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『プライド』(11)

2010.12.12(Sun.) 13:00~15:55
シアタークリエ2列目下手端
のち、3列目センターブロック下手側

公演16回目(観劇5回目)

5日ぶりのクリエは、劇場前に貼られていた2枚のポスターのうち、1枚が舞台映像のパネルとなっていました。
確か「RENT」の時もこれやってましたね。
黒が地色なので、ライトアップされたときの方が綺麗でした。
(昼は他の光が入るので、写真であまり綺麗に撮れない)

写真は新妻さんblogご参照。こちら

ポスターと言えば、劇場横のポスターの2枚には「動画配信中」のシールが追加で貼られていました。

「満員御礼」の立て札がある中、クリエに入るのは久しぶり。

この回は、クリエ公演が始まってから取った回。
端席なので見切れかと思いきや、超大当たりの席で、音響もgood。
やっぱりクリエは上手より下手ですね。

端席の宿命として完全見切れシーンが出るのはいつものごとくで、萌ちゃん大熱演シーンが後ろからになってしまうのは残念。
が、逆に言うと萌ちゃんに責め立てられて言葉もない史緒が視界の先にいるわけで、
萌と一緒に史緒を責めている気分が味わえます(笑)。

この日のベストアングルは、蘭ちゃんのNY行の話をしているところのシーン。

何しろ、左から史緒・萌・蘭丸と並んだのがワンキャプチャー。
写真にして切り取りたいぐらいの名シーン。
(プレス以外でやったらお小言です念のため)
蘭ちゃんに責められて説明もできない史緒、そしてそんな2人を冷酷な目で見つめる萌が真ん中に・・・

原作のディレクターさんじゃありませんが「鳥肌立っちゃいましたよぉ」です。

全体的に芝居の間を取ってきた印象。
演出の寺崎さんはもう次の作品に行かれているようですので、この辺は役者さん同士の呼吸の合わせ方が出てきた感じ。何しろ一幕だけで約10分伸びているんですから、その間の長さは凄い。
さすがに二幕は間を取りようがないのでほぼ同じ時間ですが。
というわけでこれから見られる方、標準時間+10分の余裕は取ってご観劇ください。

この日、座席が変わったのは「終演後早く出たいのでセンター寄りと変わって欲しい」とのお話をいただいたためで、元の席もなかなか良かったのですが、実際にセンターブロックに行ってみると、視界が素晴らしくて良かったです。
今までセンターブロック下手側はなかったので、その意味でも補完できて良かったなと。

それにしても、日増しに笹本さんの麻見史緒度が増してきて凄い。
2幕の包容力とかどんどん増してる。
新妻さんの緑川萌度は初日から微動だにしなくてそれもそれで凄い。
軸がぶれないもんだから、歌を意図的に感情的にするのもお手の物。

他の人の演技に左右されないタイプの新妻さんと、
他の人の演技に左右されるタイプの笹本さん。

そのバランスが絶妙です。

では、この辺からネタバレスタートで語ります。


●傍観者と当事者
さすがにここまで見てくると、原作12巻の重さは仕方ないとしても、ストーリー展開の細かい粗がどうしても見えてきてしまいます。

4人芝居の難点というか、この舞台に傍観者を作る余裕がないんですね。
舞台版「プライド」の長所も短所も、4人であることに収斂する感じがします。

全般的に傍観者になる率が高いのは蘭ちゃんですが、NY行のシーンとかは当事者そのもの。
2幕になって「史緒を見守る」あたりになってからはストーリーテラーの役目も果たしはしますが。

史緒のこの先が気になる萌に対して、「麻見史緒のことは君には関係ない」と拒絶してた神野からして、ここの萌も傍観者ですね。

1幕ラストでは傍観者を当事者にさせる、大石先生お得意の修羅場劇場、昼ドラ満開シーンが出てくるわけですが。
ここ、2人があまりに熱演過ぎて、
前方席から見ていても髪に隠れて顔が見えないぐらいでした(爆)。

