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『レ・ミゼラブル』(9)

2013.5.5(Sun.) 12:00~15:15
 帝国劇場2階L列40番台後半

2013.5.6(Mon.) 13:00~16:15
 帝国劇場2階補助席センターブロック

新演出版本公演my初日、2日目です。

今回のレミは個人的に3週間ルールを設けていて、キャストさん毎におおむね3週間のローテーションで観劇日を決めていて。

初期は4月28日(日)ソワレが玲奈エポ&郁代コゼで起点になるはずだったのですが、あろうことか2人とも外れた結果、玲奈エポが5月5日(日)、郁代コゼが5月6日(月)になることに。

ちなみに5月6日マチネは郁代コゼと和音ファンテが本公演初日。
実はこの時点で本公演初日を迎えていないキャストがまだいて、平野エポ(5月8日ソワレ)、育三郎マリウス(5月28日ソワレ)。

両日とも事前に取っておいた日ではないので、5日は某掲示板で入手、6日は久しぶりに帝劇に朝8時台から並んで入手。
2階補助席(8席)のうちセンターブロックは4席ですが、そのどれもが残っておりびっくり。以前はこの席から捌けていっていたので、客層が変わったんだなと実感。

以前は「ルドルフ・ザ・ラストキス」(初演。懐かしの玲奈マリー)でこの席で見た記憶があったのですが、目の前に遮る物がないのでお買い得感高し。

・・・・・・・・・・

2日間続けて見たせいもあって、色々と感じるところがあったのですが。

普通、複数キャストが配役された場合って、その役者さんの個性や、配役の組み合わせの妙を楽しむところがある訳なのですが、この2日間、玲奈エポの個性と思ったものが翌日の昆エポもやっていて演出だったことに気づかされてびっくり。

一例を挙げると、「エポの帽子のツバ」の話。

劇中、エポニーヌが初めてマリウスと話をするとき、マリウスはエポニーヌの帽子のツバ(最初は立ってる)を下ろしてあげるんですね。でも、マリウスがコゼットに心惹かれてからは、エポニーヌと向かい合っても帽子のツバを直すことはしないのです。

エポニーヌ、切ないなぁ、気にしてももらえないんだよね・・・とじわーっと来ていたシーンなのですが(何しろ今回初見が玲奈エポだったのでなおさら)、このシーンが昆エポでも完全に再現されていたのを見たときに、自分の中でずっと感じていた今期レミの違和感がどういうものなのか、すとんと納得がいったんです。

今期のレミは見る限り演出側(というかイギリスからの来日スタッフ)の意向が最優先されているように思ってはいたわけですが、つまるところ演者に自由はないのだろうなと。

役者さんという方々は程度の違いはあれ、「自分が演じたい物を演じたいように演じる」ことを生き甲斐としていると思うんです。演出家が与える物を完全になぞって演じるタイプと、演出家の意向を踏まえた上でアレンジして演じるタイプに分かれるとは思いますが。

うちのご贔屓さんのうち、とある方は「演出家さんの意向は意向として、板に上がれば演じるのは役者ですから」と言った過去を持ちますが(笑)、そこまで極端でなくとも、「自分が役者である以上、自分らしく演じることが役者としてのアイディンティティ」と思っている役者さんが大多数であろうことは想像がつきます。

そして客であるこちら側も、少なくとも私は、ご贔屓さんだから見に行くという前提として、自分が好きな方向の演技をしてくれる、自分が好きな歌い方をしてくれる、自分が好きな外見だ(笑)、といったものがあるわけです。

その人でしか見られないもの、その人のその役でしか見られないものを見るために劇場に足を運ぶ。
キャストスケジュールというものは、その楽しみを保証するものなのだと思うのです。

なぜなら演じるのは一人の個人であり、一人の役者であり、そして自分の好きな役者さんであるからして。

今回、度重なるキャストスケジュールの変更に振り回されて感じていた自分の中の違和感。

つまり、演出側からしてみれば、「誰もに同じ演技を要求しているのだから、その要求に(スタッフから見て)応えられている人を先に板の上に上げるのは当然」という解釈なわけで、その点に対して一点の曇りもないのだと思います。

「キャストの個性に寄り添いすぎることなく、どのキャストからでも『レ・ミゼラブル』の世界を感じていただくべく、プレビュー期間は試行錯誤を講じますので、プレビュー期間のキャストスケジュールの変更についてはご容赦いただきたく存じます」と書いていたなら、きっとまだ納得したんだと思うんです。(バルジャンの怪我に伴う公演中止は別として。)

