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『ミス・サイゴン』(12)

2012.9.1(Sat.) 17:00~20:50
青山劇場1階B列40番台(上手側)。

B列・・・実はこの作品での青山劇場の最前列です。
この作品を最前列で見ると見えるものが色々違います。

この日のキムは笹本玲奈さん。
今期通算で笹本キムが3回目、新妻キムが3回目なので今期6回目(小数点以下四捨五入)。

この日、マイクに入るか入らないかぐらいのキムのつぶやき台詞がとても深くて。

一番印象的だったのはトゥイと対峙して、キムに向かってくる時にキムが発した「お願い、来ないで」って言葉。
ここだけじゃなくて、玲奈キムはとてもトゥイに対する好意を感じた。
クリスのことは愛したけど、トゥイのことを好きだったんだよね、みたいに思えた。

「生きてきたその理由(わけ)を、『知りたいなら』見せるわ今」、という言葉がキムから発せられたときに、本当はキムはトゥイには知って欲しくなかったんだろうなと思えた。「知りたいなら言うけど、でも私は言いたくないの」、「私はあなたを傷つけずに去りたいの」みたいな印象を受けて。

新妻キムの場合は、トゥイとの関係にはきっちり気持ちの区切りをつけている印象があって。ご本人も多少匂わせていましたが、「昔は許嫁だったかもしれないけど、自分の両親を殺したグループ(ベトコン)の仲間になった時点で、もうトゥイはあの時の『自分の相手』じゃない」という感じが。

玲奈キムと優一クリスと言えば、「ミス・サイゴン」では超有名なキスカップル。
とある人曰く「最後の感動が薄れるぐらいキスしてる(苦笑)」カップルですが、この日、玲奈キムが「プリーズ」の後のソロで、クリスとの過去を懐かしむかのように唇に指を立てて感情に浸っていたのがすごく印象的。
そうだよね、あれだけキスしてくれたんだもんね。まぁ、キスが全て愛情なのかは別の話だろうけど・・・。

何しろ他カップルでは、結婚パーティーのキスは成功した記憶がないのに(その前に引き離される)、このカップルはいつのまにってぐらい早く完了してて(笑)、「キスはさせまい」としているかのようなドリームランドの他女性メンバーを悔しがらせている(爆)。

あのシーン、「一人が出ていく」のに他のみんなはドリームランドに残る(それを前演出版では部屋でやっていたのを新演出版では開店前の店でやっているのは露骨ですよねぇ)わけでそりゃキスをさせたくないのも分かりますわなぁ・・・。

で、話は戻って。

反面、実は優一クリスは花代エレンには途中までキスを全くしないのですね。
エレンがキムの登場を経てクリスに思いの丈をぶつけるシーンで、クリスはエレンをキスで宥めようとはしなくて。
エレンが納得して(ジョンは納得してはいないけど)初めて、クリスはエレンにキスをするんですね。それを見たとき、優一クリスの役作りが、何となく分かったような気がしました。で、その「クリスがエレンにキスするシーン」、その瞬間に玲奈キムの「懐かしいキスと、あなたの声・・・せめて今夜はあなた、タムを連れに来て」の叫びがこだまするんです。無論演出ではあるはずなのですが、クリスがエレンを選んだことが残酷なほどに表現されているシーンなんだな、と思ったりします。


そういえば聖子ちゃんと玲奈ちゃん、ダブルキャストでやった「MA」の時に、聖子マルグリットが「人を信じたがっている眼」、玲奈マルグリットが「人を信じられない眼」って書いたことがあるんですが、今回の新演出版キムだとそれが明確に逆で、聖子キムは「人を信じられない眼」、玲奈キムが「人を信じたがっている眼」に見えます。
時を経たからなのか、役柄との相性なのか、興味深いものがあります。



この作品を見ていると、アメリカの「悪意」とベトナムの「敵意」の中で、ただ普通の人たちがもがき苦しむ物語に思えるのですが、それからすると敵役に見られがちなエレンだって別に「悪意」な人じゃなくて、むしろ「善意」な人。
自分が妻で、権利を主張しているだけでもいいのに、キムのことも心配してるいい人。でも信じていたクリスに全てを打ち明けられていなかったからぶち切れてクリスを追い詰める。
クリスも決してフォローされるべき人ではないとはいえ、演出なのかどうなのか、花代エレンのクリスへの責めは、「あれじゃクリスの立場がなさ過ぎる」とちょっと思う。どんどん花代エレンの歌も責めもきつくなっているような気がして、ちょっと見てて辛い。

新曲「メイビー」も青山公演まで来てようやく歌詞の意味が理解に追いついたけど、(ネタバレなので白反転)「クリスの気持ちが軽くなるならキムとより戻すのもいいのかもね。クリスと付き合ってたときになんか影があったけどその意味も分かったし。でもキムと付き合ったらクリスは苦しむだけよね。だから私しかクリスを助けられないわよね」というなかなかの我田引水論法(笑)。
まぁでもそれがただの「普通」なんであって。

クリスはミュージカル界3つの指に入るほどのダメ男と言われますが、それでも自分の過去に誠実だと思うけど。
むしろ人ごとだからといって言いたいこと言ってるジョンの方が自分は気になる(笑)。
言うだけなら誰でもできるわけで・・・ジョンが苦悩した期間が全く描かれていないからそう思うんでしょうけどね。



最前列上手側というのは、実はキム役者さんのファンにはたまらない席で、2幕の某シーンは目の前でとあるスタイル抜群さが認識できたりするし、かなりのシーンでキムがこっちに向かって歌うんですね。ジョンに向かって話してて、目線の先がちょうど自分のところらへん、みたいなのとか。



この日のタム君は恐らく自分としては初の荒川槙タム。
カーテンコールでは玲奈キム&優一クリスにぶらーんと両手でぶら下がるブランコごっこしてました(笑)。
何度かのカーテンコールの後、下手側から市村さんがそーっと登場。なんか「しー」って言ってるけど・・・あ、手元にあるのはバースディケーキじゃないですか。

幕が上がり・・・市村さんから「今日はクリス役、原田優一の30歳の誕生日です!」と言う言葉とともに、オーケストラ&会場全体で「(はっぴーばーすでぃ・とぅーゆー)×2、(はっぴーばーすでぃ・でぃあ・ゆうちゃん)」というカテコ。
3本立てられたローソクの火を吹き消し、コメントを促され、原田君からコメント。

「何が起こってるのか全く分かりません(笑)。『ミス・サイゴン』公演中、しかも出演回にお祝いしていただいて本当に嬉しいです!ありがとうございます!」と。

その後、幕が一度降りた後、優一君がケーキにかぶりついて指で「Good!」(美味しい!)の合図。隣にいた玲奈ちゃんが「(舞台上でケーキを)食べるのっ!?」みたいに素で驚いていたのがとても面白かったです(大笑)。

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