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『明日の幸福論』(4)

2010.3.7(Sun.) 15:10~17:15

中野テアトルBONBON
A列センター

この日も最前列、それもど真ん中。

今回の芝居はベストポジションは下手側だったような気はするけれども。

出先から直行のために座布団はなく、尻の痛さを覚悟しての観劇です。
それでも背広じゃないだけまだましですが。
パイプ椅子に背広で観劇って、ある意味苦行です。仕事帰りの観劇サラリーマンがなかなか増えないのはそんなところにも原因がある気がします。

千穐楽ということもあり、通路に座布団席を複数(3~4席)出しての開演ということで、珍しく遅れての開演。

見た4回の中では一番客席のノリ、というか笑いのテンションがよくてさすが千穐楽。
先日の平日夜だと、客席が温ったまるのにずいぶんかかっていたからなぁ。

ちゃぶ台囲んで飲んでるシーンが、日増しに夜の飲みと同期化しているようで(笑)、違うのは由美子さん(好子さん)の酒量だけかも(苦笑)。

台詞回しが微妙に怪しい(3回ほど噛んでた)んだけど、金曜日に見たときに鼻すすってたところは普通に戻っていたので回復した模様。明日から「ガイズ&ドールズ」の稽古本格スタートとのことで間に合って何より。

この日は間の取り方含めて芝居がすごく良かったなぁ。
台詞回しは初日が一番しっかりしてたけど、何というのか役としての深みはこの日が一番感じたかも。

目に涙を溜めて夫を責めるシーンも、ただのヒステリックに仕上げてないのがいい。
由美子さん自身の腕もそうだし、演出のおかやまさんの腕も。

理性と立場をわきまえた責めだから、男は何も言えないわけだし。
古川さん演じる喜三郎が、崩れ落ちた好子さんの肩に手を触れようとするのを止める動きが、なんか好き。

あそこで好子さんが言った「これ以上私をみじめな気持ちにさせないでください」ってのは痛すぎ。
駆け落ちして一緒になった夫だけど、献身的に支えはしているけれど、でも「これ以上」というからには「みじめ」さを感じているわけで。

駆け落ちして夫の実家に顔を出す立場もない妻が、神田のおじさんのところに無心に行って、手切れ金として相続の前渡しとしてお金をもらってくる、なんて「みじめ」以外の何物でもなく、普通の神経じゃ耐えられようはずもなく。

夫が「お金を使わない」と言い出しさえしなければ、その事実を言おうとすら思ってなかったと思うと、その抱える物の大きさにただただ感服。

お金をもらいに行ったのも、夫には内緒なわけで(事前に言えば止められるのがオチ)。「苦労かけるな」と妻に言ったときの奥さんの一言、

「もう、慣れましたよ」

の言葉は、その時の由美子さんの佇まいとの相乗効果ですごく深かった。

苦労も、愛情も、そしてかけてもらった言葉への感謝も、全部受け止めた上での「もう、慣れましたよ」という言葉。そんな由美子さんが1m未満で見られる幸福。

思い返せば、由美子さんがふと発した「(スズナリとかの)小劇場で芝居がやりたいんですよ」って言葉は、もう5年以上も前。今はなきシアターアプル「真昼のビッチ」の終わった頃だったように記憶しています。

その頃は、劇団HOBOでシアタートップス、そして今回の中野テアトルBONBONと、2回も小劇場公演で見られることになるとは思いもしなかったです。

抱えるものの大きさから、小劇場で演じる「贅沢」を許されることになるとは、正直思っていなかったのですね。

前事務所当時は事務所の大黒柱でしたから、他の舞台を入れればそれなりの取り分が見込める由美子さんを、小劇場公演に出すことは事実上無理で、劇団員になるというのもかなり無茶な話。

劇団HOBOの旗揚げ公演が2008年10月で、前事務所がなくなったのが2008年9月末。
現事務所に移ったのが2009年1月。
前事務所がなくなることが分かったからこそ、その「清水の舞台から飛び降りる」的なことが出来たとも言えるでしょうし。

事務所側からすれば、宣伝効果といった面から考えると、ある意味「休暇期間の副業」的な位置付けなはずですが、実は今回、初日にはマネージャーさんもいらしてたし(身延でお世話になりました)、初日祝のお酒も来てたし、出演情報にはちゃんと載ってるんで、事務所公認なのですが、それはある意味、劇団HOBOで由美子さんが得られるものを評価していただいてるからかなと。

あの女優さんが小劇場で、というそれそのものも売りになることに気づいたのもそうなのでしょう。
が、芸達者な劇団員さんと一緒に演じることで磨かれる技術と魅力が、他では得難いものということを、きちんと由美子さんが示せていることが大きいんじゃないかと思います。

閑話休題。

今回の由美子さんの言い回しで好きな台詞が、本間さん演じる白井君にかけた

「まだ若いんだから」

という言葉。

これも深いなぁと思った。

今回の舞台で白井君は登場人物上、精神的に一番未熟な存在として描かれています。嫉妬も全面に出すし、嘘もつく。きちんとすべきところでいつも逃げてしまう。
だからこその「まだ若いんだから」

巧いなぁと思ったのは、由美子さんの言い方が、「まだ若いんだから、いくらでもやり直しが利くわよ」という意味にも取れるし、「今は若いけど、いつまでも許されるわけじゃないのよ」って意味も感じるし、「若いからと言って、全て許されるわけじゃないのよ」という空気も同時に醸し出してる。

