« 『プライド』(3) | トップページ | 『キャンディード』(2) »

『キャンディード』(1)

2010.6.13(Sun.) 13:00~16:25
帝国劇場 1階C列下手側


難解と脅されつづけ、前評判と雑音だけはかますびしかったこの作品、感想をなるべくシャットアウトしつつようやく今日がmy初日。

初日の6月2日が初見のつもりだったんですが、職場の歓送迎会の幹事で。
うちの会社は3社の異動が絡むので、幹事特権をいくら駆使しようとも、2日を外すのは不可能でお嫁に出しました。

で、5日も取ったのですが間違ってソワレを取ってしまいまして。これもどうにも予定をずらせずにこちらもお嫁に。2枚とも無駄にならなかったのは奇跡的。

ともあれ、色んな事情でmy初日がずれたことで、個人的には熱が入りにくいままの観劇になりそうでした。

ちびっとネタバレあります




1幕前半は詰まらなくてどうしようかと本気で思ったけれど(←毒舌本音)
1幕後半からぐっと良くなった。
帝劇コードを物ともしない台詞の下品さはどうしようもないけど。
ああいうのをわざとオープンにしてるのが芸術です、みたいな感覚はどうにも理解できないんですけどね。現実から目を背けるって意味じゃなくて、品ってものがあるでしょ。
あれ、そうとう苦情来るんだろうな。

亜門版を見ていないので、初キャンディードということで他版との比較はできないのですが、それが幸いなのかも。

キャンディードの波瀾万丈物語なんですが、これを飽きずに演じられる(見せられる)井上君はやっぱりさすが。ご本人が「純粋なんていまの自分にはないけど」とか自爆していましたが、黒い王子が白くなる瞬間は見慣れてますからね。ある意味とても安心です。

ふと見ていると、なんか「裏ミーマイ」って感じもしたりして。
久しぶりの再会のクネゴンデの余りの変わりようが、サリーとの再会の場面となんか逆の意味でだぶって。

「再会から改めて歩きだす2人の物語」というのが、男性主導(キャンディード)と女性主導(ミー&マイガール)という違いはあれ、今まで定着してきた「井上君と玲奈ちゃん」とは別の意味で印象的なゴールデンコンビ誕生という感じです。

井上君と新妻さんは「ミス・サイゴン」でクリスとキムとして共演済みで、当然、その組合せも何度も見ているわけですが、あの作品では、良い意味で新妻キムが突っ走りすぎるのでクリスが相当の大人じゃないとバランス悪いというか。直近では照井クリスが一番バランスが良かったことを思い出します。

というか、新妻さん、本当に芝居が安定した女優さんになったなぁ。

2~3年前にやったら「歌えるけど芝居は・・・」と確実に言われたであろうクネゴンデという役をきっちり物にしているのは驚愕の一語。

井上君が相手役を心配する必要がないって、それこそ玲奈ちゃん以来じゃないかと。(「組曲虐殺」の石原さとみさんも決して悪くはなかったけど。)

楽天主義と悲観主義を1人の役者でやらないのがジョン・ケアード版最大の特徴、と演出家が語られていますが、確かにこれ1人の役者でやったら物語の軸がわかりにくくなるだけというのは分かる気がします。

ゆえに「両者をぶつける場面が今までは作れなかった」と言うからには両者をぶつけるというのは容易に想像がつくし、「善」がすべて、「悪」がすべて、という風にはならないんだろうなぁと思っていたから、エンディングは予想通り。

物語的には、レミゼとモーツァルトとMAとラマンチャを足して4で割ったと言えば終わっちゃう気がするんですが(爆)。

2幕のアンサンブル総動員の檄シーンはモーツァルトのフランス革命シーンそのものだし、変わり果てたクネゴンデはラマンチャのアルドンサと妙にキャラがかぶるし(服の色だけか)、良い意味で何も考えてなさそうな無邪気さはコンスタンツェ(M!1幕)のアホアホぶりと通じるところがある気がするし。
やっぱり新妻さんはコンスキャラだと思うんだけどな-。「NINE」では良妻だったけど悪妻だって問題なさそう。

