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2010年11月

『MOZART!』(25)

2010.11.23(Tue.) 17:15~21:00
帝国劇場1階C列センターブロック

上演356回目(今期24回目)
観劇35回目(今期3回目)

帝劇公演2ヶ月中、「どこでS席にするか」というのは結構な難題で、普段ならスタートダッシュ型の由美子さんからして、前半にするのが常道なのですが、何かの予感なのか、11月の唯一のS席をこの日にしました。

期せずしてトークショーともぶつかったこの日。
結果からするとこの日のS席は大当たりでした。
間違いなく、今の由美子さんができるベストだと思います。

ご本人も手応えがあったらしく、カーテンコールで出てくるときには満面の笑顔でしたし、阿知波さんに向かって拳まで突き上げてガッツポーズしてましたし、いっつもじゃれてるオーケストラの皆さまには両手の親指立てて、某エドさんばりの「ぐー」やってました(笑)。
カテコでは久しぶりに「ありがとうございました」が2回も見られて、この日前方席を選んだ自分を褒めてあげたいです(爆)。

閑話休題、まずは本編の話。

今日の井上ヴォルフ×松田アマデは初日以来見るということで2度目。

というか何でこんなに偏ったチケットの取り方になったか謎で、今期3回目なのにヴォルフは全て井上君だし、アマデは当然最初から選択できないとはいえ、まだ黒木アマデはお目にかかれず。井上君とバランスいいって噂だから早く見たい。

で、男爵夫人は満を持しての香寿さん。

●ヴォルフ×アマデ
この日、印象的だったのは、「星から降る金」の後、自分を引っ張っていこうとするアマデを手で制した井上ヴォルフ。
初演以来ずっと見続けている井上君ですが、初演よりは感情で動くようになった感があるヴォルフとはいえ、やはり基本は「理性のヴォルフガング」なんだなということを再認識。
父親・レオポルトと姉・ナンネールを前にして、「家族には納得してもらって家を出たい」という感じが印象的。
1幕後半まではずいぶんとそんな感じを引きずってたような気がする。

その理性がぷつっと切れたのがコロレド大司教が自分が皇帝の前で演奏するのを妨害したときか?と思えて。
何というか、「壊れようとして壊れたんじゃない」という当たり前の変遷をこの日の井上ヴォルフには感じて。
今期の井上ヴォルフは壊れる自分を自覚している印象があったり。

●ナンネール的今日の出来事
最初の登場シーンを今期初めて、オペラグラスを通さずに見たわけですが、本当にいつまでも年齢不詳だなぁ。
弟への拍手に一緒に鼻高々になるのを見ると、あぁM!が帰ってきたんだなぁと今さらながらに実感します。
いつまでこれ続けられるんだろうなぁとも思いながら見るわけですけれども。

「お心ありがとうございますっ!」をあの高い台詞で、嫌味がないように言う技術って相変わらずウルトラ級だなと思いつつ、満面の笑顔を見られる束の間の幸せに浸ります。

「赤いコート」の姉弟じゃれ合いにも一寸の隙もなくて、このシーンの数十分前にあんなこと(トークショーの項ご参照、後述)になってるのかと思うと、プロって凄いわと感心。

「まぁ、モーツァルトの娘さん」シーンの最後、アルコ伯爵に凹まされてしょげてるナンネールに襲いかかる皆の暗い響きの「モーツァルト」という言葉を聞いて「ヴォルフガング・・・」と呟くナンネールは今期初めて気づいたりして。

ナンネールを見ていると「時が過ぎたことを実感する」のは前からそうなのですが、今期は特にここまででヴォルフ応援団としてのナンネールが終わって、はっきり星金からはヴォルフを醒めて見守る風になっているわけで。

最近になって「星から降る金」の前でナンネールがヴォルフに対して「ヴォルフガング・・・」と呟くようになったのもかなり印象的。その声色が明らかにヴォルフに対するマイナスの感情と言うのか、引き留めるようになっていて。

2幕「ウィーンからの手紙」(別名:ミュージカル史上最長の朗読)のシーンの由美子さんの演技が、今期のナンネールの心情に合っていないのでは、ということを言っていた人がいて気になっていたのですが(ちなみに自分自身も同じ感想を持っていました)、星金と「終わりのない音楽」と「ウィーンからの手紙」をセットで繋げて、自分なりの結論に達したのが、

ナンネールの喜びは「父親の喜びが前提での弟の成功」なんだろうなということ。

「終わりのない音楽」で「家族を見失ったら希望はない」と市村レオポルトが歌う歌詞に、ナンネールははっきり頷くのですが、これ、前期まではほとんどそういう印象がないんです。
以前は父親と別の感情で弟を応援していたと思うんですが、今期の場合は明らかに父親第一というのが見て取れます。

ゆえに、「ウィーンからの手紙」でナンネールが喜ぶのは、「弟の成功を父親が喜んでいる」からだと思えば、話がすっきりしますし、かつ、父親の死を弟・ヴォルフガングに伝えるときに、ただただ負の感情をぶつける理由も分かります。

それに、何よりもラストシーン。

前期までは「父親を失ったショックからヴォルフに辛くあたってしまったことへの後悔」がヴォルフガングの亡骸を見たときに出てくる、という演技構成だったわけですが、今回は明らかに負の感情しかなくて。

ヴォルフガングに対する同情など欠片もない今期のナンネールの姿は、「父親あってこそ」という一つの視点を形作ると、色々な意味でつながるような気がします。

ヴォルフガングしか見られなかった「才能」をただ一人見られたラストシーンのナンネール。
ただ、それは掴もうとしてもナンネールには掴めなかった。

「才能」を見ることも叶わなかった他の人たち。
「才能」とともに死んで行けたヴォルフガング。
「才能」を見られたのに自分のものとできなかったナンネール。

そう考えてみると、今期2010年版のM!の最大の特徴は、「誰が見てもナンネールが不幸」ってことじゃないかと。
前期までは「ナンネールがヴォルフガングの苦しみを『理解』」したことで、ヴォルフガングも報われたし、ナンネールも弟の孤独を理解したし・・という見方をするとナンネールが必ずしも「不幸」とも思えなかったのに。

「モーツァルト!」がますます救いのない物語になったような気がする今期なのです。




●トークショーつれづれ
さて、言いたいことを言ったのでトークショーレポです。

司会は20日に続きアルコ伯爵役・武岡淳一さん。

武岡さんが最下手について、上手に向かって順に井上君・島袋さん・阿知波さんが着席し、4人で進行。
この日、当日券の希望者が300人もいたそうで、トークショーが発表されてからチケット買った人!と武岡さんがお客さんに挙手を求めていましたが、ものの見事に2階ばかり(苦笑)。

