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『Bitter days , sweet nights』(3)

2012.8.11(Sat.) 18:00~20:00
CBGK!!シブゲキ E列1桁番台

千秋楽です。
8月2日から公演が始まってあっという間の千秋楽。さすがに3回見るのが日程的に限界でした。
世間一般的に十分以上だと言われるのは承知していますが(笑)。

初日がほとんど壁張り付きの上手側、日曜日がセンターなれど後方席、千秋楽がほとんど壁張り付きの下手側ということで、当然一番見やすいのはセンターでした。上手・下手はちょっと見切れが激しいですね、この作品(前方だからという理由も当然ありますが)。

もう千秋楽ですし、気にせずネタバレ全開で参ります。
DVD待ちの方は回れ右です-。

●生存率ダウン中

今回、新妻さんが演じたナツコという役は、物語後半にアメリカからやってきた恋人・ジュンによって明かされますが、「余命一ヶ月の恋人」(←ちょい違う)。

ジュンとナツコが2人で英語で会話してたときの新妻さんnatural englishは、「Are you sure , I will die ?」って聞こえたんですよね(「あなたは私がもうすぐ死ぬと言うことを分かっているのよね」→ジュンが頷く)。

あのやりとりでナツコはジュンが付いてくることを認めて、ジュンはナツコを諦めないといけないことを理解する、あの空気が実は好きでした。登場人物中、ジュンが一番大人(笑)←一番年下なのに

初日からそうだったかは覚えてないんですが、フユコの写真の紐を切った鋏を、ミノルに見えないように、こそっとしまうナツコが、なんか妙にいじらしかったり。

この日で一番のハプニングは、堀内さん演じるヤヨイに呼び出された新妻さん演じるナツコが読む楽譜。
ヤヨイが歌うその横で、ナツコの瞳から2粒の涙が楽譜へ、ほろほろと。

フユコの思いがナツコに伝わって、ヤヨイも報われたような気がしてホント素敵だったな-。

この日ずいぶん印象が違って見えたのが堀内敬子さん。
ある意味崩れない橋本さとしさん、新妻聖子さんに比べて堀内さんの感情の吐き出しは鬼気迫ってて。初日はずいぶんきれいに作ってたんだなというぐらいに進化。「どうしてミノルの肩を持つの?それじゃまるでフユコじゃない!」ってくだりはもう痛々しくて痛々しくて。

自分が一番ミノルのことを分かっている、分かってあげられていると思いたい自分は、でもミノルには拒絶され続けている。自分にとっては「やっちゃいけない」と思っていることばかりやっているナツコには、ミノルは心を許しているように見える。自分はミノルの一番になりたいのに、フユコの前ではそれを表に出すことは出来なかったし、今もナツコが自分にとってまるでフユコと同じ立場であるかのようにミノルの心を占めている・・・報われない切なさですよね。

そんな2人、ナツコとヤヨイがそれぞれの立場から歌うデュエット曲が後半部にありますが、新妻さん曰く実はこの曲、デュエットじゃなくてソロだったのだそうで、それを新妻さんの提案でデュエットにしたのだそうです(読売新聞インタビューによる)。今回の作品の最大のGJは実はこの曲をデュエットにしたコトじゃないかと、半ば本気で思っていたりします。

これと同じようなシチュエーションは「リタルダンド」では由美子さんと伊礼君のデュエットだったんですよね、そういえば。
(女性同士のデュエットじゃなかったからここだけは印象が違うんですね)

●男性不在の一之瀬家

この日、ナツコの台詞を聞いていて気づいたことが。

一之瀬家って、父親がかなり早い時期に亡くなっているようですね。
母親の病気の際に、抗がん剤の中止を申し入れたのは姉だし。

姉が一家の大黒柱だっただけに、それに抗えない自分が悔しかったのかなと>ナツコ。
姉は正しかった、それは認めざるをえないのに、気持ちは納得していない。

「愚痴を言った姿なんて見たことない」とミノルが言うような女性がフユコ。
ある意味、完璧すぎたフユコの前に、皆は自分の居場所を持てなくなっていたのかもしれない、と思わされて。
澄んだ池に魚は棲めない、という諺どおりというのか・・・。

