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『プライド』(10)

2010.12.8(Tue.) 19:00~21:50
シアタークリエ1列目上手側

公演9回目(観劇4回目)

公演中唯一の1列目がこの日。

この作品「プライド」のチケットなのですが、笹本FC、新妻FCとダブル加入している割に、実はFCに取ってもらったチケットは前者2枚、後者1枚の合計3枚だけ。
この日は笹本FC席です。要約すると玲奈ちゃんの男装かぶりつき席(笑)。

公演発表の時から楽しみにしていた割に、FCで全然取らなかったのは、申込期間中が名古屋「ガイズ&ドールズ」で我を忘れていた頃で、12月のことが想像できていなかったからなんですけどね(笑)。
今も我を忘れてますけど(爆)。

そういえば、当blogのキーワード検索で、

「笹本玲奈と新妻聖子どっちが上手い」というのが
キーワード検索に入ってきてどうしようかと思いました(笑)

ちなみにここ1週間のキーワード検索は新妻さんがリードしてますが、
笹本さんが猛追しています。
が、作品名検索が一番多いですね。嬉しいです。
母数220で、作品名140、新妻聖子(さん)・笹本玲奈(さん)でそれぞれ40という状態です。

とはいえネタバレ満載で特攻中の当blog、
果たしてそれでいいんだろうかとはずっと自問してるんですけどね。

ネタバレを見ても、特に2人の歌のすばらしさは言葉で表現したものと
まるで違うので、そこだけは間違いなく安心して太鼓判を押せるのですが。
・・・と毎回悩みつつ書いているのです。

今さらどうにも変えられないので、そのまま行きますけれども。

ちなみにこの作品、日替わりネタはほとんどありません。
玲奈ちゃんがまた噛んでたぐらいかな・・・・

この日がゲネプロ含めると4回目の観劇ですが、
玲奈ちゃんが噛まなかった日は4回中1回しかなく、
新妻さんが噛んだ日は4回中2回しかなく、
鈴木さんが噛まなかった日は4回中1回しかなく、
佐々木さんが噛んだ日は4回中2回しかなく、
一人も噛まなかった日は4回中一度もありません(苦笑)。
ちなみに初日は全員噛んでました(爆)。

印象としては玲奈ちゃんの好調さが目立ちます。
新妻さんも良いのですが、初日から完成度が高かっただけに、そのペースを維持するのにちょっと苦労している感じがします。

作品上はどちらかといえば萌の調子に左右される面が強い気がして、みんなして新妻さんに頼ってる感じがありあり。あの玲奈ちゃんでさえ、新妻さんなら安心して頼れるらしい。
カーテンコールの感じを見ていても、この4人の中では軸になるのは新妻さんという印象。

歌は言うまでもなく高値安定ですが、この2人の高値安定って1ドル72円みたいな感じですからねぇ(苦笑)
カーテンコールSRMは「Life~命~」1曲体制で固まったようで、致し方ないながらも一抹の残念さも。
千秋楽あたりであの鬼のカーテンコールは復活して欲しいなぁ。



というわけで(どんなわけだ)今日もネタバレいっぱいです。



●眼福な日
まずは今日の席の印象をば。

完全死角なシーンも多くて、萌ちゃんの表情は正面から見えるけど、対峙してる史緒は後ろ姿だけ、というパターンが多いのは残念なところですが、随所にある「女優さん近っ」シーンの破壊力は絶大です。

白眉は史緒が萌を思って呟くラストシーン。
さすがに目線は上を越えて行くのですが(クリエの場合、このケースの目線の先は、11列23~27番あたりです)、恐ろしいほどに壮絶にお嬢様でした。

1幕ラスト、萌に突き飛ばされて呆然とした史緒も今まで見たことがない表情。
あまりの動揺に史緒の目が内側に寄ってる・・・
そして血がだらんと落ちるの見ちゃいました。
ここの萌の熱演はいつ見ても絶句します。
このシーンの激しさを見ると、2人がミュージカル女優であることを忘れて、女優であることを思い出します。

そして別場面、ここのポジションからびっくりするものを見ました。
神野のニコニコ笑顔という世にも不思議なもの!(笑)

結婚式直前のこの作品ほぼ唯一の笑いポジションの直前です。
(ちなみに蘭丸君の例のアクションも笑いポジションでしたが最近笑いが起きません。慣れたんでしょうか)