役者さんへの負担を感じたのは、「決められたことを決められたとおりやる」ことだけを強いられることへのもやもや感。
自分が本当に必要とされているかどうかが本当に感じられるのかなぁ、と思ったのがこの2回を見ての感想だったのでした。
それに気づいたからなのか、2日目の観劇終了後は、本当にどっと疲れたのでした。

・・・・・・・・・・

さはさりながら、ではご贔屓さん別の話へ。

玲奈ちゃんの演技の真骨頂は、相手役とのコラボレーションだと思う。

故に一幕最初の、誰とも絡まないシーン(アンサンブルシーンは除く)では微妙に子供っぽさがぎこちない。よく比較されることが多い新妻さんは逆で、ソロ演技が前提で共演者とのコラボレーションはその次。
(新妻さんが一人芝居経験者で、それより芝居経験が長い玲奈ちゃんが一人芝居経験がないのは暗示的)

マリウスが1幕後半で歌いますよね。
「彼女と行くか仲間と行くか、2つに1つ」って。
これ、いつも普通に聞いてたんですけど、この日はびっくりするぐらい心に響いて。

だってエポは彼女になれないなら、仲間になるしかマリウスの近くにいられないわけで。
だからこその「ワンデイモア」、だからこその「恵みの雨」と思うと泣けてくる。

今回の新演出版では多くの歌詞が変更されていますが、そのうち一つがマリウスがエポにバリケードでかける言葉。

「『なぜ』戻ってきた」が「『いつ』戻ってきた」になっているんですね。エポがいることに疑問を持たないマリウスというのも朴念仁度が上がっているのか下がっているのか…。それこそエポを「仲間」と思い込んでいたのでしょう。

今回、特に強調されてますが、エポはこの街でも有名なやり手ぽいですからね(生き抜くという意味で)。
それをガブに語らせ(歌わせ)、そんなガブを橋の上でガキ扱いしかしない玲奈エポだからこそ、マリウスの腕の中で生き絶えたエポを、追いかけていくガブの姿に合点がいく。
ガブが弾を拾いに行くさまが、なんだかエポの弔い合戦というか、逆に自暴自棄になっているような感じさえするぐらいに。

6日のエポは昆エポ。
プレビュー以来でしたが、凄く良くなっている1幕。シーンによっては玲奈エポよりも好きな演じ方しているところがあったりで、甲乙つけがたい感じ。ただ2幕はやっぱり玲奈エポの経験値に圧倒される感じがあって、例えば「恵みの雨」は一人で死んで行きそうなタイプのエポパターンになっているとか・・・(苦笑)。

玲奈エポだと、その存在感ゆえに、「エポニーヌを失ったことが、バリケードにとっての一つのターニングポイント」であることがはっきりしているように感じるんです。
コゼットしか見えていなかったマリウスがエポニーヌを自分の腕の中で失い、そしてバリケードの中のムードメーカーであったガブローシュがエポニーヌを失い自暴自棄に・・・という点からして、「そむけようもない『何か』」に怯える時がそこから始まっているように感じるのです。

・・・・

コゼットは5日がレイナコゼ、6日が郁代コゼ。(4回見ていまだ若井コゼに当たらず。4月28日ソワレを回避したもので。)

レイナコゼは悲鳴をあげたや否や、マジコケしまして(笑)、門から遥か遠くでコケたもんで、扉が閉まりきらずに何とも不思議な光景となっていました(笑)。新演出のさらに本公演版かと思いました(笑)。

郁代コゼはそのシーンのコケるシーンが妙に上手くて(笑)、位置でいうと10m近く上手寄り(ここが正しいポイントなんですけど)。門の脇で「さっきまで大丈夫だったのにいきなりコテンとこける」のがコゼットの定番になっています。

そういえば、この日観劇後、お知り合いに指摘していただいて思い出したのですが、郁代コゼ、パパを待つ間、足をぶらんぶらんさせるんですが、それが「満たされない」コゼットの心情を感じさせてすんごくいい。確かレイナコゼでは見かけなかったので郁代ちゃんこっそりアドリブだと思うけど、あれ良かったなぁ。

コゼットは前半に妙に反抗期を演じさせられているところがあって、”パパ大好き”が売りの郁代コゼには少々分が悪いわけですが、その分2幕のパパを溢れる愛情で包み込む様は本領発揮でとっても良いです。あれはマリウスは嫉妬しちゃうんじゃないだろうか(笑)。しかも自分の命の恩人だから最初から負けているという・・・

ファンテが和音さんだったのもあって、ファンテがバルジャンを包み込む様子と、その直前のコゼットがバルジャンを包み込む様子が瓜二つで、あぁ親子だなぁと。バルジャンに対する無条件の信頼なんですよね、共通する空気が。

