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『エネミイ』(1)

2010.7.1(Thu.) 19:00~21:35

新国立劇場小劇場
3列目上手側

梅沢昌代さん演じる母親にして、
高橋由美子さん演じる娘あり。

高橋長英さん演じる父親にして、
高橋一生さん演じる息子あり。

そして姉が弟をあごでいじるあたりが堂に入ってて(笑)

妙に血のつながりを感じる、名前からしてほとんど高橋家(笑)。

全国第3位の名字(日本人の100人に1人は高橋姓です)とはいえここまで高橋を揃えますか。

男性陣が大御所揃いにあって、女性2人のいい意味でのKY系(母)といい意味での和み系(娘)。
意外や意外、テーマにしては笑い声も起きる、摩訶不思議な公演でした。

「人はなぜ戦うのか」をテーマにした新国立劇場今シーズンの最終作。
元全共闘系と思われる父の昔の知人、その招かれざる客を迎えた一家に起こる、何だか変な空気。
「戦わない世代」の代表として位置づけられるのが高橋一生君演じる若者。というか彼を炊きつけていつ怒りだすのか待ってる感じさえするんですが。

作家の蓬莱さんとも一生君とも自分は同世代なので、年長世代からどう見られているかという感覚は普段の生活ともシンクロする部分もあり、なかなか興味深いものがあります。

自分の意見はないと思いたくないけれど、言葉にするほどのものを持っているとは思えない。
だからこそ苦し紛れに出てくる「大丈夫です」という言葉は確かに「戦ってきた」世代からはもどかしく、物足りなく見えるのだと思います。

傷つきたくなくて、自分の枠の外には本心を見せない、世代間の気持ちの乖離のようなものは感じるものがありました。

男は自分の経験や過去から自由に生きられないのかな、とも思えます。
(なんか「モーツァルト」の「自分の影から自由になりたい」みたいだ)

「ただ酒を飲みたかった」と語った林隆三さん演じた男性の言葉は、これから年を取っていく自分にとっても、なんだか人ごととは思えないところがありました。

父親と息子、その間の対話という話は心にひっかかりもあるので、次見たときにでも書こうと思います。

それにしても・・・
それに比べてこの作品の女性2人ときたら本当に自由で羨ましい(笑)

フラメンコに興じる母親に、婚活にいそしむ姉(笑)

高橋由美子さん、2作連続(前作と次作が「ガイズ&ドールズ」ミス・アデレイド役)で「結婚したい症候群」ですが、そんな役ばかり来るのはやっぱり適齢期をちょっと過ぎたってことですか・・・

由美子さんがここのところ結婚した役やると、お手洗いで首吊ったり、DV夫に追っかけられてトラックにひかれて絶命したりとか、ろくなことない(苦笑)かわりに、「結婚したい症候群」やると何なんでしょうかね、このイキイキさ。

ご本人の結婚願望がないから安心して見られるんでしょうけど、わざわざ「私のいい人連れてこい」とか言ってたのはやっぱりこの役どころのなせる技なのでしょう。

招かれざる客の一人、瑳川哲朗さんとの凸凹コンビがハイテンションで実に面白いです。

さすがは鈴木裕美さん、高橋由美子という女優をどう活かせばいいか熟知していらっしゃる。
爆発系は梅沢昌代さんに振って、芝居のテンポを由美子さんが受け持つからテーマの割に進行がポップ。
やっぱりコメディエンヌの由美子さんが一番安心。
がぶり寄り系なのにやり過ぎ感もないし、同じ演出家さんとあって予想通り「淫乱斎英泉」の役と印象がかぶる部分あり。

由美子さんの2幕最初の白ベースの普段着がとってもスタイリッシュで素敵。下手側から見たい。
・・・と見たらあとの2回は上手側のグランドサークルか、残念。

特に1幕、飾ってさえいないシーンとかだと、20年の恋も醒めそうなシーンがあった気がするけど(笑)、あのべろんべろんに酔うシーンは地なようで案外にそうでもなさそう(飲んだ由美子さんを知る人はすべからく「いくら飲んでも顔に全然出ない」そうで)。

そんな娘も母には「かなわないわ」って脱帽してるあたりも面白いし興味深い。

母と娘という関係もあるのだろうけれど、「人を認める」=「負けではない」という女性の観念と、「勝ち負け」という概念からどうしても抜け出せない男性との対比を見せているように思えました。

でも、由美子さん演じる紗江は最初は弟に対して「負けてる」って何度もつついてるんですけどね。弟なりの「苦しみ」に対して、姉らしく見守ろうとしているような感じに変わっていった感じが姉に甘えたい属性がある自分なんぞはとてーも好き(勝手に一生君の立場になってみる)。

男が迷いながら悩みながら、もがいているのに比べると、多少もがいてた娘でさえ、あっけらかんしてた母にしろ、女性って強いのねぇ、というのが初見の感想。

あと2回、さてどんな面から見直せるか楽しみ。

カーテンコールは2回。粕谷さん(一生君演じた息子の友人役)に突っ込んでる由美子さんが笑顔で実に楽しそうだった。
そして、本編ではあれほど一家らしかった4人が、カーテンコールでなぜあんなによそよそしいかがとても謎(笑)。

●7/3追記
e+movieに、W高橋こと高橋姉弟のコメントが出ております→こちら

こんなにしゃべってる由美子さんを見たのは何年ぶりだろってぐらい、しかもラフにしゃべってます。
一生君と姉弟役やったのちゃんと覚えてたのが超意外です(←暴言)。

良い意味でこの作品のテンポが反映してるテンションの動画です。
「驚いたり笑ったり、驚いたり笑ったりの連続だと思います」って由美子さんの発言は「エネミイ」の作品をとても正しく表現してると思います。

楽しそうで何よりでございます。

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コメント

今日見てきました。ひろきさんと同じ感想で、鈴木さんの演出なので淫乱斉英泉の役とかぶっているところがありましたね。
お味たちの世代の感覚が若い作者さんが描いたので、少し消化不良な感もありましたが、一生君の役どころはうまくかけてました。いまどきの若者を演じる一生君中々良かった。トークショーは少しいて抜けました。それがラッキーなことに駅で由美子さんに遭遇うれしかったです。遠征した甲斐がありました。生の由美子さんの声をたっぷりと聞きました。小顔で綺麗でした。オーラ出まくり うれしかったです。

投稿: てるてる | 2010/07/03 22:01

遠征お疲れさまでした。初台駅で由美子さんをお見かけになられたとのこと、今年は中野に続き2度目ですよね?羨ましいです。

私はシアタートークで最後までいたのでそのチャンスは逃したのですが、5分に1本来る初台駅で由美子さんの出のタイミングとぴったり合うのって結構凄い気がします。

一生君と蓬莱さんはそれこそ同世代なので「上の世代に戸惑う様子」とかがシンクロしたのかもしれませんね。

投稿: ひろき | 2010/07/03 22:15

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