葬式の席で「母親をなぜ静かに送ってあげられないのか」と食ってかかったナツコに、「人前ではきちんとしているように」諭したフユコ。「正しければそれでいいって言うの?」というナツコの心の声が聞こえるよう。

逆に言うと、「正しくあることが必要であること」というフユコの気持ちも考え合わせると、「正しさにこだわるフユコ」「正しさに反発するナツコ」は、新妻さんの両人格な気がします(苦笑)。

「私は間違っていない」という点において、フユコとナツコはさすが姉妹、ですから(笑)。

●死を扱うこと

前回もこの話は書いたのですが、どうも自分は「死」を利用するかのようなストーリーというのは生理的に嫌悪感がぬぐえなかったりします。ナツコの思いはナツコが余命一ヶ月だと分かったから届いたのか、それとも思いの強さそのものが強いから届いたのかが分からなくなるのが、ホンで考えると安易だなぁと。

そんな中でも、今回の作品で興味深いくだりがあります。
ナツコの病気は、実は母親と同じ病気。

母親がその病気になったときは抗がん剤を投与してもらった(つまり、がんということですね)。
でもその抗がん剤は副作用で母親を苦しめて、母親は「もうやめて」と言い続けた。
それでも自分(ナツコ)はどうしても抗がん剤の投与をやめて、とは言い出せなかった。
結局抗がん剤の投与中止は姉が医師に言って、そして母親は苦痛から解放されて亡くなった。
それでも母親の伸びた命は3ヶ月に過ぎなかった。だから私は延命治療(抗がん剤投与)より日本に帰ることを選んだ、と。

実に興味深いのは、ここはナツコが自分が意識せずに自分自身の精神的な子供さを吐露しているということなんですね。

『「もうやめて」って言った母親にどうしても抗がん剤の中止を言い出せなかったのは「自分が」それを見たくなかったからなんだ』、ということを知ったということ。

姉が「母親の気持ちを思って」抗がん剤の投与中止を申し出たからこそ、母親は安らかにこの世を去った。
故に、死ぬ間際までナツコではなくフユコの名前を呼び続けたのかなと・・・

このエピソードを聞いた時に、フユコは「責任」を知っている人で、ナツコは「自由」に生きた人で、という違いを感じて。

ナツコはフユコに勝ちたかったわけでもなんでもなかったと思うのですが、あまりにフユコが出来た人で、正論と責任に生きた人だったから、そのフユコの前で自分が、ナツコが生きている意味がどこにあったのか、確かめずにはいられずに、自分以外にただ一人フユコの本質を知るミノルにすがりに来たのだろうな、と思う。

ミノルがフユコの事をとある言葉で表現したときに、ナツコが呟く「私は本当は何も見えていなかったのかもしれない」という言葉は、帰国した頃のナツコではまず言えなかったであろう、ある意味「敗北」の言葉だけれど、でもそれは「勝ち」「負け」じゃない。

あと印象的なのは、「フユコがナツコをどう思っていたか」をナツコに聞かれて、外郭的な事実関係しか答えていないところ。「フユコが仮に何かを言っていたとしても、それをナツコに伝えたとしてフユコの気持ち100%は伝わらない。それはフユコに対して申し訳ない」という気持ちと、「ナツコが自分(ミノル)の言葉に、自分(ナツコ)が立ち直るきっかけを求めている」という気持ちに対する最大限の優しさだなと。

ミノルもジュンもあぁ見えて素敵な男性ですね。さすがはフユコとナツコが選んだ男性。

もちろん7年間もミノルを支え続けて、結局身を引くことになるであろうヤヨイも素敵。
身体は小さいのに心は大きいよね、ヤヨイ、そして堀内さん(役者さんとしてはとても好きなタイプ)。