クネゴンデがあまりに計算高くて黒すぎて、
新妻さんの黒萌@プライドが容易く想像できる「キャンディード」2幕。
よっぽど頑張らないと史緒@玲奈ちゃん、食われるよこれ・・・

閑話休題。


白(善)と黒(悪)の物語。
たとえるなら、
白のスポンジと、黒の墨汁。

白くあり続けようとしたキャンディードが、不本意ながら黒く染まってしまったクネゴンデの黒さを、吸い込んであげたように見えて。
憑き物がとれたかのように清々しく未来に向かっていこうとするクネゴンデ、それを見つめるキャンディード、とても良い物を見せてもらったような気がします。

難解なのは間違いないし、結論の割には本編が長すぎると思わなくはないのですが・・・
狂言回し役の市村さんの台詞はただでさえ厳しかったM!の時よりも格段にその切れが鈍くなっているし、眠くならないようにという方に無理がある気がする。

歌は井上君、新妻さん筆頭に坂元健児さんもTMA出身の須藤さんもとても安定してるし、駒田さんも阿知波さんも素晴らしい。時たま挟み込まれるコメディ色もまぁ面白いんだけど、リピートにはとても向かないなぁ。
一幕でお腹いっぱいって気持ちもすごく分かる。

ある意味、二幕まで生き残ったことでキャンディードが得たものって、いくらでもマイナス面からは挙げられるんだろうけど、それに対する答えは一幕で阿知波さん演じる老女が、悲嘆に暮れるクネゴンデを諭す場面に出てくる、

「自分を殺そうとするものはいっぱいある。
でも、自分を生かすことができるのは自分だけなの。」

という言葉に象徴されているように思えます。

確かにクネゴンデは出自の割には波瀾万丈の人生を送ってはいるけれども、その上を行く老女という役を置いた時点でクネゴンデの深刻さを笑い飛ばせるような構造にしているし、クネゴンデを計算高くさせても本質を汚していないあたり、老女の存在ってとても大きいと思うのです。

この辺は、MAのマルグリットとアニエスに通じるものがあるような気もします。

ヒロインを悲劇という名の自分の殻に閉じ込めずに、「生き延びる」という観点からたくましくさせているという点で共通しているかと。

それと、阿知波さんがパンフで触れてる「冒険は自分を覚悟させる一つの手段」って言葉は深いなぁと思う。

あと2回、19日(土)ソワレと、27日(日)マチネと2回。
思ったよりは楽しめそうな予感です。

●追記
帝劇内にて、「MOZART!」プロモVを3回鑑賞。
いつの間にか、育三郎ヴォルフが扮装姿になっていました。
(東宝公式HPも)
チラシも変わっていました。
その後にアンサンブルさんが1人休演になってしまいましたが・・・

|

« 『プライド』(3) | トップページ | 『キャンディード』(2) »

コメント

お邪魔します。

なかなか感想UPされないので、どうしたのかなと思っていたら、そういうわけでしたか・・・(^_^;)

黒王子は舞台上で白くなれるからこその黒王子?(笑)

私は一応亜門氏再演版DVDを持っているので、何となく比べてみたりもしますが、今回は「お芝居ありき」の舞台という感じが凄くしました。歌ももちろん上手い方が揃っていますが、歌も含めて「芝居ありき」というか。

白のスポンジと黒い墨汁ですか?さすがのたとえですね。最後のシーンは私もとても好きで、それがあの二人だからこそ成立したと思うと、ちょっと嬉しかったりもします。VIVA!NEWゴールデン・コンビです(爆)

投稿: ぴらふ | 2010/06/17 07:22

こんばんわ。
NEWゴールデンコンビのベストショットが売店前にパネル展示されとります。

新妻クネゴンデの凄いところはあの歌で芝居がぶつ切りにならないどころか、本来あるべき姿であろうクネゴンデの心変わりできっちり前半と後半をつないでいるところですよね。

「生きるためにクネゴンデがどういう流れで変わって(壊れて)いったか」がしっかりしてるのは安心して見ていられますね。

それにしても喉が全然大丈夫って・・・

投稿: ひろき | 2010/06/20 01:24

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/48622167

この記事へのトラックバック一覧です: 『キャンディード』(1):

« 『プライド』(3) | トップページ | 『キャンディード』(2) »