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『骨唄』(2)

2012.7.1(Sun.) 14:00~15:55
あうるすぽっと D列1桁番台(センター)

あっという間に東京千秋楽。

劇中、「あじさいの花は何であんなにきれいなのか」を問いかける栞に、”花の人生は短いからこそ美しい”と答える父の様が、まるで作品と重なるかのように、この作品は再演、再々演と窮屈なスケジュールで上演されることが宿命であるかのよう。(再演の本多劇場もわずか4日間の公演でした。)

それを言ってしまうと齢20年足らずで自ら天に召された栞の人生も、「短いからこそ美しい」と思えてしまいそうで、それは切なすぎるのですが。

舞台にびっしりと敷き詰められたあまたの風車。再演時の本多劇場より明らかに広いあうるすぽっと。恐らく再演の5割増ぐらいの風車は作られたのでしょうが、圧巻なのがラストシーンの紙吹雪。なんか後片付けが大変そうなというか、マチソワの日に、どうやってあの紙吹雪千枚(以上)を漏れなく片付けるんだろうというのが、実はちょっとした疑問でした(苦笑)。

舞台中央の物見櫓で、新妻さん演じる栞がいくつかのシーンを演じますが、この劇場のウィークポイントは、実は席によってはものすごい高さな物見櫓のシーンが、特に下手側からは見えないことが多いらしいこと。
たまたま私の場合は大丈夫だったんですが、物見櫓の下手側に大きめの箱があって、死角になっていたのが少し残念でした。

とはいえ、この日の席はセンターだったので、物見櫓シーンで見上げることがあっても、視線上の不満はまるでなく、作品の世界観を堪能しました。

再々演ということもあり、3人の芝居の掛け合いは凄いことになっていて、栞ちゃんのいたずらっぽさ暴走中。
物見櫓に昇った姉を追っかけて、はしごを揺らしていたずらしてました。
お姉さん、本気で「ちょっとやめてよー」って泣き入ってましたな。

この日見て印象的だったのは「狭いところは嫌い」という栞の魂の叫び。
「病院に行きたくない、狭いところは嫌い」と言った叫びを聞いていると、栞を変えてしまったのは、左耳が聞こえなくなった”事故”そのものではなくて、それを治すための治療の方にあったのでしょうね。

目の前で世話をしているウサギ、そしてエミューを無意識の間に逃がす栞は、その瞬間に自分と動物をシンクロさせてしまっていたのでしょう。

自分がその狭い場所に戻るぐらいなら・・・という結末はやるせなくもあるけれども、栞の満ち足りた表情を見ると、「それしかないんだよね」と思ってしまう自分がいたりして。

その反面、栞がいなくなって抜け殻になったかのような父の様もすごく分かる。

「子供にとって最大の親不孝は、親より先に逝くこと」という言葉はよく聞かれる話ですが、父を演じた高橋長英さんの様を見ていると、それが実感を持って伝わってきます。
ある意味、自分の人生の意味が確実に一部分削られる心情なのですね。

父が栞の姉にかけた「おいより長く生きろ」って言葉は、言葉下手な父にとっても最大限の言葉なのだなと。
その言葉は、この田舎の地をある意味憎んで逃げたであろう姉にもきちんと伝わったのかなと。

栞を通じて「伝統を守る」気持ちは伝わったのだと信じられるからこそ、そして「伝統を守る」ということがただの懐古だけではないということが表現されているからこそ、この作品の最後は温かいのかなと思えます。



東京千秋楽ということもあり、新妻さん・冨樫さんが促して高橋長英さんがご挨拶。

「短い公演ではございましたが無事東京公演を終えることができました。この後、相模原・横浜と6公演(※注:演劇鑑賞会公演で一般発売はありません)やりまして今回の『骨唄』は終わりとなりますが、またいつの日かお会いできればと思っています。ありがとうございました。」

今回の公演、栞役の新妻さんは聞いているこちらが耳にたこができるぐらい(爆)「ラスト」を強調していますが、あれ?(笑)

彼女が「ラスト」を強調するときは、役柄に深い思い入れがある時なので(「ミス・サイゴン」キム役、「レ・ミゼラブル」エポニーヌ役)、サイゴンの例からすると(2008年の博多座公演で「完全燃焼」を宣言しながら、本年8月から再登板)、またとんでもないスケジュールでやりそうな予感。

6月20日発売の「池袋15」のインタビューで唯一「ラスト『かも』しれない」と表現していた彼女の言葉に、ちょっとだけ変化を感じたりしました(笑)。

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