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『エネミイ』(2)

2010.7.11(Sun.) 13:00~16:35
新国立劇場小劇場 バルコニー席(RB列)30番台

エネミイ2回目。

安席(Z席)なのでしょうがないとはいえ、今まで何百回と芝居を見てきた観劇経験の中でも、一、二を争う酷い席。

というか舞台と直角に座席を配置するってそもそもの設計思想としておかしいでしょ。
バルコニー席全員が背中を席に付けてくれればいいけど、そもそもそんなことはありえないわけで、前屈みになる人がいたら背中から舞台を覗くという困った話(笑)。

アンケート用紙捨ててきたけど、アンケート書きたくなるぐらいの気持ちでした。
ちなみに千秋楽も3つしか違わない席なので、早くも後悔中という(苦笑)。

そういえば昨日、「ガイズ&ドールズ」演出家の菅野こうめいさんがご覧になっていたそうです(@ご本人twitter)。
「早口の演出が多い」って言ってましたが、今回の由美子さん演じる紗江も相当な早口ですけど・・・・ま、アデレイドほどじゃないですけどねぇ・・・

はてさて、7月3日(土)終演後のシアタートークも見ていて、その時の話を書いていなかったので、その辺も織り交ぜながらの話を。

この作品の最初のシーン、高橋一生さん演じる長男と、高橋由美子さん演じる長女が部屋にいるところのシーン。
このシーン、シアタートークで高橋一家の父親・高橋長英さんが褒めてらっしゃいまして、とても嬉しかったですね。

いわく、「我々の世代は構えて、というか構えないと芝居ができないところがあるのに、一生君と由美子君、2人のあの自然な佇まい、自然な芝居が何で出来るのか不思議だし、とても素晴らしいと思う」と。

ちなみにそれについては劇場に貼ってある記事にあったのですが、この作品の作家・蓬莱竜太さんも同じようなことをおっしゃってまして。

「我々の世代は感覚的に舞台に立つんだけれども、上の世代の人は『なぜ自分がこれをやるのか』を納得しないと先に進んでくれない。曖昧なことに反発する人は予想以上に多い。だから曖昧なホンは提示できない」と。

あらゆる意味でなるほど、と思った感想でしたね。

この作品で投げかけられている「戦い」ということに対する世代間の隔たり、という点ですが、一つの対抗軸は「人生を3分の2過ぎた男」と「人生を2分の1過ぎた男」との対比というのが一点。もう一つは「男性」と「女性」。

自分は一生君世代で、年上の男性とやりとりすることも多いので、「父親世代と若者の間のコミュニケーションの不在」というのは肌で感じていたりします。
いわゆる「経験世代」と「知識世代」の違いといいますか。

「角材」のイントネーションが違ったのは、一生君が本読みで発音したのを、おじさま方3人が突っ込んだのを演出の鈴木裕美さんが吸い上げた話らしく、「三里塚ってどんな字書くの?」は蓬莱さんが言った実話らしい。

この作品を見てつくづく共感したことがありまして、それというのも、年上の男性とやりとりする時には、「見てきたようには語らない」ようにしている、という点。
父親世代の経験に対してリスペクトをしていないわけではないけれども、正直言って「面倒くさい」という空気を持っていないわけじゃない。

「何故戦わないのか」と問われるけれども、若者が戦っていないわけじゃないし、「なぜ我々のように戦わないのか」と問われても、それこそ同世代の高橋長英さん演じる男性が語る「我々は何も手にしていない」という現実を、実は若者は理屈ではなく感覚で捉えているような気が、一生君の存在感から伝わってくるような気がするのです。

確かに今の30代は「戦い方を知らない世代」なのだけれども、「やり過ごすことには長けた世代」という実感はあって、『それだけではいけない』という問題提起をされているような気がしたのでした。

今回、60代の物語を30代の蓬莱さんに書かせる、という点で蓬莱さん的には「いじめ」としか思わなかったらしいですが、それをオファーした鵜山さんの発言を聞いていると、何かちょっと思うことがありまして。

「団塊の世代」が会社勤めを終えて、自らの総括をしきれていない今、「自分たちで出来ない総括」を若者世代である蓬莱さんに委ねるしかなかったのではないかな、と思えます。
蓬莱さんをさんざ痛めつけているように見えて、実は蓬莱さんに助けや救いを求めたんじゃないかな、とふと思えます。

その、世代間の格差のど真ん中世代である演出家の鈴木裕美さん。

見ている限り、その「思いの違い」をある程度理解した上で、「大らかさ」という作品的な救いを、母親役の梅沢昌代さんと、娘役の高橋由美子さんに振り分けたような気がするのです。

何となく「しょーがないわねー男の人はこれだから-」という裕美さん的な「がばっ」というような包容力を、そのパワーでうやむやにする母上と、弁舌でうやむやにする娘に配分して。

今日見てて、面白かった紗江さん@由美子さんのシーンがありまして。

2幕後半、煙草を吸いに行く弟と、客人2人。
「あれ、お前は吸わないのか」と言う瀬川に対して、「いや、禁煙に成功したから。」と胸を張って答える幸一郎(父)に・・・・

「そんなことに威張ってどうしようってのよー」
のジェスチャーに大爆笑。

男はいつだって見栄を張りたい生き物なんだな、ということが心底実感できたのでした。
ま、その通りなんですけどね(笑)。

ちょっと由美子さん的にはお疲れ気味というか、初日の全力疾走ぶりからするとちと調子落とし気味な感じ。
休演日を一日はさみ、ラスト一週間、後悔がなく終われますように。

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