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『MOZART!』(25)

2010.11.23(Tue.) 17:15~21:00
帝国劇場1階C列センターブロック

上演356回目(今期24回目)
観劇35回目(今期3回目)

帝劇公演2ヶ月中、「どこでS席にするか」というのは結構な難題で、普段ならスタートダッシュ型の由美子さんからして、前半にするのが常道なのですが、何かの予感なのか、11月の唯一のS席をこの日にしました。

期せずしてトークショーともぶつかったこの日。
結果からするとこの日のS席は大当たりでした。
間違いなく、今の由美子さんができるベストだと思います。

ご本人も手応えがあったらしく、カーテンコールで出てくるときには満面の笑顔でしたし、阿知波さんに向かって拳まで突き上げてガッツポーズしてましたし、いっつもじゃれてるオーケストラの皆さまには両手の親指立てて、某エドさんばりの「ぐー」やってました(笑)。
カテコでは久しぶりに「ありがとうございました」が2回も見られて、この日前方席を選んだ自分を褒めてあげたいです(爆)。

閑話休題、まずは本編の話。

今日の井上ヴォルフ×松田アマデは初日以来見るということで2度目。

というか何でこんなに偏ったチケットの取り方になったか謎で、今期3回目なのにヴォルフは全て井上君だし、アマデは当然最初から選択できないとはいえ、まだ黒木アマデはお目にかかれず。井上君とバランスいいって噂だから早く見たい。

で、男爵夫人は満を持しての香寿さん。

●ヴォルフ×アマデ
この日、印象的だったのは、「星から降る金」の後、自分を引っ張っていこうとするアマデを手で制した井上ヴォルフ。
初演以来ずっと見続けている井上君ですが、初演よりは感情で動くようになった感があるヴォルフとはいえ、やはり基本は「理性のヴォルフガング」なんだなということを再認識。
父親・レオポルトと姉・ナンネールを前にして、「家族には納得してもらって家を出たい」という感じが印象的。
1幕後半まではずいぶんとそんな感じを引きずってたような気がする。

その理性がぷつっと切れたのがコロレド大司教が自分が皇帝の前で演奏するのを妨害したときか?と思えて。
何というか、「壊れようとして壊れたんじゃない」という当たり前の変遷をこの日の井上ヴォルフには感じて。
今期の井上ヴォルフは壊れる自分を自覚している印象があったり。

●ナンネール的今日の出来事
最初の登場シーンを今期初めて、オペラグラスを通さずに見たわけですが、本当にいつまでも年齢不詳だなぁ。
弟への拍手に一緒に鼻高々になるのを見ると、あぁM!が帰ってきたんだなぁと今さらながらに実感します。
いつまでこれ続けられるんだろうなぁとも思いながら見るわけですけれども。

「お心ありがとうございますっ!」をあの高い台詞で、嫌味がないように言う技術って相変わらずウルトラ級だなと思いつつ、満面の笑顔を見られる束の間の幸せに浸ります。

「赤いコート」の姉弟じゃれ合いにも一寸の隙もなくて、このシーンの数十分前にあんなこと(トークショーの項ご参照、後述)になってるのかと思うと、プロって凄いわと感心。

「まぁ、モーツァルトの娘さん」シーンの最後、アルコ伯爵に凹まされてしょげてるナンネールに襲いかかる皆の暗い響きの「モーツァルト」という言葉を聞いて「ヴォルフガング・・・」と呟くナンネールは今期初めて気づいたりして。

ナンネールを見ていると「時が過ぎたことを実感する」のは前からそうなのですが、今期は特にここまででヴォルフ応援団としてのナンネールが終わって、はっきり星金からはヴォルフを醒めて見守る風になっているわけで。

最近になって「星から降る金」の前でナンネールがヴォルフに対して「ヴォルフガング・・・」と呟くようになったのもかなり印象的。その声色が明らかにヴォルフに対するマイナスの感情と言うのか、引き留めるようになっていて。

2幕「ウィーンからの手紙」(別名:ミュージカル史上最長の朗読)のシーンの由美子さんの演技が、今期のナンネールの心情に合っていないのでは、ということを言っていた人がいて気になっていたのですが(ちなみに自分自身も同じ感想を持っていました)、星金と「終わりのない音楽」と「ウィーンからの手紙」をセットで繋げて、自分なりの結論に達したのが、