4人が基本的に当事者であるがゆえに、一歩身を引いて説明できる人がいない。
本当は菜都子ママを加えた5人体制が、一番しっくり来たんだと思う。

●かりそめの負けと、本当の負け
一幕で物足りないなぁと思うのは史緒の立ち位置。

原作ほどありえないお嬢様になるのは無理にしても、「男性に免疫がなく」見えないから、蘭ちゃんの女装も存在する意味が不思議なことになっているし、「お屋敷にいた」ことを萌の口から聞かされるとしても、「萌と史緒が別の世界にいる」ように見えない。
なんか現世に降りて来すぎているというのか、妙に庶民派なお嬢様なんですよね、史緒。

「パルコ・デ・オペラ」で萌の策略で史緒は敗れるわけですが、これ、史緒にとって「物理的な負け」ではあっても、実際のところは「かりそめの負け」だと思うんですよ。

それは多分萌が一番分かってる。「かりそめの勝ち」だろうと優勝は優勝、留学は留学。
目に見えるもので上回らない限りは、自分の優位性を保てないのが萌の萌たるところ。
ある意味子供っぽい。

話を戻すと、「実力勝負」に雑音が混入した以上、「パルコ・デ・オペラ」の勝負は、表面的には付いていても実質的には何も付いていない。

原作ではこの後、史緒の歌がお客さんに受け入れられず、たまたま歌った萌の「島唄」が客の心を掴むというシーンがあって、「自分の歌にはあの『感動』がない」と落ち込み、萌を見くびっていた史緒が、認識を改めるシーンになっています。

これがあるからこそ、「大嫌いなのに、(萌と声を合わせることで今までにない感情を感じたのが)不思議」という史緒の言葉に信憑性が出るんじゃないかと。

萌は史緒の本当の実力を知っていたからこそ「パルコ・デ・オペラ」で策を仕込んだわけだし。
まぁ、あれは無意識とはいえ萌の怒りに火を付けた史緒も悪いんですが、ちなみに、史緒はそれを後に至るまで一度も後悔もお詫びもしていないんですよね。
「萌さんが怒るのも当然」なのは、神野との契約結婚のことですから。

自分に足りないものを相手が補ってくれる、それは歌できちんと表現されてはいるもの、2人の歌姫の力業で乗り切っていることは否めず。
物語派の人から微妙な評価が出ているというのは、その辺のストーリーの粗さじゃないかなと思います。

●グラスの語るもの
作品公式の動画ダイジェストにも上がっている萌と史緒の感情ぶつかり合いシーン。
黒萌には緊迫感溢れるBGMが付くのがあざとい(爆)んですが、本当ぞくぞくします。

原作版にも映画版にもある「萌に唾を吐いたグラスを差し出されて、史緒が必死に自分を保とうと『意味が分からないわ』」と答えるシーン。

ここ、玲奈ちゃん演じる史緒の必死の抵抗が結構好きで。萌の怒濤の責めに土俵際で踏みとどまる感じが、まさに史緒だなぁと。

ここ、萌の「飲めないのね。」もぞくぞくするんです。

「パルコ・デ・オペラ」での「お疲れさまでした。」と同じぐらいに”あんたなんて眼中ない”モードを史緒も受けるので。

この日、見ていてちょっと気づいたシーンがあって、この時のグラスって、結構長い時間、テーブルに置いてあるんです。

萌が史緒の必死の制止も聞かずにいなくなり、史緒と萌がお互いツンデレ(爆)やった後に「Invocation~祈り~」歌った後、NY話が出てくるまで、暗転が多いこの舞台では珍しくずっとシーンが続くわけです。

NY行の話を神野に言われておきながら、蘭ちゃんには明かさずにいた史緒、
そしてその話を初めて聞く萌。
史緒は蘭ちゃんに「綺麗事」とまで言われながらも、自分が悪者になることで蘭ちゃんの未来を優先させて。
蘭ちゃんがいなくなり、萌が去り。

神野に「君は聡明だ」と言われて、力なくつぶやく史緒がとてつもなく人間的に見えて。
蘭ちゃんを傷つけ、自分は取引として身を神野に差し出す。
自分が感じた”本当の気持ち”を裏切ってしか進めない自分への悔しさを、史緒の固く握りしめた拳に感じて。

神野が出ていったときに、暗転する直前、史緒がグラスをぼーっと眺めていて、なんか萌の感情とのシンクロを感じて。

史緒にとってあのシーンでグラスを眺める以上、その視線の先には萌がいるのは間違いなくて。
「あなたのそのプライドがある限り、私の本当の気持ちなんて分からない」と言って自分の元を去った萌。

