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『それからのブンとフン』(1)

2013.10.6(Sun.)13:00~16:10
天王洲銀河劇場 1階B列19番

席番を見ていただくと分かるのですが、完全にど真ん中です。

1場初っぱな、作家・大友憤(フン)を演じる市村さんの目線が私に真っ直ぐ・・・
だって最前列のA列の方、身体丸ごと避けるんですもん(笑)
市村さんの迫力にじっと目線で応えるという、とっても素敵な時間を過ごせました。ありがとうございます。

というわけで、音楽劇「それからのブンとフン」、行って参りました。

井上ひさし先生の作品としては、同劇場での「組曲虐殺」以来2作品目。

そういえば「組曲虐殺」は複数回観劇した中で唯一blogを書いていない作品(初演、再演と1回ずつ観劇)。
その時は、戯曲に対しての自分の向き合い方が未熟なように感じて、何か書くこと自体が怖かった気が。

という思い出もあるので、今日はそんな思いも感じつつ、今の自分に書けるそのままを。

主人公は市村正親さん演じる売れない作家・大友憤(フン)。その作家先生が書いた『ブン』という本の中から飛び出してきたのが「(オリジナル)ブン」である小池栄子さん、初め多数のブンが色んなものを盗んでいく。

それに対抗するのが橋本じゅんさんが演じる警察長官。そしてあろうことかブンに対抗するために、山西惇さん演じる悪魔の呼び屋を脅して悪魔ちゃん(正式な役名だそうですw)を召還する・・・その悪魔ちゃんを演じるのが新妻聖子さん。

というのがメイン5人の構成図ですが、まずは市村さん。以前から何度も拝見している俳優さんですが、ご存知の通り氏には氏独特の濃さがあって、時に濃いラーメンを食した後のような按配になることがあるのですが、今回はこの「フン」が作者である井上ひさし先生と重なる部分があるせいか、いい按配で押さえが利いていてとっても良いです。井上ひさし先生が実際にどういった方なのか存じ上げませんが、市村さん演じるフンは、確かに井上ひさし先生がある面ではこうだったのかなと思わせるものがありました。

小池さんは2度目。世田谷パブでご贔屓さんと共演していた「バンデラスと憂鬱な珈琲」以来の再会でありますが、何というか凛とした佇まいは、なるほどこの位置にいる理由をはっきりと感じさせます。佇まいにぶれない感があって納得。

じゅんさんはもう何回目か忘れたぐらい拝見していますが、相変わらず期待を裏切らない面白さ。
警察長官という権力側の人なのに、いじられる姿があまりに嵌っているので、戯曲的に権力を揶揄するには、これほどない役者さんという感じ。ブンに対抗するために悪魔ちゃんと組むんですが、じゅんさん&聖子さん(悪魔ちゃんメイク)2人一緒の画面への収まりの良さに絶句。
じゅんさんといえば聖子さんだもんねぇ、って違うか(それは高田聖子さん)。

悪魔ちゃんの呼び屋の山西さんは初見ですが、うさんくささ満載でいかにも「呼び屋」という職業がぴったり。本来は権力者側の役が多い方なんだそうですが、アウトローで遊び半分で、それでいて一筋縄じゃいかない感じが、じゅんさんと対峙するあたりでむちゃくちゃ生きています。ま、呼び屋といっても初回だけで、見ていた限り2回目以降は悪魔ちゃんが自分で出てくるんですけどね。

で、悪魔ちゃんです(笑)。いや、役名聞いた時にイメージぴったりと思ったことは・・・ゲフンゲフン(首締めないで)・・・は、ともかく、すっかり可愛さよりも怖さが付いてきたようで、一部には「悪魔様」という呼ばれ方をし出したようですが、今のイメージは完全に「悪魔様」だなぁ。

▼ちょいと脱線

■「私はロックでポップな悪魔様!下民ども、私の元に跪きなさい!」というのが合いそうじゃないですか・・・ぐぇっ(首締めないで)

もとい(笑)

ビジュアル的には去年吉祥寺で見た『世界は僕のCUBEで造られる』で佃井皆美嬢が演じた蜘蛛女に瓜二つ。
といって知ってる人がどれぐらいこの作品を観るか分かりませんが・・・

聖子さんの悪魔様の何が凄いかってあの眼です。
ちなみに眼には色が付いていますが、あの眼に完全に「遊び」がない(爆)。

悪魔「ちゃん」といえば遊び半分ないたずら心、みたいなイメージだったんですが、1場のエンディング手前のシーン以後、特に、眼がマジだよ・・・がくがくぶるぶる状態になってて。そりゃ子どもさんも泣きますってば。
そう、ブンにあしらわれたときの悔しがり方の可愛さと来たらもう(結局それか)。あそこだけ悪魔「ちゃん」でした。

