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『モーツァルト!』(29)

2011.1.9(Sun.)12:00~15:20
梅田芸術劇場 3階1列センターブロック

上演399回目(今期67回目、梅田2回目)
観劇39回目(今期7回目、梅田1回目)
アマデ:坂口湧久
※山崎ヴォルフ梅芸初回

2011.1.9(Sun.)17:00~20:25
梅田芸術劇場 1階7列下手側

上演400回目(今期68回目、梅田3回目)
観劇40回目(今期8回目、梅田2回目)
アマデ:松田亜美

「モーツァルト!」も日本初演4回目にして、ついに400回に到達です。
自分の「モーツァルト!」観劇歴がぴったりその10分の1の40回だったのは、ただの偶然なのですがちょっとびっくり(笑)。

記念カテコの話はまた後でするとして、まずは本編の話を。

梅芸は去年8月の笹本ピーターパンの楽日以来なので、半年振りなのですが、この劇場のコンパクトさと音響の良さを体感すると、帝劇の音響ときたらもう・・・
帝劇には帝劇のよさはもちろんありますけどね、というわけで「帝劇ワンダーランド」ムックを梅芸で買いました(笑)。

マチネは3階席最前列から見下ろす形となって、見切れシーンが当然あるのですが、感覚的には天王洲銀河劇場がこれに似た感じというか、非常に俯瞰しやすい劇場です。
どセンターなので特に祐一郎氏の歌声とかを聞くにはすごーくお得感があるB席センターです。

帝劇ではマイクが絞られている感があった我らがナンネールこと高橋由美子さんも、こと梅芸に関してはマイクがちょうどいい調節になっていてすごくクリアに聞こえます。
野菜市場で若干地声に戻った箇所があったぐらいで、マチネ・ソワレとも絶品の出来。
やっぱりモーツァルトは梅芸ですよね(なんなんだこの現金さは・・といいつつキャストの皆さま、意外に同じようなことをおっしゃているようで。演じやすいらしいです)。

ところでナンネールを変換したら「難ネール」って文字になったんですが(爆)、ある意味、歌からして演技からして「難役」ですよねこの役。それをあまりにあっさりと由美子さんはクリアしちゃうもんだからさらっと流して見られていますけど、以前も書いたことがあるのですが、由美子さんのナンネールが本当に評価されるのは次の人にナンネールを渡した時なんじゃないかと思う。

この日のナンネールを見ていて思ったのですが、今期役どころを変えたとはいえ、そこここに前までの演技が見えたりするのは、相手役の波長に合わせているんでしょうね。

「星から降る金」で井上ヴォルフが喜んでいるところについつられて満面の笑みを浮かべたりするあたりは、多分定石からすると変なのでしょうが、その後我に帰って「ヴォルフガング」と諭すように言うのとセットなので、日替わりの楽しみどころといったところなのでしょう。

●姉弟関係
この日へーと思ったのは1幕「赤いコート」の後半部、レオポルトに「処分してきなさい」と言われて渋々レオポルトからコートを受け取ったときに、ナンネールはヴォルフガングに目配せして「ごめんね」っていう動きをしているんです。ヴォルフガングはそれに対して「うん、わかってるよ」って目で返すんですが、これ、帝劇では気づかなかったんです。
この日はマチネの山崎ヴォルフ相手でこれを発見したすがら、ソワレの井上ヴォルフでもこれをやっていたので、これはある意味定型になったような感じです。

今期帝劇最初の頃は、「パパ寄り」になったナンネールの後半部の役作りをこの場面でも引きずってる印象がありましたが、途中からここは元通りというか、完全にヴォルフ寄りになって、この日に至ってはナンネールがパパに満面の笑顔送ってたのに笑いました。
ヴォルフと一緒にパパをからかっているようなところがあるんですよね。

実際、ここでナンネールとヴォルフはじゃれあってるところに明らかな気持ちのシンクロはあるわけで、お互いにとって「赤いコート」は「華やかな時代の象徴」であるわけで、それを処分するなんてことは実際は出来るわけはないわけで・・・

レオポルトにしてみれば「過去の栄光にすがるんじゃなく現在を生きろ」という意味での「処分してきなさい」という言葉。これ、確か2演目(2005年)までは「片付けてきなさい」だったので、より「過去との断絶」をレオポルトはヴォルフガングに強いているようには改めて思わされます。

