« 『アンダンテ~稲の旋律~』(2) | トップページ | 『プライド』(1) »

『ウーマン・イン・ホワイト』(6)

2010.1.24(Sun.) 13:00~16:00
青山劇場 1階R列上手側

再演4回目、初演も含めると6回目。
FCのS席とあってか、前方ではありませんがとても見やすい席。
周囲は帝劇組の方が多いようで、岡さんのところでオペラグラスが一気に上がるところとか壮観です(笑)。

初演に比べて再演は「薄い」と何回も書いていますが、再演で好きなシーンが3つあります。1つは既に(3)で書いたマリアンとフォスコの関係(目で糾弾するシーン)。

1つは、マリアンとローラの関係。パーシヴァル卿署名強要シーンの、ローラの「もう誰も信じない」という叫び。ここは初演時の神田沙也加さんと再演時の大和田美帆さんの、「強さ」の強弱がかなりはっきりしているシーンで、バランスから言うと大和田さんがちょっと強すぎるかな、神田さんがちょっと弱すぎるかな、という絶妙な感じなのですが、マリアンを中心に見ているとこの大和田ローラの強い拒絶が、凄く印象的なのです。

というのも、「もう誰も信じない」と『マリアンを振り払う』んですねここ。

マリアンは「自分だけはローラを助けてあげなくては」と思っているのに、ローラは「もう誰も信じない」と言っていて、その「誰も」に「マリアン」が含まれていると思って慄然とするのです。

それにここでのマリアンはローラに対して、「真っ直ぐ支えられる」立場では実はなくて。家のことを思い、ローラとパーシヴァル卿の結婚を勧め、ローラとハートライトの仲を引き裂いた・・・それは「仕方なかった」、とマリアンは自分で自分を納得させているけれど、一ミリたりとも自分自身のハートライトへの思いが影響しなかったとは言い切れない・・・

マリアンが、ローラに「綺麗な心」で向かい合えていないこのシーンで、自らが拒絶される。
「ローラはマリアンを信じていない、とマリアンが思っても仕方ない」タイミングだからこそ、マリアンはショックを受けるのだと思うのです。

マリアンがショックを受けるシーンだからこそ、ローラは強く強く否定するほど、マリアンにとっての衝撃は大きくなるわけで。

でも当然、ローラは「もう誰も信じない」にマリアンを含めたつもりなんてなくて。
自分が言ったことがマリアンに強い衝撃を与えてしまったことに気づき、すぐにマリアンにすがりつきます。(ここでスカート引っ張る演技なのが初演はどうだったか忘れたけど絶妙だと思った)

止まるマリアン、振り返ってローラを見返したときの「自分を100%信じてくれるローラの表情」を見たときのマリアンの気持ち・・・・地獄から天国へ、あまりの強烈な落差が印象的です。


もう1つのシーンは、マリアンとハートライトの関係。マリアンがロンドンにハートライトを訪ねるシーンです。

もう色んなところで書かれている話ですが、今期のハートライト様はマリアンもローラも愛してはいません。正確に言えば、愛してるのかもしれないのですが、愛しているように見えません。

冷たいわけじゃないけど暖かいわけでもない、というなんだかよく分からないキャラクターなのです。(初演の別所ハートライトは間違いなく「暖かい」方)

ここのシーンも1つ目のマリアン&ローラと同様、「マリアンが拒絶される」という観点から見たときに、マリアンの絶望が初演比200%増しです。

なぜかと言えば、つかみ所がない人を説得するのは、怒る人を説得するよりずっと難しいわけで、「マリアンとハートライトが心の深い部分で価値観を共有『していない』からこそ、ハートライトがマリアンを拒絶することで、マリアンの絶望が際だつ」と申しますか。

言葉を恐れずに言えば「田代ハートライトだとマリアンの説得に応じないんじゃないか」と思ってしまう恐怖。それゆえにマリアンももっと必死になるわけです。
ハートライトが冷たくなればなるほど、マリアンは自らをさらけ出して弱くなるしかなくなる。

「ローラのためよ、私じゃない」というマリアンの懺悔は、初演のどのときよりも再演の方が弱々しく思えたのです。

初演の別所ハートライトは、マリアンに対して怒りながらもとりつく島はあったし、この場でマリアンを受け入れる確証がかなり早い段階で持てたから、ある意味安心できたんですが、再演は「本当にいいの?」ってマリアンが言うまで確信にならない(苦笑)。

矛盾しているかもしれませんが、ハートライトが田代さんが演じたことによって見えたそんな”違った”風景は、とても興味深いものでした。

そんなこんなで、東京千秋楽記念、各プリンシパルキャストを順に振り返ります。

●マリアン役/笹本玲奈さん
 千秋楽の彼女はまさに神がかっていました。「All For Laura」の前半部の呆然とした部分から後半部の逆襲への転換といい、「このままではいない」のどこまでも続く意志の強い叫びといい、これほどまでに女性は強くなれるのかということを実感しました。
 途中までは座長の責任感に追われてか動きすぎな感じがありましたが、後半かなりきっちり整理されていて、千秋楽は「理想的」でした。

 ちなみに千秋楽で気づいたのですが、あの赤い服を着せられて、女性に肩を出された後に、恥ずかしげに1cm服を戻すマリアンの演技が丁寧すぎて好きです。
 「やるときはやる」とはいえ、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい、と。