「薔薇の騎士」が大成功で、取材に大わらわだった史緒を誇りに思う神野の表情ですが、
「自分の妻となる女性が成功することは自分のプライド」
な神野のさまを史緒は知ることもできません。
そう言う意味では、ことここに至っても史緒はまだまだ子供なのですね。

そういえば、この席ではこれだろう、と思っていたオクタヴィアンは意外にそれほどのインパクトじゃありませんでした。多分、似合いすぎて慣れちゃったのかと(笑)。
萌の黒青ルックのあまりのはまりっぷりも同じかも。2幕最初では目の前2mに萌ちゃんそのものがいます。

それにしても、史緒のクリスマスソングはめっちゃ好きすぎる。
あぁいう楽しい曲ってライブ含めてめったにやらせてもらえないんだよね。
無理してクラシカルな曲やるよりは、玲奈ちゃんの良さが活きると思うのにもったいない。

クリエは脇は音響についてはお世辞にも褒められたものじゃないので、視覚中心に楽しみました。

●2人のプライド
この作品のタイトル「プライド」が果たして舞台版ではどうだったのか、についてはきちんと書きたいと思っていました。

一幕、「パルコ・デ・オペラ」優勝、イタリア留学の座を、史緒を陥れることもあって勝ち取った萌。
「全て終わった」と呟く史緒。

原作と違って史緒の父親は亡くなっている設定で、かつ莫大な借金を残したという設定なので、原作上よりずっと、舞台上の史緒の絶望感は(立場としては)深くて。

史緒は萌に言います。
「あなたに『プライド』はないの?」と。

それに対して萌は答えます。
「そんな役に立たないもの、捨てました。」と。

この台詞の応酬は「プライド」一幕の一つ目のハイライトで、原作・映画版とも全く同じわけですが、特に映画版との対比で面白いなと思った点があって。

映画版は萌は満島ひかりさんが演じていて、まさに「黒萌」一直線の怨念ばりばりだったので、新妻さんの萌がそれにどこまで迫れるかに個人的に注目していたのですが、期待通りでぞくぞくします。

満島さんは女優さんとしてというか、女性としてというか、勝気とか野心を隠さないことにかけては若手女優で一、二を争う存在じゃないかと思うんですね。

新妻さんは満島さんと対比すれば、勝気とか野心とかは見せないところがあって。
まぁ7年間ずっと隣にい続けてきた玲奈ちゃんいわく、新妻さんは「自己主張が強い」そうなので、多分そっちが正解なんでしょうが(笑)。

満島さんとの対比ということで言うと、映画版は「萌は『プライドを捨てた』女性」として描かれ、尺の問題もあってそれで終わっているんです。

で、舞台版で私はこっちが好きなのですが、「萌は『プライドを捨てざるを得なかった』女性」と感じるのです。

史緒に「プライドはないの?」と問われて「捨てた」と答えた萌。
でも一幕最後の萌の絶叫を聞いて、舞台版に「おぉぉぉっ」と思ったんです。

「あなた私に何て言った? あなたにプライドはないの、そう言ったのよ。
その言葉を今あなたにそのまま返すわよ」

新妻さん演じる萌が言ったこの言葉を聞いたとき、史緒に「プライドはないの」と言われたことは、実は萌にとっては凄まじいショックだったんじゃないか、そう感じたんです。
成功するためにはどんなことをしてでも、という萌は、その行動を史緒に咎められ、「プライドは捨てた」と言わざるを得なかった、ように思えて。

萌にもプライドはあった。
でもそのプライドを横に置いてさえ成功が欲しかった。
プライドを捨てるつもりはなかったが、
プライドを捨てざるを得ない立場に追い込まれた。
この上ない屈辱を受けたその言葉、
自分を本当の意味で傷つけた言葉。

舞台版「プライド」で史緒が萌を傷つけたのは、六万円のオペラのチケットを紙切れのように投げてよこしたものでも、好きなドレスをどれでも選べと言われたこともでもなく、自分が捨てたくなかったプライドを捨てざるを得ない立場に追い込んだこの言葉なんじゃないかと思うんです。

だからこそ一幕最後、萌が史緒をこの言葉で責める破壊力が凄いんだと思うんです。

史緒という人物は自分の言う言葉や行動が引き起こす影響に無配慮な女性で、しかしながらこのシーンに至るまで、史緒はその自らの言葉や行いによって苦しめられはしていないのです。
ぎりぎり破綻に至らずに史緒は自らを安全地帯に置けているわけです。

