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『売らいでか!』

2014.1.24(Fri.) 15:30~18:25
シアター1010(北千住) 1階4列20番台(上手側)

時間帯的には完全にマチネの時間ですが、この日2回目の公演ということでソワレとも言えます(ソワレはフランス語で「夕方・日の暮れた後」の意味ですが、この時間は冬とはいえまだ陽が落ちる気配さえないですけどw)。

東京公演わずか2日間3公演で、はせ参じることが可能なのはこの回だけ。
青山郁代ちゃんが出演ということで行ってまいりました。

喜劇の名作ということでこの後の大阪・新歌舞伎座公演中に通算500回を迎える予定のこの作品。
浜木綿子さんの当たり役ということを知識では知っていましたが、郁代ちゃんが出演しないなら見なかったであろう作品(笑)。

この時間ですので、メインの客層はいわゆるシニア層の皆さま。
それもあってか、2幕制の1幕はテンポがそうとうにスロー。午前中に1日分の仕事を上げるためにスピードアップした自分にとっては、とっても試練です(爆)。

浜木綿子さん演じる役・なつ枝は、ダメ亭主と意地悪姑に挟まれて黙々と内職をする女性ですが、亭主のとある事情を知って激上し、亭主と姑を売り飛ばすという物語。

全般的に言って女性がとっても強いです。舞台が三重の伊賀上野、終戦後11年ですから昭和31年、それなのにここまで「女性の自立」をメインに描いているのってすごい。(まぁ実際のところ、原作はもっと格調高くて舞台になったら似ても似つかぬ喜劇になったそうなのですが)

その反面、男性はそうとうにだらしない。でもだらしないのが可愛い

変に威張り腐っていれば女性からは相手にされない、散々抜けていてもチャーミングならしっかりした女性でさえ(むしろしっかりした女性ですら)放っておかない。これ、実際に今のシニアのコミュニティってこんな感じなんだそうですね。会社員時代に偉くなった人ほど、その態度のまま接するから孤立しがちなんだとか(苦笑)。

この舞台のチャーミング筆頭が左とん平さんですね。氏は今はなき新宿コマ劇場の「星屑の街」で拝見して以来ですが、まぁなんというか、アバウトさがこれほどまでにチャーミングな方もそうそういない。セリフが抜けようがぐだぐだになろうが、それも含めて味になる。結構みなさん自由にやらかしちゃってるわけですが、それも含めて舞台上で遊びまくってて、それがちゃんと絵になる。やることやってそのうえで自由に生きてるプロの方って本当に輝いてますよね。

グダグダになってもギリギリまでお互いに手を出さないのも笑っちゃいます。
そこも長い歴史に支えられた信頼感こそなんでしょうね。

そういう舞台と対する客席も、本当に舞台と客席がフラットなんですね、雰囲気が。「いつ笑っちゃいけない」とか説明なんていらなくて、「いつ笑っても大歓迎」って迎えてくれる懐の深さ。舞台上からも客席を信じてるし、客席からも舞台を信じてる。

この種の舞台をそう多くは見ていないけれど、それこそ新宿コマ劇場とか明治座とか、いわゆる喜劇に合う劇場のこういう雰囲気って実は好き。自分から積極的に見に行く機会はそんなにないけど、行くからにはやっぱりそういう場でしか得られないものを感じたくて、心が疲れた身にはとってもいい題材でした(爆)ので、東京2日間だけなのが本当に残念。

再演がすでに決まっていて、同じシアター1010で10月に4日間上演されますが、その時に郁代ちゃんは『ミス・サイゴン』とかぶってしまい、敬子役は元々演じられていた遠藤久美子さん(エンクミさん)が演じられます。

で、話は戻して、郁代ちゃんが演じた敬子役。一部の作品解説に「校長先生の娘(?)」と書いてあった時点で訳あり風がぷんぷんしますが、期待以上の面白いポジションで、メインどころ一番の若手ということで思ったより目立って嬉しい。

1幕はどうしても設定的におさえざるを得ないからか、押しが少し弱い気がして心配したけど(みなさんマイクを付けていないっぽいから舞台上のセットマイクで拾っている感じ)、2幕はイキイキとやりたいようにやってて嬉しい限り。

去年来、コゼット(レ・ミゼラブル)⇒歌手(Second Of Life)⇒敬子(売らいでか!)と拝見してきましたが、郁代ちゃんって「あれやっちゃダメ、これやっちゃダメ、こうしなきゃダメ」って言われると、途端に萎縮しちゃうタイプなのかなと。
うちのご贔屓さんだと、そういう制約の中で絶対はみ出さないように演じるのが玲奈ちゃんで、隙付いてはみ出そうとするのが由美子さんと聖子さん(笑)。

そういう制約がなくて自由にやっちゃっていいよと言われると、郁代ちゃんはさすがは大阪人ということもあるのか、血がたぎってるのがよく分かる(笑)。ちなみに「自由にやって」って言われると、由美子さんと聖子さんタイプはどうしていいかわからなくなる傾向があるみたいですが(爆)

今回の敬子役に郁代ちゃんを配役して、それプラス「自由にやっていいよ」って言ってくれたのって、両方ともすごいと思うのが、きっとそれが彼女の一番の活かし方…ってことをわかっているってことなんですよね。

長く続いてきた作品は、きっとそういうものも全部暖かく見守る力があるのだろうし、選んだからには一番いいものを見せてくれると、周囲が信じてる。そんな場に選ばれて、それでいてベテランさんがこれだけ集まった場に、上手いこと嵌る様がとっても自然。なんか、郁代ちゃんが懇親会の席でナチュラルに席も温まる暇もないまま、お酒を注いで回ってる姿が、その場にいなくても想像がつく(笑)

…1幕のスローさとは打って変って2幕はびっくりするぐらいハイテンポ。それでいてただ笑わせるだけじゃなくて、なつ枝だけを持ち上げるわけでもなく、亭主・姑を責めつづけるわけでもなく、それのキーになるのは娘さんなんですよね。子役(Wキャスト)のエネルギーたるや。いくら大人が打算で動こうと、子供のピュアさは大人の軌道を元に戻す力があるんだなと思うと、なるほどこの作品がずっと続いてきている意味が分かる気がしたのでした。

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