ナンネールの喜びは「父親の喜びが前提での弟の成功」なんだろうなということ。

「終わりのない音楽」で「家族を見失ったら希望はない」と市村レオポルトが歌う歌詞に、ナンネールははっきり頷くのですが、これ、前期まではほとんどそういう印象がないんです。
以前は父親と別の感情で弟を応援していたと思うんですが、今期の場合は明らかに父親第一というのが見て取れます。

ゆえに、「ウィーンからの手紙」でナンネールが喜ぶのは、「弟の成功を父親が喜んでいる」からだと思えば、話がすっきりしますし、かつ、父親の死を弟・ヴォルフガングに伝えるときに、ただただ負の感情をぶつける理由も分かります。

それに、何よりもラストシーン。

前期までは「父親を失ったショックからヴォルフに辛くあたってしまったことへの後悔」がヴォルフガングの亡骸を見たときに出てくる、という演技構成だったわけですが、今回は明らかに負の感情しかなくて。

ヴォルフガングに対する同情など欠片もない今期のナンネールの姿は、「父親あってこそ」という一つの視点を形作ると、色々な意味でつながるような気がします。

ヴォルフガングしか見られなかった「才能」をただ一人見られたラストシーンのナンネール。
ただ、それは掴もうとしてもナンネールには掴めなかった。

「才能」を見ることも叶わなかった他の人たち。
「才能」とともに死んで行けたヴォルフガング。
「才能」を見られたのに自分のものとできなかったナンネール。

そう考えてみると、今期2010年版のM!の最大の特徴は、「誰が見てもナンネールが不幸」ってことじゃないかと。
前期までは「ナンネールがヴォルフガングの苦しみを『理解』」したことで、ヴォルフガングも報われたし、ナンネールも弟の孤独を理解したし・・という見方をするとナンネールが必ずしも「不幸」とも思えなかったのに。

「モーツァルト!」がますます救いのない物語になったような気がする今期なのです。




●トークショーつれづれ
さて、言いたいことを言ったのでトークショーレポです。

司会は20日に続きアルコ伯爵役・武岡淳一さん。

武岡さんが最下手について、上手に向かって順に井上君・島袋さん・阿知波さんが着席し、4人で進行。
この日、当日券の希望者が300人もいたそうで、トークショーが発表されてからチケット買った人!と武岡さんがお客さんに挙手を求めていましたが、ものの見事に2階ばかり(苦笑)。

武岡さん「そういえば『MOZART!』のトークショーって
初めてなんですよね」
阿知波さん「そうよね」
井上君「トークショーと本公演同じぐらいやってる僕ですけど・・・
    (本気にする客席を見て)冗談ですから納得しないで下さい
    (客席笑)
    初演の頃はトークショーってシステムがなかったんですけど、
    誰かがこんないいものがある、って気づいちゃったんですよね。
    それにしても、
    『MOZART!』だとどういうテンションでやればいいのかわからなくて」
阿知波さん「(今)テンション高いわよねぇ」
井上君「普通の回だと緞帳の前でアマデと一緒に万歳するんですけど、
    今日もてっきりやると思ってたら『今日はないんです』って言われて
    そのままのテンションで来ちゃったんで」



武岡さん「7年前と今とで変わったところありますか?」
井上君「一番大きいのは2回公演の2回目の時の皆の様子ですね。
    今までも2回公演の時は片方だけ自分だったので、
    そこは変わらないんですが
    みんなが死んだ目してるんですよ」
阿知波さん「違うわよ、体力温存してるのよ(笑)」
井上君「そんな様子がだんだん面白くなってきて、わざわざ
   『みんな頑張りましょうーーーー!』みたいにテンション上げて
    言うんです(笑) 
   みなさんの反応がむちゃくちゃ面白くて。

    高橋由美子さん、高橋由美ちゃんの前で、
   『今日も頑張ろうーーーー!』みたいにテンション上げて言うんです。

    そしたら、
   『あんたバッカじゃないの?』って返事が返ってくるんです(爆笑)。

    あの優しい姉がですよ(笑)。それが最近面白いんです。」
阿知波さん「でも2回公演だとやっぱり大変だしね。
     ヴォルフガングに引っ張ってもらわないとね。」


・・・まさか井上君から初っぱなで由美子さんネタでここまで爆笑話が出てくるとは。相変わらず良いキャラしてますわ。まぁここだけで自分的には満足でしたが(笑)

動画が出てましたが、hiroちゃんが予想以上に大ウケしていたことに気づいたんですが、そんな意外ですか(笑)
ちなみに阿知波さんは全然動揺してないのがかえって笑った(→知ってるのね・・・)



