« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »

2013年11月

『レ・ミゼラブル』(16)

2013.11.26(Tue.) 18:15~21:40
 帝国劇場1階G列40番台(上手側)

2013.11.27(Wed.) 13:00~17:00
 帝国劇場1階B列10番台(下手側)

レミゼ2013年公演、終わってしまいました。

大千穐楽公演カーテンコールで発表された「2015年春、帝劇公演」の狂乱に、全てが飲み込まれてしまった感もありますが、前楽・大楽とレミゼを堪能して参りました。

両日ともなぜだかセンターが前列の視界で遮られる不思議な偶然で、キャストが座り込んじゃうと見られないシーンもちらほらなのがちょっと残念でしたが、それでも「色々あった」2013年レミゼが、良い形で終わりを迎えられ、それを見届けられたことに何よりの安堵を感じています。

まずは本編編。

●エポニーヌ話
26日ソワレ(前楽)は綿引さやかエポニーヌの楽日。
27日マチネ(大楽)は笹本玲奈エポニーヌ(通算219回目)の楽日。

今期エポニーヌの推しはこの2人、玲奈エポ・綿引エポでワンツーですが、このお2方に共通するのは、佇まいというか空気が凄く似てるところ。

マリウスにほっぺたぎゅってされたところを、愛おしげにさするのもこのお2方で共通。玲奈エポはマリウス去ったあとすぐ触るのに比べて、綿引エポは橋の上で触りますが。あと、マリウスからお金をもらって投げるのも同じですね。自分の記憶では、新演出版の初期はここは投げていなかったですが・・・ちなみに、昆エポは大切そうにしまいます。綾エポはキャラ的に投げ派だったかも。

26日綿引エポと27日玲奈エポで共通していたのが、「恵みの雨」の凄さと、その後のマリウスの反応が実に似ていたんですね。

エポニーヌが命の限りマリウスに気持ちを伝えた「恵みの雨」、自分の胸の中で死んでいったエポニーヌ、それが現実だと理解出来ないマリウス。

26日優一マリウスと27日育三郎マリウスの反応まで似ていて。とにかく呆然として立ち上がれない。
砲撃が始まる直前でも身じろぎしない。エポニーヌが置いていった帽子を見つけて、優一マリウスはぎゅっと抱きしめ、育三郎マリウスはその帽子を自らの戦場であるバリケードに持って行きます。

26日優一マリウスの時はグランテールがマリウスを気遣ったのですが、さすがに酒まで勧められて我に返ってましたが(笑)。

育三郎マリウスは玲奈エポの帽子を持ってバリケードに持って行き、じゃぁその帽子はどうなったのか・・・

マリウスにとってエポニーヌは、確かに自分の胸の中で死んでいった忘れられない存在だけれど、自分が愛した存在ではない。マリウスが愛するのはあくまでコゼット。

エポニーヌの死の後、バリケードの攻防の後に、「(僕の人生は)空しい人生。僕が死んだらコゼット、泣いてくれるか」と歌っていて、マリウスの気持ちの中にはコゼットしかいない。エポニーヌは出てこない。

ここ、ずっと違和感があったのですが、育三郎マリウスが玲奈エポの帽子を持って戦いに出て、そしてバリケードから持って帰らなかったことと考えると、なんか色々な違和感が氷解したんですね。

エポニーヌは「勇気ある同志」としてバリケードに殉じたのだと。マリウスにとってはABCカフェの同志とまた別の意味の同志であって、そしてエポニーヌにとっても、「マリウスの心の中にいられる」唯一の細い道、唯一の答えであったのだろうと。

そう思うと、いつもずっと不自然に思ってきたこのシーンがすっきりしたのが、この2日間続けて見られた一番の収穫でした。

そういえば後半の玲奈エポ、マリウスに「サツも探してた」って言われて「ちぇっ」って答えてたのツボでした。エポニーヌって忘れられがちだけど盗賊団の中でも名うてのやり手ですもんね。

あと大楽のマリウス&エポニーヌは日曜日同様に、育三郎マリウス→玲奈エポニーヌのお姫様抱っこバージョン「僕は飛ぶよ虹の空へ」でしたが、なんと2回転して完全に玲奈エポニーヌを投げ飛ばした形になった育三郎マリウス。フィギュアスケートのペアじゃあるまいし(笑)。

それでもそのまま「突き刺さる彼の言葉が-」をちゃんと入れられる玲奈エポニーヌ、さすがベテラン女優(後述)。

●客席と舞台の共有感情
レミゼのナンバー『民衆の歌』には「彼ら主の国で自由に生きる」という歌詞がありますが、この舞台を見ていると、自分の気持ち次第でこれが「我ら主の国で自由に生きる」に聞こえることがあって、不思議な気持ちになります。

舞台との一体感というのか、舞台上で繰り広げられていることは「彼ら」という他人なのだけれども、客席から同化したと感じられるとき「我ら」という自分から見た舞台になって。
レミの普遍的な魅力って、誰にとってもの、感情の乗せやすさだと思うんですよね。

●グランテールの存在感
凱旋公演で特に印象に残ったのが、グランテールの存在感です。

ABCカフェでもバリケードでもグランテールはただの飲んだくれ・・・ではないことは自明の理ですが、「誰よりも先を読むことに優れ、先が見えるからこそ酒に逃げている」ことをはっきり見せるようになったのが、凱旋公演版の特徴に思えます。

というのも、アンジョルラスがバリケードに殉じるときに、後をグランテールに託している姿は、ここまではっきり記憶になくて。菊地グランも丹宗グランもそれぞれ違ったグランテール像でどちらも良かったです。

●カーテンコール
26日ソワレの楽の皆さまからのご挨拶は既に動画でupされていますが、郁代ちゃんのちょっとあっぷあっぷな感じの(笑)ご挨拶を微笑ましく拝見。うまくまとまってほっと一安心。ちょっと冷や冷やはしましたが、うちのご贔屓さんにはもっと冷や冷や女王様がいらっしゃいますから・・・(苦笑)。
お言葉通り、また見られる機会があったら嬉しいなぁ。凱旋公演は安定度抜群で、ご自身のコゼットを確立した感がありました。

綿引さんは、演技も挨拶もプリンシパルの水が合ってきた感。
そもそもアンサンブルで出られていた日曜日公演の存在感の強さに圧倒されたんですが、考えに考え抜いたご挨拶という感じで、どことなくMCについて台本を書く方を思い出してみたり・・・(笑)

27日マチネの玲奈ちゃん。
司会の駒田さんから「2003年からレミゼに出ております。ベテラン女優でございます」と紹介されて恥ずかしさに顔を覆う代わりにお辞儀して態勢立て直した様が動画で残っていない。悔しい(笑)。

「大変なことも沢山あったけど、カンパニーみんながお互いを思いやって自分がやるべきことを認識したからこそやってこれた。お客さまからの後押しでありがたいことに毎回完売という形で盛り上げていただき感謝」といったご挨拶が素敵でした。

皆さんのご挨拶を聞いていると、個性それぞれではあるものの、いくつかのパターンに分かれる気がします。
もちろん、その役の方はほぼその型に納まるとは思うのですが、他キャストも大概この3人のどこかに入る感じがします。

■バルジャン型・・・理念を追求
 思い浮かぶのは知念ファンテ。
 「人はやり直せることをバルジャンから学んだ、その学びを人生に生かしたい」といったあたり。

■ジャベール型・・・実務に忠実
 思い浮かぶのは笹本エポニーヌ。
 「カンパニーみんなのお互いを思いやる気持ち、やるべきことを認識したことこそ成功の理由」といったあたり。
 縁の下の力持ちと言う意味ではテナ妻もこの系統かと。

■マリウス型・・・理想を追求
 思い浮かぶのは郁代コゼット、若井コゼット。
 レミに関わることができたことをストレートに喜び、「まだ夢の途中、幸せは続く」時が続いていて欲しい、というあたり。

・・・・・・

27日マチネ、メインカーテンコールの後は、何と2013年凱旋公演オールキャストによるカーテンコール。
びっくりしたのが、みんな扮装姿なこと。複数キャストでこれやったの見た記憶がないです。
製作発表だって普通の服ですしね。

