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『レ・ミゼラブル』(14)

2013.11.17(Sun.) 17:00~20:15
帝国劇場 2階H列1桁番台(下手側)

レミゼ凱旋公演、玲奈エポは初です。
凱旋公演は9日マチネ、14日ソワレと見てこの日が3回目。

その2日間ももちろん良かったのですが、伝わってくるものという点ではこの日の公演は凄すぎました。

2003年来レミを見てきて、多分5本の指に入る回。今年では紛れもなくマイベストでした。

振り返ってみると、テナ夫妻とアンジョ以外は凱旋公演大楽キャストなんですね。なるほどと納得。

で、この回がマイラストになる杉山アンジョ。14日ソワレで初見、この日が2回目。
一番印象的なシーンが、「恵みの雨」直後のシーン。

エポニーヌを喪ったマリウスは、半ばやけくそのようにバリケードに登り、銃を構えます。
それを見たアンジョは「マリウス!」とそれは強く強く、咎め窘めるように言います。
振り返ったマリウスに小声で「少し休め」と囁くのですね。

色んなアンジョを見てきましたが、これほどまでにマリウスのことを思っていることが伝わるアンジョはなかったですね。

旧演出ではそもそもここは「誰も寝るな」と言ったその口で「マリウス、少し休め」でしたから、「なんでマリウスだけ特別扱いなんだろう」と砦にいる他のメンバーが思わないでもない。
だからそれをずらしてマリウスの気持ちに寄り添うのはちょっと難しかった。

新演出ではその辺りがすっきりしてるし、特に玲奈エポニーヌともなれば、エポのバリケードでの存在感はマリウスだけのものではなくて。実際、ガブローシュがエポニーヌの亡骸を追っかけていこうとして止められていますしね。

「彼女が最初の死者」であるからだけでなく、ある意味、バリケードで男とともに前線に立って戦っていたエポニーヌだからこそ、みんなにとってもエポニーヌの死は特別。
そのエポニーヌの助命を神に祈ってまでいたマリウスのことを、皆がおもんばかる様は全然おかしくないし。
その空気を読んだからこその、アンジョのあの一言。

というのが、「無理に引きずり下ろしでもしない限り、マリウスはあのまま砦にいる」であろうからなんですよね。
エポニーヌを喪ったし、それ以上にコゼットを失うであろうことから、マリウスは自暴自棄の状態にあるわけで。

そういえば、砦の仲間は「あの娘は幻」とマリウスが頭に花を咲かせていた相手がエポニーヌとは・・・思っていないですよね。

ただ、それにしたところで、いつも勘違いするのですが、エポニーヌって別に革命闘士じゃないんですよね。
砦の最初の戦死者ではあるけれど、ABCカフェに集まっていた同志ではないし、ビラを見て手伝いをしている女性でもない。

好きな相手のマリウスが、自分ではなくコゼットに恋に落ち、「彼女と行くか、仲間と行くか、二つに一つ」というマリウスの決意を聞いて決断するわけですよね。

「彼女になりたいけど、なれない。それならマリウスの仲間になるしかない」

と覚悟を決めてすっとマリウスを見上げるエポニーヌからの「ワン・デイ・モア」は凄い迫力でした。

それでいて「今日も一人よ」というのは革命に身を投じてさえ、自分は一人でしかないってことでもあるのですけれども・・・

・・・

この日の育三郎マリウスと玲奈エポニーヌの組合せは、もう抜群の一言で、演技の相性が最高。

ベガーズシーンでの、”ほっぺぷにゅぷにゅ仕合いっこ”はもはや芸術の域ですし、それでいてこの日のコゼットは若井コゼット。エポニーヌが「自分が敵わない」と思うには高すぎるハードル。
そういえば若井コゼット久しぶりに拝見しましたが、お堅い感じがずいぶん薄れて、凄くいい感じ。演技的に郁代さんに似てきた気がする。パパ大好き系になってきたし。

で、自分に向けてもらえない感情を、コゼットには見せていることを、これでもかと思い知らされて悲嘆に暮れる・・・のにもかかわらず「君のおかげだよ」と言われて(変形)お姫様抱っこされるという(軽く持ち上げられていました)・・・罪深すぎるマリウス。