武岡さん「そういえば『MOZART!』のトークショーって
初めてなんですよね」
阿知波さん「そうよね」
井上君「トークショーと本公演同じぐらいやってる僕ですけど・・・
    (本気にする客席を見て)冗談ですから納得しないで下さい
    (客席笑)
    初演の頃はトークショーってシステムがなかったんですけど、
    誰かがこんないいものがある、って気づいちゃったんですよね。
    それにしても、
    『MOZART!』だとどういうテンションでやればいいのかわからなくて」
阿知波さん「(今)テンション高いわよねぇ」
井上君「普通の回だと緞帳の前でアマデと一緒に万歳するんですけど、
    今日もてっきりやると思ってたら『今日はないんです』って言われて
    そのままのテンションで来ちゃったんで」



武岡さん「7年前と今とで変わったところありますか?」
井上君「一番大きいのは2回公演の2回目の時の皆の様子ですね。
    今までも2回公演の時は片方だけ自分だったので、
    そこは変わらないんですが
    みんなが死んだ目してるんですよ」
阿知波さん「違うわよ、体力温存してるのよ(笑)」
井上君「そんな様子がだんだん面白くなってきて、わざわざ
   『みんな頑張りましょうーーーー!』みたいにテンション上げて
    言うんです(笑) 
   みなさんの反応がむちゃくちゃ面白くて。

    高橋由美子さん、高橋由美ちゃんの前で、
   『今日も頑張ろうーーーー!』みたいにテンション上げて言うんです。

    そしたら、
   『あんたバッカじゃないの?』って返事が返ってくるんです(爆笑)。

    あの優しい姉がですよ(笑)。それが最近面白いんです。」
阿知波さん「でも2回公演だとやっぱり大変だしね。
     ヴォルフガングに引っ張ってもらわないとね。」


・・・まさか井上君から初っぱなで由美子さんネタでここまで爆笑話が出てくるとは。相変わらず良いキャラしてますわ。まぁここだけで自分的には満足でしたが(笑)

動画が出てましたが、hiroちゃんが予想以上に大ウケしていたことに気づいたんですが、そんな意外ですか(笑)
ちなみに阿知波さんは全然動揺してないのがかえって笑った(→知ってるのね・・・)



武岡さん「hiroちゃんは前回と今回で違いがあります?」
島袋さん「今回は『意識があります』ね」
武岡さん「それはどういう意味で?」
島袋さん「前回は無我夢中だったので覚えていないことが沢山
    あるんですね。
   今回はシーン毎にはっきりとどうやってるかが分かるって感じです」
井上君「実際コンスタンツェは毎回のごとく変わってますし。
    妻が安定しなかったんですよ(笑)。
    続けてやったのは西田さんだけですよね。
    夫としては助かってます。育三郎はどっちにしろ初めてだけど、
    僕も経験してるコンスタンツェと一緒にやれることで気持ちも
    通じやすいしありがたいです」



武岡さん「自分が出ていないシーンでも好きなシーンってあります?」
島袋さん「えーとこの衣装で言うのも難なんですが(もじもじ)
     『ワタシーガ ダレダーカ ゴゾンジカー』(←物真似)
     が好きなんですよ」
井上君「えっ、それもしかして物真似?別にしなくていいよ(笑)」
島袋さん「袖で物真似して遊んでます」



井上君「1幕最後のシーンの後で阿知波さんと自分、市村さんと
    祐一郎さんがだいたい一緒になるんですけど、
    自分と阿知波さんが汗かいてだくだく
    なのに、市村さんと祐一郎さん、涼しい顔なんですよ(笑)」
阿知波さん「だって2人とも動いてないもん(笑)」
井上君「市村さん、体力持て余して袖で足上げて踊ってるんですよ。
    『靴飛んでいってコロレドにあたったらどうしよう』とか言って(笑)
    『そうなったら僕が飛んでいって拾ってきますから』とか
    やってます」
阿知波さん「特に市村さんは動きたいのに動きにくい役だから
    そうなるわよね」



阿知波さん「アマデとの芝居が印象的ですね」
井上君「1幕最初の方でお互い笑顔でどつき合いするじゃないですか。
   あそこのアマデは『笑顔でいいよ』って言われてると思うんですけど、
    すごく幸せな気持ちになります」

井上君「ラストシーンでアマデが戻ってきて『返り血浴びちゃった』って
    言ってて。そんな言葉教えた覚えはないんだけどなって(笑)」



ここでお時間ということで、本日残業のアマデを呼んで、帝劇2000人のうち2人しか当選者がいないという驚異のプレゼント大会。
1階席1名、2階席1名に全キャストのサイン付のプログラムを差し上げます企画。

武岡さん「1階席は芳雄君が引きます」
井上君「A列××番です
  もっと後ろだったらハイタッチでもして行こうかと思ったんですけどね」
    (ちなみに20日の当選者はM列)

そして2階席。引き続き井上君が引こうとして

武岡さん「2階席はhiroちゃんが引きます」
井上君「(既に抽選箱に手が入っていたので慌てて引っ込めて)
    やーかき混ぜただけです(笑)」

島袋さん「J列××番です」
武岡さん「どうしましょう、hiroちゃんその衣装で行くの厳しいよね?」
阿知波さん「私行くわよ(拍手)」
井上君「いいですよ、僕行きますよ(拍手)。
    そういう段取りだったじゃないですか」
阿知波さん「何で言うのよ(爆)」

2階席に向かってダッシュするヴォルフガング氏。
壇上からは「意外に足遅いねぇ」@武岡さん とか言われる(笑)。

井上君「ここから見る舞台って新鮮ですよ」
武岡さん「そこからジャンプすればいいんじゃない?」
井上君「それじゃ明日舞台にいませんよ(笑)」

そして1階センターを通って戻ってきて、下手側から壇上に戻るわけですが。

武岡さん「そこ結構段差ありますよ」
井上君「分かってます、さっき体験しましたから」

さすが軽々した身のこなしでした(目の前3mの距離でした)。

お3方に感想聞いてましたが
島袋さん「いつもはもうちょっと喋ります」

が妙に面白かったです。

トークショー効果でほぼ満席のこの日の公演でしたが、正直言ってしまえば、12月もトークショーはありそうな気がします。今回、あまり席が動いていないんですよね。
作品blogもやるつもりなさそうだし、団体だけで何とか埋められるとは思えないんですけど・・・いいのかなぁ。

次回あるなら姉君呼んできて欲しいんですが。
井上君とやれば絶対面白いのは保証付き(笑)