エポニーヌは上手側、コゼットは下手側と完全に別れたので目が忙しくて仕方がない(笑)。
3人並んだコゼット、この日登板の若井さんだけがウェディングドレス、郁代ちゃん、レイナちゃんはグリーンの衣装。
で、3人並ぶと正に3人姉妹に見えます。

それに比べてエポニーヌは、同役なのにイメージが全然違う。下手側から順に玲奈エポ、綾エポ、昆エポ、綿引エポで、視覚的には完全に逆富士山という(苦笑)。玲奈エポが一人高く(最近身長が1cm伸びてる事を確認したそうです)、ちょっと下がって綾エポと綿引エポがほぼ同身長、だいぶ下がって昆エポ。
コート付きが昆エポと綿引エポ、コートなしが玲奈エポと綾エポ。綾エポが手を玲奈エポに掛けてる様がなんか良かった。

それもあってか、エポニーヌ4人はなぜだか同級生か、そうでなくとも部活の先輩後輩ぐらいの関係に見えます。
コゼットとエポニーヌそれぞれの役の違いをはっきり見せた全員集合な気がしました。

キャスト全員での「One Day More」。スタンドマイクの本数が足りず、マリウスのマイクをアンジョパートの時にマイクを持っていく様が面白すぎました(笑)。あれは原田優一氏の遊び心だった感じですが。それと同じ話がエポニーヌのマイクをテナルディエパートの時に起きてましたが、さすがに1回でテナの皆さまから遠慮されてました。

そのぐらい本数用意してもいいのでは・・・と思いつつ、かえって面白かったとも言えました(笑)。

レミゼの作品のエネルギーあってこそのダブルカーテンコールに身を委ね、「2015年春帝劇公演決定」の発表を聞く至福。
大楽をここまで幸せな空気で迎えられ、そしてその場にいられたことにただただ感謝。駒田さんの言ではありませんが、もっと仕事も頑張らないとですね(笑)。

ご贔屓さんキャストがまた見られることを願っています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『レ・ミゼラブル』(15)

2013.11.21(Thu.) 18:15~21:30
 帝国劇場2階K列40番台(上手側)

2013.11.24(Sun.) 12:00~15:15
 帝国劇場2階C列30番台(センターブロック)

帝劇凱旋公演、当初は5回の予定で、この2回はいずれも当初予定にない追加日程。

21日ソワレは郁代コゼをもう1回見たくての追加。19日ソワレがびびエポ(綿引さん)との組合せだったので、本当はそちらを選択したかったのですが、前週木曜日の残業時間を火曜日に振り替えてしまったという痛恨のスケジューリングミスで21日に。
結果、凱旋で見られない予定だった昆エポが見られて。で、郁代コゼ&田村マリ&昆エポの組合せが絶妙に良い。(この組合せは凱旋でこの回1回しかなかったそうです。昆ちゃんがtweetしてました。)

自分のマイベストは玲奈エポ&育マリ&若井コゼの組合せなのですが、それに匹敵するもう一つのベストが郁代コゼ&田村マリ&昆エポ。それを発見できたのが嬉しかったです。

前者は大人同士のさや当てを感じますが、後者は若者同士のさや当てという感じ。
この組合せがどっちも好きなのは、エポがコゼに対して白旗を上げているところ。

小さい頃との立場の逆転でエポがコゼに何を思うか・・・と言うときに、エポがコゼに過剰な対抗心を燃やすタイプのエポがいたりしますが、自分としてはそれはちょっと釈然としなくて。

コゼが絶対的に光って、マリウスがコゼに惹かれてこその「プリュメ街」、そしてエポは片思いすることしかできないからこそ「恵みの雨」が光るわけだし。

そういえば日曜日のマチネでは、「プリュメ街」で育マリが玲奈エポをお姫様抱っこ。
「僕は飛ぶよ虹の空へ」がお姫様抱っこで、降ろされた玲奈エポが「突き刺さる彼の言葉が」と継いだのですが、よく考えるとこれは全く持って不思議な展開で。

だってマリウスってば、コゼットのことを考えながらエポニーヌをお姫様抱っこしてるんですよ(笑)
エポニーヌもどうして良いか分からないじゃないですか(大笑)

物語的には全く持って不思議ではあるんですが、あの玲奈ちゃんを軽々と回してたいっくんの腕力に脱帽。
他のエポ相手ではやってたそうですが、前回見たときは玲奈ちゃんを持ち上げてくるっと回していたので、見られて嬉しい。

24日マチネは知り合いの方からお声掛けをいただき、急遽の観劇ながら超良席。久しぶりにセンターでレミを堪能。
この日のコゼットは、凱旋では見られない予定だったレイナコゼ。

郁代コゼ、若井コゼとまた違った魅力のレイナコゼ。
実年齢ではレイナさんは郁代さんの1学年下ですが、コゼに関しては郁代さんより年長な感じがしたかな。
長女な”しっかり者”若井コゼ、次女な”伸び伸び派”レイナコゼ、三女な”元気印”郁代コゼ、みたいな。

コゼットを見ていていつも思うのですが、役者の個性を押さえつけちゃう役じゃないかなと思う。
コゼットとエポニーヌっていつも対比されますが、エポニーヌはある意味、役者の色が付けやすいというか、個性を反映させやすい役だと思うのですね。それに比べるとコゼットは、妙に役に萎縮せざるをえないような位置付けに感じます。

コゼットお3方とも、もっと弾けた役の方が魅力が表現できると思うのですが、「コゼット」という役の中では制約が大きくて窮屈な印象を受けます。

・・・

日曜マチネ、この日の居酒屋シーンで光りまくっている女性アンサンブルさんを発見。・・・綿引さやかさんでした。そりゃそうですよね(笑)。

すっかりエポニーヌとしての認識が自分の中では定着しちゃったので、アンサンブルさんで拝見するのがとても新鮮。やりたい放題遊んで弾けてました(爆)

ラスト前のカーテンコールで、下手側端に玲奈ちゃんと綿引さんが並んだのですが、「エポニーヌが2人」という印象の方が強かったです。そういえば玲奈ちゃんはこの日が福井さんバルジャンとの組合せ楽。ラストカテコでなぜか下手側端で握手してお辞儀されていました。なぜセンターでやらないのですか(笑)←主に玲奈ちゃんがシャイだから(爆)

・・・

もひとつアンサンブルシーンと言えば、コゼエポは本役登場前にアンサンブルシーンで出ています。

この日はエポを中心にじっくり見。何しろ玲奈ちゃんなので基本目立つのですが、アンサンブルシーンは少しオーラを減じていたりして、時に見つけ出すのに失敗したりします。

面白いのは工場のシーンで、エポニーヌは右から2人目(ちなみにコゼットが右から4人目)ですが、ここでエポニーヌ役の女工さんは工場長に後ろからちょっかいかけられるんですね。抵抗できない(しない)エポニーヌが不憫ですが、この日の玲奈ちゃん、さすがの反応があって。ひとしきりちょっかいかけられた後、隣の女工さんに「大変ね」みたいなこと聞かれて「どうってことないわよ」みたいにあっさり返してたことに意表突かれて。その後、歩いてみんな工場長のところ行くところで一人だけスキンシップしてる(さりげなくボディータッチしてる)様がさすがだなぁと。

このシーン、ファクトリーガールがファンテーヌを追い出しますよね。で、ファクトリーガールが工場長の愛人の座に納まるわけですが、玲奈ちゃん女工さんにはファクトリーガールの寝首掻いて追い出しそうなオーラを感じました(笑)。

農場のシーンでさやかさん・レイナちゃん・玲奈ちゃんと並んでいたのも面白かったです。

・・・

凱旋公演あと3日、拝見できるのはあと2回(26日ソワレ、27日マチネ)。
熱くなりまくる舞台、付いていけるように体調を整えたいです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『レ・ミゼラブル』(14)

2013.11.17(Sun.) 17:00~20:15
帝国劇場 2階H列1桁番台(下手側)