全部を一つ一つ指摘されるよりも、ずっと辛い責めだったりするわけで、この辺が由美子さんの活かし方をよく知ってるおかやまさんだけのことはあるなぁ、とありがたく思うのです。

由美子さんがお姉さん的立場で若手の男性俳優さんと組むときの感じがまさにそれで、深追いはしないけど見捨てるわけでもない、でも過剰な支え方もしない。
それを本当の意味で分かっていたのは、井上君だけだったんだな、と改めて腑に落ちる物があるのでした。

いずれにせよ、飽きもせずに楽しめた今回の公演も冷たい雨とともに完結。

奥様役から奥様志望役へ切り替わる「ガイズ&ドールズ」へ、バトンが渡されます。
演出の菅野さん率いる「カーテンズ」もこの日の名古屋で最後。
サラ役の笹本さんの「それぞれのコンサート」ゲスト出演もあとは9日(←実は行く(笑))をもって終わり、「Frank & Friends」(13日、オーチャードホール←これも行く(笑))を除けば、まさにガイズ一色となります。

由美子さんが今回見せた「いい女」ぶりを、どう変容させて見せてくれるか、残り1ヶ月を切った期間を楽しみに待ちたいと思います。

追記
3月7日21時からスタートした「中野!元気演劇祭」合同打ち上げは、日が変わった3月8日0時に終了したそうです。(情報元は加藤社長のtwitter)
由美子さん、今日は1次会で帰りましょう(笑)

追記2
証拠写真
由美子さん、もしや、タイトル通りですか(爆)

追記3
やっぱりそうだったらしい→証拠文
だからーーーーー
稽古はまともに寝てから行きましょうよ(苦笑)

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コメント

何回見ても、飽きないし
本当に観に行ってよかった。
由美子さんがやりたかった
お芝居が、至近距離で見られて
良かったです。他のお芝居で
消化不良の場面が多々あったので
今回で、払しょくされた感じです。
良いメンバーとお芝居されて
すごく、演技的に良くなった感じ
(えらそうにいって)がします。
由美子さんの良いところは、お芝居に
出演されるごとに良くなってきていること
これファン冥利に尽きますね。

投稿: てるてる | 2010/03/08 00:21

こんばんわ。

由美子さんのお芝居の出来は色んな意味で演出家さんに左右されるところが大きいかと思います。
どんなときもそつなくはこなすんですが、演出家さんと方向性のシンクロが上手くいかないときは、ほんのわずかですが、ぎこちなさを感じるのですね。

劇団HOBOについて「あの時やれば良かったと後悔するぐらいなら、やって良かった」とまで言っていた由美子さんだから、他の舞台以上に魅力を出し切れていたように思います。

消化不良はあっても、見て後悔、と思うことがないのが由美子さんのお芝居ですね。
自分と波長が合う女優さんに出会えたのは嬉しいものです。

投稿: ひろき | 2010/03/08 00:35

こんにちは。
千秋楽にして初見でした。深いというか、余韻の残るお芝居だなと思いました。
「喧嘩農家」の役設定がハマリすぎていたので、その路線(由美子さん含め他のメンバーも)で行くのかと思いきや・・・何だか意外でした。前回の路線なら林さんと古川さんが逆かなとか、でも一番意外だったのはやっぱり由美子さんの役で。こう、来るか、はじめさん!みたいな・・・。
でも、面白いことに根っこの部分は意外にどのメンバーも前回公演と変わっていない部分があって、さすがそこはメンバー知り尽くしてる人が書いてる、演出してる所以なのかと思ったり。あと、ラストシーンが斬新かつ素敵かつお洒落(笑)でした。

投稿: ぴらふ | 2010/03/08 07:32

こんにちは。
千秋楽ご観劇だったのですね。
HOBOの舞台は多分、由美子さんの相手役を順番に回すんだと思います(笑)。
おじさんとでも若手とでも誰とでも組めるので。

由美子さんのああいう”いなせ”な役って、初見ではないまでも久しぶりで、前回のある意味がさつ路線が継続しなくて良かったです。
ラストシーンも良かったですね。今回の「格好いい」由美子さんは男性よりむしろ女性に評判良い気がします。

投稿: ひろき | 2010/03/08 21:09

いつもながら
お芝居が終わった後は
虚ろで、今回が良いお芝居だったから
なおさらです。最後のシーン
本当にカッコよかった。喧嘩農家は
あっけない終わり方だったような
やはり、ラストは由美子さんのかっこいいシーンで終わりがいいですね。
ところで、10円は誰が置いたのかしら?
私は喜三郎さんだと思いますが
ひろきさんはどう思いますか?

投稿: てるてる | 2010/03/08 22:22

てるてるさん、こんばんわ。

10円誰が置いたのかはそういえば深く考えなかったです。
お金出せそうなのは喜三郎と善助ぐらい、
他の人は10円持っていそうにないですからね。

本命:善助さんが置いた。
対抗:喜三郎さんが置いた。
大穴:好子さんが置いた。

善さんだと本人が第一発見者だから事前に発見できなかった理由と符合する。
きーさんはぽんと5円払えた意外な羽振りの良さが理由でしょうか。
好子さんはあの取り乱し方とは符合しないけど、実は110円もらってきててとか、最後に重箱にあって回収できること考えると容疑者(爆)から外せない。
と言う意味で「大穴」です。

投稿: ひろき | 2010/03/08 23:20

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