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『MOZART!』(24)

ナンネールが主役の映画が日本上陸します。

・・・

という、「モーツァルト!」番外編。

先日知った話なのですが、今年7月にフランス映画で「Nannerl、Mozart’s Sister」という作品が作られて、今年のモントリオール世界映画祭、インターナショナルプレミアで出品されたとのこと。

フランス語作品公式こちら
※注:音が出ます

ご存知の通り、モントリオール映画祭は日本映画がけっこう賞を取っていて、今年もご多分に漏れず深津絵里さん(由美子さんとは堀越の同級生ですね)が「悪人」で最優秀女優賞を取った映画祭ですが、他の作品のことを気にもかけていなかったので、まさか出品作品にこんな身近なテーマがあると思ってもいませんでした。

ストーリーを聞いてみると、ミュージカル版のナンネール同様に「あの時代故に音楽家になる道を閉ざされた女性の物語」そのものだそうです。
実際、ミュージカルでは市村パパことレオポルトが「我が娘ナンネールも奇跡の少女です」って言ってますけどほとんど無視されていますからね。

家族で演奏旅行に行って、姉の役割はほとんど弟の伴奏役。
宮殿で知り合ったルイ15世の息子に出会って作曲を薦められるけれども、時代はそんなことを許してくれるはずもなく、作曲をするために彼女がしたこととは・・・・
(ねたばれ→文字反転です蘭丸君の逆です

という話だそうです。

ちょっと情報のアンテナ張ってたら、やはり日本公開が決まったそうで、来春、渋谷のBunkamuraの中にある映画館、ル・シネマで、
「ナンネル・モーツァルト~哀しみの旅路」というタイトルでロードショーだそうです。

個人blogで恐縮ですがチラシはこちら

なんだなぁ、いっそのこと日本語版の声は由美子さんが当てちゃえばよかったのに(笑)とか、思ってしまいました。

そういえば、ミュージカル版といえば、東宝公式のプロモーションビデオが、開幕2週間で早くも今年版に衣替え。
井上ヴォルフの後ろで拍手しながら踊るナンネールが可愛い(笑)

井上君と山崎君にキャッチーな見出し付けてたので期待したのですが、残念ながらヴォルフだけでした。色々差し障りもあるだろうけど、プリンシパルぐらい頑張ってキャッチー付けようよ。

コンスタンツェ→ナンネールの順になったのはちょっと残念だけど、あの曲順ならどうしようもないよねというか、コンスの曲がいつものハイテンション版(爆)の「ダンスはやめられない」ではなくて「愛していれば分かり合える」になってたのが凄く良かった。

hiroちゃん、前回比ですごく良くなったけど、その中でも「愛していれば分かり合える」は丁寧に歌うようになって嬉しい。
以前はこの曲歌うときさえも、どこか上の空みたいなところがあったけど、今年の彼女は地に足が付いてる感じがするから、久しぶりにコンスにありがたさを感じてたりします。個人的にはちひろちゃん以来の”気持ちが伝わるコンス”なんですよね。

由美子さんは「終わりのない音楽」ですが、野菜市場にベルちゃんへの手紙読みシーンまで入ってて、たった10秒ですが良いです。

次回見るのは23日のソワレ。期せずしてトークショー日です。

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『プライド』(6)

2010.11.14(Sun.) 18:00~19:10
開幕直前イベント
シアタークリエ 1列目センターブロック下手側

とうとう楽曲初披露のイベント。
 ありえないほどの緊張と、
 ありえないほどの期待と、
 ありえないほどの安心で、
行って参りました(笑)。

この日披露された麻見史緒(笹本玲奈さん)と緑川萌(新妻聖子さん)の曲は2曲。
本編での歌は3曲+α(それぞれのソロ)のようで、そのうち2曲がこの日、初披露です。
インストも含めると、10曲以上らしく、ピアノを弾くことになる池之端蘭丸(佐々木喜英さん)は手が痛くてしょうがないそうな。

1曲目が原作の後半で出てくるSRMの「LIFE~命~」。
動画こちら←当然音出ます

上手側は真紅のワンピースの新妻さん、下手側は派手目のワンピースの笹本さん。
何というかこの2人が同じ場所に立って歌っている姿を、ステージまで5mの距離で見られる至福さといったらありません。

原作を読んでいると、史緒が高音パート、萌が低音パートと思いがちですが(髪の色のせいもあるのでしょう)、いざ2人が歌っているのを聞くと、より高音が出る新妻さんが高音パートを担当して、笹本さんが少し下げた高音パートと低音パートを担当していますが、もうなんつーか相手を気遣う必要がないもんだから、二人して抑えない(笑)

最初は玲奈ちゃんが余裕がなさそうに前を向いて歌っていて、新妻さんがアイコンタクトしようとして空振りしまくってた(笑)のですが、次第に余裕が出てきて目と目で通じ合っていて、歌の完成度とともにそのハートの伝わり方が素敵に見えます。

正直、初聴だと歌詞がどんなだったかとかまで覚えている余裕はなくて、ただ圧倒されたことだけは間違いなくて、オーディエンスもあまりにあっけにとられて一瞬拍手が遅れたぐらい。
凄く感動したり圧倒されたときって、すぐに拍手って起こらないものなんですよね。

2曲目が先日のTOKYO FM「DREAM THEATER」で紹介されたBette Midler「Wind Beneath My Wings」。
動画こちら←当然こちらも音出ます

前回の私の心配が当たって、ものの見事に英語で歌ってますが(爆)、完璧な新妻さんの英語を前にして玲奈ちゃんの英語歌、大健闘です。上手い人に引っ張られているというか、新妻さんの完成度を前にして玲奈ちゃんの負けず嫌いに火が付いたのか、どっちでもよくて結果オーライです。

ここも前回の予測通り、史緒~萌の順で入り、最後は2人でハモるという形でした。
つかラストに行くに従って玲奈ちゃんが史上最強の絶叫モードでびっくりでした。

で、この2曲を一気にやったせいか、あの新妻さんが、ご自分で「抜け殻です」と言うほど消耗しきっていたのはびっくりでした。
確かに、この2人だと全力出さなかった方が負ける(笑)。
勝ち負けじゃないことは分かっていても、そういう感想にならざるを得ません。

サイゴンの渋谷イベントの時は完全にハモっていたけど、今回はぶつかりあったり離れあったり。
それでも、まだまだシンクロ率100%になるまで、まだ上への道のりがあるように思われました。
(というか、今でこれだと初日どんだけになるんだか)