レミゼ凱旋公演、玲奈エポは初です。
凱旋公演は9日マチネ、14日ソワレと見てこの日が3回目。

その2日間ももちろん良かったのですが、伝わってくるものという点ではこの日の公演は凄すぎました。

2003年来レミを見てきて、多分5本の指に入る回。今年では紛れもなくマイベストでした。

振り返ってみると、テナ夫妻とアンジョ以外は凱旋公演大楽キャストなんですね。なるほどと納得。

で、この回がマイラストになる杉山アンジョ。14日ソワレで初見、この日が2回目。
一番印象的なシーンが、「恵みの雨」直後のシーン。

エポニーヌを喪ったマリウスは、半ばやけくそのようにバリケードに登り、銃を構えます。
それを見たアンジョは「マリウス!」とそれは強く強く、咎め窘めるように言います。
振り返ったマリウスに小声で「少し休め」と囁くのですね。

色んなアンジョを見てきましたが、これほどまでにマリウスのことを思っていることが伝わるアンジョはなかったですね。

旧演出ではそもそもここは「誰も寝るな」と言ったその口で「マリウス、少し休め」でしたから、「なんでマリウスだけ特別扱いなんだろう」と砦にいる他のメンバーが思わないでもない。
だからそれをずらしてマリウスの気持ちに寄り添うのはちょっと難しかった。

新演出ではその辺りがすっきりしてるし、特に玲奈エポニーヌともなれば、エポのバリケードでの存在感はマリウスだけのものではなくて。実際、ガブローシュがエポニーヌの亡骸を追っかけていこうとして止められていますしね。

「彼女が最初の死者」であるからだけでなく、ある意味、バリケードで男とともに前線に立って戦っていたエポニーヌだからこそ、みんなにとってもエポニーヌの死は特別。
そのエポニーヌの助命を神に祈ってまでいたマリウスのことを、皆がおもんばかる様は全然おかしくないし。
その空気を読んだからこその、アンジョのあの一言。

というのが、「無理に引きずり下ろしでもしない限り、マリウスはあのまま砦にいる」であろうからなんですよね。
エポニーヌを喪ったし、それ以上にコゼットを失うであろうことから、マリウスは自暴自棄の状態にあるわけで。

そういえば、砦の仲間は「あの娘は幻」とマリウスが頭に花を咲かせていた相手がエポニーヌとは・・・思っていないですよね。

ただ、それにしたところで、いつも勘違いするのですが、エポニーヌって別に革命闘士じゃないんですよね。
砦の最初の戦死者ではあるけれど、ABCカフェに集まっていた同志ではないし、ビラを見て手伝いをしている女性でもない。

好きな相手のマリウスが、自分ではなくコゼットに恋に落ち、「彼女と行くか、仲間と行くか、二つに一つ」というマリウスの決意を聞いて決断するわけですよね。

「彼女になりたいけど、なれない。それならマリウスの仲間になるしかない」

と覚悟を決めてすっとマリウスを見上げるエポニーヌからの「ワン・デイ・モア」は凄い迫力でした。

それでいて「今日も一人よ」というのは革命に身を投じてさえ、自分は一人でしかないってことでもあるのですけれども・・・

・・・

この日の育三郎マリウスと玲奈エポニーヌの組合せは、もう抜群の一言で、演技の相性が最高。

ベガーズシーンでの、”ほっぺぷにゅぷにゅ仕合いっこ”はもはや芸術の域ですし、それでいてこの日のコゼットは若井コゼット。エポニーヌが「自分が敵わない」と思うには高すぎるハードル。
そういえば若井コゼット久しぶりに拝見しましたが、お堅い感じがずいぶん薄れて、凄くいい感じ。演技的に郁代さんに似てきた気がする。パパ大好き系になってきたし。

で、自分に向けてもらえない感情を、コゼットには見せていることを、これでもかと思い知らされて悲嘆に暮れる・・・のにもかかわらず「君のおかげだよ」と言われて(変形)お姫様抱っこされるという(軽く持ち上げられていました)・・・罪深すぎるマリウス。

マリウスを庇おうとして飛び出したエポニーヌは撃たれてふらふらとバリケードを降りていきますが、それに気づいたマリウスがエポニーヌに近づくと・・・

この日は玲奈エポニーヌがちょっと撃たれ損ねたというか、撃たれてもんどり打ってバリケードに背中から叩きつけられる(ちょっとした空間があってそこに嵌り込んだ)こともあって、降りてきたときに、普段は見えないコートの中の血が見えてたんです。

マリウスが近づいて来てそれを察知したエポニーヌは、とっさにマリウスの視線を上に上げるように、顔を上に上げてマリウスと話し出したんですね。それに合わせてエポニーヌの表情に気を取られるマリウス・・・うん、この2人の演技の相性は凄いなと思いましたですよ。あそこはちょっとしてからマリウスが「髪が濡れている→血だらけに気づく」ですから、最初に顔を合わせたときに血が見えちゃうとおかしいじゃないですか。見ていてちょっとヒヤッとしたのですが、百戦錬磨の玲奈エポに、相性抜群の育マリですからね。心配した以上の凄いシーンを見られて至福。

・・・

エポニーヌの凄さもう1つ。
バルジャン邸に侵入する強盗団。危機を知らせようと屋敷へ入る隙を窺うエポニーヌ。

門の前で一歩足を踏み出したエポニーヌが、「そのタイミングはまずい」と思ったのかさっと元に戻り、その次の隙を突いて、門をかいくぐりささっと音もなく玄関に到達し、屋敷のドアをノックする・・・

いや、あの足技は凄かったです。そりゃぁ「サツも探してた」になるはずだと。

足技といえば、バルジャン邸にふたたび現れたときのこと。
当然、脇にはマリウスからコゼットへの手紙を抱えています。

バルジャンに見つかり、ドアから引っぺがされた時のエポニーヌが、それはそれは警戒しまくりなアングル。
身体一切動かさずに手だけ伸ばして手紙出してるの、初めて見ました。

確かに、あのタイミングではエポニーヌにとってはバルジャンは警戒すべき相手ですからね(というかマリウス以外に心を許していない。ガブに対しては子ども扱いしてるけど)。

そんな細部に亘るまで、ただただエポニーヌな玲奈さんを堪能。

・・・

エポ・コゼ・マリ・アンジョのバランスばかりでなく、この日は本当に舞台が熱くて。
それを引っ張ったのが吉原バルジャンと川口ジャベール。
吉原バルは本当、完成形バルジャンって感じで、暴走から苦悩から優しさから何から、もう全てがバルジャン。
そういえば、1幕の馬車のシーンで最初は持ち上がらずの2度目で、腕まくりしたところが何だかツボでした。

川口ジャベールも安定の存在感。凱旋当初は喉の調子が上がらなかったそうですが、表面上はすっかり回復。
バルジャンの好敵手としてしっかり存在していました。

ジャベールがなぜ自己崩壊したかなんですが、ジャベールにとってバルジャンは「安心して見下せる存在」なのだと思うのですね。永遠に「屑」であると。ところがバルジャンは市長になり弱い人を救い、怨みあるはずの自分でさえ命を助けてくれた。

バルジャンはジャベールの「幹」を崩そうとしてジャベールを助けたわけではないけれど、バルジャンの行為が打算的でないからこそ、ジャベールはバルジャンに負けたことを認めざるを得なかったのだろうなと。

ジャベールにとってはバルジャンを上回っている何かが欲しかったんだと思うんですね。
それがなくなってしまったからこそ、ジャベールは生きていられなくなったのかなと。

・・・

カーテンコールでは、玲奈さんと杉山さんががっしりと握手。よくよく考えたら、この日がこのペアの楽日だったのですね。
2人の晴れやかな笑顔がとても素敵でした。
久しぶりに玲奈エポニーヌのマント翻しが見られて嬉しかったです(旧演出のマント翻しは、本当に綺麗で大好きなシーンでした)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『スクリーン・ミュージックの宴』(1)

2013.11.15(Fri.) 18:30〜21:00
めぐろパーシモンホール 大ホール 1階4列50番台(上手側)

企画としては第4回となるそうなこの映画音楽コンサート。
今年も新妻聖子さんが出演ということで、2年連続となるめぐろパーシモンホールへ。

サイゴンの時も、前回の時も思ったけど本当に遠いこのホール。
東急東横線都立大学駅自体も遠いし、駅からもえっちらおっちら歩く長い坂道。
でもホールの外のきらきらイルミネーションは疲れを癒してくれますね。

