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『ラブ・ネバー・ダイ』(3)

2014.4.27(Sun.) 13:30~16:00
日生劇場 2階K列10番台

この作品も観劇3回目。この日が大楽です。満員御礼の看板の出る中、劇場を入ると、早速フォロワーさんに声をかけられたわけですが、予想通りお隣の席でした。発売初日に奇跡的に残っていた2階最後列の最後の2席。

1回目・2回目とファントムは市村さんで、この日が鹿賀さんの初ファントム。前日マチネで色々あったらしいことは耳にしていたので、かなり心配していたのですが、この日は抑え気味ながらなんとか1曲目で調子を掴まれたようで、ほっと一安心。
役柄的には、LNDのファントムは自信満々な市村さんよりは、脆さを持った危うい鹿賀さんの方が合っている気がしますので、この日見られて良かったです。

楽を迎えましたので、ネタバレ抜きで参ります。

●「あの子」の指すもの
物語としては前回かなり書いた気もしますが、この日初めて感じた感情について。

1幕最後、グスタフがファントムとクリスティーヌの息子であることを聞いたマダム・ジリーが鬼気迫る様で叫ぶ、

「『あの子』さえいなければーーー!」

当然、この物語上、「あの子」はグスタフに他なりません。グスタフさえいなければ、自分たち母娘にも、わずかな望みはあったと。

でもこの日の香寿マダムのこの台詞を聞いて浮かんだ感情が、自分でもびっくりする感情で。

「あの子」が何と「メグ」にだぶったんです。

「メグさえいなければ、自分はもっと早く手を引いていたかもしれない。もっと早く諦められていたかもしれない。そして、愛する娘をこんなことに巻き込まずに済んだかもしれない・・・」

母として、娘への愛情は人並み以上にある(であろう)マダム。でも、自分の手段のためには娘を娘としてではなく、ステージ上の、そして時にはステージ外での場に見せ物として差し出さざるを得ない。それはメグが(クリスティーヌさえいなければ)、ステージに立てる素質を持ってはいたから。

メグが狂ったとき、マダムは自分の罪を誰よりも感じたんだと思います。
香寿さんのマダムは「私のメグ・・・」という呟きが本当の後悔として聞こえて。
鳳さんのマダムはそれよりかなり割り切っているというか、ステージママに徹している感じがしたのに対して、香寿マダムは自分の「母としての感情」を必死で押しとどめて、娘をステージに出していたように見えて。
ある意味若くて、あらゆる意味で幼くて、だからこそマダムが壊れることに説得力を感じました。

●無意識という名の怖さ
メグとクリスティーヌは親友。

それだけに「メグは(親友の)クリスティーヌの息子であるグスタフを傷つけはしない」と、マダムは言っているわけですが、誰もが思うその思い込みを覆すことが、この物語唯一と言っていい鍵。

ただ、玲奈メグに関して言えば、クリスティーヌを撃ち殺すことは、明確な殺意をもって行ってはいなくて、(この日のカーテンコールでいみじくも平原さんが触れておられましたが)「事故」である側面が強い。

ファントムが口走った「クリスティーヌ」という言葉に条件反射のように出た銃弾、それは事故。

とはいえ、あそこまで狂ったメグといえ、引き金を弾くにはそれなりの後押しがいるはず。

そこでふと思い出したのは、1幕ほぼ最後。
いなくなったグスタフをクリスティーヌと一緒に地下まで探しに来たメグ。
そこにいたのはファントム。

いつも自分を見て欲しいと願った相手が目の前にいる。
メグにはファントムしか見えない。
目がハートになっているメグ。
それなのに・・・クリスティーヌは、「グスタフを連れて帰って」とメグにお願いをしてくる。
呆然とするメグ。だけど親友の頼みは断れないのがメグ。そのままグスタフを連れて帰ることになる。

ここ、二重の意味でメグの行動を定義しているように思えて。

「結局、私はファントムの一番になれない」ことをここで薄々感づいていたからこそ、マダムに衝撃の事実を知らされたときに呆然自失となる。

もう一点は、ここでグスタフのお守り役としての立場をメグは手に入れている。グスタフとメグはここで知り合っているから、メグがグスタフを連れ出すことが可能になっているんです。