●心残り
キッチンソングの変な振り付けはやめておいた方が良かった気がするんですが・・・(苦笑)。

●芝居の到達点。

この日のカーテンコールは、

bitter kateko , sweet cake

なんの事やら分からないと思いますが、詳細は後で明らかになります(笑)。

さとしさんだけがなんだか変な歩き方をしてきて会場内から笑いが。

「え、さっきサザエさん走りして出ようって言ったじゃん」@さとしさん

「本当にやると思ってなかった」@聖子さん

・・・・もうこの時点で面白すぎる。

進行は我らが座長、橋本さとしさんからスタート。

「本日はご覧いただきありがとうございました。このサイズの劇場でミュージカル、素敵なカンパニー、スタッフの皆さんと作れて幸せでした。」というような話を(もっと長かったはずだけど・・・)

そしてさとしさんの本領発揮の時間がやって参ります。

「本日千秋楽、新妻聖子が物真似をやります」(会場内やんやの拍手)

「えぇぇぇぇぇーーー」(本人の絶叫が小劇場全体に響き渡るw)

「なかなか上手いんだそうで」(さとしさんがもう止まらないw)

「×××××」(本人の名誉のために省略)
→あまりの恥ずかしさに、聖子さん、足から崩れ落ちていましたw

3mmも似ていない物真似でした」(さとしさん・・・・w)

気を取り直した聖子さんの千秋楽ご挨拶は、相も変わらず100点満点なご挨拶。
滑らかすぎるから忘れちゃうんですよこれが(笑)

「とても楽しい時間でした。

今日この回、実はケーキが実物なんですよ。
昼の回、ケーキが燃えまして(会場内どよめき)。
実はケーキは発泡スチロールで出来ていたんですが、昼に『なんか焦げ臭くて歌えないな』と思って横を見たら、えらい燃えていて(笑)全焼しちゃったんです。
だから千秋楽は本物のケーキで、後でいただくの楽しみなんです(←結局は食ネタのミュージカル女優さん)

素敵なキャストの皆さん、スタッフの皆さん、そして素敵なお客さまとのコミュニケーションで素敵な時間を過ごせました。これほど小さい規模の劇場でミュージカルをやることができたことは今まででほとんど初めてというぐらいで、嬉しかったです。ありがとうございました」

そしてさとしさんが引き取り、「ということは締めをこれからの方がやっていただくということになります」と言うや否や、舞台下手側の3人が奇妙な動きを・・・(笑)

舞台最上手にさとしさん、センターに聖子さんがいるということは、残りお3方、きよちゃん(ピアノの荻野清子さん)→上山君→堀内さんの順にいるわけなんですが、堀内さんが必死に上山君を後ろに押し出そうとする(笑)。残念ながら(爆)上山君がこらえて堀内さんが悔しそうな表情(爆)。

そして荻野さん。さとしさんいわく「生声貴重ですよ」でしたが、実は「国民の映画」で一度聞いてたりして・・・

「素敵なキャストの皆さんとご一緒できて嬉しかったです。お客さまにも感謝」とご挨拶。

そしてきよちゃんの挨拶が終わるやいなや、堀内さんが前に進み出る強引な技に打って出るも・・・

そこはさとしさん見逃しません

「それでは上山竜司~」

堀内さんの悔しそうな顔(2回目)が絶品でした(爆)。

上山君は降板になった迅君にも触れて(ちなみに迅君はこの日のマチネを観劇したそうですこちら)、「迅君も一緒でこのカンパニー。みんな一緒にこの作品を作れて良かった」と素敵なご挨拶。

堀内さんもキャスト、スタッフ、お客さまへの感謝の気持ちをひとしきり言われた後、「聖子ちゃんと一緒に歌を歌わせていただいて、聖子ちゃん本当に歌がお上手で、私まで歌が上手になったんじゃないかって錯覚して嬉しかったです」という天然すぎる挨拶が最強でした。
ぶんぶん首を横に振ってるナツコちゃんも素敵です-。

カテコ最後はさとしさんが結局締め。
「小劇場出身の自分なんでこの作品が新たな自分の原点になりました。
これから出演者それぞれ舞台や映像でお目にかかります。これからも応援よろしくお願いします。
本日はありがとうございました」

という締めで終了。さすが締め職人出身者は強いですね-。

おまけ
ロビーにジョン・ケアードさんがいらしてびっくり。隣にいらしたのは奥様(元ファンテーヌ)ですね。

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