全セットリストは家に置いてきてしまったので、聖子さんの曲目をひとまず。

1幕
1.GOLDFINGER
2.THE ROSE

2幕
3.TO SIR WITH LOVE
4.HAPPY TALK

アンコール
5.PHANTOM OF THE OPERA
6.We Are The Champion

出番はそれほど多くないのですが、出てくると必ず会場の空気を全部かっさらっていく様は健在。
そういえば今回は英語詞ばかりでしたね。

M2の「THE ROSE」は「DRAMATICA/ROMANTICA」では彩吹さんが日本語詞(小林香さん)で歌われていた曲。
念願の聖子さんの歌声で、しかも英語。

聖子さんの歌声は以前ならこの曲に合わなかったと思うけど、最近は「癒し」曲には無理な力を入れないようになって。それこそドラロマあたりからかな。
多分一人で歌っていただけじゃ分からないものを得たんじゃないかなと思う。
「大切な人がそばにいることを信じられるように」という一人MCも素敵。

というか、司会(津島令子さん)、メイン(増田久雄さん)がいらっしゃるのに、聖子さんに関しては自己紹介から曲紹介までほとんど全部セルフMC(笑)。
お2人と一緒に話すコーナーさえなかったのに笑いました。
ま、増田さん喋りだすと長いから@別所さん談

M4の「HAPPY TALK」は通称「可愛い系」。
えーと、センターになっているお姫様が一番ノリノリなのは仕様ですね、そうですね(笑)。

この曲最初から、コーラスのSUITE VOICEの4人が入ることになっていたようなのですが、何だか段取りに手間取ったらしく、指揮の寺嶋さんも見切り発車した結果、聖子さんが出てきつつも「え、歌っていいの?」みたいな表情になってて吹きました。
途中で4人追いついて何より。

ピンクドレスで本人直伝の可愛いダンスしながら、周囲の黒ずくめコーラスさんとじゃれあっている姿が水を得た姫でした(笑)。

で、何と言ってもこれです。
「PHANTOM OF THE OPERA」。

念願の新妻聖子クリスティーヌ。

以前BSで錦織健さんと「All I ask Of You」を歌われたことがありますが、今回は別所さんファントムとのペアで、「PHANTOM OF THE OPERA」。

もう凄いなんてもんじゃなかったです。

今まで自分が聞いた中で、聖子さんの歌声で一番上まで出たのは愛知・幸田町の「Time To Say Good-bye」だったと思うのですが、それの更に2音ぐらい上まで・・・

ラストのクリスティーヌのソロ、一音ずつ上がる度に、「次の音も出る」ことが疑いもなく。それで、「絶対次も上げてくるな」って思える歌い手さんってそうそういません。

終わった後、余りの感動でフォロワーさんたちときゃっきゃしました(笑)

・・・

で、ここでようやくゲスト2人(別所哲也さん、新妻聖子さん)と司会・メインお2人との会話に。12月東京芸術劇場公演『クランク・イン』の宣伝を増田さんがしつつ、2人に話を振る。

別所さん「私の役はオリオと言うんですが、星座(オリオン座)から来ているんですよね。宇宙飛行士になりたかった夢が叶わなくて、失意の中次の人生を歩もうとする時に出会うのが新妻さん演じる女性なんです」

新妻さん「私の(舞台)デビューは『レ・ミゼラブル』で、その時別所さんは主役のジャン・バルジャン役をされていて、私は手紙を持って行って追い返されて(笑)。その翌年『ミス・サイゴン』ではバーに売られて(笑)、ようやく今回恋人役になれます(笑)」

別所さん「役の上でですからね(汗)」

・・・あ、このパターン、玲奈ちゃん→石丸さんでも見た(笑)

という話をしていたら、その『クランク・イン』に出られるモーガン・フィッシャーさんの話になり・・・

増田さん「あの伝説のQweenのメンバーですよ」

津島さん「We Are the Champion・・・」

新妻さん「We Will Rock Youって言い出すのかと思いました(笑)」

・・・というところで何とサプライズゲスト。
モーガン・フィッシャーさんがハーモニカ弾きつつ登場。

いきなり「We Are the Champion」になったのですが、歌詞を完全に諳んじてる聖子さんが一人超ノリノリで(笑)

あなたがチャンピオンですよ(笑)

・・・

増田さん「日本在住15年なんですよ」

モーガンさん「はじめまして。イギリス出身、杉並区在住(笑)、納豆大好きモーガン・フィッシャーです(笑)」

・・・伝説の方とのイメージギャップ面白すぎます(笑)

『クランク・イン』は寺嶋さん、モーガンさん作の曲もあるようで、結構楽しみになってきました。
この日のメンバーがほとんどそのままカンパニーに移行されるとのことで、既に出来上がった感じになってたのが嬉しかったです。

緞帳を締めるタイミングが早すぎて最後みんなあわあわしてたのが笑えましたが。

次回は2014年10月2日(木)に昭島、2014年10月3日(金)に有楽町よみうりホールだそうです。さて、出演どうなることでしょうか・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『StarSありがとう公演』

2013.11.11(Mon.) 18:00~21:10
日本武道館 2Fスタンド席東ブロックQ列10番台

StarS武道館公演、行って参りました。
シアターオーブ公演以来6ヶ月ぶり。

そして自分自身も日本武道館に入るのが初めて。
ざっと見たところ1万人の中で恐らく男性は200~300人だと思いますが、それでこの日が武道館初めてとなると、相当希少価値な気がします(笑)。

とにかく広いので、開演前に自分の席に着けるかどうかを心配したのと、退勤後直行だったのでグッズの列に並ぶ時間がなく。
というわけでセトリ入りのパンフレット(ちなみに3,000円だったそうです)は入手できず(せず)。

とはいってもStarSのオリジナル曲は当たり前のごとくやるわけで、「BLUE FISH」も良かったし、何と言っても「今ここにいること」2回(本編とアンコール)はライブで体感してこそ。

ミュージカル俳優初めての武道館公演、という割には、ステージ上のお3方はとってもリラックス。
まるで普段と変わる様子がなくて、むしろ客席の方が武道館サイズに慣れるまでにちょっと時間がかかったかなという感じ。2階上手側から見下ろす形ですが、全体が見渡せるので結構有り難いポジションです。

全編に通じて言えることだと思うんですが、「ありがとう公演」と銘打っている(ボケ担当浦井氏命名)だけあって、お3方から客席やスタッフさんに流れてくる空気がいちいち(←日付にかけてます)暖かい。

期せずして客席の呼び名となった「ホタルイカ」(これもうらっくま命名)もすっかり定着して、グッズまで出るという(笑)。ホタルイカTシャツのデザインをダブルアンコールで見ることが出来たのですが、なんですかあの愛らしさは(爆)
ホタルイカキューピーも可愛くて良さげ。

・・・

で、このお3方と言えばまずはトークです(え?w)

いっくん「起きたら金髪になっていました!」
よしよし「(金髪を撫でながら)その髪、好きだわ~♪
いっくん「(手を払いながら)なんだよ、ふざけて~♪

というトークの精度の高さと来たらどうしてくれようかと(笑)。
即反応する客席がさすがすぎる(爆)。

うらっくま「みなさん周りを見回してください!今日は全員と友達になって帰ってくださいね!」
よしよし「なれるものならなってみろって感じですけどね」

・・・だから(苦笑)。

よしよし「3人とも公演しながら今日の準備をして。育三郎は」
いっくん「僕は明日はマチネです」
よしよし「僕もマチネです」
うらっくま「僕はソワレです(どやっ)」
よしよし「なんか一人だけ長く寝られる人がいますよ(笑)」
うらっくま「いやいや一緒に起きますよ」
よしよし「いや、一緒に寝てないから(笑)」
うらっくま「朝メールしますよ」
よしよし「それかえって迷惑だから(笑)」

・・・王子芸人さんたち(苦笑)

