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『ラブ・ネバー・ダイ』(2)

2014.4.22(Tue.) 13:30~15:55
日生劇場 1階F列30番台(上手側)

LNDのメインの大人キャストは5役×各2人。
そうなると組合せは単純計算で2の5乗、32通りになります。
LND64公演(貸切を除く)でいえば平均すれば2公演ずつあるはずの組合せ。
なのにかかわらず。

ファントム市村さん、クリスティーヌめぐさん、ラウル万里生くん、メグ玲奈ちゃん、マダムたーたんのこの日の組合せは、64公演中、この回のただ1回だけ

主な理由はクリスティーヌとメグがほぼ固定なためで、玲奈ちゃんが「あーやは私だけのもの」と言うだけあって(笑)、あーや(平原綾香さん)は玲奈ちゃん(26公演全部)、反面、めぐさんは彩吹さん(32公演)メインで、玲奈ちゃんとは6公演。
その6公演のうち、上記キャストになるのは平日マチネのこの1回だけ。

それもあってか周囲では早くから注目されていた回で、売れ行きが良いLNDの中でもいっとう早くなくなっていた回でした。

盛大にネタバレ行きますので、ご注意くださいませ!



そんな期待の中で始まったこの回ですが、1幕からして芝居的に飛ばしまくる。

1幕特に光っていたのがクリスティーヌの濱田めぐみさん。気持ち的に不安定な立ち姿に、この後起こる危機をあらかじめ映し出しているかのようで。初回見た時は、この役が平原綾香さんだったこともあってか、現状に納得しているような感じを受けたのですが、それに対して、はまめぐさん、ラウルとの今の生活にどことなく上の空のような面を感じて。

ファントムに騙され追い詰められて歌うというよりは、ファントムの誘いをきっかけに、いわば自ら歌うことを選択したように思えました。

そんなクリスティーヌだけに、ラウルは前回と同じ万里生君なのに、随分と違って見えました。
クリスティーヌの気持ちを掴まえられない自分へのふがいない気持ち、通じ合っていないのではと心配する気持ち、どれもが強く伝わってきて。

前回見たとき、実は「一番悪いのはラウルじゃないか」と思ってしまっていたんですが、今回見たら「一番悪いのは(ファントムとラウルの気持ちを自分の好きな部分で使い分ける)クリスティーヌじゃないか」と思えてしまって、それが自分は一番意外でした。

そう思ってみるとファントムも前回と同じ市村さんなのに、これまた違っていました。平原さんのクリスティーヌには市村ファントムは支配しきったような感じだったのに、めぐさんのクリスティーヌに対しては支配しようとしても支配しきれない焦りみたいなものを感じて。喩えるなら、ファントムから見ると、平原クリスティーヌは「籠の中の鳥を解き放つ」のに対して、めぐクリスティーヌは「籠の中に鳥を押し込める」みたいな。

めぐクリスティーヌは孤高の人というか、誰もが感情を見通せないような空気を醸し出していて。
ファントムもラウルも、クリスティーヌを手に入れてはいない、ということに思えて。

そう思ってくると、コニーアイランドで出会っためぐクリスティーヌと玲奈メグは、(客席からの既成イメージがあるとしても)「昔からの親友」の空気が全く嘘に思えなくて。めぐクリスティーヌにとって本当に心が通じ合えていたのは、玲奈メグだけだったのかもしれない・・・というのはあながち作り話でもない気がします。玲奈メグのくしゃくしゃっとした心からの笑顔、上手側特典でしっかり見られました。メグはあの笑顔がなくちゃ。

再会を祝しての乾杯に居合わせるたーたんマダム、玲奈メグ、めぐクリスティーヌ、万里生ラウル。局地的に屋根ヴァだったり(たーたん姉・玲奈妹)、WIWだったり(玲奈ちゃん・万里生君)、ジキハイだったり(めぐさん・玲奈ちゃん)、色んな作品が混じり合って頭が混乱しまくります(笑)。が、ここで一人、メグが「Happy Endを!」と叫んでみんなが無言になるあたり、見ていて胸が痛くなります。

