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劇団HOBO『犬、だれる』(2)

2013.9.16(Mon.) 14:00~16:00
新宿サンモールスタジオ B列1桁番台

劇団HOBO第5回公演、千秋楽です。

最後のご挨拶で座長のおかやまはじめさんが仰っていたとおり、「台風の日に台風の作品」という按配で、補助席も通路までははみ出さず、それでもほぼ満員での千秋楽。

今回は結局実質2回の観劇で、初日・楽だけ見たようなものですが、両日とも満員で何より。5分だけ拝見した金曜ソワレは通路まで補助席で埋まり、他日もソワレは全般的に盛況だったようなので、新宿という土地柄と、19時30分という設定、その上作品としての心地よさ、それらが合わさってできたものではないかと思います。

千秋楽を迎えましたし、がっつりネタバレ込みモードで(というか最近いっつもですけどねネタバレ)

・・・

舞台は沖縄の南の最果ての島・南神無島(みなみかんなきじま)。
登場人物は8人(男性5人、女性3人)。

その中で地元の方と思われるのは2人だけで、島の観光課課員・時男(本間剛さん)と、読みは「おおや」だけど大家じゃない、大谷(林和義さん)。
仕事で来ているのは派出所勤務の巡査・前田(おかやまはじめさん)

そして、それ以外の5人は全ていわば「わけあり」でこの島に流れてきた人たち。

事実婚で移住組が秋平(有川マコトさん)と正子(松本紀保さん)

若い頃に同じく移住してきたけど相手の男が3ヶ月で音を上げて帰っていって取り残された須賀子(高橋由美子さん)。

ツアーコンダクターの仕事で滞在(というよりほとんど移住)の照之(古川悦史さん)。須賀子ママ(スナックのママさんです)が惚れてます。

で唯一のお客さんが正子の妹、直子(小林さやかさん)。

前回、有川さん演じる秋平が「喧嘩農家」から繋がってると書きましたが、はじめさんの巡査も「ハロルコ」から繋がっていますし、古川さんの照之が後で自分の過去について語ったときの”(ホームレスとかの)ルポライター”ってのも前作「ナイアガラ」から来てるんですよね。この辺に気づいた方からはちょいちょい笑いが起こっていました。

観光資源のもずくをゆるキャラにした「もんずくん」の着ぐるみ費用(相場の100~150万より安い50万)で請け負うという省吾さん(笑/中の人は今回欠席)に50万を持ち逃げされた時男。

時男の苦境を救うべく須賀子ママが着ぐるみ作り、そして秋平さんが着て、毎日3回のフェリー入出港時にお出迎えするということとなり・・・(島の臨時職員扱いで、給料も出る)

都会から来た人にとっては「ゆったり時が流れる素敵な空間」であっても、そこに住む人にとっては「平凡な日常」でしかない。直子から東京の話を聞いて東京(実際には浦和)に憧れる時男にしてみても、都会人の直子に言わせれば、東京だって「お金のない人にはつまらない街」と言う。お互い、ないものねだりなんですよね。

今回、嬉しかったのは女性が3人いらっしゃったこと。普段は紅一点で由美子さんしかいないので、女性間の関係というものがHOBOでは描けなかったわけですが、今回、まぁ物の見事に気っ風のいい3人が揃い踏み。それぞれの女性の(役の)男性観の違いが面白かったなぁと。

一番地に足が付いてたのが秋平と正子の組合せ。秋平が着ぐるみでやらかした話を、正子に言い出せなかったときの話にしたところで、それほど深刻じゃなかったですし、過去の「農業の失敗」の話も、秋平は正子に言ってる。ある程度信頼関係が出来上がってる。

時男と直子は「これから関係が進展するかも」の関係ですが、時男が前向きに「この島でやっていく」と宣言したことで、むしろ物理的な距離が離れる分、心理的な距離は近くなった気がします。

で、もう1つのカップルが須賀子と照之なんですが・・・まぁ何というか、こういう瀬戸際キャラやらせると、どうして光りまくりますか高橋由美子さまは・・・。何というか、火が付くとグーの音も出ないほど追い詰める、その技は芸術的ですらあります。

男から見ると、細くても洞窟でも、逃げ道がちょっとだけ欲しいのが本音ですが(笑)。
なんですか、これどこまで実話ですか(爆)。

印象的だったのは、須賀子ママの過去。実は大谷さんと結婚していて、須賀子ママが不倫して別れた。でも手切れ金としてスナックもらった。「罵倒された方がマシ」と吐露していますが、それゆえに、照之がこの島に来た理由と、知らなかった過去を知ったとき(過去のことそのものではなく、過去のことを話してもらえていなかったこと)の時の「自首なんて許さない、自分だけ楽になるなんて許せない、逃げて逃げて苦しめ」と言った時の迫力ときたら・・・なんかもう本当に病んでるなと。

大谷さんにとっては意識するしないかに関わらず、須賀子ママにとっては、「自分のせいで離婚するのに、自分の働き場まで相手から提供してもらう」苦しみから、逃げだそうにも逃げ出せない。
大谷さんは須賀子さんに無意識のうちに復讐してるわけで。
だからこそ須賀子さんにしても、自分を裏切った照之のことを許せはしない・・・

なんか「復讐の輪廻」みたいに見えて、そんなのを表に出すことなく日常を送る大谷さんと須賀子さん見ると、うわぁぁぁと思ったりもする(苦笑)。いやはや、人間って悪魔を飼っているよねぇ・・・

温かい南の島で繰り広げられる、内実の非温かさ。
日常を送ることは、現実と向き合いながら、現実から逃げることとも思えて。

「何事もなければあと40年生きるんだよねぇ」という須賀子さんの台詞は、ものすごく刺さりましたです。
同い年って時に残酷です(苦笑)

そうそう、須賀子ママの名台詞

「馬鹿な男は可愛いけど、ダメな男はクズさ」

は名言過ぎてこれも刺さりましたわ-(苦笑)。

・・・

そんな劇団HOBO、次回公演は来年2014年5月20日(火)~2014年5月25日(日)、下北沢駅前劇場にて。
仮タイトルが「猫、なでる」です(笑)

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コメント

今回女性が3人になったので、物語のバランスが取れていた気がします。いずれも男前の女性。客演のお二人がなかなか良かった。あの南の島の地図も、パンフレットに書いてあったので、実在しているような気がしました。今回パンフレットでインタビューが掲載れていましたので、由美子さんが本音で語っていたこともうれしかったです。

投稿: てるてる | 2013/09/17 01:02

てるてるさん>
確かに今までは女性キャラを複数登場させるときは、「名前だけ出す」という苦肉の策で客席の想像に任せていましたからね。

「違った女性」として3人(しかも不思議に妙にキャラ被らない)いたことで物語に幅ができた気がしました。

対談も(お酒入っているせいか)いい感じの本音モードでしたね。

投稿: ひろき | 2013/09/17 01:35

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