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『ミス・サイゴン』(9)

2012.8.18(Sat.)
 12:00~14:45 厚木市文化会館1階7列30番台後半(上手側)
 17:00~19:45 厚木市文化会館1階4列10番台中盤(下手側)
 ※なお、同会場は3列分をオケピで潰しているので、前者は4列目、後者は最前列です。

いずれも、FCさんに頑張っていただいた結果です。

というわけで、1ヶ月半ぶりの「ミス・サイゴン」新演出版、体力勝負なマチソワです。

新演出版は玲奈キムのプレビュー初日(7月2日ソワレ)の1回観劇時に、とにかく精神的にむちゃくちゃ叩きのめされたので、どこまで追い詰められるのかと覚悟して臨んだこの日のマチソワ。

マチネは新妻聖子キムの初日公演。
ソワレは笹本玲奈キムの公演。

という、「これを逃すわけには参りますまい」な組み合わせ。

プチ遠征のごとく意外に遠い厚木も、行ってみると会場の外に丹沢山系が見えたり、厚木名物(ってわけでもありませんが)「くら寿司」があったり、移動はバス業界の雄、かの有名なかなちゅー(神奈川中央交通)だったりで、意外なツボポイント満載。

さて。

自分自身、プレビュー公演のめぐろ以来、地方公演を全部すっ飛ばして厚木まで空白期間にしてあって、ずいぶん不思議がられたのですが(笑)、現実として他作品(主に「リンダリンダ」)と日程調整が上手くいかなかったのもあるんですが、この日マチネの新妻キムを見てつくづく自分の気持ちがわかって。

7月の自分は、まだ「ミス・サイゴン」モードになることを許してなかったんだ、というか無意識にバリアーを張っていたんだということが。
2012年ミス・サイゴンカンパニー最後のピースとなる新妻キムが登板してこそ、自分の気持ちの中で「ミス・サイゴン」新演出版が始まることができるということ。

今回の、7月・8月の新妻さんの無茶スケジュールについては色々と思うところはあるけれども(個人的には2004年の「ミス・サイゴン」登板時の由美子さんの「真昼のビッチ」スケジュールぶつかりがトラウマレベルなので・・・)、玲奈キムが既に新演出版にどっぷり浸かっているのはわかっていながらも、自分にとっては新妻キムと玲奈キムが揃って初めて自分が「ミス・サイゴン」に浸るのが許される、と思っていた部分があって。

それだけにこの日のマチソワは、自分にとって新演出版とこれから半年付き合っていくための、大事な大事なハードルだったりしたのです。

個人的な思いは以上の通りとしても、実際の「ミス・サイゴン」カンパニーも、大なり小なり上記の要素は含まれていたはずで、まさに「欠けたピースが全部嵌った」マチネの熱さはハンパなく。

新妻キムは、正に勢いで押しまくる、(本人談)フルスロットルキム。

前回の新妻キムが前回のソニンキムを吸い込んじゃったような(笑)力押し。それでいて意外なほどに新演出版との相性もしっくり。エンジン飛ばしまくったら新演出版からはみ出るかと心配していたのですが、1ヶ月かけて熟成を繰り返してきた新演出版は、プレビューに比べてずっと懐が深くて。

正直、「今やれる限界」をこの日の新妻キムは体現していたと思います。
というか、力押しでしか乗りきれないと思っていたからある意味想像通り。
きっとキムの繊細さや思いの深さは、これからの青山公演以降に期待ということなのだろうと思います。

そういえば新妻キムは、何カ所か「体力の限界」を感じさせるシーンがあり。特にタムを持ち上げるシーンはかなり辛そうだった。これ言ったのが新妻さんだったか笹本さんだったか忘れたのですが、タムを持ち上げるのにはテクニックがあるって言っていたような・・・。「命をあげよう」直前のタムを抱き抱えて走り込んでくるシーン、タムを床に座らせた後、表情を歪めて右の腰をさすっていた新妻キム、あれはリアルに見えました(笑)。

あと、トゥイを殺めた後から、さすらうときの青ブラウスの服が妙にしっくりきてて、さすがは実質アジアンな新妻さん。

プレビュー公演(この時は笹本キム)のあまりの虐待されぶりに引いていたのですが、新演出版が馴染んできた(この日のソワレの笹本キムは、プレビューの時ほど抵抗感なく見られた)以上に、なんか新妻キムは虐待され慣れしているような空気(あくまで空気ですので念のため)なのが不思議でした。