この日歌われなかったもう1曲はSRMの「Invocation~祈り~」

あまりの音階の落差と技術的な難易度の高さに、「私たち機械じゃないんだから勘弁して」と笹本さんが呟いたぐらいの難曲。ただし、実際に2人で歌うと凄く気持ちよいそうです。
だとしても今の段階では内緒という寺崎さんコメントで、「当日のお楽しみ」となっていました。
ちなみにこの曲、愛称付けの天才こと新妻姫からは「むちゃぶりソング」という呼称をいただいております。
オペラを題材にした本作ですが、実際にオペラの人の場合は音階によって歌う人違ったりするし、そうしないと喉が付いていかないから、という説明をされた後、「その意味ではミュージカルでやってきた私たちじゃないと歌えないと思う」と新妻さんが言っていて、玲奈ちゃんも深く頷いていたのが印象的。
ストレートプレイなのに、歌姫2人がメインで生バンドだそうで、「そもそもそれってストレートプレイなんだろうか?」と寺崎さんが自問自答していたのが苦笑でした。

2人の歌を聞いた蘭丸役・佐々木喜英さんはこの後のトークで言っていたのですが、「実は初めて聞いたのが、2人が歌稽古していたのを部屋の外から聞いたとき」なのだそう。ご本人おっしゃっていましたが、「原作で蘭丸が2人(史緒・萌)のことを”自分の探していたディーヴァはこの2人なんだ”と分かる場面があるんですが、まさにそれそのものでした」と言われていたのが印象的でした。

クリエ初見の人に手を上げてもらっていましたが、予想よりずっと多かったみたいです。
最前列だから振り返って数えるわけにもいきませんでしたが、感じ3割ぐらいですかね。
つまるところ、笹本さん&新妻さんを初見の方がそのぐらいということですね。



ここからはキャスト4人(佐々木喜英さん、笹本玲奈さん、鈴木一真さん、新妻聖子さん)と演出の寺崎さんが登場しての質疑応答、トークショーに突入です。
並び順は下手側から寺崎さん、佐々木さん、笹本さん、新妻さん、鈴木さん。

特に後半部分があまりに面白すぎて、以下「(笑)」を史上最高回数使います。
ご覚悟くださいませ。

●ケータリング王子
人にあだ名付けるの大好き&得意な新妻さんの、鈴木さんへのあだ名(笑)。
この日は会話に登場しませんでしたが、佐々木さんへは「イケメンさん」でした(笑)。
いつもお菓子持ってくれているそうです。
それで2人の歌姫からお礼言われる副社長(笑)。

「新妻さんはいつも食べてる」と普通のことのように言われていましたが
(彼女のblogが食べログと言われていることは公然の秘密)、
「食事休憩しないんですか?」って言われてびっくりしたと寺崎さん。

「それ言ったの新妻さんだよね?」と言うと「私じゃないですよ~」と玲奈ちゃんを指差す新妻さん。

「聖子ちゃんと私は違うんですよ。聖子ちゃんは短い間隔(30分ぐらい)ごとに食べてるから、”いっつも食べてる”って思われるけど、私はがっつり食べたいんですよ。うどんとか」とは玲奈ちゃん。

「プライド」の稽古は衆知のごとく帝劇9階の稽古場でやってる(玲奈ちゃん、新妻さんともに山崎育三郎氏からの差し入れに感涙しててその時にblogに書いてました)訳ですが、帝劇に美味しいうどん屋さんがあるんだそうです。

それにしても、2人の歌姫の共通の弱点がどちらも食事とは。

「お腹いっぱいになったら稽古にならないかと思った」との寺崎さんのコメントに首をぶんぶん振る二人(笑)。
そうだよなぁ、変なこと言ったら食事休憩なくなるもんなぁ(笑)。
無敵の二人のディーヴァを萎れさせるのは食事断ちだったのね、わかってはいたけど。

●2人の仲は
ここ、鈴木さんのコメントがふるっていて
「初日に入るときに、2人が仲悪かったらどうしようかと思った
(爆笑)」

それを受けて玲奈ちゃん
「作品中の史緒と萌はむちゃくちゃ仲悪いけど、私たちはそういう仲じゃないですから」

あぁ、稽古場で自分が演じてるときに傍らでなんかパクついてるってことね(笑)

このイベント直前の取材の第一声も

記者さん「で、お二人は仲がいいんですか」

だったそうです(笑)、新妻さん談。

2人が初日に絡んだときの話。

新妻さん「玲奈ちゃんと演じるということで自分の中ですごく大きな妄想があったんですよ。でも最初に絡んだ時に分かったのは、
『笹本玲奈と共演することは生涯ないんだ』(※発言のまま)
ということに気づいて。そこにいるのは当たり前だけど史緒だし。そこは凄く印象的でしたね」

玲奈ちゃん「私も全く同じ感想なんですけど、だって目の前にいるの萌そのものなんですもん(笑)。原作をずっと見てきて知ってる萌がそのまんま前にいるんですから。
『殺される-!』って思いました(会場内爆笑)」

寺崎さん「そういえば玲奈が稽古初日、すごい高いハイヒール履いてきたよね」

玲奈ちゃん「そうです。12cmのヒールで、
史緒として萌を見下そうと思って(笑)」

新妻さん「彼女(玲奈ちゃん)と私って10cm違うんですよ実身長。そこに12cmのヒール履いてきたら22cm差ですよ。私はスニーカーなのに(笑)・・・・あれ、私計算間違ってないよね、大丈夫だよね(なぜか焦る新妻さん)・・・
その日、『よろしく』って史緒から萌が言われるシーンを演じたんですが、史緒の手が私の頭のところにあるんです。届かないからそれ(笑)」


玲奈ちゃん「一緒に歌ってみて、聖子ちゃんとは『これからも一緒に歌っていきたい』と思いましたね。そんな作品ないですかね。」

・・・期せずして作品とシンクロですね。これ、原作内で史緒が萌との関係を蘭丸に告白している台詞の一つなんですよね(原作ファンは知っている)。

とりあえずアンケートには赤石路代先生の「P.A.」と「ワンモアジャンプ」をお奨めしてきました。新妻さんも言ってたけど、少女漫画と舞台って相性いいと思う。

●稽古場では
「笑いなんて台本上ほとんどないのに、なぜか稽古場は笑いばかり」とは寺崎さん。
「鈴木さんが日替わりで面白いこと言うんですよ、それがツボで」とは新妻さん。

稽古に入る時に毎日してることはありますか、という寺崎さんの問い。
「例えば12巻全部読んでから稽古場入りするとか(笑)」とか言ってて、で、
「例えば左足から入るとか」のジンクスに首をぶんぶん振る新妻さん。
この方、やっぱりそういうのは全然気にしないタイプらしい。