よしよし「それで今やってる舞台からは」
いっくん「レミからは40人来ていただきました(客席から驚きの声)」
よしよし「イーハトーボからは2人です(笑)」←うち1人は美帆ちゃんです(自己申告)
いっくん「で、浦井君は」
うらっくま「ゼロです!(笑)」
よしよし「え、結構カンパニーいるよね」←そこはきっと突っ込んじゃいけないw

・・・で、そんな中でも最強だったのがこれ。

うらっくま「ここから客席見てると本当、凄い風景なんですよ」
よしよし「ホタルイカのみなさんがペンライトを振ってくれてね」
うらっくま「ホタルイカのテクニカルパレードって感じですよ」

・・・客席&よしよし氏&いっくん母の時が一瞬止まり・・・

よしよし「もしもし浦井さん、テクニカルパレードって言ったらディズニーランドの技術者さんたちが作業服着てパレードする・・・」
いっくん「やめなさいって」
よしよし「いや、今日はいざとなったらノってみようと思って(笑)」

ちなみに・・・

× テクニカルパレード
○ エレクトリカルパレード

です(大笑)。

それと。
オーブ公演終わった後の3人のメールが原文のまま(というかスマホの画面のまま)公開(客席からどよめきが上がってた)

いっくんが「良かったね」と書いてて、芳雄さんもそれに増して熱く返してたら、うらっくまさんから返ってきたメールが、「芳雄さんが着替えしている半身裸を背後から盗撮」(本文なし)のメールだったそうで(笑)。

・・・で、そんなわきゃわきゃやってる3人のトークなのですが、オーブにも増してバランスが絶妙になっていて、芳雄氏の毒は心なし控え目になってるし、うらっくま氏のボケは磨かれまくってるし、いざとなったら最終兵器のいっくんが止めてくれるしで、それこそが3人の「信頼関係」なんだろうなと思う。3人揃っているとトークが破綻する気がしない。まぁ、リーダーがいなくなると途端にバランス崩れてわきゃわきゃがわちゃわちゃになっちゃいますが(爆)。

歌は言うまでもなく皆さん素晴らしいのですが、本編最後の「This Is The Moment」の「地上の星たちが輝き」という歌詞を聞いて身体に電流が走りましたですね。「StarS」=「星」なわけで、で、それは3人だけじゃなくて客席もと言っていただいているわけで、舞台上と客席が一体になる素晴らしいエンディングだったかと。

それに輪を掛けて凄かったのがアンコールの「星から降る金」。ここでも「星」です。「夜空の星から降る金を探し」ている様って、なんだか客席も星だし舞台も星だし、「金」と表現されている「大事なハート」をキャッチボールしあっていたような、そんな暖かい気持ちになったのでした。

それに続くダブルアンコールは2度目の「いまここにいること」だったわけですが、この曲の歌詞「今ここにいることが限りない奇跡」がまさにそのもの。舞台を愛する星たちが集っている奇跡が、夢でもなんでもなく現実だったことを教えてくれる、とても素敵な構成でした。

ここで「いっくんの夢を叶えましょうコーナー」で、何とゴムボールを客席に投げ込むというアトラクション。
いっくんが投げた球は軽々と2階席にまで飛び込んで客席からどよめきが。
最後に至ってはバットを持ち出し、一気に振り抜いたバットに綺麗に当たったボールが2階席まで一直線の弾丸ライナー(あれ、怪我しなかっただろうかってぐらいすごいスピードでしたが)。

いっくんといえば着物着て氷川きよしさん歌ったのが絶妙にナイスすぎて。
バックの2人の着物姿も妙に面白かった。

あと、実は芳雄さんは武道館が初めてではないそうで(本人曰く「初めてのような振りしてるけどw」)、その時歌った曲として「歌うたいのバラッド」を披露。これがもう凄い歌で。そりゃぁ、「Prince Of Prince」だと思いましたです。

・・・もう、全てが凄くて、語り足りないことばかりですが、この武道館公演を観て・・・「夢」が「現実」になったことって、やっぱりそれだけのポテンシャルがあってこそなんだろうなと、そして3人が何度も何度も語っていた客席・スタッフへの「感謝」の気持ちが、リアルだからこそ、夢は現実になったのだろうなと。

そんな「奇跡」を見ることができたのは、何よりの幸せでありました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『ショーシャンクの空に』(3)

2013.11.10(Sun.) 13:00~16:15
サンシャイン劇場 1階7列10番台(下手側)

終わってみれば短かった東京公演も、この日が千秋楽。
初日以来、空席となっていた1階サイドの上手端・下手端もこの日ばかりは全面的に使用し、補助席まで出る盛況。

ハーフプライス、リピーターチケットの効果があったとはいえ、初日明ける前の不安はどこへやら、東京千秋楽は暖まった客席と、舞台上の役者の皆さまの笑顔と共に幕を閉じました。

作品が支持されますようにと、その「希望」とともに駆け抜けたキャストの皆さま、スタッフの皆さまの想いが伝わり、これだけの短期間で評価を高めた作品も、なかなかないように思います。

そして演劇集団キャラメルボックスのホームグラウンドであるこのサンシャイン劇場は、過去ずいぶん通っていますが、男性のお手洗いがここまで列が伸びたことも記憶にありません。それだけ映画「ショーシャンクの空に」が名作として支持されていたからなのでしょう。

・・・

●支配者と被支配者
「ショーシャンクの空に」において、支配者と被支配者の関係は明白で、前者が刑務所長・刑務主任・看守を初めとする「法」であり、後者が犯罪者(と判断された者)であるわけですが、この作品の興味深いのは、前者が善で後者が悪というばかりの立ち位置ではないこと。

支配者側の刑務所長を粟根まことさん、刑務主任を筒井俊作さん(演劇集団キャラメルボックス)が務めているのが、この作品の「支配者」の立ち位置を暗示していて、この2人の役者的持ち味からして「大声は小心者の裏返し」であるんですね(褒め言葉です念のため)

一点の隙もない支配者になろうとするけれども、いつかどこかで破綻すること-を信じられる役者さん。変な話ではあるのですが、「支配者」に対する揶揄といったものを原作から感じただけに、この2人をこの役に置いたことは、実はとてつもない安心感を持って見ていられました。

アンディーが「支配者」側に針の一穴を刺した屋上での”事件”。看守の税金相談を代行する代わりに、「同僚に」ビールを提供させた瞬間、これは原作に書かれているのですが、「(支配者と被支配者の)立場は完全に逆転した」ことに大きな意味があるのだと。ラクエルが言った「後悔しなさい、あなたたちが勇気を与えてしまったのよ」という言葉もこれが元になっています。

支配者は、被支配者に隙を見せてはならなかったと。支配者も「所詮人間」だと思わせてはいけなかったのだと。
塀の中にいようと、絶対に敵わない相手ではない、と思わせたことが支配者側の失敗であり、アンディーの凄さだと。

「ビールを飲めば『人間らしい』気持ちになる」と言ったアンディー、青空奉仕に従事させられ「俺たちは奴隷じゃない」と吐き捨てたレッド。

アンディーの生き様を語ることがレッドの生き甲斐であって、レッドは自分の存在を卑下しているけれど、実際にアンディーが言ったように、レッド自体もこの刑務所の中では相当に異質な存在(「君は凄いよ」)。
少なくとも飼い慣らされきった存在ではなくて

3幕でレッドが3人のピンナップガールを前に、アンディーのことを「アンディーも怖かったんだよ」と呟く場面がありますが、「ずっと同じ気持ちで生きていた(であろう)アンディーでさえ、下水管の先に何があるかは分からなかった」、でも「迷うなら先に進んだ方がいい」・・・

ブルックスが外に「放り出され」る直前、図書室の司書を引き継ぐアンディーから「おめでとう」と握手を求められ、ブルックスはそれに応えられなかった。アンディーとレッドが共有し、ブルックスが持てなかったもの、それは「勇気」と「希望」だったのかなと。

原作でも触れられていますが、アンディーは果たしていつ穴を貫通させたのかは疑問で、1948年の収監からほとんどすぐ穴を掘り始め、同居人がいた1年以外はほぼ掘り続けて、1975年に脱獄。
ただ、掘る速度は7年で30m、450mある塀までを掘るには70年かかる・・・実際には26年未満なので、掘り進んでいるうちに下水管に先にたどり着いたという話なんですよね。