武岡さん「hiroちゃんは前回と今回で違いがあります?」
島袋さん「今回は『意識があります』ね」
武岡さん「それはどういう意味で?」
島袋さん「前回は無我夢中だったので覚えていないことが沢山
    あるんですね。
   今回はシーン毎にはっきりとどうやってるかが分かるって感じです」
井上君「実際コンスタンツェは毎回のごとく変わってますし。
    妻が安定しなかったんですよ(笑)。
    続けてやったのは西田さんだけですよね。
    夫としては助かってます。育三郎はどっちにしろ初めてだけど、
    僕も経験してるコンスタンツェと一緒にやれることで気持ちも
    通じやすいしありがたいです」



武岡さん「自分が出ていないシーンでも好きなシーンってあります?」
島袋さん「えーとこの衣装で言うのも難なんですが(もじもじ)
     『ワタシーガ ダレダーカ ゴゾンジカー』(←物真似)
     が好きなんですよ」
井上君「えっ、それもしかして物真似?別にしなくていいよ(笑)」
島袋さん「袖で物真似して遊んでます」



井上君「1幕最後のシーンの後で阿知波さんと自分、市村さんと
    祐一郎さんがだいたい一緒になるんですけど、
    自分と阿知波さんが汗かいてだくだく
    なのに、市村さんと祐一郎さん、涼しい顔なんですよ(笑)」
阿知波さん「だって2人とも動いてないもん(笑)」
井上君「市村さん、体力持て余して袖で足上げて踊ってるんですよ。
    『靴飛んでいってコロレドにあたったらどうしよう』とか言って(笑)
    『そうなったら僕が飛んでいって拾ってきますから』とか
    やってます」
阿知波さん「特に市村さんは動きたいのに動きにくい役だから
    そうなるわよね」



阿知波さん「アマデとの芝居が印象的ですね」
井上君「1幕最初の方でお互い笑顔でどつき合いするじゃないですか。
   あそこのアマデは『笑顔でいいよ』って言われてると思うんですけど、
    すごく幸せな気持ちになります」

井上君「ラストシーンでアマデが戻ってきて『返り血浴びちゃった』って
    言ってて。そんな言葉教えた覚えはないんだけどなって(笑)」



ここでお時間ということで、本日残業のアマデを呼んで、帝劇2000人のうち2人しか当選者がいないという驚異のプレゼント大会。
1階席1名、2階席1名に全キャストのサイン付のプログラムを差し上げます企画。

武岡さん「1階席は芳雄君が引きます」
井上君「A列××番です
  もっと後ろだったらハイタッチでもして行こうかと思ったんですけどね」
    (ちなみに20日の当選者はM列)

そして2階席。引き続き井上君が引こうとして

武岡さん「2階席はhiroちゃんが引きます」
井上君「(既に抽選箱に手が入っていたので慌てて引っ込めて)
    やーかき混ぜただけです(笑)」

島袋さん「J列××番です」
武岡さん「どうしましょう、hiroちゃんその衣装で行くの厳しいよね?」
阿知波さん「私行くわよ(拍手)」
井上君「いいですよ、僕行きますよ(拍手)。
    そういう段取りだったじゃないですか」
阿知波さん「何で言うのよ(爆)」

2階席に向かってダッシュするヴォルフガング氏。
壇上からは「意外に足遅いねぇ」@武岡さん とか言われる(笑)。

井上君「ここから見る舞台って新鮮ですよ」
武岡さん「そこからジャンプすればいいんじゃない?」
井上君「それじゃ明日舞台にいませんよ(笑)」

そして1階センターを通って戻ってきて、下手側から壇上に戻るわけですが。

武岡さん「そこ結構段差ありますよ」
井上君「分かってます、さっき体験しましたから」

さすが軽々した身のこなしでした(目の前3mの距離でした)。

お3方に感想聞いてましたが
島袋さん「いつもはもうちょっと喋ります」

が妙に面白かったです。

トークショー効果でほぼ満席のこの日の公演でしたが、正直言ってしまえば、12月もトークショーはありそうな気がします。今回、あまり席が動いていないんですよね。
作品blogもやるつもりなさそうだし、団体だけで何とか埋められるとは思えないんですけど・・・いいのかなぁ。

次回あるなら姉君呼んできて欲しいんですが。
井上君とやれば絶対面白いのは保証付き(笑)

