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『凄い金魚』

2011.3.20(Sun.) 14:00~16:00
座・高円寺(杉並芸術会館)1列目下手側

劇団HOBOを3作品見ているのに、その親方にあたるラッパ屋を見ていないのはどうなのだろう、と思い続けて早3年。

3月11日の地震以来、何もかもが落ち着かず、何もかもが心穏やかじゃない中、と言うかこんな時にシステムトラブル起こすみずほ銀行はメガバンクの資格ないやろとか思いつつ、きっとやさぐれた気持ちを癒すには一番いいかなと思って、当日券で初ラッパ屋です。当日券、5枚ぐらいしか出ていなかったわけでこの状態なのに結構な入りです。

とはいえ、急遽決まった翌日(21日)の夜公演はまだまだチケットが捌けていないらしく、はじめさんいわく「客席がスリリング」なのだそうですが(笑)。

開演前に、鈴木さんとラッパ屋の制作さんが登場されて、ユーモアを交えてのご挨拶。
ちょっと吹いちゃったのが鈴木さんのコメント。
「この劇場、地震じゃなくても揺れるんですよ。何しろ可動式な客席ですから。お客さんが遅れて入ってきただけで揺れますし、隣の人が笑ってるだけでも揺れます(笑)ですから、地震かどうかはステージ上の照明が揺れてるかどうかで認識してください」


ここのところ、見た事ある人いっぱい、という芝居ばかり見ていたので、今回の「凄い金魚」は見たことがあるのが金魚のおじさんことおかやまはじめさんだけ、他の役者さんすべて初見というのも、とても新鮮でした。

ともあれ「凄い金魚」、タイトルからじゃ何の話だかさっぱり分からないわけですが、それを楽しむのも初見劇団の楽しさ。
とはいえ、HOBO体験組の自分としては、テイストがもう勝手にホームな気分(笑)。
ここまでHOBOにラッパ屋テイスト持ってきていたんだなぁということを改めて痛感。
というか鈴木さんが忙しすぎるから、おかやまさんが鈴木さん頼らないで第二のラッパ屋やってるようにも思えていたんですがHOBO、あながち間違ってもない気もする。

それにしても配られたチラシの似顔絵が絶品に似すぎてて、舞台上にいる人と見比べて感心してしまった。



祖父が亡くなったことをきっかけにして始まる、ある一家の物語。

大学教授なのに型破りな祖父、同じく大学教授なのに実直そうな父、主人公は映画プロデューサー、という三代の関係を軸に展開していくわけですが、やっぱり凄いなーと思うのが登場人物一人一人のキャラクターの立ち方。全然かぶってませんもんね。

おかやまはじめさん演じる金魚のおじさんの怪しさは癖になりますね(笑)。
怪しさ満開の割に、誰も逆らえない感じが面白すぎる。HOBOノリとしては直近の「ハロルコ」の大ちゃんが近いかな。
最初は怪しんでいたはずなのに、妙に馬があっていく映研の後輩・中野君との掛け合いも面白い。

この作品の舞台って葬儀の場で、自分も体験したことがあるので分かるのですが、相当なリアリティですこれ。
鈴木さんこれを14年前に書いたということだそうですがなんでそんな若くてこれが書けるんですか・・・成井さん(演劇集団キャラメルボックス主宰、鈴木さんの後輩)が鈴木さんを「天才」と言っていた意味がよく分かります。

当たり前ですが葬儀ってその人の人生の縮図なんですね。
家族にも知られていない来訪者があったりして、「?」が点灯したりもする。
でもそれをひっくるめて「その人」を改めて認識する場なんです。
この作品でも、型破りではあってもそこまでしてると思ってなかった祖父のことを、家族は時には呆然と、時にも当然に、エピソードや来客を受け止めているわけですが、その人の人生の、色々な意味での総決算。良かったことも、困ったちゃんなところも、全部分かって見送ってあげられるところに、葬儀の意味はあるように思っていて。

ちなみにもっと言ってしまうと、葬儀って、夢と現実の境目なんです。
身内が亡くなり、呆然としている期間を「夢」と表現するとしたら、葬儀はそれを「現実」に戻す場所なんです。いつまでも亡くなった人を引きずっているわけにはいかない、だからこそ”葬儀”という場で気持ちに区切りをつけなければ、生き残っている人が行き続けてはいけない。

この作品では、家庭内の、いや家庭をとりまく色々な人たちのよもやまとんでも話が展開するのですが、結婚式に比べて人間のリアルというか、生々しさが如実に表れて。

でもこの作品の登場人物は誰一人として負の感情を引きずらないところに良さがあるなぁと思う。

「うじうじしてたってしょうがないじゃん」と一人突っ走る主人公の姉の様も突き抜けすぎてて凄いと思うし、主人公の前妻の”勢い”も、それを受ける主人公の格好良さも、後半とみに清々しくて。

