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『それからのブンとフン』(2)

2013.10.13(Sun.) 13:00~16:10
天王洲銀河劇場 3階A列10番台後半(センターブロック)

1回のみの観劇予定だったこの作品。
テンポも良かったし、トークショーも予定されているし、何よりリピーターチケットでCDもらえるし、という3点セットで観劇を追加。

1階・2階はそれなりに埋まっているとのことで3階を見てもらうと最前列。
世田谷同様、目の前の柵が目障りな席ではありますが、中途半端に後方列よりずっと良いです。

前日まで北海道に行っていて、今日はこの作品のマチネと、そして突如追加した『しあわせの詩』ソワレという、マチソワ。
劇場でお会いした知人に半ば呆れられつつ(笑)、自分も何でこんなことになっているのかさっぱり自覚症状がありません。


ネタバレあります


この作品で興味深いのは、フンを取り巻く両サイド、オリジナルブン(小池栄子さん)と悪魔様(新妻聖子さん)の関係です。

この2者、立場の違いはあっても「権威」を引きはがすという点に関しては同じなんですよね。
アプローチが違うだけで。

ブンは「権威」を引きはがすことで、人間を平等な立場に置こうとしている。
悪魔は「魂」を引きはがすことで、人間社会を混沌に叩き込み、この世を悪魔の意のままにしようとしている。

ブンが語った中に興味深い言葉があって、「法はそれだけではただの文章に過ぎない」という。

権力が統制できなくなった状態のことを「無法状態」と称しますが、「法」とは権力の強制力を持って初めて実効性を持つものなんですよね。(ちなみに「貨幣」も同じで、中央銀行が価値を保証するから、ただの紙切れやただの金属が、価値として有効になるという。)

「法を権力が持てば無敵である」とブンは言っていますが、それも妙な話で、権力が持つからこそ法なのであって、もちろんその濫用は厳しく戒められ、監視されるべきものであるけれど、それが「権威」を引きはがすことの理由付けにはならないように思う。

この作品では、「権威」を引きはがしたブンの引き起こした混乱が「人間社会における隙」であり、そこに悪魔の入り込む余地を与えたように描かれていて、「権力」の源泉である警察に悪魔が取り憑くという事態は、まさに「軒を貸して母屋を取られる」状態にありますが、権力を持つ者にとっては「実質的に支配できていれば、そんなことはどうでもよい」ということなんですよね。

それにしたところで悪魔様がアバンギャルド(ちなみに姫が自称しています)になってしまって、高飛車と可愛さの中間というのが、どうにも居心地が微妙です(笑)。好みはどっちか寄りなんですけど(爆)。

『「魂」を奪われる』、ということは表面的に分かりにくい部分があるけれども、「精神」と言い換えると何か分かる気がします。人間が人間であるための幹を奪われれば、その人間は本当の意味で「生きている」ことではなくなってしまうと。

「ジャンヌ」の宗教裁判で自らの信を捨てまいと必死になっていたシーンがあるけれど、信を捨ててしまえば、幹を失ったと同じで、世俗の権力者にとっても、宗教上の権力者にとっても、もはや危険分子としての存在ではなくなる。

ジャンヌが自らの生き様をもって他者に影響力を与える-司教曰くの「女が皆自らをジャンヌと思い、神と自らの間に一切の介在も許さない『個人の精神の反抗』が起こるうちには、我々の存在は脅かされる-と同じことで。

悪魔にとっては「『精神を持つ』人間」こそが邪魔なわけですね。

・・・

この日のトークショーは、こまつ座代表の井上麻矢さん(以下Q)が司会、そして市村正親さん(以下I)、新妻聖子さん(以下H)の3人で進行。

Q.(この作品にちなんで)人生にとって大事なものは?
H.食欲です(会場内笑)
I.いっつも食べてるもんね。みんな一緒に食事行っても、
  喋るのそっちのけで食べてる(笑)
H.終演後トークショー前(ちなみに5分弱)の時間にも
  リンゴ食べてました(笑)
  やっぱり人間、お腹空かせてるとろくなこと考えないんですよ。
  一曲一食です(笑)

I.僕は何だろう・・・愛すること、かな。
Q.素敵ですね。
H.食欲も広い意味では愛することと言いますか、作ってくださった方
  への感謝の気持ちとか、
  いつも感じて、いただいています。

Q.自分の役への役作りとか、無茶振りとかありましたか。
I.最初のシーンで客席をいじるじゃないですか。
  あれは毎回変えてて、客席の怖い人避けたりとか(笑)
  台詞がもともと喧嘩腰だから、「お金払って観に来てるのに、
  『なんだ』みたいに言われるのか」
  って怒られないようにソフトに言ってみたり(笑)、
  前方に女性が多いと絡み方変えてみたり。

H.基本、悪魔役については演出家の栗山さんは放任でしたね。
  「僕も悪魔って見たことないんだけどさ、
  なんか悪魔っぽい面白いことしてみて」(笑)って
  言われてどうしようかと思いました。

  このアバンギャルドな外見になったのも
  舞台稽古からなんですよ。

  でも「悪魔ボサノバ」で寝転がりながら客席を睨む、ってところ
  だけは栗山さんの頭の中にはっきりイメージがあったようで、
  そこから役作りを逆算して作りました。

Q.市村さんは1役ですけど、
  新妻さんは沢山役をされていますよね。
H.そうですね。セーラー服・・・
Q.最初セーラー服ですよね。
H.そうなんです。「野坂昭如好みのセーラー服」って台詞が・・・

  ※ちなみに先日のトークショーの時の話
  H.私、野坂昭如さんって存じ上げなかったんですよ。
    なのでwikipediaで調べて(笑)、
  「あぁ、大島渚さんと殴り合った方なんですね」(大笑)

Q.次はスクールメイツ・・・
H.いやもう楽しくて楽しくて。客席からの冷たい視線はともかく(笑)
  演出家さんもここはどう演出しようかという話で、
  「可愛い風にやってみて欲しいけど・・・
  (と色んなアイドルの名前が出たりはしたもののの)」

  ※ちなみに先日のトークショーの時の話
  H.「いや、可愛い娘を演出する引き出しは
     無駄にいっぱい持っていますから(笑)」

  だったそうです(大笑)

H.それから悪魔役になって、
  その後傍聴人とウェイトレスになってます。

  ※ちなみにリピーターチケット特典のCDに入っている
  「盗みましょうよ」には
  「全キャストの歌声が入っている」と称されていますが、
  聖子さんはウェイトレスで歌っています。

Q.あの悪魔役の羽根って重くないんですか?
H.軽いです。結構ふわふわしてて、
  実は毛布の替わりになります(笑)
  あるシーンでは実際羽根を背にして寝ますし。

Q.東京はあと少しですが、これからの意気込みを。
I.今回は東京と大阪だけですが、ぜひ同じメンバーで他の地方でもこの作品をやりたいです。
  応援よろしくお願いします。

H.今回こまつ座初参加なのですが(僕もだよ!と市村さんから
  ツッコミが入り、「そうですよね!」と新妻さん反応)、
  日本語がとっても美しくて。
  私、学生時代ずっと海外にいたので、改めて日本語の勉強を
  させていただいている感じで、とってもいい経験をさせて
  いただいています。
  ありがとうございます。

・・・というとっても綺麗にまとまって幕。

そういえば、入場時は市村さんと新妻さんが腕組んで入ってきてましたが、市村さんが照れてて、新妻さんがノリノリで、なんだか父娘みたいな(笑)図でした。

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