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『シルバースプーンに映る月』(3)

2013.6.23(Sun.) 14:00~16:05
東京グローブ座 1階D列10番台(センターブロック)

しるすぷ3回目。

1階D列はご存知の方もいらっしゃると思うのですが、目の前が通路な席で、超良席。前回が見切れシーンが多かったことのフォローを戴いたかのような席で、全体も部分部分も見える、とても素敵な体験をしました。

この日一番笑ったポイントが、「幽霊との交信のために曲を作ろう」という提案を泉美さん(内田亜希子さん)がした時に、ひとしきり会話した後、雅也さん(鈴木綜馬さん)が「続きは上でお食事しながらでも」と答えるんですが・・・

その言葉を聞いた瞬間、上手側にいた美珠希さん(新妻聖子さん)、その瞬間、満面の笑みを浮かべつつ「お腹空いたなぁ」と言うかのごとく、お腹をおさえていて爆笑しました(笑)

・・・どんだけあてがき(爆)

ちなみにその時、美珠希さんはお母さま・彩月さん(戸田恵子さん)に連れられていくのですが、直後の不機嫌さは食事をおあずけにされたからに違いない(笑)

前作「Bitter Days ,Sweet Nights」との類似点を書いたのですが、そもそも泉美さんの名字は「市之瀬(いちのせ)さん」。
新妻さんが同作で演じていた役がそもそも「一之瀬ナツコさん」(2役のお姉さんは「一之瀬フユコさん」)でしたね。

この日、上口くん演じる恭平ってば、綾佑と美珠希のデュエットに、バックでオーバーヒートしちゃって、踊りまくった足がソファーを直撃して大笑いが起きていました(笑)。

そしてネタバレ続行ですよ-。

・・・

作品のキーになるのに、実は聞き逃している台詞というのはあるもので。
3回目にして初めて引っ掛かった台詞が、綾佑さん(坂本さん)と美珠希とのやりとり。

美珠希「幽霊を信じていないの?」
綾佑「信じていないのは幽霊だけじゃない。あの日から自分は全てが信じられずに投げやりになっていた」

多分ここで、美珠希は、以前から薄々感じ取っていた綾佑の”粗暴さの裏にある本当の気持ち”の内容がようやく分かったんだと思う。

綾佑は誰に対しても怒鳴って言うことを聞かせようとする。それにただ一人正面から異を唱えていたのが美珠希なわけだけど、結局、当たり散らせば自分の周囲に人はいなくなっていく。それが綾佑にとっては自分にとって一番居やすい空気だと信じていて。で、そんな美珠希がなぜ綾佑のそんな様子を見て助けたいと思ったか・・・

それは美珠希が中盤で歌っている「自分も迷っている。どうすればいいのか。だから同じように迷っている彼(綾佑)のことを放っておけない」ということなんですね。
この作品の中で、綾佑の「迷い」はずーっと最後直前まで続いていくんですが、美珠希の「迷い」って意外に表に出て来ないんです。むしろ美珠希が自分の迷いから目を背けているとも言えて、だからこそ不意に母親との関係で一気に傷ついたりしているんですよね。
自分の現実を受け止める覚悟ができていないのは、実は美珠希だって同じ。

綾佑に対して美珠希が口にする言葉って、立場が同じだから自分への刃でもあるんですよね。
自分への迷いの出口を、この場に求めているんだろうなと思う。
本当は、その救いは母親(彩月)に求めてきたんでしょうけどね。
彩月も、自分から美珠希を切り離したように見えていて、実は美珠希が自分で立ち直ることを促したようにも見えて。
ラスト、美珠希に「またね。」と言って去っていく様は、とても素敵だったな。
母娘の気持ちの行き違いって、この作品であまり語られてないけどきちんと解決しているんですよね。

・・・

綾佑の姉であり、雅也の妻であるミユキ。そのミユキへの想いが、2人と、2人の関係を先に進ませようとしない・・・。

この設定、以前どこかで見たことがあったなぁと思ったら、やっぱり少女漫画で見てました。
赤石路代先生の「P.A(プライベートアクトレス)」3巻の11話「ディケンズをみてごらん」。

この作品の主人公は「個人的な依頼に応える女優=P.A(ドラマ版では榎本加奈子さんが演じて好演でした)」で、その洋館にメイドとして呼ばれ、洋館の主人の前で「奥様が生きているように振る舞う」ように頼まれるというストーリー。

でもこの「P.A」という作品は仕事で呼ばれながらも、なぜだか人間的に振る舞うのですね。この話でも主人に対して、望まれるように振る舞いながらも、最後は「奥様が亡くなったことをはっきり認めないと、先に歩いては行けない」ということをご主人に自ら認識させて、そして人知れず洋館から去るのです。

今回の作品で、美珠希の存在というのは実に不思議で、以前も書いたのですが、なぜ門外漢のこの人が主人に楯突き(笑)、追い出されもせず、しかも、かつてから洋館に勤める執事からも好意的にとらえられているのかと・・・

執事2人、園山さん演じる女性の執事と青山さん演じる男性の執事は、戸田さん演じる彩月に対しては極めて警戒感を持って接しているのですが、美珠希に対してはあたかも応援するかのような立場に立っています。
積極的な支持こそなさそうに見えますが、美珠希が屋敷を出て行こうと決めたとき、掛川は憤る美珠希を止めにかかっていますし、堂島は綾佑を宥め窘め、「綾佑に本当に必要なのは泉美ではなく美珠希である」ということに綾佑自ら気づかせるようにしている。

2人は先代の頃から敷島家に仕え、恐らくは敷島家が上手く回ってきた頃のことも知っていて、敷島家がなぜこうなってしまったのかに対して胸を痛めながらも、でも自分たちの力ではどうしようもできないと思っている。
そして、そこに現れたのが”我々のゲートルード(春の嵐)”である美珠希。

先ほど「門外漢である彼女がなぜ」と書いたのですが、逆に言うと「門外漢だからこそ」言いたいことが言えるし、それが決して不快じゃないというのが、とっても心地良いんですね
(ちなみにこの辺の設定がPA11話にすっごく似てます)。

その鍵になるのは「想い」だと思うのですね。

美珠希が歌う「想いを乗せて口にしてみよう」という歌詞はまさに美珠希の魅力と存在感を見せて余りあるもので。
ただ歌うだけじゃない、「想いを乗せて」歌うことに意味があるんだと。

そういう”役”として魅せられるようになった歌い手・女優の聖子さんの姿に、ただただ、とても嬉しくなります。

・・・

人は信じたいものを信じる-だから綾佑も雅也も美珠希も、自分が一番楽になる、物事の信じ方をしていたと。
でも、「信じたくないものでも信じないと、人は先には進めない」ということを、3人はお互いがお互いで知ったのだと。

綾佑も雅也も「ミユキは亡くなった」という「信じたくないこと」を信じたからこそ、未来へ踏み出せた。
美珠希は確かにお客さんに辛く当たられたかもしれないけど、「他人から言われたことに自分のプライドが負けた」ことが本当の彼女の”迷い”なのだと思うし。お客さんからどう言われようと、自分は自分のやるべきことをやらなきゃいけないんだ、と思ったことが彼女にとってのスタートだと思う。

ラストの曲の重奏感が、以前より更に聖子さんリードボーカル的になって濃くなっていた(歌い出しは坂本さんですが)に感動。

「今日というスープをスプーンでひと匙掬えば、明日への力が」。

前作「トゥモロー・モーニング」と全く同じメッセージで、開放感も瓜二つで客席にダイレクトに伝わる作品。
素敵な作品にまた出会えたこと、嬉しい限りです。

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