が、一幕の間に史緒が続けてきた欺瞞はまさに破裂する前の風船のように膨らんできて、そこで明るみになる事実に対するこの萌の言葉は、史緒という風船への針の一突きとして、史緒に襲いかかります。

ここの萌の叫びが強烈なのは「貶めようとして言った言葉ではない」からだとも思います。つまり史緒への嫌がらせで言うだけならこの言葉、そんなまでの破壊力は持たないでしょう。

「オペラをやるために好きでもない神野さんに身を売って、
人としても女としても音楽家としても最低よ!」

この言葉が凄かった。

萌は神野が好きで、遠く離れたイタリアで苦しみ抜いた自分なのに、
この女は神野に取り入り、蘭丸をニューヨークに送り出してまで
成功を勝ち取りたかった女-とみなしたわけです。

そこには萌の誤解が多少は含まれてはいるとはいえ、大筋の理解は全く正しくて、だからこそ史緒は「全て私が悪い」「自業自得です」としか答えられなかったわけで。

萌がなぜ史緒を憎んだか。

それは自分の欲しいものを全部奪っていっただけでなく、自分の大切なものまで削り取っていったから。

そしてその言葉は真実であったがゆえに史緒の心にも深く突き刺さって。

史緒がなぜ変わることができたのか、もこの場面を通り抜けたからに思えます。

・・・・ちなみに萌の発した言葉で次に史緒にダメージを与えたのは何気に
「お疲れさまでした」な気が。
”あんたなんか眼中ないのよ”モードの萌って心理的な破壊力強すぎ。

2人にとっての「プライド」についてですが、

プライドを持てる史緒が羨ましかったというのが萌なんだろうけど、
プライドを追い求めない生き方を選べたことが萌の本当のプライドなのかなと思う。

史緒のプライドも他人を犠牲にしたプライドで、
史緒も萌と出会ったことであるべき立ち位置を手に入れられた。
萌のプライドも似た感じとはいえ、
萌が卑怯なら史緒は非情なだけという気もする。

他人のことを見ようともしない史緒と、
他人が見えてしまうから必死で見ないようにする萌の違い。

ただ自分に誇りたかった史緒の「プライド」

ただ他人に誇りたかった萌の「プライド」

きっと、本当の「プライド」はそのどちらでもない、ということをこの作品は語っているように思えます。

「あなたたち足して2で割ればちょうどいいのに」は原作の菜都子ママの言葉ですがまさにそれ。

今回4人芝居にしてはよくまとめたとは思うけど、やっぱり菜都子ママはいて欲しかったな。蘭丸は芝居が青いと思うし、神野も意外に演技で女優2人に押されてる。
萌と史緒はキャラが強いとはいえ、神野がここまで演技で押されると思わなかったので正直言って相当意外。

この2人を前にして歌う必要はないけれど、菜都子ママは由美子さんにやって欲しかったんだよなぁ・・・(独り言)。

●脚本を褒めてばかりはいるけれど
本音を言えばちょっとなぁというところもあって、一番の引っかかりは萌が言う「歌への復讐」かなと。
「どんなときでも歌には真摯だった萌さん」というのが史緒の萌評だったわけで、史緒の前で「復讐」を口に出していないとはいえ、萌のキャラとしてそこだけは何度見てももやもや。

●綺麗事
作品公式ダイジェスト動画にも登場する萌→史緒の
「綺麗事なんてやめてよ」
史緒はもう一人別の人に「綺麗事」と言われています。
それが蘭丸でして、「自分がニューヨークに行っていいか」の問いへの史緒の返事のあまりの教科書的な答えに対する言葉に対して言っているのですが・・・

史緒が対する蘭丸、その視線の先には萌がいて・・・

新妻さん演じる萌の表情が背筋寒くなるぐらい。

「あなたの『綺麗事』で相手を傷つけていること、
よく分かったでしょ?」

的な表情を見つけてしまって怖くなってしまった。でも多分次も見る。

史緒が言う「綺麗事」に唯一突っ込みを入れない神野は、「聡明な」史緒が産み出す「綺麗事」は自分の利益になるからこそ、なのですね。



今週は今日から仕事が激多忙期間に入るため、「プライド」は来週日曜までお預け(短いってばさ)。

4回見て見て思いますが、歌の素晴らしさは間違いないところですが、芝居に関してはあまりこちらでは触れていないことに気づきました。(体調が本調子じゃないせいもありますが。)