●臨機応変って大事
この日ソワレ。大司教様がヴォルフガングが作ってきた楽譜を投げ捨てるシーンで、何の風のいたずらか、楽譜が盛大に散らばってしまいまして。
おぉぉ、どうするのかと思ってたら、アルコ伯爵は楽譜を足で本来のシーンに移動させてました。うん、それ唯一の正解でしょうね。
舞台には必ずしも「正解」というものがあるとは限らないけれど(それが見る方も演じる方もある意味望んでいるんだと思います)、想定外のことが起きたときに、客席を現実に引き戻さずに進行させられるかどうかは、役者さんとしての役とのシンクロだったりするわけで。

この日ソワレでもう一人のGJはコンスタンツェ役の島袋寛子さん。
プラター公園で風車が”アルコ台”から落ちたときにさりげなーく戻していた彼女の立ち振る舞いに、すっかりコンスタンツェになったんだなぁと、何かそんなところを嬉しく感じたりして。ちなみに3階席から見下ろすと彼女、ちひろコンスにすごく似てます。
1階席から見るとそうは見えないんですけどね。アングルの話です。

臨機応変の女王様はナンネールの中の人ですけど(笑)。

この日も目隠しがちょっと左手側からすり抜けたりとか、前日はピアノのところでスカートが引っかかったりとか、「お心ありがとうございます」の後の階段の影で、不自然に頭がちょっと下に落ちたり(滑った?)、星金でパパがヴォルフの頭を手帳でペチペチ叩いてる時に「パパ」と注意を惹くように言うのがこの日マチネは2回に対してこの日ソワレは1回とか、ヴォルフのはだけ方が毎回違うからどう直すか一瞬で考えなきゃいけないとか(笑)。ソワレは井上ヴォルフのはだけ方が生半可じゃなかったから久しぶりに「何やってんのよもぉ」モードが見られてツボでした。

星金もマチネで涼風男爵夫人をバックにヴォルフとナンネールが「♪目と目で通じ合う♪」(←ちと違う)をやってたのは良かったし、というか涼風男爵夫人、星金を身を乗り出すように3人に向かって歌うんですよね。3人を眼中にないかのように歌う香寿男爵夫人とまさに好対照。本当に今期の男爵夫人2人はカラーが違います。

臨機応変といえば、男性陣は祐一郎氏が有名ですが、この日ソワレは意外なことに井上君が歌詞を飛ばしかけてひやっとしました。2幕M45「なぜ愛せないの?」でしたが、表面上は何ともなかったとはいえ、何度か見ていればはっきり分かるぐらいの、意外な姿を見て、うーん、井上君もやっぱり人間なんだなと感心したり。

●コンスの復讐
作品のラスト、ヴォルフガングの亡骸をなぜセシリアが見つけられるのか。

これ、考えてみたことがなかったんですが、この日、ヴォルフガングがアトリエで「ここなら君のお母さんも来ないし」とコンスタンツェに言ってたのを聞いて「あれ?」と。

明示されていないけどヴォルフガングの終の棲家がこのアトリエだとするならば(他に行くような余裕はなかったと思いますので)、ヴォルフガングの居場所をセシリアがなぜ知ってるのか。

その実、ナンネールでさえもここを知るはずもないわけです。
ナンネールはヴォルフガングに「決して許さない」と言って別れているわけですから。

それらの線を一本につなぐ糸として考えられるのはコンスタンツェしかいないのではないかと。

コンスタンツェはヴォルフガングの居場所をセシリアとナンネールに教え、セシリアには手切れ金のごとくヴォルフガングの遺産を分け与え、自分は音楽家としてのヴォルフガング・モーツァルトの名声を糧に墓漁りの片棒さえかつぎ生きる道を選択する代わりに、ヴォルフガングその人の後はナンネールに託したんじゃないかと、そう思えて。

それがまさにコンスタンツェにとってのヴォルフガングへの復讐だったんじゃないかと思えて、「悪妻」というイメージに引きずられるつもりはないけれど、むしろコンスタンツェにとって、ヴォルフガングを忘れられないからこその、かえって残酷な仕打ちしかできないのではないかと思ったり。

コンスタンツェからナンネールの感情は推し量りにくいところもあるけれども、コンスタンツェが「自分以外でヴォルフガングのこの後を託せる人」として選べるただ一人の人であることは間違いなくて。