逆に、笹本さんは形から入る系。
「史緒はとにかくいつでも冷静なので、感情で動く自分と全然違って。
何しろ『無』にしようと思って、起きてからウサギに餌やるときも無感情、電車で移動するときも無感情、で通っています」らしい。

ちなみに今日の寺崎さんは製作発表の緊張振りと打って変わっての超饒舌モード。
「うさぎが可哀相ですね。
なんでこの飼い主いきなり愛情なくなっちゃんだろうって思ってますよ(笑)」
・・・玲奈ちゃんは「そんなことないですよ~」って言ってますが手遅れです(笑)

そういえば、こんな話が。

寺崎さん「稽古場で面白かった話といえば、そう言えば肩パッドの話って・・・」

新妻さん「(笑)そんなに面白い話かなこれ・・・史緒が膝を曲げてかがむシーンがあって、『膝パッド』を用意しようか、って話になったんですよ。そこで佐々木さんが何を思ったのか『肩パッド』と聞き間違えて大爆笑されまして」

佐々木さん「だって史緒が肩パッドですよ。想像したら爆笑するじゃないですか(笑)
いかり肩で歌うんですよ史緒が(笑)」

新妻さん「ほらあんまり面白い話じゃない(笑)」

そういえば、他の方のblog見ていて思い出した話で、
お客さん「(鈴木さんへ)どうやって台詞を覚えていますか」

鈴木さん「登場人物全員の台詞を、声色変えてICレコーダーに入れて聞いてますね」

新妻さん「(驚愕のあまり尊敬のまなざし)」

寺崎さん「あぁ、
相手が台詞間違うと自分の台詞が出てこなくなるってことですね」

鈴木さん「(絶句)」

・・・寺崎さんも何気に黒いな。

●外見の話
玲奈ちゃんの髪は実は地毛をエクステにしてやるのだそうで、本人からはカツラ希望が出ているらしいですが、今のところそれは実現する可能性はないらしい。

で、一部で大反響を呼んだ、新妻さんいわく”プライド2つ目の隠し球”である蘭丸君の女装。

この日、後ろ姿が公開されましたが、それを作品公式より早く出す新妻さんのやり手営業ウーマン振りに脱帽こちら

寺崎さんまで「新妻さんのとこ見てね」で終わらせてる(笑)こちら

新妻さん「なんか蘭丸君、終わる頃には指示もされてないポーズとかしだしてるんですよ」

佐々木さん「終わる頃にスタッフさんがにやにやしだして。なんかやんなきゃいけないのかなとか思うじゃないですか(笑)。」

寺崎さん「変なことに目覚めたりしそう?」

佐々木さん「しないですよ(笑)女装される方だとやっぱり女性の下着とか買いに行くみたいですけどね。やらないですよ(笑)」

新妻さん「やってるうちに蘭丸君ノッてきてまして。しまいには『私がナンバーワンよ!』みたいになってまして」

玲奈ちゃん「だんだんこっちがみじめになってきました(笑)」


ちなみにこの時のパネルについて。

佐々木さん「持って帰っていいですか?(会場内爆笑)」

持って帰ってどうするのでしょう(←会場内無言の総突っ込み)



そんなこんなで、ジャスト1時間。歌の充実度は別格でしたが、その分トークがゆったりだなーと思ったら途中から玲奈ちゃん中心に佐々木さんも突っ走り始め、新妻さんもがっつり付いていって、あろうことか寺崎さんまで煽りまくり、鈴木さんはどどーんとゆったり構えるという、摩訶不思議に面白い空間。

本番はこの欠片も見あたらないであろう、「プライド」の世界観とは実は似ても似つかないほどの面白い(笑)イベントでした。

さーて(笑)を29個使いました。

一番売れ行き微妙な12月14日ソワレあたりにこんな感じでイベントしたらどうでしょ。実は買ったんですがなぜか部屋のどこにいったか分からない回なので、そんなんなったら買い足しますから。

新妻さんが言っていた「これだけ苦労する稽古なら経験上、本番は凄く良くなる」という言葉が凄く印象的でした。
玲奈ちゃんのコメントが異常に面白かったんだけど面白すぎて記憶が飛んだ(笑)
「日本人ではありえないほどの性格を体現できるよう頑張る」とかだったような。
史緒のことを性格悪いってことは分かってるのね、と思って噴き出したので。



ちなみに最後に余談。
アンケートの中に「今年見た芝居の回数は?」という設問があって、覚えているわけもなく(笑)、「約30」と書いておいて、アンケートを提出。
家に帰ってきて記録を見たら、現時点で「44」でした(爆)。
「ガイズ&ドールズ」が15回で、作品は15作品なんですけどね。

2010/11/16追記
新聞記事はこんな感じでしたこちら
「おばちゃんなんて呼ばせない」なんて言ってても結局こう書かれるのね(笑)

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『MOZART!』(23)

2010.11.13(Sat.) 12:00~15:15
帝国劇場2階J列センターブロック

上演342回目(今期10回目)
観劇34回目(今期2回目)

ナンネールの不調が囁かれる今週、心配しながら行ってきましたM!マチネ。
いやいや姉さん絶好調じゃないですか。初日は「初日が出ていない」と厳しめに書きましたが、明らかに由美子さん、「初日が出た」と思いますこの日。

「赤いコート」の「昔と同じデザイン」の声の出し方でその日の調子が分かるので、高音も無理なく出せていた時点で大丈夫だと思いました。
良い意味で金曜公演のソワレ休みがいい気分転換になったのかなと(アンジェラアキさんのライブに行かれたそうですが)。

この日の組合せは期せずして初日と全く同じ、井上ヴォルフ&涼風男爵夫人。
アマデだけが代わり、坂口君は初見です。

●2010年版ナンネールの変化
前回は整理できずに書いてしまった反省もある、2010年版ナンネールの変化。

ありていに言ってしまえば、井上ヴォルフとの関係で言えば、お互いに年齢を重ねたということが理由なのだと思いますが、役柄上「おままごとからの脱却」なのかなと。

ヴォルフとナンネールの「仲良し姉弟」の関係って、1幕最初は今までと同じなのですが、ヴァルトシュテッテン男爵夫人が来る頃には、実はナンネールはヴォルフに対して冷めている、というのがとても印象的でした。

以前は、この段階のヴォルフとナンネールは凄く精神的に近くて、「ヴォルフガング頑張って(ちっちゃく握りこぶしのイメージ・・笑)」だったんですが、今回は、実はここに至るまでずいぶんの時が経っている、ということをとても実感できます。