出演者の表情からどう物語を読み進むか、次はちょっと頑張ってみたいと思います。

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コメント

こんにちは。こちらのレポを読んでいるうちに、こらえきれなくなって(レミゼのためにお金をためておくはずが…)とうとうプライドを見に行ってしまった者です。リピしたくなったというオチ付きで(笑)

私は笹本≧新妻なので、こちらのレポを参考に下手側を選びました。史緒がほんと美しいですね。雰囲気からして「私はお姫様」で、だんだん輝きを増していきました。
「お疲れ様でした」が凄まじいダメージを与えたというのに激しく同意です。からっとした言い方なのに、萌、怖いです…。個人的には、「かわいそうな木原さわ子」(by萌)もすごく怖かったです。萌が一気に黒化する感じで。
それにしても、ミュージカルでいいんじゃないかな、これ…。「ミュージカルならここでソロナンバーが入るよね」というシーンがいくつもあったので(笑)

四人の物語だと考えると少し「うーん?」と思ってしまうパッチワーク展開なのですが、史緒と萌のラブストーリー(笑)だと考えると、しっくりきました。
反発→ツンデレ(「萌さんのかわりなんていない」「史緒さんとこの歌を歌えるのは私しかいない」)→ケンカ別れ→互いに反省→死を前にして和解して抱き合う
って、ラブラブじゃないですか!

では、このへんで。長文失礼しました。日曜日楽しんできてくださいね。

投稿: にわ | 2010/12/10 01:38

にわさま

初めまして。コメントありがとうございます。
こんなネタバレ満載のレポを見てからでも楽しんでいただけたかと思うと、とても嬉しいです。ご観劇ありがとうございます(笑)。
玲奈ちゃんのドレス姿といえばミーマイですが、その時はどちらかといえば着せられてた感が強かったのに、今回の史緒は本当に美しいですね。白のドレスも素晴らしかったですが、私服がどれもこれもファッションモデルみたいな状態で(笑)。

黒萌パートについてのコメントを読ませていただいてふと思ったのは、「娘をかばって母親が死んだ」のも、萌にとっては史緒への怨み要素の一つだったかなと。
自分の母親に「生まなきゃ良かった」、と当たり散らされて自分のみじめさをずっと知らされていたわけですし。

「史緒と萌のラブストーリー」は素晴らしいまとめですね。

史緒が恋したのは蘭ちゃんで、愛したのが萌さん、萌が恋したのは神野で、愛したのが史緒さんとか思っちゃうと、なんかしっくり来る気がして、また変なインスピレーション(爆)に火が付いてしまいそうです。

またのお越しをお待ちしております。

投稿: ひろき | 2010/12/10 02:30

時間差過ぎて申し訳ありません。
「捨てざるを得なかった」とすれば、最後の「萌さんのようにプライドを持った子に(育ってほしい)」がぐんと説得力を増しますね。流石の洞察です。
「自分」に目がいっている史緒と「他人」に目がいっている萌は、出逢ったことで、史緒は「他人」に、萌は「自分」に目を向けることが出来たのかな?とすれば、このあたりも「二人で一つ」ってことなんだろうな。

投稿: ぴらふ | 2010/12/14 09:30

ぴらふさん>

進めて考えると、「萌さんのプライドを傷つけてしまった私の過ち」、だからこそ「自分を変えてくれたかけがえのないパートナー(=萌さん)のために自分ができること」は何か--という観点で見ると史緒の決断が全然不思議に思えなくていいなぁと。

「自分」に偏った史緒と、「他人」に偏った萌が融合したことで、あるべきところに収斂したのかと思うと、萌がいなくなってしまったことは寂しいけれども、いつまでも「史緒の中に萌は生き続けていく」ように思えて。
ただ、そう考えると萌が別に死ななくても良かったんじゃ・・・

「命を投げ打ってでも神野さんの子供が産みたかった」としても、今さら奇跡の回復して萌の病気が完治しても、別に無茶すぎとも思えないんですけど(苦笑)。

投稿: ひろき | 2010/12/15 01:28

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