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『巴御前 女武者伝説』

2013.8.18(Sun.) 15:30~17:45
明治座 1階右上段1列17番

明治座8月公演は『「源平盛衰記」異聞』と銘打った「巴御前」。
行くかどうか迷っていた作品でしたが、フォロワーさんからの評価がとても良かったので観劇を決めました。

明治座のインターネット予約「席とりくん」には”見切れ席”の設定があって、1階席のS席は1万円超えのところ、見切れ席はほぼ半額の5千円台。2階席のA席は5千円台が見切れだと2千円台という大変ありがたい設定になっています。

今回は上手側の1階見切れ席を選びましたが、座席表で意識して舞台側が通路になる席を選んだところ、これが大正解。

見切れといっても実際見切れるのは上から張り出した2階席の屋根部分だけで、席自体がちょっと前より1段上がっている(東京グローブ座の1階後方席がこんな感じでした)ので、ストレスなく観劇。ただ、音響だけはいかんともし難かったですね。全般的に台詞が通らない印象。センターじゃないから仕方ないとはいえ。

ネタバレ入ります、回り右お願いします・・・・




主演の巴御前は黒木メイサ。平成17年の明治座史上最年少座長(当時16歳、現在も継続中の記録)の「あずみ」も見ていて、その時の印象は正に鮮烈でした。世の中にこんなに動ける人がいるのかと思ったのを今でも覚えています。
6年ぶりの彼女はその時の勢いそのままで、懐かしさとともに嬉しさを感じたり。

フォロワーさんに指摘されて気づいたんですが、なぜか彼女には敬称を付けない自分。なんか、「敬称を付けないのが敬称」ってイメージがあるんです。
カーテンコールの時の紹介が生アナウンスで、その時「文句があるならかかってこいや」ってキャプチャーが付いてて、あまりのハマリ振りに絶句してしまったのですが、うん、イメージぴったり。

彼女が演じるは現世では陸上自衛隊三佐、しかしタイムスリップして源平の戦いの世に放り込まれ、「巴御前」として活躍するという物語。たぶん歴史が専門な方からすればツッコミどころ満載なのでしょうけど、自分は歴史よりも地理派なのでこねくり回してもあまり気にならないのがこれ幸い。

というか、演出の岡村さん自ら「つじつまがあっていないとお客さまからお叱りを受けることも、あえて構わないと思うことにした」とまで書いているので、確信犯ですよね(笑)

黒木メイサの巴御前は本当に青い。良い意味でとてつもなく青い。
理想を突き進もうとする姿が眩しくて、「小娘」と言われながらの存在感の凄さが半端じゃない。この作品では理想的に描かれている木曽義仲(的場浩司さんが演じています)との考え方のベクトルのシンクロ振りが凄い。

西岡徳馬さん演じる源頼朝をとことん悪役に描いているから、木曽義仲(源義仲)が本当にここまで良心的な武将だったかはちょっと信じがたいものがあるのですが、まぁそれはこの作品に必要な色づけなのでしょうね。

巴(現世では自衛官の朝陽)は未来から来ているため、当然未来のことを知っていて、権力者はよってたかってその力を利用しようとするのですが、義仲はそれを表だって利用しようとはしない。一の家臣に取り立てて一任しているから、実は利用しているんですけど、それを言っちゃ興ざめですね(爆)

この役を見ていて思ったのが、島原・天草の乱を描いた少女漫画「AMAKUSA 1637」の夏月とのシンクロ。女子高生がタイムスリップし、島原・天草の乱の世に自らの殺陣で自らを神格化(天草四郎となる)する物語と印象が被りまくって。その作品では軍師は日本一の頭脳という設定の英理がいましたが、今回の巴御前の場合は戦士と軍師を一人で背負って立ってるような感じです。そりゃ現世で三佐ならそうなんでしょうが。

それもあってか「SHIROH」にも似た印象を持ちましたこの作品。英理が寿庵に被るので頼朝は松平伊豆守信綱に印象が被り。そりゃ好きな方向性なはずですね。

メイサのアクションだけで見た甲斐はあるし、腹の底から絞り出す魂の叫びは、さすがつかさんから舞台を始めただけのことはあって、涸れ気味の声ということもあって、ガンガンに心情が伝わってくる・・・ことに比べると、ほとんど男性ばかりのこの作品、男全員束になっても彼女に敵わないのは正しいのかもしれないけどちょっと物足りない。台詞で対等に向かい合えてるのは西岡さんと、かろうじて的場さんって感じじゃないかなぁ・・・

それにしても「男はみんな嫉妬深い」は深いなぁと思った。巴御前(朝陽)にとってみれば、男性は束になってかかってはこれないとも読めるわけで、それでこその泰然ぶりなのかなと思ったり。

もう一人の女性を演じたのは元宝塚娘役の愛原実花さん。彼女は2役を演じますが、まぁなんというかこの2役を同じ人がやると、そりゃ巴御前も混乱するよなという配役。現世では自らの部下だった男性と、こちらでは源義経も2役なんですが、よりによってこの2役×2を2人で演じるのは、単純に巴御前を混乱させ平常心をなくさせようとする魂胆にしか思えない(爆)。

静御前が静かじゃないのもびっくりでした(笑)

エンターテイメントとして上質な出来だとは思うのですが、あえて言うなら結論が薄い気がしました。

こうなって欲しいという方向に物事は収斂して、カタルシスは充分にあるのでエンターテイメントとしての力は充分にあると思うし、演出の岡村さんいわくの「メイサをふたたび華やかに登場させるための舞台」としての効果は充分に果たしているとは思うのですが、最後のオチが少し薄くて。

ちょっと涙が引っ込んでしまったと言いますか、まぁその後いきなりダンスが始まったんでびっくりしたというのもあるんだとは思いますが・・・(苦笑)

中盤が良すぎるんですよね。

「命を粗末にするな、命より大事なものがあるはずだ」と言う巴に対して、「命より大事なものがあると言えるのは、お前が生きる世界が幸せだからだ。この世は命を賭けないといけないものがごまんとある」と答えた義仲が格好良すぎて。

この作品に生きる義仲は本当に理想に生きていて、巴は実はそこに何の因果か飛び込んできて、あえて言えば勝手に言い、勝手に動いているだけの存在。同じことを言っていても、バックボーンがまるで違う。極論してしまえば義仲には責任があるけど、巴には責任がない

巴はそこに圧倒されたんじゃないかと思うんですね。理想よりも自分の名誉や地位を優先する存在として、方や頼朝、方や後白河上皇、方や平家が描かれ、「理想だけでは生きていけなかったはずの世界」で、「理想を目指す青き武士」である義仲の存在がどれだけ輝いて見えるかと。

「他者を守っている実感がなかった」朝陽が、タイムスリップして源平の世で義仲の”理想”と出会い、「理想の未来を作ることの本当の意味と、自らがなすべきことの認識」を得て現世に帰っていく様は感動的だったし、後半の流れの軸がもう少し太ければ、もっと感動できたんじゃないかなと思ったりしました(1幕でも2幕でも泣いちゃいましたが)。

・・・

カーテンコールの生アナウンス(出演者が出演者を紹介してる)のは新鮮で面白かったです。
プリンシパルクラスはキャプチャーが付いてたんですが、破壊力が凄かったのは的場氏を紹介するときの「スイーツ男子」でした(笑)。5分前とイメージ違いすぎる(爆)。

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