「決して許せない」とまで言ったナンネールを、あえてヴォルフガングの前に出すことはもしかするとコンスタンツェにとってはヴォルフガングへのあてつけだったり、ナンネールへの嫌がらせだったようにも思えるけれども、おそらくコンスタンツェが予想していなかったことといえば、

ナンネールが才能を持った少女

だったことかと思う。

才能の小箱を見られたナンネールが、それを見なかった時より幸せだったかどうかは、演じる由美子さんの表情を見るだけでは実はどっちにも取れる気がして、でもきっとナンネールはその現実を背負って生きていくだけの強さは持っていただろうと。(実際にも80過ぎまで生きていますから、あの当時としてはすごい長寿でした)

この作品におけるコンスタンツェとナンネールのバランスって、かますびしく言われるところではあるけれども、コンスタンツェが最後はヴォルフガングを見捨てたことと、ナンネールが結局ヴォルフガングを見捨てようがなかったこととの対比で、どうしてもナンネールの印象が、最終的に作品のカラーとして塗られる点があると思う。

●400回記念カーテンコール

この日ソワレは前述の通り日本公演400回目。
とはいえ事前に作品公式にも梅芸公式にも出なかったので井上君の第一声。

井上くん「本日は『モーツァルト!』ごらんいただき
 ありがとうございました。
 日本初演以来この作品、
 本日夜の回で日本上演400回目を迎えました(拍手)」

井上くん「その反応は知りませんでしたよね? 知ってました?」
 ・・・一部から「知ってました」の声が上がってました。
  なんか局地的に(笑)

井上くん「まぁ僕は全部出ていないんですけどね、
 ダブルキャストですから(笑)
 それでは、『我こそは400回出た』という方は
 一歩前に出てくださいませ」

 舞台上ではわらわらとキャスト陣の民族大移動(笑)
 で、そういう時に後ろに下がっていくんだなうちのご贔屓さんは(爆笑)
 そんなの分かってる井上君が該当者さんをやっぱり見つける(笑)

井上くん「あなたずっと出てたでしょ毎回(大笑)」
 ・・・と、舞台前方に引っ張り出されました由美子さん(笑)

井上くん「皆さま盛大な拍手をお願いします!
 またスタッフさんでも400回全てかかわられた方が
 いらっしゃいます。
 その方にも拍手をお願いします!」

 ・・・うん、さすがです井上くん。

 一人一人のご紹介はされませんでしたが、該当する方々13人。
 女性4名、男性9名の鉄人のみなさま。
ちょうど1列分ぐらいでした。

 高橋由美子さん(ナンネール役)
 阿知波悟美さん(セシリア・ウェーバー役)
 吉野 圭吾さん(エマニュエル・シカネーダー役)
 山口祐一郎さん(コロレド大司教役)
 市村 正親さん(レオポルト役)
 碓氷 マキさん(バルバラ役ほか/※)
 徳垣 友子さん(ゾフィー役ほか)
 大谷美智浩さん(メスマー役ほか)
 小原 和彦さん(ジャン・ピエール役ほか)
 KENTARO  さん(サリエリ役ほか)
 砂川 直人さん(トーアヴァルト役ほか)
 松澤 重雄さん(フリードリン役ほか)
 森田 浩平さん(ベルヒトルト役ほか)

 ※:初演は高橋真記子さん名で

挨拶は代表して山口さん、市村さんから。
由美子さんの挨拶も聞きたかったけど、帝劇での挨拶からしてgdgdになるの目に見えているからなぁ(苦笑)。

山口さん「この日を迎えられたのも皆さんのお陰です。
 ほんとーに、ほんとーに、ありがとうございましたっ!」

市村さん「この日を迎えられたのも皆さんのお陰です。
 ほんとーに、ほんとーに、ありがとうございましたっ!
 (以上物真似(笑))・・・・あ、もういいですか?

 後輩の祐一郎に会いたくて、通っていましたら400回になりました(笑)」

山口さん「舞台上とはいえ先輩に失礼な態度の数々・・・」

 市村さん「えへんっ」って偉そうな感じでのけぞる(笑)

市村さん「この作品、まだまだ続くようでございます。
 そして、お席も若干、若干(笑)でございますがあるようでございます。
 ぜひ、また足をお運びいただければ幸いでございます」

●カーテンコールおまけ
毎回恒例、ヴォルフガング&アマデイベント。

井上くん「3階席!(拍手)2階席!(拍手)1階席!(拍手)
  そして全体!(大拍手)」

井上くん「僕は今日で219回でした。
  ちゅーとはんぱーっー!!!(大笑)
  亜美は?」
亜美ちゃん「23回!」
井上くん「ちゅーとはんぱーっー!!!(大笑)」