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コメント

こんばんは、みみかです。
23日ソワレに観劇し、寝付けず(笑)レポをめぐっておりました。

今期のナンネールの解釈、そっけない系なのが個人的にすごく好きなのですが、あの手紙の朗読のシーンだけ上手く繋がっていない気がしたので、ひろきさんのレポを読んで成程!と思いました。

あと、07年に見たときは「私がプリンセスで~♪」や「プリンスは出て行った」が「プリンス=弟、のお嫁さんのプリンセス=ナンネール」的に、擬似恋愛風味で、実際ナンネの方が、コンスより遥かにヴォルフを愛している(ヴォルフもコンスよりナンネを愛してるような)に見えたのですが、今回はあくまで「弟のお姉さんとしてのプリンセス」という感じで歌っているのも印象的でした(分かり辛くてすみません;;)。すごく仲が良いけど、あくまで節度ある姉弟で、父が王様だからこそのプリンスとプリンセスというか。

ラストが喪服に変わったのも、良い演出ですね。由美子さんのラストの表情は、忘れられそうにありません。余計救いが無いのですが、その救いの無さが更に好きです。

12月はプライドもありますし、もう日々谷に住みたいです(笑

投稿: みみか | 2010/11/24 01:08

みみかさん、コメントありがとうございます。

「ウィーンからの手紙」とラストシーン、それらとそれ以外のシーンの繋がりというのは、今期初見以来の自分にとっての解釈の課題だったので、今回すとんと来たというか、納得したところがあります。

確かに、前回まではヴォルフガングをナンネールとコンスタンツェが取り合ってる(しかもヴォルフガングとの繋がり的にお互いナンネールが勝ってる)みたいなところありましたね。
ナンネールにしてもヴォルフガングにしても、姉弟なのに、お互いの好意を隠していない感じで。

それはそれで結構好きだったんですが(元々井上君&由美子さんの初共演が恋人役だった「バタフライはフリー」なのも影響してると思います)、父親という王様を頂上にしたプリンス(王子)とプリンセス(姫)と考えると今回の役の距離感が分かる気がします。

最後の喪服姿は父も弟も見送って全てを失ったのが印象的で自分も好きです。

そういえば、
日比谷に住むと高いので、定期券を有楽町まで伸ばしました(実話、笑)

投稿: ひろき | 2010/11/24 01:23

ひろきさんの、読みどおりだと思います。
ナンネールの登場場面が一番由美子さんらしい?その場面を観る為?チケットをまた追加してしまいました。28日に行ってきます。のどの調子も心配ないですね。

投稿: てるてる | 2010/11/24 11:37

こんにちは。

隣の芝生は青く見えると言いますが、、、、どうも、私が見ている回よりもひろき兄の見ている回の方が出来が良い気がしてなりません。

いや、私に見る眼が無いだけなんだろうとは思ってるんですけど(笑)

投稿: mac-K | 2010/11/24 20:37

てるてるさん、こんにちは。

登場シーンはある意味「高橋由美子さん」という名前に対する世間のイメージに一番合致している気がします。誤解を恐れずに言えば「これぞアイドル」と(苦笑)。

ようやく安定期に入ってきた感がありますので、このままの調子を保って欲しいです。

投稿: ひろき | 2010/11/24 22:00

mac-Kさん、こんにちは。

そんなことはないと思いたい(汗)。

2005年のナンネールは調子が日替わりだったりしてて、超安定してたのが2007年(楽日以外完璧でした)。それに比べると今年は回による差があるとは思います。

トークショーでばらされてましたが、2回公演の2回目は相当きついようで、木曜日ソワレは常にそれに当たってますから。

昨日にしても超絶テクニックで切り抜けてた歌の1シーンもあったので、その辺は日替わりの楽しみということで。
明日行かれますか?行かれるようでしたら、レポお待ちしてます。

投稿: ひろき | 2010/11/24 22:22

 『あんたバッカじゃないの?』は、受けました。あんな可愛いお顔なのに
男前な由美子さんならではのお言葉

トークショウに出演して欲しい。ナンネールと違う天然な由美子さんみたいものです。

投稿: てるてる | 2010/11/24 23:30

てるてるさん>

井上君も気を使って、その場にいない3人、ということで由美子さん、市村さん、祐一郎さんの話を出してくれたようなのですが、初っぱながその由美子さん話でした。

いやぁ、由美子さんらしいエピソードに爆笑しました。一緒にトークショーやると凄まじく斜め上に面白そうな気がします。

天然な由美子さん相手に返り討ちにあう井上君が見たいです(笑)

投稿: ひろき | 2010/11/25 00:07

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