いずれにせよ、今まで積みあげてきた2004年/2008年の「キム」への思いが彼女を支えたのだろうし、本人も言及されていますが、この無茶スケジュールの中、「ミス・サイゴン」を必死に作り上げた共演キャスト・スタッフに何よりの大きな拍手を。

そこを持ってすると、ソワレの笹本キムは新演出版の先輩キャストとしての面目躍如で、体格の違いとはいえタムを軽々と持ち上げ(カーテンコールに至っては片手でひょいと持ち上げ)るばかりか、トゥイを殺めるシーンのスナイパーアングルが超高度なアングル(斜め下からトゥイを撃ちに行ってた)だったり、色々と興味深く。

笹本キムがトゥイを殺めた後、離れたところからじっと見ていたから兵士に気づかれて追われることになるんですよね。
こういった新演出版のポイントでの自然さは、やっぱり笹本キムに軍配って感じです。

プレビューの時から歌詞がいくつか変わっていたのがちょっとびっくりです。

プレビュー時には気づかなかったところも前方とあってちらほら。

・「ドリームランド」で相手が付かなかったジジが、エンジニアに無視されて夜の闇の中ひとりとぼとぼと帰るシーンとか。

・キムの「ムーランルージュ」での衣装は昔テレビ東京系でやってた某深夜番組の○○○なるグループみたいだなとか。

・クリスに「待ってろ」と言われた回想シーンで、律儀に階段で体育座りしたままの玲奈キムが萌えるとか。

・タムを抱き抱えるように足を組み替える玲奈キムの動きが漢前すぎるとか。

・マチネ終演時の新妻キムの右目には明らかに光るものがあったとか。

・それなのに隣にいた座長殿が手を繋いでくれないので自分から手を掴みに行ったマチネなキムさんがいたりとか。

・なのにソワレのキムさんとはとっても波長合って手を握り合っているとか。

・バンコクの街中でポストカードを売ってるエレンさんがいるとか。

・ホテルシーンであやうく下手側の椅子をひっくり返しそうなぐらい動揺してるマチネなキムさんがいたりとか。

なんかごった煮すぎてちょっとはまとめようよ、って感じですが(笑)

この日のマチソワの印象を改めてまとめておきますと、

新妻キム:熟練キム
笹本キム:円熟キム

といった感じ。

時に年齢が笹本キムの方が年上に感じるシーンがあって意外。一幕の笹本キムは無理に幼さを出そうとしていた分、新妻キムの方がしっくりきた反面、二幕の新妻キムは押し一辺倒で変化に欠けた分、笹本キムの精神的な大人さが印象的。

この日見ていておぉっと思ったのがソワレのエンディング。

「私は最後の仕事を」と言ったキムに対して、エンジニアが「ぴくっ」と反応していたのが見えたんですね。
あぁ、エンジニアはこの時キムが決断したことを認識したんだなというのが分かった。
キムにとってエンジニアは、「頼りにせざるを得ないけれど大嫌いな人」だというのが感じ取れたのが、新演出版では印象的。
打算で結びついた関係というのか・・・。

女性を売り物にして稼いでいるエンジニアという人間を、キムは本当は心の底から軽蔑しているけれど、自分が生きるためには彼は必要な人物。大嫌いなエンジニアに頼らなければならない自分の不甲斐なさをキムは責めているように見えて。

ソワレのラストシーン、タムを奪い取るようにキムから引きはがすエンジニア。

このシーン、新演出版で一番嫌いなシーンだったのですが(せめてあのシーンはキムが自分の意思でタムを渡す事にしておいて欲しかった)、でもよく考えると、あのエンジニアの姿は、「自分がアメリカに行くには、タムは大切な『アイテム』なんだ」ということ。

キムが何かに当てつけるように死を選んだようにしか思えない新演出版なのですが、何となく「他人を利用しようとする全て」に対する当てつけのように思えて。

トゥイの怨念がキムの未来を縛って、
キムの怨念がエンジニアの未来を縛って、
キムはタムをその外に連れ出したくて。

ヒロインであるキムさえ、聖人君子ではないところにこの作品の魅力があるように思えたりします。

あ、特にマチネに思ったんですが、「キム・ザ・ラスト・キス」ってエンディングに思えました。
ソワレは年中キスしてるみたいなカップルだったからその印象があまりなかったんですが(爆)。
優一クリスの狂った激しさが特に印象的。再演の井上クリス以上に激しいクリスに出会えるとは思っていなかった・・・。

次回は8月22日(木)ソワレ。
青山劇場公演の初日(新妻キム)です。

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