ナンネールは女性故に音楽家として進むことを許されずに、好きなピアノも弾き続けることができず、せめてヴォルフガングに自分の夢を託したい、というのが今までだったと思うのですが、今回は役柄的にとても老成化したというのか、いちはやく夢を失ったように見えたのがとても衝撃的で。

理性的にヴォルフに対している分、ヴォルフにとっては口うるさいのが2人に増えたかというような(爆)、これじゃ今までよりずっと息苦しさ倍増だわ、と思ってしまったのが正直な印象。

いままで、ヴォルフを甘えさせられるから逆にヴォルフにも求めてもらえる、という関係だったナンネールが、今回はいち早くヴォルフ離れをしているから、演じる由美子さんとしては精神的には辛いものがあるでしょうね。

ヴァルトシュテッテン男爵夫人役のお一人、涼風さんが宝塚スカイステージで井上君と対談していた内容を見たのですが、あの時代に生きる役柄として、「ナンネールが気になる」と言っていただいていて。男爵夫人は貴族として階級社会の上位にいる、それに比べるとナンネールは音楽家の姉とはいえ、”何も持っていない庶民”であるという、その絶望的な格差を感じると。

それを聞いた時に、だからこその涼風男爵夫人からナンネールへの、あの温かい視線なのかと思うと、ちょっと意識が飛ぶぐらい嬉しかったりしました。

この日も、涼風男爵夫人が由美子ナンネールに優しく頷きかける様は健在で、その慈悲深さに惚れ惚れします。

話は戻って、今回の井上ヴォルフと由美子ナンネールの関係は、やはり同じ役を170回近くも一緒に演じて、やってきたからこその熟成した関係というか、だからこそ小池先生も思いきったというか、ある意味”お互いが大人になったからこそできる”関係性だと思うのです。

「精神的に少女」なままでナンネールをやるには、由美子さんは正直キャリアも年齢を積みすぎた感じがあるし、ヴォルフのためを思って言えるだけの「大人の女性」であってこそ、今の由美子さんの年齢でこそのナンネールの説得力だと思ったので、その意味で、井上ヴォルフと由美子ナンネールの関係の再構築って、極端な話、今後も見据えた話なのかも、と実は邪推していたりします。えと、何が言いたいかと申しますと、前の役作りだとそろそろ厳しいけど、今回の役作りだとまだやれるんじゃないかな・・・という話なんですけどね。

いい大人の女性が、いくら弟だからといってあれだけ破天荒な弟をそんなに優しい目ばかりで見るわけない、という言われてみれば当たり前の事実にたどりつくまでに8年を要したというのも、それはそれで味わい深いもので(笑)。

その点が引き継がれていたように感じられたのが、前回も書きましたが旦那様、ベルヒトルト様とのブリザードトークなわけですが、ここもそこの前述の関係性が如実に反映していまして。
前回まではナンネールは明らかに弟ヴォルフガングの成功に浮かれているわけですね。嫌みな突っ込み入れてくる旦那様がうるさくてしょうがない。だからこそ、旦那様が「付き合ってられないわ」と席を外すときに「あなた!」と”甲高い声”で止めようとしていたわけです。

が、今回ここのナンネールは「あなた・・・・」とすごーく澱んだ声で言うわけです。
ここ聞いた時に初日も「おおぉぉっ由美子さん凄いよ」と思ったわけですが、たった一言なのにあれだけの思いを込められる凄さ。そもそもミュージカルなのに手紙の朗読シーンで1曲使うってだけで相当な突拍子のなさではあるのですが(苦笑)、

この日、ベルちゃんとナンネのトークは、2010年初日版と2007年版の融合系というか、「ヴォルフガングはとても元気だ」の後、満面の笑顔でベルちゃんをのぞき込むナンネなのでありますが・・・・なーんの興味も示していない夫君に心底落胆したナンネちゃまは相当可哀相です。

ナンネールにとって「レオポルトとヴォルフガングのどちらに共感を示すか」について、2010年版はレオポルト寄り、というのは由美子さん本人がおっしゃっていた話ですが、2010年版初日が、それが相当極端に走りすぎたのに比べれば、仮面夫婦シーンも含め、良い意味で2007年版以前の色を少し混ぜてきたように思います。
初日は”無理してスタンスを変えすぎ”たような印象を感じましたので。
あと、音楽も全体的にゆっくりになっていた感じで、指揮の西野さんに拍手です。

この日、印象的だったのは、「終わりのない音楽」で由美子さん&市村さんデュエットの時に、「家族を見失ったら希望はない」とレオポルトが歌ったときに、ナンネールが深く頷いたところ。
多分、ナンネールが大切にしたかったのは「家族としての繋がり」なのだろうなというのが垣間見えて。

ナンネールのヴォルフガングへの感情というのは、今回、特に気になる点ではあります。
「パパが亡くなったわ」でのヴォルフガングへの責め、ということについての位置づけが大きく変わっていて。これはラストシーンとの関わりでもあるのですが。

以前は、ヴォルフガングを誰よりも理解し、心配しながらも、父の死に対面したショックで、ヴォルフガングを責めてしまう-当然ヴォルフガングは責められるべき立場にありますが-、だからこそヴォルフガングの亡骸を見つけて、才能の箱を見つけたナンネールは、後悔とも取れる表情で暗闇に消えていっていました。

ところが今回の場合、ヴォルフガングを誰よりも理解し、心配している点は同じですが、父親の死に際してヴォルフガングを責めた感情は、ラストシーンでも癒されることがなくて。
むしろ、ヴォルフガングに全てを奪われたナンネールの、ただただ絶望の虚無であるかのように思えました。

時代背景もあるとはいえ、才能、家族、幸せ、その全てをヴォルフガングによって奪われて。
でも実はヴォルフガングそしてナンネールのそれを奪ったものは、それは「才能」という魔物だったのだということを、ナンネールが気づいた。
それが「才能の箱」を開けた時にナンネールの目の前に見えた風景だったような気がします。
ただ、それが分かったところで、何が変わるわけでも、何かが取り戻せるわけでもない、それをナンネールも分かっていたところに壮絶な不幸を感じるわけですが。

ラストシーンが喪服姿に変わったのも印象的で暗喩的で。
コンスタンツェがヴォルフガングの墓場漁りに立ち会ってお金を求めている、最後は「ヴォルフガングを利用した一人」に墜ちてしまったのに比べれば、最後まで「ヴォルフガングに利用されたただ一人の人」であり続けたのがナンネールだったのだ、ということを、言葉で表現できないからこそ仕草であるように思えます。(手の動きが絶品。)