亜美ちゃん「また来てねー」

・・・もう和みすぎて何が何やら。
もうアットホーム感満載の、超身内的カーテンコール。
うん、派手なカーテンコールじゃなくて、こういう温かいカーテンコールが、一番「モーツァルト!」にふさわしい気がします。
400回を迎えられた皆さまに心からの拍手を贈ることができて、とっても良かったです。
予想通りの動きをして突っ込まれたご贔屓さん含めて(笑)。

200回記念カーテンコール(ちなみに100と400が梅田、200と300が帝劇)の時に、「2000回まで頑張りたいと思います」と勢いと思いつきでおっしゃってましたがもう2割まで来ましたよ(笑)。

由美子さんの舞台出演歴って全部で1200を超えたぐらいなのですが、その2割近くがナンネール役ですからね(今期完投で2割を超えます)。
1役で100超えるのも最近は至難の業で、由美子さんでさえ100超えてるのはこの役だけ。エレン(69回)、ファンテーヌ(61回)、ミス・アデレイド(56回)、アニー・オークリー(46回)、山田寿庵(44回)という顔ぶれですから。

何回も検算して400回がこの日のソワレだと確信してはいたけれど、そうじゃなかったらどうしようと、
実は井上くんが言うまで気が気じゃありませんでした(爆笑)。

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コメント

難なく歌いあげ、自然に細やかな演技
初観の人や、ナンネール以外のファンの人たちには、わからない?由美子さんはすごい人、舞台度胸満点
一度でいいから、お疲れ様 素敵でした
と声をかけてみたい。それができたら本望です。金沢では・・・・できるのでしょうか?

投稿: てるてる | 2011/01/10 19:44

縁の下のマスコットことナンネールさんですが、初演の時「自分とかけ離れた役」って言ってた記憶があるんですが、それだけにかえって客観的に続けられるのかもしれません。

むしろあれぐらい飄々としていないと400回なんて迎えられないのかもしれません。
そんな姿が頼もしくもあったり、物足りなくもあったり。

金沢・・・極寒ですからねぇ・・・

投稿: ひろき | 2011/01/10 21:13

いらしてたんですね!!
僕も10日公演見てきました。
ナンネールさん、前回帝劇で聞いた時よりもかなり良く感じられました。
音響のせいなのか、喉の調子がすこぶる良いのか。。。とにかく震えましたhappy02
次回のチケットは24日なんですが、もう1回くらい行くかもです。

投稿: ぜんきょう | 2011/01/11 12:51

>ぜんきょうさん
大阪にお邪魔していたのにご挨拶もいたしませず(汗)失礼しました。
新年観劇初めは梅田でございました。

ぜんきょうさんにそう言っていただけて、とても嬉しいです。ありがとうございます。
地方とりわけ大阪は由美子さんのお気に入りのはずで、伸び伸びやれているのもあるのかもしれません。

次は金沢の前楽・大楽のつもりではあるのですが、あれだけ良いとつい悪い虫が(笑)。

投稿: ひろき | 2011/01/11 13:14

こんばんは!こちらには初めてお邪魔します。

399回&400回レポ楽しく拝見しました。カテコまで実に盛り上がったみたいで嬉しいです。呼ばれて後ずさりしていく由美ちゃんが目にうかぶ。
それにしても由美子さん(郷に従う(笑))の出演回数、最多がナンネールなのは想像してたのですが、エレンやファンテーヌもすごい回数になってたのですね。寿庵も40回以上とは…ああそうか、板倉重ちゃんと一緒だ(あたりまえ)。
回を増すごとにさらに新たな発見があるナンネール、これから先も楽しみです(^^)。

投稿: 片帆 | 2011/01/13 23:35

片帆さん、こちらでは初めまして。
ようこそいらっしゃいました。

ふと気づいたのですが、由美ちゃん(お客がいればお客に従う(笑))の共演上演回数のトップってたぶん座長なんです。
ナンネ&座長で400回、寿庵&重ちゃんで44回、ファンテ&アンジョで34回で、合計478回、大阪公演中に500回突破!

これからもヴォルフを囲む長男-長女-次男の組み合わせ(爆)で、引き続きお世話になります(笑)。

投稿: ひろき | 2011/01/14 01:03

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