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『ミス・サイゴン』(8)

2012.7.2(Mon.) 18:15~21:15
めぐろパーシモンホール 8列20番台後半

プレビュー公演2日目、笹本玲奈嬢のキムの初日ということもあり、会社からはちと遠い、都立大学駅近くのめぐろパーシモンホールへ。

朝早いのは辛いけど、こういう時だけサマータイムに大感謝。

新演出版の初日が前日(知念キム)で、なるべく情報をシャットアウトしつつも、少し聞こえてくる作品の印象。
8列といえど、実は前5列をオーケストラピットで潰しているこのホール。8列は実は3列目なのです。

新演出版は正直何を言ってもネタバレになるのが困ったところですが、まっさらな気持ちでご覧になりたい方は、早めに回れ右を推奨です。



よろしいですね?



いきますよ?



「ミス・サイゴン」という作品は、元々東宝ミュージカルの中でもかなり異質な作品だと思うのです。あえて言ってしまうのなら、「救いのない、身も蓋もない」ランキングのぶっちぎりトップと申しますか(苦笑)、もともと「綺麗事じゃない」ことを描く作品なのだとは思います。

再演時(2004年)に出会って以来、再々演(2008年)と見続け、オリジナル版が幕を下ろし、今回が新演出版。

新演出版はヘリコプターの実物も出てきませんし(CGです)、セットが小振りになるといった外観的なところばかり気になってはいたのですが、実際に見た印象は、むしろその辺りは全然違和感はなく(ヘリコプターのCGさえ違和感なく)、それより何よりすごいのは、作品全編に流れている「リアリズム」の濃さ。

ただでさえ作品テーマ的に「綺麗事じゃない」ことを扱っている上に、それを増長するかのようにさらに「綺麗事じゃなくリアルに」描こうとしているものだから、正直言って一幕は心の底まで疲れました。初回ということもあってか、心地よい疲れというよりは、本当にどっと押し寄せる疲れ。

イメージとしては最初から辛い担々麺に唐辛子入れまくるような感じですか(←ちなみに私はやりません)。

再演版が素敵な音楽を流すことで、とても重大な話を、ともすれば音楽で流してしまうような面がなかったといえば嘘になるとは思いますけれども、ここまで無理にリアルにこだわることまでしなくても良かったんじゃないかなぁ、というのが正直な感想です。

新演出版で自分が好きなのは、台詞の充実さですね。お互いの人物像を際だたせるのに貢献している印象。

そんな新演出版ですが、キャストは皆さん本当に素晴らしかったです。

何と言ってもキム役・笹本玲奈さんはまさに円熟のキム。

彼女が演じた今までのどんな役よりも汚れた服を着て、彼女が演じた今までのどんな役よりも長く髪を伸ばして、そして彼女が演じたどの役も凌駕するかのような存在感と歌唱。

新演出版が客席に与える衝撃は、キャストにも同じようにかかっているように思われて。

新演出版を見るまでは、「何で今年のキムは3人とも続投なんだろう」という思いは少しはあったんです(ご贔屓さんが2人含まれていることはとりあえず横に置いて)。

でも、実際見ると、再演版より新演出版の方が、キャストにかかる重しがものすごい。
これは初役でやるのはまず無理だと思います。

ただでさえキムはミュージカルアスリート役のトップに君臨するであろう役ですが、新演出版は心理的ダメージやら肉体的ダメージやらがこれでもかというぐらい押し寄せて、生半可な力量では明らかに乗り切れないと思わざるを得なくて、なるほどと納得せざるを得ないなと。

いくら賛辞を送っても足りないぐらい、玲奈キム、流石の出来です。

バンコクのクラブの自分の部屋で、不意打ちでタムにほっぺにキスされた時の笑顔が素敵でした。


今回、演出は大きく変わっていますが、音楽的には大きな変更があったのはエレンのみ。
エレンの「今、彼女に会った」が「Maybe」という曲に変わっています。

キムがホテルに来た後、彼女を見送った後にエレンが歌う曲ががらりと変わったことで、このシーンの印象はかなり変わっています。エレン役の木村花代さん、初見ですが噂どおりの素晴らしい歌唱力。とはいえエレンとしてはもう少し演技に厚みがあってもいいような気がしました(原体験が演技が濃いエレンだったのでそう思うのは当たり前なのですが・・・)

その他、一部歌詞が変わった曲がありますが(「ブイドイ」の一部の歌詞が変更)、全体的には「あぁ、サイゴンだなぁ」と感じられる素敵な音楽。この日のキム・笹本玲奈さん、クリス・山崎育三郎さん、ジョン・上原理生さんという、初日トリオ3人はそれぞれ役にフィット。理生君が上官シーンのところでちょっと違和感があったぐらい。

それにしても今回の新演出版、ジョンの露骨な遊び人ぶりとかは実はちょっとイメージ違ったりして。
リアリティってエロスなのかなー(苦笑)。ドリームランドも実際はあのぐらい「物扱い」だったんでしょうが、実際に目にするとやっぱりもやもやしたものは残りますね。

自分の感覚ではクリスは「精神的な幼さ」、ジョンは「偽善」がポイントなので、育三郎クリスはイメージとフィット。どことなくカズさんのクリスと印象がかぶったので、新妻キムと合いそうな気がする。上原ジョンはちょっと立ち位置に迷いがあるような感じでなんか萎縮している印象。




1幕の衝撃に比べると、2幕はずっとナチュラル。

玲奈キムのなんだか女王様みたいな衣装が微妙だったけど(爆)、ラストシーン以外はそれほどまでに違和感を感じず。
もともと2幕は再演版でも、それなりに露骨に作られていたような気がします。

でもキムが土下座してエレンにタム引き取ってよ、はちょっと違うと思うんだけどな。



この日は鳴り止まない拍手の中、何度も何度もカーテンコール。
玲奈ちゃんは時にタムを抱き上げて手を振っていましたが、さすがに4回目とかなるとかなり辛そうではありました。

新演出版1回見て心配なのは、「この作品マチソワ無謀でしょ」ということ。
厚木(8月18日)、青山(9月8日)、浜松(12月22日)と3回予定しているのですが、今から戦々恐々としています。

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