※ちなみに女性陣でいいなーと思ったのは夏子さん(主人公の前妻、岩橋道子さん)と京香さん(歌舞伎町の風俗嬢、遠藤留奈さん)だったりする。
あ、自分の好みってこの主人公そのものなのか(爆)。

最終盤、「肝が据わった」と主人公が語っていますが、これ、実感としてよく分かります。以前、自分の会社の社長から「弔事を仕切れたら一人前の人間」と言われたことがありますが、今回の舞台で出てくる『青春は終わった、人生が始まるよ』というフレーズはまさにそれ。

目を背ける自由もあるけど、目を逸らさない責任もある。
無為に過ごす自由もあるけど、自分のやるべきことをやる責任もある。

この舞台は3月11日を挟んで前後を見た観客はほとんどいないのでしょうが、そういえば自分自身にとっては唯一、あの日前後で見た「国民の映画」でも同じ印象を受けたことがあって。

この地震を明確に予期した人などだれもいなかったろうに、それでも芝居から受ける想像力は、あたかもこの地震を予測していたかとさえ思えてくるのがとても深いなと思う。

「(目を背けたい現実を)なかったことにしないでくれ」という叫びも、「せっかくの人生、馬鹿やってなんぼ」という思いも、矛盾しそうでしないのが面白いなと。

見るべきものを見て、やるべきことをやって、そしてその上で自由に生きる。

人生ってそういうものなんだろうなと、そう思えたことが、この日、ラッパ屋みて良かったなぁと思ったことでもありました。

そういえばタイトルの「凄い金魚」、どう凄いのかを振り返ってみるに、祖父の死を機会に、そこを取り巻く人々を全て前向きにさせたことなのかなと、そう思ってみたり。

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コメント

お邪魔します。
気持ちを癒すためにラッパ屋を選んでくださったこと、嬉しく思っております。ラッパ屋の回し者ではありませんが(苦笑)
まぁー、ちょっとそれ、NGワード?みたいな部分もあったのですが・・・今この作品を上演する意味はあったと思います。ラッパ屋は人間賛歌、人生賛歌!

私は筋金入りなので(^^ゞ劇団とか俳優について語り出すと一晩くらいかかってしまいそうで、そういうのは自分のところでやるとして(苦笑)あれ?と思ったこと、一つ。「ハゲレット」(玲奈さん@オフィーリア)は観ておられないんでしたっけ?今回の出演者二人出てました。

ご贔屓さんたちと照らし合わせると、たぶん岩橋さんがお好みだろうというのは思ったのですが、今回は昔の作品だし、登場人物も多いので、キャラ的には少々おとなしめ。多分最近の作の岩橋さんなら尚更お好みだと思います(笑)

劇団員の平均年齢は物凄く高いのですが、オヤジたち体張ってますよね?ラッパ屋で観るはじめさんの動きが大好きなんですが、今回もトイレの「天使と悪魔」辺り、爆笑でした。

またお時間ありましたら、よろしくお願いいたします(もう回し者でいい・・・笑)

投稿: ぴらふ | 2011/03/22 08:03

ぴらふさん>

熱いコメントありがとうございます。熱い反応いただけて嬉しいです。

ご指摘の件、確認してみたら、福本さんと木村さんが出演されてたんですね。というか「ハゲレット」の脚色が鈴木さんだったんですね。部屋のいずこかに「ハゲレット」DVDがあるはずなので、探せるものなら探してみます(←地震がなくてもすごい部屋な人)

岩橋さんは某所で「かわいいルックスに壊れたキャラクター」と言われていたので何となく想像が付くのですが、あー、そういうのが好みだってのがバレてるわけですね(笑)
リミッター外してどこまでも暴走する感じがあるのは、うちのご贔屓さん共通の要素です(爆)。

はじめさんホント変なおやじですよね(笑)。
なんか滑らかに動くための専用電池を入れた人みたいな(笑)。
で、その「変な」という言葉が褒め言葉になるのがラッパ屋なんだな、と思えて。悪気のない人、というか憎めない人同士のどたばた物語、でもそれが筋になって一つのテーマを形作っていくのはさすがは鈴木さんだなーと、ハマる人の気持ちがよく分かりました。

「天使と悪魔」といえば、はじめさんの笑顔って、ものすごく背筋が寒くなるぐらい「おもしろこわい」ことありますね(笑)。

そういえば千秋楽(追加公演)の客席、「スリリング」なほどではなかったそうで、ほっとしました。あたしゃちょっと水浴び見てたもんで(爆)。

投稿: ひろき | 2011/03/23 02:55

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