あ、雰囲気的には「プライド」の萌ちゃんにも似てます。

それと、パンフレットの稽古場写真の聖子さんの眼力に射貫かれます。なんか黒木メイサさんぽい感じする(←好きな系統)。

さてそろそろネタバレ参りますか・・・

そういえば今回は神奈川初日も観劇出来ず(西宮でジャンヌ見てました)、東京初日も見送って、ネタバレ避けが久しぶりに大変でした。そっか、皆さま普段こういう思いをされているのですね・・・



悪魔ちゃんが直接ブンを始末することに失敗して以降、悪魔様は表面的に仕掛けることをしません。

そんな中、オリジナルブンは「権威」を皆から奪うことで、フンの描いた理想郷が実現できると信じて・・・

「人から権威を取り上げれば、皆平等で平和な世界が生まれる」・・・その思いはしかし、各国のフンの集まった場で脆くも崩れ去ります。原語から翻訳されるとき、各国の事情ゆえに、元の作者の思いが全て含まれているとは限らず、それぞれのブンにとっての重要な部分は少しずつ、人によっては大きくぶれていて。

それでいて「ブン」は本から飛び出した存在だから、どうやっても死なない”四次元の存在”。
そのブン同士が向かい合えば、結局永久のにらみ合いにしかならない・・・

ブンがフンを愛し、フンの作り出したい理想郷のために力を尽くし、そしてブンが矢折れようとも、フンは「書くこと」を止めようとしない・・・それがこの作品の一つの幹であり、それはどことなく、「書き続けること」に命を燃やした主人公な「組曲虐殺」に通じるものがあるなと。

翻って、当初は表面的に動かなかった悪魔様はブンの内部分裂を好機として攻勢に出ます。
その追い詰め方は「権力者側から見たブンの存在の厄介な部分」を的確に突き、まさに「悪魔に魂を売った」警察長官の立場を守っていきます。

あのシーンは正直、もっと憑依できると思ったけどな。悪魔様にしちゃ、理性が残っている感じがちょっと物足りなかったな。
かなり突っ走ってかなり自身を捨ててるけど、あそこだけは皮一枚残酷になれていない感じがして。

良い意味でもっと残酷になれると思うのでこれからに期待。あそこは心底震え上がりたい(歪んだ願望)

権威を奪って世界の平穏を求めようとしたブンと、
魂を奪って世界の混沌を引き起こそうとした悪魔。

そのどちらも正しさと間違いを持っているように思えました。

・・・

この日は女子会トークショー。

司会者1名+女性陣全員(5名)。上手側から登場し、下手側から順に司会者さん、飯野さん、新妻さん、小池さん、保さん、あべこさん・・・と座るはずが、なぜかあべこさんの横に椅子が一つ残る(笑)

飯野さん「ごめんなさい、私が2つ目に座らなきゃいけなかった」

あべこさん「私が2つ分座るのかと思った(笑)」

という感じでスタート。皆さま衣装は劇中のままなので、当然新妻さんは悪魔様ですが、隣の小池さんが羽根を触って遊んでた(爆)。

役柄について語ったときの話で、

新妻さん「台詞の中に「野坂昭如さん」って出てくるんですが、実は存じ上げなくて、Wikipediaで調べたら『あぁ、大島渚さんと殴り合った人だ!』と(笑)。あの衣装のシーンは楽しいです」

司会者さん「スクールメイツも」

新妻さん「そうなんですよ、スクールメイツも命賭けてます(笑)。客席からの冷ややかな視線がたまらないです(大笑)」

あべこさん「そういえば自分、高校当時スクールメイツだったんです

一同「えぇぇぇぇぇぇぇぇ」

衝撃のカミングアウトに一同(舞台上&客席)びっくり。

そういえばあべこさんといえば、
「私だけ衣装合わせの時に着物が無かったんですよ。後で知ったんですけど私だけ二反使っているんです(笑)」

というエピソードで笑いをとってました(ちなみにムードメーカーだとか。なるほど)

作品については皆さま「40年前の作品とは思えなくて現代を思わせる作品」という点は触れていらして。

新妻さん「このシーンで笑いが起こるんだって新鮮でした」

・・・えーと、玲奈ちゃんで(別作品で)同じ言葉を1ヶ月以内に聞いているんですが。

皆さんおっしゃっていましたが、稽古場で繰り返しやっていると見えないことが、客席の反応で分かることがあると。
小池さんのこの台詞にはこういう意味があったんだと言うことが、お客さんの反応で改めて知らされることがある」
という言葉が印象的でした。

たぶん、「分かったことにしていた言葉」と、実際に戯曲が舞台になったときの「その言葉の意味」というのは、客席にどう伝わったかによっても、反響の仕方が違うのだろうなと。

客席で原作を分かっている作品だとしても、実際に舞台を見たら違うものだし、しかもそれは時によって日によって違う感情を感じたりするものだし、感受性を研ぎ澄まして舞台上で演じる役者さんは、当然それ以上のものを感じるのだろうなと、作品の違いを超えて納得させられたりしたのでした。

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