マリウスを庇おうとして飛び出したエポニーヌは撃たれてふらふらとバリケードを降りていきますが、それに気づいたマリウスがエポニーヌに近づくと・・・

この日は玲奈エポニーヌがちょっと撃たれ損ねたというか、撃たれてもんどり打ってバリケードに背中から叩きつけられる(ちょっとした空間があってそこに嵌り込んだ)こともあって、降りてきたときに、普段は見えないコートの中の血が見えてたんです。

マリウスが近づいて来てそれを察知したエポニーヌは、とっさにマリウスの視線を上に上げるように、顔を上に上げてマリウスと話し出したんですね。それに合わせてエポニーヌの表情に気を取られるマリウス・・・うん、この2人の演技の相性は凄いなと思いましたですよ。あそこはちょっとしてからマリウスが「髪が濡れている→血だらけに気づく」ですから、最初に顔を合わせたときに血が見えちゃうとおかしいじゃないですか。見ていてちょっとヒヤッとしたのですが、百戦錬磨の玲奈エポに、相性抜群の育マリですからね。心配した以上の凄いシーンを見られて至福。

・・・

エポニーヌの凄さもう1つ。
バルジャン邸に侵入する強盗団。危機を知らせようと屋敷へ入る隙を窺うエポニーヌ。

門の前で一歩足を踏み出したエポニーヌが、「そのタイミングはまずい」と思ったのかさっと元に戻り、その次の隙を突いて、門をかいくぐりささっと音もなく玄関に到達し、屋敷のドアをノックする・・・

いや、あの足技は凄かったです。そりゃぁ「サツも探してた」になるはずだと。

足技といえば、バルジャン邸にふたたび現れたときのこと。
当然、脇にはマリウスからコゼットへの手紙を抱えています。

バルジャンに見つかり、ドアから引っぺがされた時のエポニーヌが、それはそれは警戒しまくりなアングル。
身体一切動かさずに手だけ伸ばして手紙出してるの、初めて見ました。

確かに、あのタイミングではエポニーヌにとってはバルジャンは警戒すべき相手ですからね(というかマリウス以外に心を許していない。ガブに対しては子ども扱いしてるけど)。

そんな細部に亘るまで、ただただエポニーヌな玲奈さんを堪能。

・・・

エポ・コゼ・マリ・アンジョのバランスばかりでなく、この日は本当に舞台が熱くて。
それを引っ張ったのが吉原バルジャンと川口ジャベール。
吉原バルは本当、完成形バルジャンって感じで、暴走から苦悩から優しさから何から、もう全てがバルジャン。
そういえば、1幕の馬車のシーンで最初は持ち上がらずの2度目で、腕まくりしたところが何だかツボでした。

川口ジャベールも安定の存在感。凱旋当初は喉の調子が上がらなかったそうですが、表面上はすっかり回復。
バルジャンの好敵手としてしっかり存在していました。

ジャベールがなぜ自己崩壊したかなんですが、ジャベールにとってバルジャンは「安心して見下せる存在」なのだと思うのですね。永遠に「屑」であると。ところがバルジャンは市長になり弱い人を救い、怨みあるはずの自分でさえ命を助けてくれた。

バルジャンはジャベールの「幹」を崩そうとしてジャベールを助けたわけではないけれど、バルジャンの行為が打算的でないからこそ、ジャベールはバルジャンに負けたことを認めざるを得なかったのだろうなと。

ジャベールにとってはバルジャンを上回っている何かが欲しかったんだと思うんですね。
それがなくなってしまったからこそ、ジャベールは生きていられなくなったのかなと。

・・・

カーテンコールでは、玲奈さんと杉山さんががっしりと握手。よくよく考えたら、この日がこのペアの楽日だったのですね。
2人の晴れやかな笑顔がとても素敵でした。
久しぶりに玲奈エポニーヌのマント翻しが見られて嬉しかったです(旧演出のマント翻しは、本当に綺麗で大好きなシーンでした)。

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