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『ザ・ビューティフル・ゲーム』(1)

2014.2.5(Wed.) 18:00~21:30
新国立劇場小劇場 バルコニー席RB列20番台(上手側)

先週金曜日に幕を明けた作品。先週末は玲奈コンで銀河だったので、1週間遅れでの観劇です。

作品の舞台は北アイルランドのベルファースト。この街はIRA(北アイルランド独立過激派)の活動が激しい街。
この地の高校のサッカーチームとその彼女たちがこの作品の主人公。
優勝をつかんだその夜、仲間が過激派に殺害され、そして皆はちりぢりになっていく・・・という物語。

チーム1の実力を持ち、アイルランド代表もこの手に収めんとするジョンを演じるのは馬場徹さん。「ジャンヌ」の青鬚さんこと、ジル・ド・レエ役で拝見して今回が2度目。サッカーボールの球さばきが一人だけ異次元の上手さなんですが、もともと小学生までクラブチームに所属してた方なんですね(お兄さんはプロのサッカー選手)。

そのジョンの彼女が大塚千弘さん演じるメアリー。
勝ち気で聡明な理屈やさん、ってイメージぴったり。
イメージカラーがグリーンでとっても性格をわかりやすく色で示しています。

女性メイン3人ではグリーンがメアリーですが、ピンクがクリスティーン(フランク莉奈ちゃん)、イエローがベルナデット(野田久美子さん)で、それぞれ「信念の人」「享楽の人」「慈愛の人」というイメージ。それぞれ3人ともがとてもキャラクターが合っていて、見ていて救われます。

ネタバレ開始ですご注意ください





というのもこの作品、何しろIRAとの紛争に巻き込まれる若者達、というテーマで、しかも仲間だった皆がそれぞれの考えでそれぞれの立場に分離してしまうわけなので、一幕中盤から一幕最後と、二幕中盤から二幕最終直前まで、見ていてまぁ鬱になること鬱になること。

とはいえ、2幕後半の最大の緊迫シーン、ジョンとトーマス(中河内雅貴さん)がバーで対峙するシーンは、びりびりした空気が凄くて「かつては仲間、今は敵」の緊迫感を肌で感じられて印象深かったです。

この作品に出てくるメンバーは、サッカーチームのコーチにして牧師であるダニエル神父(吉原光夫さん。当たり役です)以外はみんな「若者」で、それゆえ紛争という大きなうねりの中で、自我が揺らされ続ける小さな存在。

印象的だったのは、その中でもジョンとメアリーは、「他の人と違う」ことがはっきり見えて。

確かに登場した頃のメアリーは他のチームメイトから煙たがられるほどの正義漢の固まりだったけど、全編通してみれば、皆のように極端に振れることなく、自分の考えを持ち、感情を持ち、愛情を持ち、仲間に寄り添い、言うべき事は言うけど、黙るべき時は黙る、とても大人な女性。

この作品を見終わったときに過去見た2つの作品と似た感情を持ったのですが、そのうち1つが『この森で、天使はバスを降りた』。その作品のヒロイン・パーシーも千弘ちゃんだったからというのもありますが、「ストーリーは刺々しいけど曲は暖かい」という点が共通している印象。その上、パーシーは自分がやさぐれて周囲に癒されるのに比べると、メアリーは周囲がやさぐれて自分が癒すみたいな逆論に見えたりして。

音楽がアンドリュー・ロイド=ウェバーなので、私的にはどうしても「ウーマン・イン・ホワイト」のような雄大さを先入観で持っていたせいもあるのか、曲としてはどことなく細かすぎるというか、タイトルチューン以外は小さくまとまっている印象。ただ、難しい曲なのは確かで、特に千弘ちゃん、よくあの難しい曲を普通に聞こえるように歌えるなぁと・・・

ジョンはメアリーとの結婚初夜にトーマスから懇願されて逃亡を助け、その事実が発覚したことで捕らえられて。

その場に面会にやってきたメアリーは身重の身体。塀越しにメアリーとジョンは言い争います。
「戦火の中に生まれてくる子供が幸せになれるものか」
と叫ぶジョン。
「この子こそが私たちの希望なのよ」と諭すメアリー。

これを見た時に、あぁこれは『ミス・サイゴン』でもあるのだなぁと。
メアリーはキムそのものに思えたし、この作品でのジョンはサイゴンのクリスに印象が被って。

引き裂かれ方は違うわけですが・・・
個人的な印象ですが、実のところ。サイゴンのクリスって、言われているほど無責任な男性だとは思っていなくて。(ちなみにクリスという役はミュージカル界の3大悪人と言われることがあるのだそうで)
むしろ責任感が強いからこそ病んだんじゃないかという思いがあったから。

このジョンはその後幾年かして共和国軍の兵士に転向することで娑婆に出ることを許されます。
それを知ったメアリーに対して、ジョンは別れを告げますが、メアリーはただ一つの贈り物を贈った。
ジョンがふたたび”ジョン”として生きられることを、そして自分の元に”ジョン”として戻ってきてくれることを願って。

メアリーにとって、一時的な別れで済まないかもしれない。
でも、メアリーにとってジョンと出会えることは絶対に信じていたことだったんだと思う。それを信じられる強さがメアリーにあって、そして千弘ちゃんのメアリーはそれをとても自然に生きていて。

ただ叫ぶだけでも、ただ嘆くだけでも、ただ俯くだけでもない女性。

そんな女性を全身で表現された千弘さんにただただ驚嘆。

作品タイトルの「ザ・ビューティフル・ゲーム」は、サッカーのいわば”フェアプレイのゲーム”の意味なわけですが、「ビューティフル・ゲーム」を作った仲間達、彼らは「戦いの美学」とやらの紛争に巻き込まれていくわけで・・・ただそこにあるのは意味のない終わりのない戦いであるわけで・・・

「ビューティフル・ゲーム」で始まった彼らが悪夢を乗り越えられたとき、”乗り越えられた心の強さ”ひっくるめて「ビューティフル・ゲーム」だったのかな、と思わされました。

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