この日の組合せで印象的だったシーンはいくつもありますが、まずは夜明けの酒場シーン。

ラウルが酒に溺れまくっているところで朝のプールから上がったメグがやってきて会話を交わすシーン。
音楽はすっかりWIW(本当にそっくりw)

ここで凄いコントラストだと思ったのが、メグは「過去を消したい」んですよね。
愛するあの人のために全てを投げ出してきたけれど、親友の登場がその努力を全て無にしようとしている。
その恐怖から逃れられないメグ。汚れを洗い流すためにプールに入る。それでないとやっていけない。

対してラウルは、今の自分に全く自信がない。「栄光の過去にすがりたい」自分。

メグとラウルが全くお互いに興味がないことがこのシーンの最大必要条件ですが(笑)、過去に対する考え方が180度違う二人、あぁこれは結ばれるわけないわと安心しました(爆)。

翻ってメグにとっては「水」は自分の汚れを流れ落としてくれる存在だったのだろうなと思うのですが、それだけにグスタフを連れ出し、水へ引きずり込もうとするメグは・・・もはや表情に正気というものが存在していませんでしたが、まさにあれこそが手が付けられない狂気というもので・・・

もはや自分が何をしようとしているかさえわからないメグ。グスタフの必死の叫びも、ファントムの言葉もメグの心を通り過ぎていく。「クリスティーヌ」という言葉に条件反射するまでは・・・

この日の自分の席は上手側。ここ、通路でメグが立ち止まる正面。そこにいるのは玲奈ちゃんではなく、まさしくメグ。
夢遊病のように、どう生きているかさえ分からないほどの表情。

ファントムのために全てを投げ打ってきた、その思いを吐露したときの、下手側のマダムの「私のメグ・・・」という呟きは、自らの過ちに今になって気づいた、マダムの悲痛な慟哭。
愛していた娘を利用し追い詰めてしまったことへの後悔。ファントムのために全てを尽くしたのに、マダムもメグも全てを失おうとしている。マダムにとっては娘としてのメグも失おうとしている後悔・・・。

登場人物誰もが幸せになれない瞬間。
それでいて誰もが正義や綺麗事をふりかざせない瞬間。
誰もが少しずつ以上罪を持ち、メグの行為を止めさせる術を持たない。
あの場では一番汚れたはずのメグが、一番綺麗な心でいた気がして。

ここで印象的だったのはメグに思い直させようと説得を続けるファントムの言葉。
メグの「綺麗な部分」にしか言及していないんです。
メグはさっきまで「自分は汚れてしまった」と叫んでいたのに、そこからは目を背けて、「君が綺麗な部分だけ見せてくれれば、僕は君を見ていられる」と言っていたように感じて。

メグは一瞬はファントムの心に揺らいだように思えたけれども、今まで見てもくれなかったあの人に振り向いてはもらえたけれども、所詮汚れた自分の綺麗な部分しか受け入れてもらえない。そして過去が消えないことは自分がよく分かっている。

そしてその綺麗な部分さえ、クリスティーヌに比べたらその価値はないという・・・

無意識に取り去られた拳銃の安全装置。その時起きた出来事でようやくメグは我に返るけれども、また「過去は消えない」ことを思い知らされるだけで、叫ぶことしかできなくて・・・

メグも、マダムも、ファントムも、これでは魂が救われることがなかったのだろうと思わざるを得ないラストだけれども、特にメグとファントムに感じたことだけれども「綺麗なことだけ見ようとした」ことが破滅の始まりだったのかなと思えて。
汚れたこと、汚れたものはそれだけで忌み嫌う存在であり、それ故自分の過去を肯定的に受け入れられない・・・

そんな共通点を感じたのが、この日の意外な感想でもありました。
見終わったら、何が起こったのかわからないぐらい放心していたなぁ。

・・・

この日は平日マチネというのに、何と5回のカーテンコール。うちラスト2回はスタンディング。
充実した本編への、劇場中の紛れもない心からの拍手。そのうねりの中で舞台上の皆さまが本当に素晴らしい表情をされていて、この日見られたことが本当に良かったです。

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