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『シルバースプーンに映る月』(1)

2013.6.14(Fri.) 19:00~21:05
新大久保・グローブ座 A列1桁番台(下手側)

G2さん演出の新作、スタイリッシュミュージカル、待望の初日です。
お陰さまで最前列で初日公演を拝見でき恐縮至極。

サスペンスというよりはスリリングな要素を織り交ぜた、でもハートフルな作品。

ヒロインポジションにあたる新妻聖子さんは、彼女の役史上最上級にピュアな役どころで、それなのにG2さんお得意のあて書きが随所に割り込み・・・

「えっ、私を褒めてくれたあの言葉は嘘だったの?!(怒)」

とかまるで地(笑)

一部ネタバレが入りますので、完全にシャットアウトされたい方は回れ右ですーーーー。




役どころを簡単に整理すると、メイン4人、サブ4人、演奏2人の合計10人のカンパニ-。
主役兄弟(非血縁)のうち、大会社の御曹司役が坂本昌行さん。
先代社長に見込まれて養子に入り、会社の跡取りとなった役に鈴木綜馬さん。
屋敷のメイド頭に戸田恵子さん。
そして彼女の隠し子が新妻聖子さん。

G2さんいわく「人生がうまくいかない4人が集まった」洋館で繰り広げられるひととき。
サブの中で大きく存在感を見せるのが内田亜希子さん。良家の令嬢という雰囲気を出しつつ、芝居も結構きっちりしてる。新国立劇場演劇研究所出身の方なんですね。

この作品のタイトルにある「月」。自分の「月」に対するイメージは、なぜだかわからないけど「欠けたる月」なので(満月はなぜかあまり興味を惹かれない)、この作品に出てくる皆が「欠けたる」ものを探しているイメージととてもだぶる。
ある人にとって「欠けている」ものが、他の人との関わりで埋められていく様を見ていると、とてもほっこりします。

他人の心の隙間を埋めまくる度が高いのが新妻さん演じる美珠希。この作品にとっての彼女は、名前の1字にもあるように「希」。つまり他人にとっての「希望」そのもの。新妻さんご自身の地を活かした、押しの強さを随所に覗かせつつ(笑)、すこぶる自然に他人の後押しをしているキャラクターなのがとっても新鮮。

正直、今までの彼女の持ち味からすれば、もっと強引に従わせるようなイメージなのですが(苦笑)、良い意味でアクが薄くて後味が良いです。いつもはとんこつなのに今回は薄めの塩味のような(をい)。

坂本さん演じる御曹司の心の隙間をいち早く見抜いて、強引でなく搦め手でやらざるを得ない立場に追い込む。役柄的に本人に自覚はないでしょうが、明らかに戸田さん演じる母親の娘です(笑)。謀略家に見えて実は抜けているところばかりな母親に比べて、純粋無垢を表に出しつつ、実は他の人をいい方向に一番持っていっているのは美珠希で、それによって美珠希自身もいい方向に変わっていく様がとってもいい。

人間関係の中で一番ぐちゃぐちゃしている、坂本さん演じる御曹司と、綜馬さん演じる社長。
自分にとって唯一の味方だった姉を自分から奪っていったと信じ込む彼にとって、「腹を割って話す」選択肢は彼にはなくて。だからこそすれ違い、だからこそ分かり合えず、あまたの誤解を積み重ね、2人の気持ちは離れていく。

「以心伝心」という言葉があるけれども、「以心伝心」って、言葉を交わさなくても気持ちが通じ合う関係になれたからこその話なんだな、ってこの作品を観て思って。反目し合う2人に、自然に入り込んでいく美珠希。(ソファーに2人の間にちょこんと座っている姿が異常なほどに似合っているのが笑った)別に「仲直りさせよう」としているわけでも何でもなくて、何が問題なのか全部わかっているわけでもなくて、でも2人が「言葉を交わしていない」ことには本能的に危機感を覚えているようで。

「話し合わなきゃ、分かり合えない」
「後ろを向いてばかりじゃ、明日は来ない」

という美珠希の佇まいは、とても勇気づけられるものがあります。美珠希は自分自身も一度進めなくなっているだけになおさら胸に染みいります。

ひるがえって、内田亜希子さんが演じている女性も、役どころがネタバレですので今日のところは控え目にしますが、女性としてのプライドを見たかな。実はもっと格好いいと思っていた戸田さんの役が意外にヘタレで(笑)・・・でもそれをあれだけ面白く見せる戸田さんはやっぱりさすがだと思う。

・・・

「シルバースプーンに映る月」って、「Bitter Days,Sweet Nights」とのカップリング作品なんじゃないかなと思えて。
(実際に2曲ほど似た曲が出てきます)

あの作品で、新妻さん演じるナツコ(2役でフユコも演じていますが)は姉が自分のことをどう思っていたかのつながりを探しに帰国しますよね。
今回の作品でも、新妻さん演じる美珠希は、母とのつながりを探しに、戸田さん演じる母を捜し当てます。

つまり、2作品で新妻さんが演じる役はいずれも「欠けたる月を探す」ことで共通して、それでいて自分の周囲を前向きにすることへの自覚がない(←褒め言葉です)ことが共通していて。

”お金持ちの象徴”である「シルバースプーン」を”照らす”月。
見る限り、シルバースプーンの中心には敷島兄弟がいて、そのスプーンを照らすためにひときわ輝く月は新妻さん演じる美珠希だったかなと。その存在感が、強すぎることなく見られたことが、何より嬉しかったです。

公演はこの回含めて2枚確保していますが、何となく悪い虫が(笑)。

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