リタ・ヘイワースのポスターは1948年~1955年、マリリン・モンローは1955年~1960年、ラクエル・ウェルチは1966年~1972年とあり(原作上は脱獄時のポスターはラクエルではないのですが、これは演じた宇野まり絵さんとの役の相性によるものでしょう)、アンディーがレッドに「牧草地の石」の話をしたのは1968年(原作では1967年)。

それを考えると、アンディーの掘った穴はその時には貫通していたのではないかと。

この日の成河さんのアンディーと、益岡さんのレッドの演技を見て、思い至り。
「希望なんかどこにあるんだ」と叫んだレッド。自分は罪人であり無実のアンディーとはそもそもの根底が違うと。その時アンディーは、そっと「希望を持つことはいいこと」と言う・・・それが自分に対する勇気づけでもあったのでしょう。それを知っていたレッドは、「実はあの時、穴はもう開いていた」ことを確信する・・・ように見えました。

レッドにとってアンディーは、完全無欠な存在であったけれども、実は「穴が開いてからある程度の期間(最長7年間)脱獄しなかった」という事実が、レッドにとっては救いだったのではと思って。

気持ちは通じ合っているとはいえ、「アンディーだって人間だった」と思えたことで、レッドは心を壊さずにいられたのかなとふと思ったのでした。

●ピンナップガールの存在意義
この作品の原作は、レッドがアンディーのことを記述する、といった形で語っているわけですが、舞台版は1幕・2幕・3幕のその時代のピンナップガールがあたかも原作から飛び出たかのようにストーリーテラー役を担当しています。

仮にレッドが原作通り全ての語り部まで担当していたら、この作品はずいぶん違った印象になっていたと思う。
そもそもがレッドの負担が大きすぎるという話でもあるにせよ、レッドはアンディーの全てを見ていたわけではないので、レッドが語ることが全て真実かははっきりしていない。でもピンナップガールはアンディーの部屋にいたわけだから、全てを知っていて何の不思議もない。

ここが脚本の喜安さんのアイディアなのか、演出の河原さんのアイディアなのかわからないのですが、このアイディアの成功が舞台版に勢いを付けたのだろうと。

成河さんのアンディーは、原作のクレバーな印象そのままで魅力的だし、益岡さんのレッドの存在感も圧倒的。それでいて、語りを女性陣に任せてあるので特にレッドは大事な部分だけなぞれば済む。その分、レッドはアンディーとのやりとりに集中できる。舞台に色も付くしで、いいことづくめ。

それで見るとこの3人のピンナップガールのバランスも絶妙。
由美子さんのリタ、エツ子さんのモンロー、まり絵さんのウェルチ。
服の色合いも違いますが、それ故にアンディーにとって、この3人は距離感が異なっていて。

リタは「憧れ」で、モンローは「癒し」、ウェルチは「同志」と考えるとしっくり。

その時々にアンディーが求めたものでもあるのかなと。

初期は「下界の象徴」として「憧れ」のリタを。
中期は「落ち込みのカンフル剤」として「癒し」のモンローを。
後期は「現実的な支援者」として「同志」のウェルチを。

と考えると、アンディーの心の動きも分かるような気がします。

アンディーがリタのポスターをレッドに求めたとき、レッドは「即物的なところもあるんだなと気に入った」と後で語っていますが、案外にアンディーにそんな側面もあったのかもしれません。ま、男ですからね。

●東京楽を迎えて
本音を言ってしまえば、こんな気持ちで東京楽を迎えられるとは思っていなかったです、良い意味で。
ご贔屓さんの一番いい部分を引き出していただいて、そして作品に必要不可欠なパーツとして存在させてもらえて、それでいて作品としてもカンパニーとしても心地好い時を過ごさせていただいたことにただ感謝です。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

『新妻聖子ライブ2013』

2013.11.6(Wed.) 21:10~22:20(2nd)
丸の内CUTTON CLUB テーブル席

ライブアルバム「LIVE MOMENTS」発売記念ライブ、東京2days×2ステージのラストを飾る、大楽。
(東京1日目は貸切)

格式高いライブハウスでの贅沢な空間。聖子さんが登場するということがなければ縁がなかっただろう空間です。
時間等の都合で2ndからの参戦。
1stは曲がいくつか違ったそうで、「ラマンチャの男」は1stのみで、その代わりに2ndが「RiverDeep~」。
「おかえり」の代わりに「愛を止めないで~Always Lov'ing You~」。
1stにはリアルお姉さま(新妻由佳子さま)がいらしていたそうで、それもあって「sisters」があったそうです。

2nd SetList

1.おかえり
2.I Will Always Love You/Whitney Houston
3.I dreamed a dream/Les Miserables
4.道化師のソネット
5.I'll never been to see
6.ピエタ
7.River Deep Mountain High
8.命をあげよう/Miss Saigon
9.Time To Say Good-bye

encore
1.A Dream Is A Wish Your Heart Makes/Cinderella

英語歌詞は英語、日本語歌詞は日本語で表記しています。
この日、英語が半分超えです。

収容人数50人強のライブハウス。お財布的にはなかなかな感じではありますが、この種のライブハウスが初めてなはずの聖子さんの、この空間へのしっくりきかたが仲々興味深いです。
「格式高くてMCに困っているんですが」とか「おしとやかに行きたいんですがどこまで続くでしょうか」とか(笑)・・・相変わらずの感じを出しつつも、徐々にペースを掴んでいきます。

聖子さん自身がblogに書いておられますが、こちらCOTTON CLUBのお食事が、新妻組みなさまにとてつもない力を与えたようでございまして(笑)、自分は時間他諸々の都合で1プレートだけを選択しましたが、これならコースにしておいた方が良かったかも・・・と思いつつ。

ただ、実はサーブが間に合っていなくて、歌の途中でも食事が運ばれてきたりで、むしろ落ち着いてライブを見られた分、それで良かったのかもしれません。

印象的だったところをいくつか。

M5「I'll never been to see」は、2012~2013年のツアー版同様に、導入部に日本語の一人語りがあるバージョン。

「1人でぶつぶつ喋り出したと心配しないでくださいね。大丈夫ですから。女優ですから(笑)」とひとしきり笑いをとった後の朗読が・・・いやはやリアルなんてもんじゃないぐらい病んでました。演技が。演技に普通に悪魔が入っていました、はい、先日の。
舞台が近いせいもあるのでしょうね。

M7「River Deep Mountain High」は待ってましたの盛り上がり曲。ど派手に照明つかいーの、バンド紹介もやりーの(この曲でヴァイオリン&コーラスの水谷美月さんが「On Vocal, Niizuma Seiko!」と「控え目に」割り込むのがmyツボです)・・・ほんのわずかだけ残念だったのはラストが決めの手上げで終わらなかったことぐらいですが、いやぁ、凄いものを見ました。
満場の拍手に次いでは、これぞ聖子さんなこの曲。

M8「命をあげよう」。
「レミゼほど有名じゃないこの作品の説明」から役の説明に入っていく聖子さんの語りは、一つ一つがなんだかとても胸を締め付けられるようで。一つ一つの言葉を紡ぎながら、この役と別れることになったことが思い知らされるようで。
そんな役柄説明から入ったこの音楽、ライブでとっても好きなのが、導入のピアノの直後に入る、美月さんのヴァイオリン伴奏。

追い詰められた姿そのままにそこに立つ聖子キムを、美月さんのヴァイオリンは温かく抱きしめるように包み込んで、その温かさに包まれて聖子キムがすっくと顔を上げて歌い出す・・・というのがとっても好きで。
それをこの近さで見られて聞けたことが、何よりの宝物でした。

この曲、そしてアンコールの曲に絡めて話された「夢」ということについての言葉が、やっぱり年齢相応の「壁」なのだろうなと思えて。
「10代、20代より30代の方が、現実も知るし「夢」に対して、考えてしまうことがあって」「でも夢は見続けなきゃ」と言っておられたのが印象的でした。