蘭ちゃんを見送り、「自分にはこれしかない」と思うオペラのために、神野と婚約。
自分の大切にしているものをどんどん切り捨てていく史緒。

萌の発した言葉に、何とか自分を保つためのよすがを求めようとしたんだろうなと思うと、史緒が本当にすがりつこうとした相手って萌だったのかなと思う。

●きっとたまたまなエンディング
萌が息絶え絶えで史緒と歌う本編2幕最後「Life~命~」。

史緒が萌の掌をぎゅっと握りしめる感じが前回よりずっと強くて(当社比5割増し、目測で計測・・・笑)それだけでぐっときたのですが、この曲、ラストは「果てしのない」という史緒のパートで終わるはずなんですが・・・・
(ダイジェスト版動画参照)

5回目で初めてのケースなんですが、2人の「絆を」で終わって萌が崩れ落ちていったのに絶句。
あれだけ手を握っていれば、萌が弱々しくなっていくのは一番、史緒が分かっているはずで。
萌を必死で支えながら、最後まで萌を元気づけようとした史緒。

前回、にわさまにコメントでいただいたのですが、この作品、
要約すると「史緒と萌のラブストーリー」なのだと。

あぁ、なるほどと。
確かに史緒と萌の両思いになるまでの物語ですね。
だからこそ、萌と神野の子を「萌の代わりとして」育てられるのだと。

「恋」と「愛」についてシアターガイドで一条先生が語っておられますが、それになぞらえて言うと

史緒が恋したのは蘭ちゃんで、愛したのが萌さん
萌が恋したのは神野さんで、愛したのが史緒さん
蘭丸は恋したのは史緒で、それが愛に変わった
神野は恋も愛も利用しかしなかったけれども、史緒に対して愛する気持ちを持ちつつある

感じかなと思う。

恋は愛か無関心に変わるけれども、
愛は成就か憎悪に変わると思って見ると、
なんか色々なことがすんなり見える気がします。

萌は史緒を憎んだのも愛すればこそと思うと、史緒がそんな萌を愛をもって全て受け入れたことは、この作品に相応しいラストだったように思えます。

●本日の日替わりネタ
カーテンコールの追い出し音楽にまで拍手が入りまくる熱狂さといったら・・・・
客席熱いっ!
空席案内を受け取ってる人が多いのも、手応えがある感じを受けます。

そういやこの日、神野さんが蘭ちゃんに薔薇を投げつけるシーンでなぜか後方席から笑い声が・・・
確かにシュールなシーンだけど笑うところじゃないと思いますが(爆)。

カテコ捌ける時に、神野さんを演じた鈴木一真さんがめがねの右側抑えて「くいっくいっ」ってやるのが客席の爆笑を誘っていまして。
その時、まだ袖に到達してなかった新妻さんが、何が起こって笑いが起こっているのかがわからずに(笑)、困惑しまくっていたのが実は一番笑えました。

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コメント

史緒→神野はやっぱり「愛」ですかね?(笑)史緒萌ラブストーリー説は素敵です。ちょっと萌えます(方向性ちょっとオカシイ・・・苦笑)。

実はこの日の「席移動」って、どういうことだったんだろう?と思っていました(笑)そういうことだったんですね。というか、そういうこともあるんですねー。

「自分に足りないものを補ってくれる」部分の「ストーリーの粗さ」・・・それを踏まえた上での萌さんのブログでのコメント、侮れません(笑)

投稿: ぴらふ | 2010/12/14 09:36

席移動は見切れがあるからという理由で会場で変わったことはありましたが、観劇されていた方から頼まれたのは初めてでした。(頼んでも断られないだろうなと思っていただけたのは嬉しかったです・・笑)

「Life」は見れば見るほど2人のラブソングに聞こえてくるから不思議です。

萌さんも台本に言いたいことはいっぱいあるんだと思いますよ。「いい意味で台本を信用しすぎずに」って新聞インタビューで言ってて、今でも以前同様に勝ち気なの変わってないわこの方、と思いましたです(笑)。

投稿: ひろき | 2010/12/15 01:37

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