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『Second Of Life』(3)

2013.12.23(Mon.) 15:00~16:40
 上野ストアハウス BB列(補助最前列)中央

TipTap新作ミュージカル、この日が最終日。

結局、平日20日以外、毎日上野に通いました。
当初は3チーム(B→C→A)のみの予定が、あれよあれよとBが2回追加。全部で5回。

この作品の凄いところは、チーム毎に見える風景が違う上に、日によっても見える風景が違うことですよね。
板の上に立つ役者さんのその日の方向性で、ここまで見える風景が違うのもそうそうないかと。

本を書かれている方がよほど自信がないと、そこまで演者に任せることはできないように思うし、舞台全体に広がる信頼関係の輪があるからこそのこの作品なのだろうなと思います。

そしてラストはBチーム。AチームもCチームももっと見たかったけれど、この作品を最初に観ようと思ったきっかけはBチームの青山郁代さんだから、そこだけは崩したくはなくて。
この日のAチームは体力的に無理で、Cチームはスケジュール的に無理だったというのもありますが。

昨日既にネタバレしているので、今日もネタバレ継続です。

・・・

この作品を最初に見たときの感想は、
「人は一番好きな人の一番になりたいものだよね」
という思い。

Bチームが他のチームに比べてはっきりしているのは青山郁代さん演じた「歌手」が、「彼への未練を消せていない」という一点かなと。
明確に「彼女」を敵視していて、最後ぎりぎりまで「自分が彼にとっての一番である」ことに疑いを持っていない。

この物語を見ていると、この女性が病んでいることが、「歌手」と「彼女」の性格分離なわけで、それを「歌手」が、「彼女」を組み伏せようと何回も仕掛けているわけですが、それは要するに「自傷」行為以外の何物でもないんですよね。

自分の中の人格を傷つけることが、自分を壊していくことに対する自覚・・・Bの郁代さん演じた「歌手」の役作りには、それがかなり薄かったように思います。
前回書いたときに「歌手」と「彼女」が同一性を感じたと書いた、もう一つのチーム/Aチームの「歌手」役、岡村さやかさんの場合はそれを分かっていたからこその、優しい接し方に見えました。

どちらかと言うと、BチームがどんどんCチームに似てきた感じ。
Cチームの梨絵さん⇒亜希子さんは「他人を傷つける」印象ではありましたが。

郁代さんの「歌手」に感じたのは自分を受け入れようと戻ってきてくれない彼への「焦り」の強さ。

「やりたくないこともやって、自分たちのバンドのために歌う」後の、疲れ切った「歌手」が聞かせた歌が本当に胸に迫って。

「自分が彼にとっては必要なはずなのに」自分を実家に帰し、遠ざけて、視界に入れようとしない彼。
そして彼の心の全てを占める「彼女」への「嫉妬」。

なぜ自分が選ばれないのかずっとわからない「歌手」が、自分を選んでくれないことがわかった時の泣きそうな顔は本当に凄かった。最前列で見られたこともあって、実際泣いていたのもわかったのですが・・・

「歌手」は「彼女」を支配下に置いていたはず。
なのに、「彼女」は混乱の末に、自分の弱さも辛さも彼にぶつけ、その素直な気持ちが彼の気持ちを動かした。
それがわかったときの「歌手」の「やられた…」かのような表情。

「自分が自分に負けることなんてないと思ってた。私は彼女に勝てると思って疑わなかった」

「彼」が言う「君は素晴らしい人『だった』」
「君は僕にはもったいない人だ」
「君の夢に僕は邪魔になる」

その言葉に「違う」と言えたなら、「歌手」を「彼」も受け入れてくれたんじゃないかと、そう思えて仕方なくて。

「彼」が「彼女」を受け入れるとき、それはつまり、自分が必要とされないことをはっきりと思い知らされる瞬間。

その瞬間に、「歌手」の郁代さんは小刻みに身体を震わせていたのですね。

「彼女」によって、「歌手」の自分が「彼」にとって不要な存在となる・・・
それを一瞬一瞬ごとに表現されていて、あれはもう忘れようにも忘れられない光景になりました。

この作品では「彼女」が「自分が自分でなくなる瞬間」をずっとたどってきていますが、あの瞬間、「歌手」が「自分が自分でなくなる瞬間」に移行したことをはっきり見て、「だから自分は彼に選ばれなかったんだな」ということを、理屈じゃなく知ったのではないのかなと。

目の前にいる「彼女」が自分であることを、もっと労ってあげられたなら。
目の前にいる「彼女」をもっと愛してあげられたなら。

「歌手」の世界は変わっていたのかもしれないなって。

「君は最高だった」と過去形で言われたって、嬉しくなくてむしろ残酷。
でも「最高」だったからこそ、「彼」にとっては息苦しい「部屋」だったのかもしれないなと。

「歌手」が自分が敗れたことを悟り、「もう消してくれないかな」と言った言葉は3チームで一番自暴自棄で、捨てられた子犬のようで、すどかなさん演じた「彼女」が「あなたは私にとって必要」という言葉も全く耳に入らずに敗残者のように去ろうとする・・・

「なんでこんなことになっちゃったんだろうね」と「彼」が「歌手」に投げかける言葉。

それは「歌手」にとっても同じ気持ちだったのだろうなと。

・・・

「歌手」と「彼女」が同一人格を分け合うという点から見るとそうなのでしょうが、「彼」という視点から見るとまた違って。

彼は劇中で「都合良かったんだ、僕の歌を好きと言ってくれる君がいて」と言っていて、「君を利用したんだ」とも言っています。前者が「彼女」で後者が「歌手」。

それから考えると分裂しているのは『「彼」の感情』でもあって、「彼」が「彼女」と「歌手」を別に見たからこそ、この女性は自分に自信が持てなくなって「彼女(というリアル)」と「歌手(というファンタジー)」の部分に分離して、お互いで傷つけ合うような状態になってしまったのかなとも思えたりして。

「彼」は「やりたくないことをして時間だけがただ過ぎる」、彼にも焦りがあって。
夢と現実とのギャップ、自分の才能のなさに苦しむ自分があって。

そんな自分の迷いは「病気である『彼女』を看病する」ことでごまかせる、そんな計算が彼を「ずるい」と言わせたのかなとも思えて。

「病気だから私と一緒にいるの?」という「彼女」の問いに「彼」は正面から答えていない。
「私の声が好きだから私を選んだの?」という「歌手」の問いにも「彼」は正面から答えていない。

「彼」の弱さが【「彼女」と「歌手」】を壊し、そして恐らく実体の「彼女」も失ったときに、「彼」に残るのは後悔しかなかったのかなと思うと、「そして誰もいなくなった。」という最初のマスターの言葉が、結局胸に残ります。

・・・

物事には100%の正解などというものはなくて、結局はその時々のベストを選ぶことでしか人間は生きられない。
答えを出し続けながら生きていくしかないんだろうなと思えたことが、この作品との出会いで感じられてとても印象的でした。

そんな心揺らす作品に出会えたことにただ感謝を。

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