« 『また逢おうと竜馬は言った』 | トップページ | 『ピーターパン』(3) »

『エネミイ』(3)

2010.7.18(Sun.) 13:00~15:40
新国立劇場小劇場 RB列20番台後半

エネミイ3回目、そして千穐楽。

3回見た中で、一番すーっと中に入ってきた感じ。
由美子さん演じる紗江は間違いなくこの日が一番光っていて。
千穐楽に調子を合わせてくるあたりはさすがです。

もうあまりに自由に動きすぎてどうしようかと思いましたけど(笑)。
役としての本分は外さずに自由に遊ぶ遊ぶ。

成本とお酒飲んでるときに、酔いまくって、鼻つまみながら酒かっくらっているところに笑いました。
そうそう、どうしようもなく酔って、でも、飲まずにいられない時にこれやる人いますね。
隣で見てると他人のふりしたくなりますが(爆)。
なんか先日、職場の歓送迎会で見たような気もするんですが。

それにしてもさすがリアル酒飲み。
もはや演技指導とかいう話じゃない(爆)

紗江「みずーーーーーっ」
礼司「自分でやって」(と冷たくあしらわれる。一生君ここ上手すぎだ)
紗江「けち」
礼司「けちでもいいから自分でやって」

(笑)

あの空気感がたまらなく姉弟。
なんか”キッチン”にいた礼司に、酔った紗江がボディーラングリッジしてましたが、とりあえず見た限り千穐楽限定の姉君のお遊びだった模様。

あと何度見ても面白いのが紗江のぶち切れシーン。
結婚相談所に登録して婚活に明け暮れる紗江。
そんな紗江に、

成本「そこのねーちゃんは三十路過ぎてるのは分かるけどな」

(笑)

・・・・毎回ここ楽しみで。
由美子さんのぶち切れ演技って大好きなんですが、
いわゆるコメディ風のぶち切れって凄く少ないんで貴重。

そして空気を読まない母親。

母「どうしたの紗江ちゃん、なんで怒ってるの」
「お前のせいだろ」

正しい、正しいです父上。
妻に呆れつつも紗江には頭が上がらない父上のスタンスが絶妙でした。

そんなギャグパート(そんな名前では無い。)はさておき、
マジパート(そんな名前でも無い。)の話。

7月3日のシアタートークで司会の中井美穂さんがいみじくも言っていた言葉、
「娘にとって、『父親と息子の対話』って羨ましいものなんですよ」

その時、なるほど、と思ったのですが。

前回も書いたのですが、私は父親世代とはあまり苦もなく話せるタイプなので、父親世代の我々世代に対する「どう話して良いか分からない」というスタンスはとても分かる”つもり”だったりします。

典型的な特徴が、

『父親とは、息子を褒められない生き物』

だということです。

今回の「エネミイ」でも礼司は引き籠もり状態とはいえ、父親の境遇や考えをかなり正確に見抜いています。派手さはないけれど、父親は息子に押されているようなシーンさえある。

でも、不思議なことに、偏見かもしれませんが、この世代の父親って、息子を褒めることは出来ないんですよ。

これ、自分がこの世代の父親の息子だから分かるんです。
他人の息子は褒められるんですよ、不思議ですよね(笑)
自分の娘は褒められるんです。これもまた不思議ですよね(笑)

で、母親は息子も娘も褒められるんです。これもまた不思議ですよね(笑)

父親にとっては、息子はいつまでも自分を超えられないと信じていたい存在なんです。
似ていればいるほど、自分を見ているように思えるのでしょうし。
「今時の若者は」と言いたい父親世代にとって、究極的に褒められない対象が息子なんだと思います。

自分自身、去年父親を亡くしたので、父親の本心はもはや永遠に聞けないのですが、少なくとも自分が記憶している限り、ある程度の年齢になってから父親に褒められた記憶はないんですね。

ただ、自分にしてみれば、それが父親としてのプライドだろうと思っていましたし、父親が望むもの全てを息子が受け継ぐ必要もないと割り切ってもいましたし。

そういう意味からすると父親と礼司との会話はとても身につまされる物がありました。
礼司がことさらに父親を追い詰めないところも、「優しさ」という言葉とはちょっと違うのですが、シンパシーを感じるところがありました。

それにしても、「世代間の対立」という形で括られた今回の作品のテーマではありましたけれど、3回見ての感想は

『言葉にしないと納得できない世代』

『言葉は持たないけど感覚でとらえる世代』

の対比という感じがしました。

だからこそ上の世代からは「言葉の危機」とか言われるんでしょうけど、上の世代の「やり残した思い」を勝手に「受け継ぐべきだ」とかいう”上から目線”の考え方には、どこか30代として微妙な反感は感じますけどね。

自分の世代の総括は自分の世代でやって欲しい。
どんな世代でも自分は自分と闘っているのだから。
それはちょっとした本音かなと。

芸術監督世代からの挑戦を、(内輪話(11稿まで行ったそうです)はともかく表面的には)飄々と返した作家さん。
そこをクールにぶった切った女性陣。

演出家が鈴木裕美さんだったのも今回の作風にはとても大きく感じましたが、
そんな中、自由に遊びまくった母上・梅沢さんと娘君・由美子さんのフリーダムさが実に心地よかった作品でありました。

この日のカーテンコール、4回ありましたが3回目では珍しく由美子さんの満面の笑顔が。粕谷さん、長英さんとじゃれていたりしましたが、究極が4回目。
由美子さん、捌ける時に長英さんに甘えて背中から抱きつきそうになってました。

めずらしーーーーー

ものを見ました。

何にせよ、終わり良ければ全て良し、でございます。

|

« 『また逢おうと竜馬は言った』 | トップページ | 『ピーターパン』(3) »

コメント

たまたま発見したのですが、以前当方のブログにコメントをして頂いたひろきさんでしょうか…。
でもHPアドレスがなかったので、もし見られたくなかったとしたらごめんなさいm(__)m
というか同名の他人だったら更にごめんなさいですね(;´д`)

高橋由美子さんファンの視点でのエネミイ感想、三本すべて興味深く拝見させて頂きました。
改めて思い出したこともあったり。。。

私は千秋楽しか見ておりませんが、由美子さんの演技、本当に素晴らしかったです。

投稿: corgi | 2010/07/23 09:00

corgiさん、いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。
由美子さんの役名だけ書いて踏み逃げ状態で申し訳ないです。(というかまさか劇場公式に役名がないとは思いませんでした。ちなみに「紗江」さんだったりします。)

というわけで書いた本人でございます。
URL入れるの忘れました。お騒がせしました(ぺこり)。

弟を見守る姉、という役どころが得意と言うこともあるのでしょうが、お褒めにあずかり恐縮です。「怒ったことはないのか」と成本に問われた弟の顔を、「それが聞きたい。」かのごとくじっと見る姉、というのが実はツボでした。

投稿: ひろき | 2010/07/23 22:00

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/48910911

この記事へのトラックバック一覧です: 『エネミイ』(3):

« 『また逢おうと竜馬は言った』 | トップページ | 『ピーターパン』(3) »