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『ひめゆり』(1)

2013.7.27(Sat.) 18:30~21:10
シアター1010 2階D列10番台(下手側)

ミュージカル座の中でも1、2を争う有名な作品ですが、実は初見。
ずっと気になっていたのですが、キャストを見る度に毎回迷っていて。
話を聞く限り、女学生のキミと、上原婦長のキャストがどうなのか、毎回見ては見送っていました。
たぶんとても好きな空気感の作品だから、初見は満足いくキャストで見たくて。

今年も最後まで迷っていて、決め手になったのはキミ役の彩乃かなみさん。

実はこの方は舞台で見たことがなくて、芳雄氏と新納さんと組んだ初回の「Triangle」の時に由美子さんに似てる、って感想を聞いて以来気になってはいて。でも同系の方だと多分気に入ってしまうだろう(笑)と避けていたんです。

先日のクリコンでも「GOLD」を歌う勇気が凄いなぁと聞いてみたかったんですが、叶わず。
その夜見たNIHK(新納さんがホストな動画番組)で、かなみんを拝見。

新納さんとの掛け合いがとっても自然で(共演済みだから当たり前ですけど)一緒に出ていた一路さんとの接し方も、とってもいい空気感で、それでさらに「ひめゆり」についてキミ役について話されていた真摯な様がとても印象に残って。
この方がキミなら、きっと自分が”大好きな「ひめゆり」”を見せてもらえるかな、と思ったのが最後の一歩を踏み出すきっかけになりました。

彩乃さん演じる女学生のキミは、学徒動員の女学生の中でもひときわ光る存在で、皆が頼りにする存在。それがとてもピュアに表現されていて。

かなみさんのストレートにクリアな歌声もとても良い。戦場の中で綺麗事を言っているかもしれないけれど、希望を失いかける皆に、だからこそとってもまっすぐ伝わってきて。傷ついた兵士は肉体だけじゃなくて精神まで傷ついていて、学徒動員の女学生は看護の専門の勉強もしていないわけだろうから「役に立たないな」ぐらいに思ってる。
でもキミは兵士から「学生さんありがとう」と言ってもらえる、それに相応しい献身をしていて。キミの存在が、同じ女学生にとってもどれだけの勇気を与えていたかがとってもクリアに伝わる。

戦場の中に身を置いても、それでもどこか牧歌的だった女学生たちが現実を認識したのは、「私たちは死なない」と信じていた時に、1人欠けたとき。そこからは坂を転げ落ちるように絶望に落ちていって。”針の一穴”というけれど、もう一点、精神的な支柱だったキミが檜山一等兵と一緒にいたことで、はぐれて、”皆の中からキミが消えてしまった”こともきつかっただろうな。

そんな中で凛としていた上原婦長、その役を演じた木村花代さんが本当に素晴らしかったです。「ミス・サイゴン」のエレン役で拝見したときは、新演出版の演出の所為もあって、実はあまり好きにはなれなくて。
でも今回、花代さんの婦長はとっても良かった。この役って、ハートがあってこそだと思うんです。
現実を冷静に分かっていて、でも夢も持っている存在。今回、キミと婦長がシンクロする瞬間が何度もあって、明らかに2人の間には通じ合ったものがあったことが、演出以上のものとして伝わってきたことが感動でした。

あの婦長さんなら、キミが憧れたことも分かるし、あのキミなら、婦長さんが自分の身を賭してまで未来を託したことも分かるし。婦長さんにとって、最後の瞬間をキミに託せたのは何より救いだっただろうな・・・。

婦長と女学生のシーンも、そこにいる”先生”2人が生徒を戦いに巻き込んだことを後悔し絶望する中で、ただ一人の”希望”として婦長が女学生に語りかける強さに感動・・・しながら、皆が立ち直ったことで張りつめたものが切れたように涙する婦長が、胸に迫って。”ひときわ強い”婦長というイメージであっても、しっかとしたハートを持った人だからこそ、重圧に押しつぶされそうになる辛さは人一倍なんだろうなと、そんな気持ちが伝わってきました。薬が足りず人を救えず、悔しい思いでただ立ちすくむシーンも辛さが伝わってきたな。

戦場という場所を離れた一般論として、割り切った方が楽に生きられるということは何事においてもあるのでしょうが、きっとそこには感動もエネルギーも生まれ得なくて。楽じゃない道を生きようとするからこそ、人は人を動かしうるのかと思えて。

・・・

この作品では”生きる”ことを成した3つの形があって。

1つはキミで「皆の思いで『生きてこそ』の気持ちを最後まで持ち続ける」。レミのカフェソングに通じる部分はあったかな。
もう1つは姉妹で「絶望しそうな妹を励まして、姉妹で家にたどり着く。妹は「置いていって」と言うけれど、姉にとっては妹を置いていったら自分も生きていられないという想いはあっただろうなと。2人で帰らないと意味がないという点ももちろんあったろうけど。
そしてもう1つが3人組。息苦しい2幕の中でこのコミカルが気持ちを和らげてくれます。諦めかけたキミ、諦めなかった姉、そして生には執着していてもどことなく生き残るために精神を使い切っていなかった3人組。

3者3様で、「最後は生きることを諦めなかった」からこそ生き残ったことは共通していて。ただ、生きることを諦めなかったからといって必ずしも生き残れたわけではないけれども、ただ「生きてこそ」の想いを”持たずして”生き残ることはできない、ということを感じ取れたのはとても良かった。

”今回がラスト”といわれている浦壁多恵さんの「小鳥の歌」も感動。それこそ”生きることを諦めなかったからといって必ずしも生き残れたわけではないけれど”の一面ではあるわけで、「ただ自由に生きたい」と思う願いすら叶えられないからこその”悲劇”なんだなと。

・・・

1回見たことで分かることがそうそうないのは分かった上で、”初演から20年間上演されている”作品のメッセージを肌で感じられたことは貴重な体験で、それを今年見られた幸運に感謝。

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