メグにとってクリスティーヌは確かに親友だったけれど、クリスティーヌにとってメグは、グスタフを預ける、ある意味家政婦のような立場だったのかもしれない・・・とメグの深層心理は思い込む・・・「クリスティーヌがメグを信用して預けた」ことは頭から抜け落ちて、そう思っても不思議はないのかなと。

ファントムに「クリスティーヌ」という言葉を聞かされて、少なくともメグの深層心理は「親友」とは思っていなかった。だからこそ無意識に拳銃の引き金を弾いた。・・・クリスティーヌは自分がメグをどれだけ傷つけたかわかったからこそ、メグに対して怨みの気持ちも上げずに命を引き取った・・・と思うと、やるせないながらも、まだ救われる気がします。

●カーテンコール
この日のカーテンコールはメインキャストからのご挨拶。一部要約でお届けします(多少の語句の相違はご容赦ください)。

◇笹本玲奈さん(メグ・ジリー役)
メグ役を演じました笹本です。ミュージカルの諸先輩方、そして今回は歌手の(平原)綾香ちゃんともご一緒して、とても刺激的な時間でした。
『殺人者』という役でしたが(客席・舞台上ざわめく)・・・

(綾香さん→)「故意じゃないから(大丈夫)。事故だから」

(そのフォローにホッと微笑んで)とはいえ『殺人者』であることは間違いなくて(苦笑)、でも、女優としてはとてもやりがいのある役で嬉しかったです。ありがとうございました。

◇香寿たつきさん(マダム・ジリー役)
マダムを演じました香寿たつきです。私は役を演じるとき自分を植物に喩えるんですが、舞台上の色々なエネルギーを受け取って光合成するイメージで(笑)、今回の舞台は今まで(出演した作品で)一番自分が光合成できたように思います(笑)。これからも沢山の役・作品で演じていきたいと思います。ありがとうございました。

◇加藤清史郎くん(グスタフ役)
グスタフを演じました加藤清史郎です。グスタフの歌は本当に難しくて大変でした。でも楽しかったです。ありがとうございました。(←いつもより妙に短いw)

◇田代万里生さん(ラウル役)
ラウルを演じました田代万里生です。毎日飲み、毎日負け、ダブルキャストの(橘)慶太君と一緒に「ラウルって・・・」と慰め合う日々がようやく終わろうとしています(客席笑)。素晴らしいカンパニーの皆さま、素晴らしい作品、そして毎日満員御礼という、いままで体験したことのない客席の皆さまからの熱さを感じ、幸せでした。ありがとうございました。

◇平原綾香さん(クリスティーヌ役)
クリスティーヌを演じました平原綾香です。最初にこの役を私にというお話しをいただいたときに、Hプロさんって凄いなぁと思ったのですが(苦笑)。演技も台詞も発したことのなかった私が、この役・この作品を通して素晴らしい共演者の皆さまとご一緒できたからこそ、演技も台詞も、このクリスティーヌ役として発することができたのだと思います。キャストの皆さま、本当にありがとうございました。

ミュージカルをやるからには「骨をうずめるつもりでやります」とご挨拶して稽古に入りましたが、(昨日の)前打ち上げで「そろそろ骨を掘り起こそうかと思って」と言ったら皆から白い目で見られました(客席笑)が・・・。ありがとうございました。

◇鹿賀丈史さん(ファントム役)
ファントムを演じました鹿賀丈史です。今回の公演では開幕して2・3日して喉を痛めてしまい、それ以来舞台と病院を行き来する生活が続いておりました。お客さまの前でお聞かせする声ではない状態の中、盟友の市村正親くんが「俺が代わってやるよ」と言ってくれ、5公演代演していただくこととなりました。劇場に来てくださるお客さまへ、キャストが代わるということは大変に申し訳ない思いで、この場をお借りしてお詫びします。今後の公演ではこのようなことがないよう務めます。ありがとうございました。

・・・色々な意味で、とっても感じることが多かった公演。
個人的に多忙な時期と重なり、チケットも完売状態で、下手に増やすことにならずに助かりました(苦笑)。
3公演、自分的にはちょうどいい按配だったように思います。

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