなくちゃ」みたいな感じの「Fly,Fly Away」に聞こえたんですね(どことなく「GOLD」のエンディングじみている)。
自我の目覚めであった分、あそこまで強い歌になったのかと。結果、医師との結婚も、自分の意思によるものというか。

美香ブレンダは両親の籠の中で人生を再び歩み出したように見えたけど、聖子ブレンダは両親の籠から抜け出して人生を歩み出したように見えた。2人の印象の大きな違いってここにあるような気がする。

美香ブレンダが「自分に自信が持てない」ことを引きずっていったように見えたのに比べると、聖子ブレンダは「自分に自信が持てない」こと自体が”仮の姿”であったかのように、その殻を脱ぎ捨てたように思えて。

ブレンダのパパがブレンダに対して投げつけた言葉、『だからお前はダメなんだ!』は、ブレンダにとって凄く心の傷となったと思うし、ブレンダも「本当の家族を持てなかった少女」という意味でフランクと通じ合ったのも、分かる気がしたわけで。

それに対するブレンダの対応は、美香ブレンダと聖子ブレンダでは正反対に思えて。美香ブレンダは親に従い、聖子ブレンダは親離れしたように思えて。

2人それぞれのブレンダを見られたことはとても興味深かったです。

それに聖子ブレンダも、人を純粋に信じやすいところとか、役と役者さんで被りますし。
こういう役は『スペリング・ビー』のオリーブ役でもやっていたので、単純に5年前後前なら普通にあり得た役だったでしょうね。

・・・

歌の満足度ということで言えばやはり聖子さんの「Fly,Fly Away」は圧巻だったし、ただ、それを逆の面から捉えると、この作品、曲や歌の面では残念な面が多いように思うのです。その分、ブレンダソロが目立つと。

この作品の音が必要以上に大きくて、クリエ向きじゃない演奏だったように感じられて、その分、歌詞が演奏に負けるケースが多々あって。

歌詞も文字数多いから聞き取るのが大変だし、同じクリエの荻田さん演出の『トゥモロー・モーニング』と比べると、遥かにじりじりするシーンが多いんですね。

何というか、痒いところに手が届かないというか、あと一押しで開放感が得られるのに、みたいな終わり方をする曲が異様に多い。なんだかすっきりしないんです、色々と。

元々が爽快感あふれるすっきりした作品、ではないでしょうが(何しろ詐欺師の物語ですから)、「詐欺師の生まれた理由」にのめり込みすぎたんじゃないかなと。フランクを追いかけるハンラティはフランクの境遇に同情してる有様だし、フランクの父に至っては「止めたい」という息子に対して、自分の夢を継がせようとするかのように、「止めることを止めさせる」よう説得するし。

「詐欺師は悪いことをした人だけど、詐欺師になるにはそれなりの理由があった」ということをエクスキューズしたかったのかとも思うのですが、なんか妙に回りくどく弁解がましいというか。

お隣、帝国劇場で先日までやってた『シスターアクト』が見た人みんな「楽しかった!」と言ってるのを聞いているし実感したから、なんでこちらが、ここまでもやもやしたのか分からなかったんですが。
エンターテイメント色が薄くなって、ちょっと理屈っぽくなりすぎたんじゃないかと思います。

・・・

東京前楽、美香ちゃんのご挨拶。

美香ちゃん「本日はご観劇いただきありがとうございました。この作品に出演するお話しを聞いたのはとある作品の千秋楽でした。マネージャーさんに暗い部屋に連れて行かれて、なぜか正座させられて(笑)。「実は『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』という作品の話が来ているんだけど、ブレンダという役で、Wキャストのもう一人が新妻聖子さんなんだけど」と言われて「聖子ちゃんと同じ役がやれるなんて!」って驚くやら、緊張するやらで」

ここで座長、割って入ります。

松岡さん「その話いつも聞くけど、俺(との共演)はどうでもいいの?(会場内爆笑)」

最強の突っ込みを前に、普通の方なら怯むはずのところ、なぜか美香ちゃんはほとんど微動だにしません(笑)

美香ちゃん「そんなことないですよ!いつも優しく、毎回新鮮に見つめていただいて感謝しています。それに座長はいつもみんなに気を配っていただいて、本当差し入れとか凄いんですから(会場内爆笑、舞台上まで爆笑)。ラーメン屋さんとか呼んでいただいて(*)凄い座長です(会場内爆笑、舞台上まで爆笑)」

・・・美香ちゃん、その返し出来る人なかなかいないよ(笑)。さすがアメーバスタジオであの聖子さんのフォローをしていただけのことはある・・・

ちなみにラーメン屋さん入った日、マチネが美香ブレンダ(通称「ミレンダ」)、ソワレが聖子ブレンダ(通称「セレンダ」)だったそうですが、「差し入れがあるのでいつもより早く聖子ちゃんが楽屋入り」だったそうです(大笑)→そーす

美香ちゃん「私のことを捉えて放さない照明さん(会場内笑)、私の声をきっちり掴んでいただく音響さん、いつもこの可愛い衣装を着せてくれる衣装さん。この衣装、実は後ろのファスナーが上げられなくて一人じゃ着られないんですよ。私一人じゃ衣装も着られない私を、スタッフさん、キャストのみなさんにブレンダにしていただきました。本当にありがとうございました(拍手)。明日の東京千秋楽は新妻聖子ちゃんが務めます。この後の地方公演、名古屋・大阪でまた出発地を変えてこの作品で頑張りたいと思います。本日はありがとうございました!」

・・・「捉えて放さない」の後に「照明さん」が来るとは思ってなかったので、客席全体が意表突かれて大爆笑。
ブレンダ役の必要条件は変わり者であることですか・・・(をい)。

あと、

座長「菊地美香の「地」はつちへんです

が何気にライトな美香ちゃんファンな自分のツボでした(blogのタイトルにしているぐらいだから、多分本人が一番気にしていることだろうに、そこに触れてあげる座長が優しい)。

・・・

「Catch Me If You Can」というタイトル、普通に考えれば「Me」はフランクであり、「You」はハンラティなわけですが、もう一面、「Me」はブレンダで、「You」はフランクでもあるんですよね。

フランクがハンラティに対して「俺を掴まえられるもんなら掴まえてみろ」という面と、
ブレンダがフランクに対して「私(の気持ち)を掴まえ続けられるなら掴まえてみて」という面の両方があるんじゃないかって。

フランクはブレンダに対して「嘘」をついているけれど、嘘ゆえにブレンダの気持ちはフランクから離れていくわけじゃない。その証拠に、嘘が発覚した1週間以内に両親振り切ってマイアミ国際空港まで行ってる。嘘を許せなかったらマイアミまで行くはずないし、嘘を許しているなら仮出所まで待ってていておかしくないし。

あれだけお互いを思い合った相手なのに、ブレンダの気持ちをフランクは掴まえ続けることができなかった。その理由がフランクが「嘘を付いていた」からではない。とするとあっさりと次の人のところへ行ったブレンダの性格設定が、いまいち脚本的に破綻している気がするんですけどね。

単純に「待っている時間が恋する気持ちを醒めさせた」なら、なんとまぁ味も素っ気もない話であることやら(爆)。

ぎりぎり理解しようとするなら「フランクが嘘を付いていたことが信じられなくて、確かめるためにマイアミに行った。そして彼が嘘を付いていたことが確定したので一気に気持ちが醒めた」なんでしょうが、それならかまちゃんことFBI刑事にあそこまで引きはがされるごとく連れて行かれるとかないだろうと・・・

「見た目だけで人は騙せる」とうそぶいていたフランクが、ブレンダに対して受け入れてもらおうとしても、今までの自分の「嘘」の積み重ねがそれを許さなかったということなんでしょうけれども。

この作品のテーマって、その辺りだったんだろうなと思うけど、なんか絞り切れていなかったような気がします。

さて今日は東京楽。久しぶりのセレンダ(聖子ちゃんブレンダ 命名by美香ちゃん)、楽しみです。

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『シスターアクト』

2014.7.7(Mon.) 18:00~20:55
帝国劇場 2階H列40番台(センターブロック)

なんと今年初の帝劇です。

『レディ・ベス』は日程が上手く合わせられずに帝劇楽を迎え、『シスターアクト』も同じ状態になりそうでしたが、ひょんなことから日程の調整がつき、行ってきました。

土日に北海道へ家の用事で行くことになり、月曜日はゆっくりしたくて。午前休でもよかったのですが、一日休みを取れば『シスターアクト』の前楽が見られる!と。我ながら上手い采配でした。

・・・

(内容にネタバレあります。地方公演待ちの方は回れ右で~)

・・・

評判通り楽しい作品。ひとまず何も考えずに音楽に身を委ねられる作品。

シアタークリエでやっている『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』も同じような作品ですが、両作品とも歌詞が聞き取りにくいことで共通している割に、『シスターアクト』は聞き取れなくても意味が通じる感じがします。フォーメーションがとても綺麗で、1幕ラストの逆V字型は、どことなくレミの行進を思い出します。

帝劇作品って、広さを持て余すことが多い印象がありますが、この作品はこれだけの登場人物がいても、狭すぎるとか広すぎるとか感じることがなくて、ちょうどぴったり。山田和也さん、帝劇は不得手な印象がありましたが(狭いところは得意)、帝劇向きの作品に上手く再構成されていた気がしました。サイズ的にも内容的にも、『ザッツ・ミュージカル』的なミュージカル初心者向けな作品になっていて、堅苦しくもなく、それでいて奔放すぎてもいなくて。

修道院長の鳳蘭さんが、自由奔放な隠れ修道女・デロリス(この回はモリクミさん)に振り回される様が良いバランスで、オハラ神父役の村井国夫さんがデロリスの自由さを楽しんでいるところがこれまた、コメディモードの村井さん(笑)。

ミュージカル界3大汗っかきな石井カズさんの役は、もはやあてがきなのではと思うほど。悪役やらせたら、その怖さとなぜだか道化師ぶりが絶妙に同居する大澄賢也さんもさすがの一言。男性陣はそれぞれのキャストなりに自由に動いてはいるけれども、登場人物の多さからして主導権を握るのはやはり女性たち。

修道院に居続けた修道女たちが、聖歌隊にデロリスが加入してからというもの、どんどん生き生きとしてくる様は見ていてわくわくするし、その中でもとりわけデロリスに心酔していたのが、修道女見習いのロバート。演じていたのはラフルアー宮澤エマちゃん。既に見に行かれた方が声を揃えて言っていたのが、「楽しい作品だよ!」という言葉に次に来る、「エマちゃん凄く良いよ」の言葉で・・・

この『シスターアクト』を見に行くことにした最後の決め手が「エマちゃん見ておきたい」(先週の彼女のラジオレギュラーで、新妻聖子さんが絶賛していて、かつ、聖子さんの良さをぐんぐん引き出していた進行上手ぶりが、頭良い人なんだろうなと思って)だったりしました。

※ちなみにエマちゃん曰く
「聖子さん演じる役も、私が演じる役も、どちらもシャイな役ですけれど、私たち二人ともそういう感じじゃない
というコメントを聖子さんに言えるのが、まず凄いなと(笑)

それにしても、期待以上の伸び盛り振りで見られて良かったな。物語的に一番感動したのは、デロリスが修道院を出なきゃ行けなくなったときに託されたブーツを、エマちゃん演じるロバートが履いて踊っていたところ。修道院長に面と向かってはっきり自分を主張したのも魅力的。役柄的にお得な役(若手の中では一つ飛び出た準プリンシパル級)という点はあったものの、若さからしてこれから引っ張りだこになるでしょうね。

修道女の皆さんの活躍は何というか、1回では判読できないというか、各場面では分かるところもあるのですが、2階でオペラグラスといったりきたりのせいもありますが、なかなか付いていけず。
とはいえ、年がいった役がお2人いらして、片方が春風さんだから、もう片方はすどかなさんだなーというのは一発で分かる(笑)。

すどかなさんの方が年上のおばあちゃんに見えて、その腰の曲がり方がどんどん切れが良く(言葉おかしいw)なっていくのが面白いです。デフォルメしやすいキャラクターだったんでしょうね。

この作品を拝見していて、ただ盛り上がるところだけにスポットライトが当たりがちではあるけれど、シスター1人1人がどんどん生き生きとしてくる様が頼もしくて。

『シスターアクト』って、『Sister Active』ということでもあるのかなと。

エマちゃん演じるロバートが、「修道女として生きていくことに自信がない」と言っているのは、デロリスが来る前のシスター1人1人の、心理的な拘束感というか、息苦しさを横で感じていたからなのだろうなと。

自分から変えられないけど、デロリスという一種”不純物”が入ったことで、変えられるチャンスは逃したくないという気持ち。それがみんなに伝わっていったからこその一体感。
デロリスにとっても、皆の一員になるべく聖書を枕元に置いていたといういじらしさ。
そんなあれやこれやの「突き抜けきれない人たちの、突き抜けたパワーが爆発する時」の爽快感。

客席も、盛り上がりたがっているし、爽快感を味わいたがっているんですよね。
誰が言ったか「閉塞感を打ち破るために芝居を見に来る」という気持ち。
それを「大劇場のミュージカル」として打破することに、このお芝居の存在価値はあるのだと思わされる、素敵な一体感に包まれた帝劇前楽でした。

この日帝劇前楽(ご自身は帝劇楽)でご挨拶されたモリクミさんが、舞台上の台詞に掛けて「私がこの作品でここにいるのは、理由があってのことだと思います」の言葉は、ここまでのモリクミさんの辿ってきた道と重ねるときっととっても深い意味を持つと思うし。
ミュージカル初心者も含めて「劇場に新しい人を呼んでくる」というミッションにこれほどまでにぴったりな作品はないと思います。集客的には苦戦していて気の毒なほどでしたけども、この盛り上がりが次に繋がることを祈念しています。

言い古されたことですが、今回の公演で2点だけ。

作品名はやっぱり『天使にラブソングを』にしておいて欲しかった。集客が大きく違うはず。

平日開演18時。これは正直きついです。子役もいないのに21時終演。
それでもそれを守らなければならない故の逆算なら、余分なシーンを切り取れば18時15分は可能なはず(とはいえ、そんなに余分なシーン感じませんでしたが)。

次の再演の時には、ぜひ再考していただきたいものです。

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