1stはこれよりは少し後退した発言をされていたそうなので、やはりこの状況から見て今はずいぶん迷っている時期なのでしょうね。
パフォーマンスにそれは一欠片も影響していませんでしたが、今回のブルーノート、COTTON CLUBについて考えれば、nice performanceを今まで彼女を見たことがない層に対してPRする機会だったのだろうと思いますし、その中で新たな出会いやチャンスが生まれることを、心から期待したいです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『ショーシャンクの空に』(2)

2013.11.4(Mon.) 14:00~17:15
サンシャイン劇場 1階10列10番台(センターブロック)

中1日空けて、ふたたび刑務所へ(仲間内ではこの呼び方をしていますが普通にお天道様の下で出来ない会話です(笑))

初日がやっぱりバタバタだったんだなということを思わされる、良い意味の落ち着きがみられました。

自分としても、中1日のうちに原作(『ゴールデンボーイ/恐怖の四季 夏冬編』(新潮文庫)所載「刑務所のリタ・ヘイワース」)を読んだこともあり、新鮮な発見も多くあり。

今回の舞台版、映画よりは原作に近いという話を知り合いから聞いたので、映画より先にまずは原作を読みましたが、舞台の作りの巧みさに舌を巻きます。

映画はまだ未見ですが、舞台版は原作の美味しいところを上手く再構成して、舞台の立体感を上手く活かしたものになっていると思います。

えと、やっぱりネタバレしないとつまらないんで、お気になさる方は回れ右お願いします。




●演出センスの巧みさ
この日一番おおっ、と思ったのは2幕のピンナップガール、新良エツ子さん演じるマリリンモンローの有名なアングル、あのスカートがめくれるシーンにモンローが言った一言、

「すきま風」

にえぇぇぇっとびっくり。

舞台版でも原作でも、アンディーが脱獄するという話の流れは同じですが、ここ、原作では「ほぼ独房だったアンディーが、ただ1年だけ別の受刑者と共にした、その受刑者いわく『あの部屋はすきま風がひどくて』と言っていた」となっているんですね。
それはつまり、アンディーが穴を掘っていたからに他ならないわけですが、それをモンローのあのアングルに繋げるセンスが素晴らしい。膝をぽんと突いちゃいました。

3幕、宇野まり絵さんが演じるピンナップガール、ウェルチのポスターが、脱獄が発覚したときに、ちょっと下側が風でふわっとめくれて(恐らく数cmのレベルで)その芸の細かさがさすがだなと。

そういやウェルチのまり絵ちゃん、降りてくる独房の扉に置いて行かれそうになって慌てて上から降りてくる扉を手で押さえたのに笑っちゃいました。ハプニング過ぎる(笑)。

●アンディーはいつ「それ」を決めたのか
これは、1回目で気づかなかった点だったのですが、原作を読んで見た2回目であぁなるほどと膝を打ったシーン。

アンディーは「自分はやっていない」とその被疑を認めず、結果このショーシャンク刑務所(殺人・強盗といった重罪人が入ると言われる刑務所)に収監された当初は、アンディーは「希望」を失っていたと思えて。

アンディーはそんな中ブルックスが鳩に餌をやっている様を見掛けて、「こんな所でも楽しみを見つけられるんだ」ということを知り、「自分も趣味を再開したい」と調達屋のレッドを紹介して貰い、あるものを調達してもらうようお願いする・・・流れまでは、アンディーの中には「脱獄」という文字はなかったように思うのです。

レッドはアンディーの頼みを聞くときに「脱獄なんて考えてるんじゃないだろうな」と聞きます。
その言葉をアンディーに聞いた時、アンディーが答えるまでには少しの間があって。

ここをどう捉えるかだと思うのですが、実は初見では「最初から脱獄を考えていて、それをレッドが見抜いたことに驚いた」だったのですが、原作も読んで2回目見て、「そういえば脱獄にも使えることに『気づかされた』」のではないかと思うのです。

というのも、アンディーがレッドに頼んだ段階では、「希望」は失っているし、ブルックスの様に、わずかばかりの「この塀の中での楽しみ」への”細い蜘蛛の糸”を見つけたばかりなはずだから。

この作品はレッドがアンディーを語る物語、という構成になっていますが、レッドにとってアンディーは「希望」そのものだった。正確には「刑務所の皆にとって」アンディーは「希望」そのものだったと。

じゃぁアンディーにとってレッドはどんな存在だったか。それは「恩人」だったと思うのです。
人として信頼できる、それはもちろん前提にあったでしょうが、それだけじゃないのではと。

レッドは「希望」を与えるアンディーに賛辞を送るけれど、アンディーにとってはそれはブルックスが種を蒔き、レッドが拾い集め、アンディーに手渡したものではなかったかと。

レッドは自ら犯した罪故に、自分に対して過剰に卑屈になっていたけれども、レッドにとってアンディーが希望であったように、アンディーにとってレッドは大切な恩人。

と考えてくるとブルックスの存在は実に切ない。

アンディーはブルックスのその後を知らないからまだいいけれど、レッドがブルックスのその後を知ったときの動揺・・・益岡さんの演技も相まってあれはもう涙無しでは見られません。

ブルックスは収監40年で仮釈放、それは原作には「社会の有用な一部分になる見込みがなくなったのを、じっくり見越して出所させた」とあって、原作で実は一番戦慄した一文でもありました。

ブルックスがレッドの回想シーンに出てきて「自由を求めて、ブルックス」と呟き、部屋(部屋だけではない)から去っていく様は、「あの時代に高等教育を受けた」ことが仇になってしまっているかのような、なんか無情さを感じて。

この作品のレッドは、ブルックスの「無情」とアンディーの「希望」との間を行き来する存在なんですよね。

アンディーの物語を書き終えたレッドは、自分の人生の意味を消費しきったような気持ちになりますが、そこからのクライマックスへの盛り上がりが何とも神がかっていますよね。あれは小説では見せられない、舞台ならではの光景。
暗がりから一気に明るくなる様は、客席からも「一緒にトンネルを抜けた」気持ちにさせられます。

レッドの語りを通じて、アンディーの物語を一緒に見てきた客席は、「自由って何だろう、希望って何だろう」という気持ちを持ち続けてきて、そこで一気に開放される気がして。

「刑務所」という極端な場所を題材にしているこの作品ですが、「閉塞感」に対して「希望」を持つことの大切さを見せようとしているのではないかと思えてきます。

●ピンナップガール、多士済々
3人のピンナップガールはこの作品で1幕ずつを進行役として担当しますが、元はと言えばこの作品の原作は「刑務所のリタ・ヘイワース」。つまり1幕で高橋由美子さんが担当したリタ・ヘイワースが刑務所の中におけるヒロイン。

別の言葉で言えば「刑務所の中の『希望』」で、表面的にはリタだけど、内実的にはアンディーなんですよね。

リタにしてもモンローにしてもウェルチにしても、最初は「つまらない男」だと思っているけど、彼のしていることを実は自分たちだけが知っていて。
刑務所の中で他の囚人がだれも持っていないものを彼は持っている。
希望であり前向きさであり反骨心であり、それでいて狡猾さを持ちながら、それを決して表に出すことなく、その日を迎える。

3人が登場する3幕、競って「我こそアンディーの真のヒロイン」を主張しあっている様はなんだか面白い。
前回書いたのですが、レッドのヒロインはリタで、アンディーのヒロインはウェルチな気がします。

モンローのポジションがなんだかちょっと中途半端に思えたのは、組む相手がいないからかなと。レッドにはなんだか避けられてるし、結構報われないポジションだなぁと。

この3人、実は3役ずつやっているんですよね。由美子さんの3役が「リタ・ヘイワース」「リンダ・デュフレーン」「リンダ・ヘイワース」な3つなのに笑ってしまいました。芸がないのかあるのか(笑)。

・・・

この作品、舞台右上側に年号が表示され(1桁ずつ着脱可能式で、看守役の人が差し替える)、「1977」とか「1978」となっているのはレッドが仮釈放後、レッドは38年牢獄で暮らし、その10年目前後でアンディーが入ってきたので「1947」あたりからが、レッドが回想をしている対象の刑務所内の様子。最初見た時は色々混乱して見ていましたが、ようやく2度目で落ち着いて見られるようになりました。