この日、「プリンスは出ていった」のラスト、アマデ人形から引き取った黒い目隠しを持ちながら、絶望の様でまっすぐに前を見つめるナンネールの姿の壮絶さには、ただただ絶句するばかりでした。

そういえば、この「MOZART!」、最後の最後でナンネールが喪服姿のままになったため、「影を逃れて」が終了後、ナンネールがカテコで出てくるまでの1分30秒が、最速の早着替えになっていたことに気づきました。それ大変すぎる。

そして他キャストについても。
この日、皆さん高値安定ばかりで素晴らしい出来だったわけですが。

●ヴォルフとコンスの感情のシンクロ
これを感じさせるのがどれだけ難しいことなのかは実感しているわけですが、今期のhiroちゃん(島袋寛子さん)は2007年よりずっと自然な台詞回し・歌になって、井上君もとても歌いやすそう。
それゆえに、ヴォルフがコンスのどんなところに惚れたのか・・・を考える余裕が出来た訳なのですが。

聞いていて強く印象に残ったのは「誇り高く生きる」という一節。

大司教に音楽家である誇りを穢されたからこそ、貴族に尻尾を振る選択をしなかったヴォルフガング。
貧しい家族に生まれながらも、自分が自分として生きるために必死だったコンスタンツェ。

「誇り」を大切に思っている2人だからこそ、惹かれ合い、求め合ったのだなと思えたことが、とても合点がいきました。

hiroコンス(←こっちの方が言いやすい)が今回もこの役をやることについて「先輩からもう一度やった方がいいと言われてやろうと思った」とおっしゃっていますが、何となくここの”先輩”がうちのご贔屓さんなような気がする昨今。阿知波ママならちゃんと名前出すと思うんだよなぁ。

井上ヴォルフについてそういえば語っていませんが、とにかくあらゆる意味で大きくなって、あっきーがいなくなって、意識して閉じ込めていたかのような「枠」が取り外されたような印象を感じます。
何というか、「檻に閉じ込められている方が安全」かのような、内向きの、”綺麗にまとまった感じ”のヴォルフガング、という印象が常にありました。
が、今回は山崎育三郎さんという後輩を迎えて、「井上君にとってのあっきー」が「山崎君にとっての井上君」になったのだろうな、と思わせられます。

でも、「お前は悪魔だ!ヘビ!オオカミ!」はいくらなんでもないと思うけどな(笑)

この日のヴォルフガングとアマデは初の組合せとなる(と、蚊帳が降りた後井上君が言ってました)井上&坂口ペアですが、凄かったです。

「自分を見失ったヴォルフガングが、最期はせめて才能と共に死にたいと願った」

からこその、アマデとの感情のシンクロ、そしてそれに続く絶命のシーン。
ヴォルフガングからの問いかけに、うっすらと頷く坂口アマデの様に絶句でした。

●やっぱり面白い”ワタシガー”シーン
変な外国人が登場する(笑)「ちょっぴり~」のシーン。
シカネーダー役吉野圭吾さん、初日だけ遊ぶのかと思いきや、変な外国人風の名乗りはこの日も健在。
シカネーダーがエンターテインメントを力説してる横で、「ほうほう、それで?」みたいに腕組みして上から目線で見てる井上ヴォルフが美味しすぎる(笑)。

ここのシカネーダー、「魔女が告げる予言」をよぼよぼ風の魔女系で歌って客席から笑い引き出してみたり、相変わらず芸が細かすぎます。ステッキを足で拾い上げて手で引き取るあたりも、凄すぎる技です。



この日、実は体調最悪で、3時間15分の長丁場が乗り切れるか、心底不安だったのですが、様々な物の力を借りて、素敵な舞台が見られたことにただただ感謝を。
安心して、次の観劇の日を待つことができそうです。

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『MOZART!』(22)

2010.11.6(Sat.) 17:45~20:35
帝国劇場2階J列センターブロック
アマデ役:松田亜美(3人中唯一の女の子)

2002年の初演以来2005年、2007年と再演され続け、「2010年・2011年版」(井上君命名)の4演目初日。
初演から数えると、333回目の公演になります。
自分の観劇記録見たら、33回目の観劇でした。もちろん観劇生活で一番多い回数見ている作品です。

演出的には、第3演(2007年)と大きく変わったところはなく、おおむね従来通りです。

今月1日に発売された「月刊ミュージカル」11月号に由美子さんのインタビューが掲載されており、「かなり役作りが変わる」とご本人がナンネール役について言及されていたこともあり、そのコメントをかなり意識しての観劇です。

そういえば、リトルナンネールは今回も登場せず(苦笑)、最初から最後まで今まで通り、高橋由美子さんがナンネールを務めます。奇跡の少女をまさか3回目の年女までやることになるとは・・・・

で、ナンネールについては「初日が出てない」感じと、この日を見た限りでは思わざるを得ないかなと。
いつも伸びるように歌う歌が、妙に区切るもんだから流れがあまり良くないし、役作りを変えた分、気持ちが追いついていっていない印象。ずいぶん慎重に歌っていたから、調子が良くない自覚はあるんだろうなと。
それゆえにか、特に1幕はシーンごとの印象がずいぶんばらばら。

やっぱり歌い手としても年齢的に厳しくなりだしているのか、前なら余裕でこなしてたところを結構苦戦しながらこなしているので、結果として完成度が今ひとつ。彼女の力量はこんなもんじゃないはずなので、長丁場ではありますが盛り返していって欲しいと切に願います。

今回のナンネール役の演じ方の変化と言うことで言えば、彼女の言葉で言えば「より父親に近く」なっていると。
それに関して大きく変わったのは2箇所。
一つは一幕「星から降る金」。

2007年までの、ヴォルフを励ます感じではなく、ヴォルフに対して、「父親を説得して行く」ように促してる感じ。

星金1番が終わったときに、家族3人のうちいち早く男爵夫人の言いたいことに気づき、男爵夫人と目を見合わせ、「あなたには言いたいことが分かったようね」と目で会話するのは好きだなぁ。
由美子さんと涼風さんは感じが似ているせいか、「影を逃れて」で2人が下手側を向いている時に、母娘に見えるのが摩訶不思議(笑)。

ナンネの呼びかけにヴォルフが力強く頷いてくれるのは嬉しい。

前回までなら「いつまでも弟扱いして」とヴォルフが拗ねるほど構っていたのに比べると、ずいぶん弟離れしたというのか、女性として自立した故にヴォルフに対する感情はより複雑になっているという感じかもしれません。

実際、演出の小池先生も「裏の気持ちを強調して演じてもらっている」と言われていますし、「プリンスは出ていった」で人形を呪いまくるだけの前回までより、より多くの場面でヴォルフに対してきつく当たっている感じ。