個人的な好みだと、やっぱりコゼットはバルジャンを愛していて欲しいんですね。

バルジャンが人生を懸けて守りきったコゼットに愛されないと、単純に淋しいということもあるけれど、バルジャンが全てを言えない理由をただ責めるだけではなく「何か理由があって、それはいずれ教えてくれる」と信じているコゼットであって欲しくて。

きっと技術的には色々とまだ積み重ねるものがあるのだと思うのだけれど、やっぱりレミは「ハート」あってこその作品だと思うので、「愛」に溢れたコゼットという意味で、郁代コゼにはもっともっと進化していってもらいたいです。

・・・・

他キャストで出色だったのは、原田マリウスと理生アンジョルラス。革命が成功しそうな気もしたぐらいエネルギッシュ。
ただ、別の見方をすると、煽動的で足に地が付いていない感じが、この作品のバリケードに、どことなく通じる部分があるような気がしました。

次回は3週間ルールを守れば(笑)、5月25日ソワレ。それだけ経ってどう変わっているのか、期待しています。
予定通りなら、念願の玲奈エポ&郁代コゼのmy初日-。

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コメント

私はまだ1回だけなので、比較しての感想は非常に読みごたえがありました。お忙しいのにありがとうございます。

>その人でしか見られないもの、その人のその役でしか見られないものを見るために劇場に足を運ぶ。
>キャストスケジュールというものは、その楽しみを保証するものなのだと思うのです。

本当にそう思います。これまで東宝さんはそれに関しては揺らがなかったし、その点においては信頼できた。
演出側の考え方はどちらかというと作品主義を歌う某劇団に近いのかもしれませんね。

>「キャストの個性に寄り添いすぎることなく、どのキャストからでも『レ・ミゼラブル』の世界を感じていただくべく、プレビュー期間は試行錯誤を講じますので、プレビュー期間のキャストスケジュールの変更についてはご容赦いただきたく存じます」

これなら私も、個人的にはまだ納得できたと思います。
3月のアンサンブルキャストスケジュール変更や、せめて福井さんの怪我によるキャスト変更&抜擢あたりの時点でこのくらい説明されていたなら、あんなに振り回されなくて済んだと思う…。
何でも「演出上の都合」の一言で片づけてもう少し丁寧に説明しなかったことが、その後どんどん傷を広げていった気がします。

「新演出」を伝えることにUKスタッフの意識は向いていると思いますし、プレビュー期間中に演出自体もどんどん変わっているのでは、キャスト自身の色を出すどころではまだなかったでしょうね。
この新演出が日本で今後どう育っていくか、この中でどうキャストが色を出してくるか、これからの楽しみにしていたいと思います。

>「彼女と行くか仲間と行くか、2つに1つ」
>だってエポは彼女になれないなら、仲間になるしかマリウスの近くにいられない
>「エポニーヌを失ったことが、バリケードにとっての一つのターニングポイント」

今回も目から鱗がぼろぼろと…次の観劇が楽しみになりました。

新演出のバリケードでは前よりも、
「なすすべもなく歴史の歯車に押しつぶされ踏みしだかれていく」ような印象を
学生たちの死から受けたのです。
グランテールの問いかけが以前より学生たちに強い動揺を与えているように見えるのも
グランテールの立ち位置の違いと共に
エポニーヌの死、ガブローシュの動揺も効いているのかもしれないなと
今、ふと思いました。

ついつい長くなってしまいますね。長文失礼しました。

投稿: judy | 2013/05/07 23:21

judyさん>
いつもコメントありがとうございます。

作品主義、キャスト軽視というのなら、それをもっと前に言っておいて欲しかったというのが自分の感想ですが、それはひとえに「日本側スタッフが客の気持ちで作品を観る視点がないからじゃないか」と思えてなりません。

「来日スタッフがこだわるんだもん、自分たちは従うしかないんだもん、『演出上の都合』って言葉も発明したから、なんでもそれで逃げればいいよね」という”心”のなさ、”愛”のなさ、それはレミゼの作品世界とは相容れない違和感を感じて。

人間愛を謳うなら客も役者も人間扱いしようよと・・・。

バリケードが落ちた後のカルーセルのシーンは、新演出版の方が何か納得がいきましたね。

あの甘さじゃ落ちるべくして落ちたんだろうなという気持ちと、「自分らを追い詰めているものが最後まで分からなかった」甘さを感じて。むしろ学生ならその方がリアルかなと、そこは納得できましたね。

エポが去り、ガブが去り、分からないうちに自分たちの支えが消えていった・・・その意味でターニングポイントというか、最初の小さい穴だった気がしています>エポの死。

自分がエポ押しだからそう見えることの自覚はしていますけれど。

投稿: ひろき | 2013/05/08 00:50

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