この回は満足行く出来だったのか、2回目にしてカーテンコールで由美子さんの笑顔も見られたし、成河さんと由美子さんがお互い笑い合って手をつなぎ、緊張しているまり絵ちゃんに由美子さんが手を出して繋いでの、皆さんでの万歳カーテンコールが見られて。
気持ちの上ではようやく初日が明けた気がしました。なんだかとてもほっとしました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『ショーシャンクの空に』(1)

2013.11.2(Sat.) 19:15~22:30
サンシャイン劇場 1階8列1桁番台(下手側)

1幕55分、休憩10分、2幕50分、休憩10分、3幕55分で合計ほぼ3時間。
初日は本来19時開演のところが15分押して19時15分開始。

休憩10分もサンシャイン劇場のお手洗いのキャパではさばききれずに、予想通りに終演は22時30分(30分押し)。
遠征で夜行帰りの方とかは厳しかったでしょう。

15分押しを実感させるかのように、セットの移動をするスタッフさんが普通に見えたりと、きっとぎりぎり間に合ったのだろうなと思わせる舞台進行をハラハラして見つめながらも、それでも見終わった後は充実感。

有名すぎるこの作品が舞台化されて見ることになったときに決めていたのは、「舞台版見るまで映画は観るまい」ということ。初見の舞台でのイメージを大事にしたくて。先々月の「ジャンヌ」は原作を読んでいたからこそ面白いことが沢山あったけど、今度の「ショーシャンクの空に」は逆にファーストインプレッションを舞台から感じたくて。

見終わって思うのが、普通3時間もの舞台だと、精神的には満たされていても、見終わったら身体の底まで疲れを感じるもの。しかも今回は舞台が刑務所。なのに、なぜだか身体に疲れを感じないのが意外。内容的なネタバレはまだ避けておきますが、舞台的には「終わりよければ・・・」の展開のすがすがしさが良いのかも。

多少のネタバレ含みます。ご注意くださいませ。



3幕構成の今回、女性陣3人がそれぞれ1幕ずつメインを担当します。

1幕を担当するのが、リタ・ヘイワース役の高橋由美子さん。そもそも「ショーシャンクの空に」の原作小説が「刑務所のリタ・ヘイワース」で、刑務所内から見た囚人達の”希望”として描かれています。舞台版はそれが単純なピンナップガールではなく、語り部役も担当します。

刑務所ということで登場人物が全て男性となると、絵面的に厳しくなるというか、変化を出しにくいこともあるのだと思いますが、赤のドレスに身を纏った由美子さん演じるリタは、思った以上に上手くはまっていて、その上語り部としての落ち着いた進行がとても良いです。明るい弾けた感じもありつつ、基本は女性の声で変化をつけるという中でもどっしりとした重量感のあるナレーションは、さすが百戦錬磨の感。進行役のイメージとしては「SHIROH」の寿庵役が近いかなと。

赤のドレスは綺麗とはいえ、ちょっと年齢を感じないわけにはいきませんでしたが(残念ながら背中に・・・)、その辺をシーンで笑いに持って行くあたりは「リンダリンダ」ほどには痛々しくなくて・・・笑いに持って行ってたからいいかなぁ(苦笑)。

ただ相変わらず英語歌は不得手なようで、以前よりも苦手意識を持っちゃった気がして残念。

その点、歌で光っていたのが2幕を担当したマリリン・モンロー役の新良(にいら)エツ子さん。
由美子さんのリタの「赤」と完全に色分けされて、新良モンローは「白」。
それでいてスカートがめくれるこの役ならではのも、風の起こし方が技術さん上手すぎる(笑)。

3人のピンナップガールは、レッド(益岡徹さん)の描く小説(というより実話)の中でレッドと心理的なつながりを持ちますが、一番近いのが由美子さん演じるリタとで、年齢のバランスのせいか、一番しっくり。(まぁ由美子さんはもともとおじさん世代と組むとすんごくしっくり来るんですが。飲み屋での経験レベルの多さのせいか。
レッドにとってのピンナップガールでもあったのかなと思わされます。

それからするとモンローとレッドとはちょっと距離を感じたかな。

3人のピンナップガールって、レッドが刑務所の中で時をともにしたアンディーの起伏とちょうどリンクしていて。

リタはアンディーが皆の希望となっていく時期、上り調子な時期の象徴なんですよね。で、モンローはアンディーが迷い揺れ、レッド曰く「知らないうちに懲罰房に入れられている」ような時期、皆にとって希望が失われ絶望に変わりつつある時期、下り調子な時期の象徴として描かれているように思えて。

だからレッドがアンディーとのことを思い出すときに、リタを思い出せば高揚するし、モンローを思い出せば悄然とする、といったことになるのかなと。

もう一人のピンナップガールは宇野まり絵さん演じるラクエル・ウェルチ。
彼女は一番現在に近い存在ですが、アンディーとの関係よりもむしろ、レッドの”過去”を思い出せたことの印象の方が強かった。とはいえ実は初見では彼女のポジションの意味が咀嚼できなかったので、次見るときにまたじっくり感じてみたいです。

・・・

先に女性陣3人について触れましたが、この3人のバランスが絶妙で、締めるところから笑わせるところから、お互いおちょくるところまで実に多彩。直線的になりかねないこの作品への上手いアクセントになっています。

とはいえ、この作品のメインはあくまでお2人。成河さん演じるアンディーと、益岡さん演じるレッドの関係。

刑務所という「絶望」と隣り合わせであろう空間の中で「希望」を持ち続け、一つ一つ壁を崩していくアンディーの前向きさは凄いし、むしろ本当にあの場でそんな行動を取れる人が本当にいるんだろうかと不思議になるくらいな存在。それを、時に飄々と、時に真摯に演じていく成河さんが実に魅力的。そんなアンディーの生き様を書き続けることが、レッドにとっての、「刑務所から出てからの『生きる意味』」なのだろうなと感じて。

その文章をたまたま目にした、とある「彼」がそのアンディーの文章に「感謝」をしている様はなんかぐっと来るものがあって。レッドの思いが通じたことは、更にアンディーの思いが通じたことにもなるわけで、「絶望」の連鎖を断ち切って、「希望」の輪を広げていくのは、「思いつづける力」の強さあってこそなのだろうなと思えて。

素直に「良かったなぁ」と思えたラストでした。

他の出演者の皆さんも多士済々。

刑務所長演じる粟根さんは相変わらず粟根さん(一部の方にはこれで通じるような気さえするw)
なんでああいう「偉そうにしながら実は小心者」というのが上手いんだろう(笑)

んでもってキャラメルボックス筒井さんが刑務主任。なんであんなどやしつけるのが嵌るのか(爆)
そいでもって、いざとなると馬鹿にされるのが嵌る嵌る(笑)

アンディーが裏で舌を出しているであろうところで、自分に迫り来る危機に無頓着な感じが、この2人のイメージにぴったりすぎて吹いてしまう(笑)。

ちょっとひとりごとですが、ラストシーンのアンディーは、キャラメルボックスの西川浩幸さんを思い出した。
で、レッドの熱さは元キャラメルボックスの上川隆也さん。
今作のプロデューサーさんがキャラメルボックスと同じ、ネビュラプロジェクトの仲村さんということもあってか、もしかすると本当はキャラメルボックスでやりたかったんじゃないかと、ちょっとだけ思った。気のせいかもしれないけど。

リタのキャラは、どことなくももこさん(岡田さつきさん)を感じたし、モンローはまーや(温井摩耶さん)な感じで、ウェルチはあんりちゃん(渡邊安理さん)を感じたり。気のせいだと思うけど、何か妙にイメージしっくりきたりしました。

・・・

この日はカーテンコールが4回。

最後は客席一部のスタオベもありましたが、4回目、うちのご贔屓さまがえらい出遅れて舞台上がちょっと慌てる。その時のさまを詳細に書くのは省略しますが、本編でせっかくいい演技をしたのだから、最後まで客席には夢を見せ続けてほしいなと・・・後輩のピンナップガールに揶揄されるほどの年齢の、そして同い年の自分としては、少し残念な気がいたしました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »