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『シャーロック・ホームズ~アンダーソン家の秘密』

2014.1.25(Sat.) 12:30~15:20
東京芸術劇場プレイハウス 2階B列30番台後半(上手側)

先週、大阪で幕を開けたこの作品。
評判がとても良く、何とか日程を調整してこの日に観劇。とても良かったです。

推理物ですから当然ネタバレ厳禁になってしまうわけで、ちょっと開けてスタートします。
迷われている方、ぜひ観劇をお勧めします。


ネタバレ開始前に、終演後のカーテンコールで橋本さとしさんがおっしゃってたご挨拶があまりにお上手だったので書いておきます。

「『最大の凶器は愛』って書いてますけど、僕たちは『皆さんからいただいた愛を最大の武器』に頑張ります!」

さとっさん、さすがとしか。

さて、ネタバレ込みで感想スタートです。


・・・・

さて、行きます

ネタバレを完全に封印していてかつ、初見の1幕と2幕の間って一番ワクワクするんですよね。
1幕で最近のテイストとグレードが想像ついて、2幕はそれを伸ばす方向に進むのか、違う方向に進むのか、どっちに行くのか想像するだけで楽しい。1幕の出来が良ければなおさら2幕の期待感は増すわけで、この作品はまさにそういう作品。

アンダーソン家の双子の兄弟、兄のアダムが跡継ぎ(アンダーソングループ会長)で、双子の弟がエリック、この2人はいずれも浦井くんが演じています。そして叔父のボビー(同グループ副会長)は野心家…ですが、その役は野心家を演じさせればこの人の右に出る人はいない(爆)大澄賢也さん。

ホームズ役は橋本さとしさん、助手のワトソンはなんと女性!で一路真輝さん。
この2人のバランスが抜群。

推理しか頭にないホームズ、お金にしか目がないワトソン(笑)...いやもとい、ワトソンはホームズに惚れてる感じ満々でしたね。それを見せる一路さんと、全く関知しない(気にも止めない)さとしさんのバランスがとっても面白い。一路さんお茶目さんですしね。するっと躱されてしょげるところの可憐さがとっても魅力的。

そしてこのお2人、「軽妙な掛け合い」というものそのままの軽やかさ。すいっすいっと解決してしまうホームズの推理のスピード感と、同じスピードで走るワトソンの絶妙なフォローっぷり。お互い頼りすぎない信頼感がとっても心地良いです。

その重量感を感じさせない2人と対象的なのが、ヒロイン・ルーシーを間にした浦井君の2役、アダムとエリックとの関係。
重く、深く、暗く、そしてウェット。1幕終了時に「一番いい人の顔してる人が黒幕なんだろうな」と思っていてそれはエリックで、まぁそれはある意味当たってはいたのですが(その先を想像できないのが私の限界かw)ぎりぎりを生きている感じが、いつ犯罪が起きてもおかしくない空気感を漂わせ、その緊迫感たるやもの凄い。

軽やかvs湿っぽさ、でもその両者ともが自分達の立場ごとで苦しんでいる。シャーロックホームズといえば普通は軽やかに推理を解決するイメージでしかないのに、この作品のホームズは「真実を明らかにする」ことに対して苦しみもするし、そんな迷い方が実にさとしさんに合ってる。無機質を騙っても、自分の人格は裏切れない、みたいな。他者に対する人間的な優しい目線が確かにありますよね。だからこそワトソンもホームズに対して惚れてるみたいなところが見えてとっても好き。探偵物ではコナン君に同じような空気を感じたりしますね。

浦井君がらみの2人3役で印象的だったのは「ルーシー」の存在。昆ちゃんも堂々としたヒロインぶりで素敵でしたが、やっぱり浦井君にこの役名の女性が絡めば『二都物語』を感じずにはいられません。しかもエリックが選択した生き方は、ある意味あの作品でシドニー・カートンの生き方と瓜二つで。

「シドニーの取った選択を誰かが覚えていてくれたら」という井上君の言葉を、一番肌で感じただろう浦井君、彼の演じた今回の役が、まさにそのものに感じて・・・ロビーで売られていた「StarSメモリアルブック」を読みながら、そんなことを感情としてリンクしてみたり。

・・・

今回、ハードカバー上製本のパンフレット(1,800円)が凄く良くて、実に沢山の示唆に富む内容が書かれているのですが、作詞家の森雪之丞さんが語ってる「韓国と日本の曲が情感的に似ている」というのは、この作品を観たときの違和感の少なさと一番大きく関係している気がします。翻訳ミュージカルであることを思わせない進行。もちろんナイスキャスティングの賜物ではあるのでしょうが、とっても「やりやすそう」「見やすそう」な気がするんですよね。難易度は別の話としても。

そういえばナイスキャスティングといえば、自称「エコ女優」な宇野まり絵さん、『ショーシャンクの空に』に引き続いて拝見しますが、客席から見ると「一路さん(ワトソン)と昆ちゃん(ルーシー)以外の女性はみんなまり絵さん」という驚愕の事実に気づきます(笑)

男性では石井さん、竹下さんがそれぞれ4役ですが、まり絵ちゃんは何と6役。

ラクエル・ウェルチ張りのドレス姿な女優・ベラ(ちなみにラクエルより露出が高かったそうですw)と女性秘書が印象的な2強かな。いやはや、6役もやってblogもやって宣伝担当も買って出て・・・本当に何というエコ女優(笑)。

一路さんのユーモア&格好良さ、昆ちゃんの可憐さ&芯の強さ、そしてそれ以外全てを担当するまり絵嬢。「3人が持ち味を食い合わない」と言えばそういえば『ショーシャンクの空に』もそうでした。まり絵ちゃんのバランスの取り方の上手さはさすがです。

演出の板垣さんがパンフレットの前書きで触れている「ハッピーエンドの新定義」もとても納得。
色々な意味で、見られてとても良かった作品でした。

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