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『国民の映画』(1)

2011.3.10(Thu.) 19:00~22:00
パルコ劇場X列センターブロック

芝居絡み3連投の最終日はパルコ劇場。
日比谷の歌姫が、3月は渋谷でそれぞれ競演です。

コクーンは1幕が長くて(110分)、2幕があっという間(60分)でしたが、パルコはその全く逆で、1幕があっという間(60分)に対して2幕が長くて(105分)。
作品そのものが違いますから、比較してもしょうがないのですが、個人的には最初が長い方が気分的に楽。

何の因果かコクーンに続いてこの日も最前列。

劇中ほぼ唯一の歌シーンであるシルビアグラブさんのソロ、そして新妻さんとのハモり、そして新妻さんの高音ソロは、さすがに迫力&拍手物でした。

舞台はナチスドイツ、宣伝大臣ゲッペルスを取り巻く映画にかかわる人々。
権力とかかわらなければ映画が作れなかった監督、俳優、作家たち。
そこにあるのは本意か、邪心か・・・・




ネタバレ入ります


新妻さんが演じるのは女流映画監督、レニ・リーフェンシュタール(しかし舌噛みそうな名前だなぁ)。
実在の人物だそうで、当時の映画界のトップに君臨するやり手の方。

三谷さんは「nine the musical」の正妻・ルイーザ役を見てこの役をアサインされたそうですが、なるほど全員を尻に敷く感じがぴったりです(爆)。

何しろシルビア・グラブさん演じる女優でさえレニには頭が上がらないわけで、という見方をするととても興味深くて面白いです。

まぁこれだけの上手い人の中にいると、演技的にはちょっと押されちゃうところは致し方ないところですが。

それにしても、登場人物の中で、一番「権力」に対して「利用する」という点でアクティブ。
確信犯的にしたたか、という点で、俗に言う「女って強い」って役です(笑)。

某所の画像の残像をものともせずに格好良く振る舞い、男を手玉に取る様はあぁなるほど女王様属性ばりばりだなぁと思ったりしてしまうんでありますが。

この舞台の登場人物は大きく分けると3つのカテゴリがあって、一つが政府側、まぁナチス側の人。
小日向さん演じる宣伝大臣・ゲッペルス、段田さん演じるヒムラー、白井さん演じるゲーリング。もう一つが映画関係の方々。そして最後のカテゴリがゲッペルス家、石田ゆり子さん演じる奥様と、執事。

「国民の映画」がこの作品のタイトルでありますが、ゲッペルスが国威発揚のために「国民的な映画を作ろう」として映画関係者を呼び出す、というのがこの物語の導入部。
次第に話が進みながらも時代の歯車は止めることもできずに加速していき、全てが明らかになったとき、そのとき「映画」を作ろうとする人々は、どのように振る舞っていくのか・・・・が後半部です。

観劇が終わったあとにパンフレットを読んで思ったのですが、この「国民の映画」、ある意味、役者論であり芝居論であり映画論なのかなと。

戦時中、「映画」を「戦意発揚の道具」として使われることを、映画を愛する人たちが、心から拍手できたとは思えないのですが、それでも「その究極の制約」の中で、どうやって「自分のレゾンテール(存在価値)を保ちながら」「映画の中で生きていけるか」が表現されていて。

本来、人間の人生なるものは種々の制約の中で、自分や、時には自分以外も含めた最大の利益(お金に限らず、満たされた気持ちとかでもいいと思いますが)を志向するものかと思います。

この作品で出てくる映画関係者の方は、それぞれ大切にしている価値観は違えど、自分の価値観の中で、「戦時中」そして「ナチス」「ヒトラー」と向き合い、時には無謀とも思える行いにも出たりする。

2幕後半、明らかになったある事実と対峙した人々が、それぞれの言葉とともにゲッペルス邸を去る様は、それぞれとても重くて。

究極の割り切り型はレニで、とにかく「映画が作れるなら」一本槍。ゲッペルスに罵倒されようが、それでも生きていく強さは印象的。

思い切ったのが、別の意味でゲッペルスと距離を取った俳優たち。この時代にゲッペルスに反抗することは「死」さえ意味しただろうに。

そしてその中間にいて、自分的には一番興味深かったのが作家であるケストナー。
彼は著作を発禁扱いにされた中、「国民の映画」の映画のホンを書くことを依頼されて、それを承諾しています。

表現者にとって表現を許されないことがどれだけの苦痛か。
むしろ、自らの信念で生きる表現者が、表現を許されなくなったとき、それに耐えるのは凄いことなのだ、ということを感じたのが、自分的には一番興味深いエッセンスでした。

人から評価も批評もされない”一人だけの仕事”に興味はない、的なことをおっしゃっていた三谷氏の発言もとても興味深かったです。



役者さんは皆さま素晴らしかったのですが、小日向さんは特に素敵でした。
執事役の小林隆さんも良かった。
あと石田ゆり子さんの佇まいが綺麗でした。

リピート型の芝居ではないかと思いますが、幸いにもあと1枚あるので、日曜日マチネ、また違う側面から眺めてきたいと思います。

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