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『旅猫レポート』

2013.4.6(Sat.) 19:00~21:00
紀伊國屋サザンシアター 21列センターブロック(上手側)

演劇ユニット「スカイロケット」第1回公演。

演劇集団キャラメルボックスの阿部丈二さんと、作家の有川浩(ひろ)さんがコラボレーションしたユニットの第一弾。

出演者から演出家に至るまで、ほぼほぼキャラメルボックスということで、事実上のキャラメルボックス出張公演のようになっていますが、多田直人氏も同時期に別のところでやっているし、みんなエネルギッシュですよね。

キャラメルボックスの好きな面々がこっちに固まっていたので(ももこさん、綾ちゃん、細見さん)こちらを選択。
サザンシアターがあっという間に埋まって、2桁を超す当日券を求める人の列。

うー、この作品ネタバレしないように感動伝えるのむずかしー。

・・・

主人公は阿部丈二さんで、その飼われ猫(元・野良猫)が細見大輔さん。

いやぁ、ありえないぐらいにぴったりなキャスティング。

丈二氏の真面目で心配りいっぱいの、”他人に愛される”キャラクター造形は本人とシンクロしまくるし、細見さんの猫の自由さがイメージとぴったり(笑)。細見さんってこの言い方がいいか分からないのですが、「何かやらかしてやろう」って油断ならない空気がとっても好きで。自分的にはそういうカテゴリにいる男性俳優さんって多いですね。岡田達也さん(キャラメルボックス)とか、橋本じゅんさんとか、植本潤さんとか。

もとい。

子供の頃に引越を繰り返していた主人公は、結果として全国各地にかけがえのない友達がいて。

よんどころない(本人談)事情で猫を手放さざるを得なくなった時に、その大切な猫を引き取ろうとしてくれる友達たちで。
そして猫を引き取ってもらおうとする旅は、猫にとっても「自分の生活圏をはるかに超えた」体験で、「猫でここまでいろいろなものを見た猫はいないだろう」と本人が語るぐらいに珍しい存在。

とにかく主人公の格好良さに目を惹かれます。外見じゃなくて内面。

ここまで完璧な主人公ってそうそういない。
ここでいう”完璧”はテストで100点取るとかそういう計数的なものじゃなくて、なんというかすべてが「いい」んですよね。
端的に言ってしまえば人の大きさで、しかもそれを鼻に掛けたりもしなくて。

久しぶりに会う人みんなを前向きにしてしまう存在って素敵だなぁと。

人間って何もしないとネガティブに気持ちが向く生き物だから、ネガティブをポジティブに変えるのが、演劇とかのライブ感だと思うのですね。

そんな主人公だからこそ、猫は自分が嫌われても他の人に貰われたくなくて、行く先々で喧嘩を売って見合い(爆)を破談にする。

・・・でもそれは主人公は分かっていたことじゃないかなと思う。
自分にとって大切な”猫”に、家の廻りだけじゃなくて多くの世界を見せてあげたかったんじゃないかなと思ったし、猫のことを口実に、自分にとって大切な人たちに、”久しぶり”etc・・・のご挨拶をしにいったんじゃないかなって。

何が「よんどころない事情」かは、ネタバレになるのでここには書けませんが、まぁ、大体ご想像の通りで。

そして何年ぶり、何十年ぶりかで出会った旧友は、ほとんど例外なく彼に引け目を感じているんですね。
当時は言えなかった思い、言葉を抱えて、どうしようと思いながら会うのですが、彼と会うことで昔のわだかまりや思い残しを綺麗に消して別れてる。それがすごいなって思う。

恵まれなかった過去を悔やんでも憎んでもしょうがない、自分がここにいられることに感謝して生きられれば、世界は昨日より今日が明るく見えるよね。

・・・そういうメッセージが伝わってきた、とっても素敵な公演でした。

キャストの皆さんも好演。ももこさんと理恵さんが姉妹って時点で「どんな贅沢!」って思うんでございますが、綾ちゃんと細見さんの並ぶシーンがあって、綾ちゃんが細見さんをなでなでという、期待通りのシーン(爆)がちゃんと存在して微笑ましかったです(2人はご夫婦)。

「お姉さん猫」を演じたももこさんが「お姉さん」と言われたときに手で鏡見るジェスチャーしながら「仲間由紀恵?」って言ってたのはさすがだと思った(笑)。さすがは瞬発力の塊。

ラスト手前の看護婦な綾ちゃんが言った一言は胸に刺さったなぁ。

主人公の彼を一番理解しながら、それでもそう言われざるを得ない”猫”の居場所。だからこそ坂口さん演じた女性はあそこまで号泣したんだよね。

・・・でも、「聞かれたらダメと答えざるを得ない」という言葉と、野良に戻ったその猫に餌をあげている看護婦さんの姿にはちょっとうるっと来た。言葉じゃなくて何かが伝わったんだよねと。

・・・

終演後、鳴り止まない拍手の中、有川さんもご登壇。というかどこから出てきているんですか(笑)←舞台上のセットから這いだしてきてびっくりでした。

「客席のみなさんが作品にとって最後の(ピースとなる)キャスト」とはいつもおっしゃっている言葉だそうですが、「演劇から遠い人たちに見てもらえるように」とおっしゃっていたのが印象的。売れっ子作家さんにして演劇にそこまでの想いを持ってくれる方ってそうそういないから、とってもラッキーな出会いだったんでしょうね。

既に次回公演が決まっており、来年1月20日~26日に銀座博品館劇場。みっこさん、岡内さん、安理ちゃん出演の「ヒア・カムズ・ザ・サン」。キャラメルボックス版は見ていないのですが、是非その公演も観てみたいです。

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コメント

こんばんは。
原作を読んで号泣した作品だったので
お話が聞けて嬉しいです。
読みながら思い出し泣き。
そうなんですよ、黙ってやってくれたら黙認もできるけど、聞かれたらダメとしか言えないんです!(笑)
餌を上げる、っていうのは舞台独自のシーンじゃないかな。見てみたかったです。

演劇に遠い原作ファンや
後から有川作品を知る人にも出会えるように
映像化したりはしないのかなぁ…とちょっと残念です。

投稿: judy | 2013/04/07 00:29

judyさん>
原作は未見だったのですが、旧友に
その後渡された手紙のシーンとか
号泣でした。

主人公のこれでもかの波瀾万丈を、
ひけらかすことなく前向きに生きる様は
感動物でした。

いちお、細見猫に餌は渡していなかった
のですが、猫を可愛がるようなシーンが
存在しました。
あのご夫婦、猫5匹飼いだそうですから、
日常が芝居に生きていると(笑)。

投稿: ひろき | 2013/04/07 00:53

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