「パパが亡くなったわ」のシーンは、より今回の方が納得できるかなと。
今まではヴォルフに対して愛情もあったパターンだったけど、父親は苦しめるわ、自分は結婚もまともにさせてもらえないわ(最愛の人とは結婚できずに、ベルヒトルトとの結婚を余儀なくされているうえ、結婚の準備金も結局飲み代に)、今から考えれば前回までのナンネールはほとんどマリア様みたいな物わかりの良さでしたからね。

表面的に母親不在の中、今までは母親的な役割を果たしていたナンネールから、その部分が抜け落ちたことによって、ヴォルフガングにとっての救いはよりコンスタンツェに絞られたような、そんな印象は持ちました。

もう一つの大きな変更は二幕最後、まさにラストのシーンです。
ヴォルフガングが息絶え、セシリアがお金を奪い取った後、亡骸の第一発見者はナンネールなわけですが。

ヴォルフの亡骸を見て180度Uターンするのはちょっとした衝撃。
ヴォルフに対して顔向けできないという意味なのかどうか、これは次見た時に改めてじっくり考えてみたいところ。

前回はここが呆然自失だったので、そっちの方がしっくりは来ていたのですが、多分今回の変更はナンネールとしての役作りの行き着く先としての必然という意味なはずで、で、まだ一幕から二幕にかけての「新たな」ナンネールとしての感情の縦線が、まだつながりきっていないようにも思えるので。

そのあとは箱見つけて開けて、というのは同じなんだけど、涙こらえて歌ってるのは今回も印象的。
ただ前回はヴォルフガングの死への引き金を引いてしまったことに対する自責の念、というものを感じたけれど、今回はヴォルフガングが勝手気ままに生きたことは前提で、むしろ「これでひとりぼっちになってしまった」感さえ感じて。

今回1回見た限りでは、ナンネールはヴォルフガング離れして「大人の女性」になったけれども、ヴォルフガングを失ったことで「子供」に戻ってしまったかのような、そんな印象を受けました。

あ、旦那のベルちゃんとのブリザードトーク、ちょっと感じが変わってました。一番印象的だったのは夫にやゆされたときの「あなた」が甲高い感じから、「そういうことじゃないのよ(分かってないわね)」って感じのところ。

しかしこの仮面夫婦ぶりみるとM!が帰ってきたと実感します(笑)。
2幕、芝居ではさすがに由美子さんの力量発揮といったところ。

閑話休題、他キャストの話も。

○ヴォルフガング/井上芳雄さん
すごく安定したのは良いし、吉野さんとかと遊び放題遊んでるそんな感じはいいなと(突き合ってたし抱き合ってた)。
プラタ-公園で180度開脚(@キャンディード稽古場)とY字足上げ(@カレンダー)を見せていたのは噴いた。
(拍手が上がるぐらいインパクトがありました)

最後、ヴォルフガングが自壊するところは、なんかあっきーに似てきた感じがした。
天才が破滅する瞬間って、案外似たところに落ち着くのかもしれません。

○コンスタンツェ/島袋寛子さん
2007年の経験を経て随分としっくりくるコンスに。芝居が安定してきました。
歌は悪くはないんだけど、あの甘えるような歌い方は曲によってはちょっと・・・
SPEED風ともちょっと違う、なんか妙に松田聖子風(爆)
hiroコンスで一番好きなのは「このままのあなた」だったりする。
その甘い歌い方が妙にはまる。
そういえば歴代コンス5人の中で、最多出演なのは、hiroコンスだったりするのはあまり知られていない話(今期終了時点で146回)。

○ヴァルトシュテッテン男爵夫人/涼風真世さん
全般的に歌が地ならしモードだったこの日にあって、涼風さんの完成度は正直出色。
もともとあまり得意なタイプの人ではないですが(ミーマイのマリア公爵夫人のみ例外)この日一番の拍手をもらっていたのに納得です。

○シカネーダー/吉野圭吾さん
いやはや、この人登場すると空気変わるんだもんなぁ(笑)
客席が暖まってないのがわかったせいか、わざと台詞を外人風にいじって笑い取ってたあたりが絶妙。
ヴォルフガングとのじゃれ合いが年期が入りすぎてこちらも絶妙すぎます。



カーテンコールは既に東宝youtubeチャンネルにupされていますこちら
が、ほとんどカットされていません。
挨拶は井上君と小池先生。

小池先生「比較的長くやっていただいている方がおおございますので」
 ・・・の言い方にちょびっと噴いたり。あぁ、古株ですねよくわかります(笑)

井上君「2002年から2007年まで、ずっと中川晃教君と一緒に作り上げてきて」
 ・・・前キャストを公言できる井上君はやっぱり別格なんだなぁ。

究極は
小池先生「クンツェ、リーヴァイさん来てなくて私一人でごめんなさい」

由美子さんの両隣が市村さん、阿知波さんで、由美子さんから手を組みに行ったり、市村さんに笑わせられてたり、阿知波さんと一緒になんか左右に揺れてたり(笑)、しまいには珍しくもお手振りがあったり。
とりあえず初日が終わったことにとっての安心なのかな、と。
最初にも書きましたが、初日で仕上がっていなかったのは久しぶりなので、心配もありますが、徐々にでもベストの状態に持っていってもらえることを願っています。
次回は13日(土)のマチネに観劇予定です。


○余談1
帝劇1階売店に「Complete Single Collection」、「花の紅天狗」、「ゴールデン☆ベスト」、「SHIROH」、「高橋由美子コンサート'92 夏だ! 由美子だ! 全員集合! 」、etc・・・という1コーナーが出来ていたことに噴き出しました。クリエでやってたのは分かるけど帝劇でやる日が来るとは思わなかった(笑)

○余談2
終演後限定でポスター(1,200円)販売。土日でなくなっちゃうだろうなぁ・・・

○余談3
終演後、協賛の読売新聞の号外が出てたのですが、帝劇玄関大混乱。
あまりに押し合いへし合いで、「本日初日」の看板が揺れて帝劇扉にぶつかるハプニングまで・・・
(けっこう大きな音がしてました。) 何やってるんだもぉ。

○余談4 2010/11/10追記
blog巡りしていたら、赤石路代先生がこの日観劇されていたことが分かってびっくり。
こちら
しかも井上君FC会員でろっくりばー会員だったとは・・・・
山口祐一郎さんのファンなのはコミックスの柱で書かれていたことがあるので覚えてはいたのですが。
観劇作品がかぶりまくっていて苦笑してしまいました。

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