 プリンシパルキャスト中最年少が彼女、という事実に改めて驚愕します。

 次のお芝居は「ガイズ&ドールズ」でお会いします。今からとても楽しみ。

 笹本さんを楽しむもう一つのエピソード→実は天然 from田代さんblog

●ハートライト役/田代万里生さん
 本当に歌、素晴らしかったです。艶のある歌声を初めて体験し、なるほど高評価の理由がよく分かりました。芝居に関しては、場数を踏んでもらうしかないのですが、例えばラストのシーンで「全てが変わった」と言ってるのにマリアン見てなくてローラ見てるときがあったり(爆)突っ込み所は満載なのですが、歌えるのは大きな武器なので、芝居の襞を経験で会得していって欲しいです。

●ローラ役/大和田美帆さん
 前役を見ているので本人同様びっくり仰天玉手箱状態です(笑)。当初イベントにもなかなか出てこなくて苦戦しているのが丸わかりでしたがさすがの頑張り屋で、公演中もどんどん変化していきました。見た目がお嬢様ぽくないのはもうしょうがないし、少しキャラ違いと思えたこの役を、笹本さんより2つ年上なのに、仕上げた彼女の力量に拍手。

●アン・キャスリック役/和音美桜さん
 田代さん同様、前評判通り美しい歌に聴き惚れました。本編にちょくちょく絡む割に表通りを歩けないので(苦笑)どことなく損な役回りにも思えてしまいますが、他人と絡む関係性がとても良かったです。「3人揃ってこれで完璧ね」が完璧に聞こえたのも、和音さんの貢献大かと。

●パーシヴァル卿役/パク・トンハさん
 アンに反抗されて「何言ってんだこいつ」ってニヤっとするところ大好きです(笑)。初演の石川禅さんもかなりの怪演でしたが、今回もかなり味のある悪役でした。今回初見だったのですが、また別の役で見てみたいです。

●フォスコ伯爵役/岡幸二郎さん
 期待通りの最たるものです(笑)。今期は岡さんなしでは何も語れません。
 こんなに頼りになるお方だとは、もう7年も見てきたのに認識したことはなくて・・・今回改めて骨の髄まで実感しました。
 これからも笹本さんをよろしくお願いします。
 しかし、公式blogにまで「マリアンとお似合いかも」と書かれてしまうフォスコってある意味凄い世界だ・・・主役と敵役がお似合いって言うんですから(笑)

 追記。千秋楽で「もうサボテンじゃない」時にマリアンに拒絶されて

 「あ゛?」

 というのがマイクに入ったのが爆笑でした。面白すぎる。

●フェアリー役/光枝明彦さん
 初演から続投、いつ見ても安心できる大御所です。唯一の初演経験プリンシパルとして笹本さんを見守っていただいたことに感謝。
 この方の良い意味の愛嬌がとても好きです。


 そして、ここからはカーテンコールレポ。

 いつものカテコ×2→オケピからオーケストラ合流→またカテコ

 で挨拶大会。

 座長の笹本さん。

「毎日命を削られるような思いで舞台をやっていた。キャストスタッフそして何よりお客さまの拍手で乗り切ることができ、感謝の気持ちでいっぱい」

 ここで青山劇場1200人による「笹本さんを泣かせる会」が急遽結成、されたかのごとく会場中から割れんばかりの大拍手が続き、感極まって笹本さんの目から涙が。
 彼女の涙、いつぶりだったかな。

「私だけじゃ間が持たないので、何か言いたい人!(会場内笑)」

 まずは、ということで田代さん。

「大きな挑戦となる試練の役だったけど、この数ヶ月間とても楽しかったです」
「私だけじゃ何なのでパク・トンハさん」
「短く、ね」

 そうしたらトンハさんの挨拶長い長い(笑)そか、「短く」って強調したのはそういうことだったのか。
 オールスタンディングの客席指して「皆さん隣の人と手を繋ぎましょう!隣は敵じゃないです!」に会場内苦笑、キャスト一部爆沈(笑)。

 あまりに長いのでみんな「巻いて巻いて」ってしに行くんだけどトンハさん止まらない。

 笹本さんが「じゃ、そういうことで」と抱き抱えても止まらない(笑)
 大和田さんなんか舞台際まで行って座り込んで「巻いて巻いて」ってジェスチャーまでしててそれがけっこう笑えたり。

 「じゃ、私の妻、ローラへ」(よく考えると意外でも何でもないが不思議な振りだ)

 大和田さん。

 「初演をその辺(1階席前方下手を指さし)から見ていたので夢のようでした、幸せです」

 そして笹本さんが引き取り、「やー、劇場中トンハワールドになっちゃってどうしましょう(笑)。じゃ、アンちゃんどぞ」(会場内笑)

 和音さん。

 「舞台上の不幸を一身に背負う役だったけど、このカンパニーでやれて良かった」

 光枝さん&岡さん。

 「この組み合わせって何の劇団のカーテンコールだろうね」(笑)
 「大阪でもお待ちしてます」


 そんなこんなで20分に亘る東京千秋楽・カーテンコールは終了。

 笹本さんがつい、「何か言いたい人」って放り投げた(爆)割には、結局プリンシパル全員が挨拶するという結果オーライの結末で、何だやっぱり「案ずるより産むが易し」なんだなぁと変な感想でした。

 ちなみに再演見終わって頭に残っちゃったフレーズ

 「良く描けてるラブラドール、彼女が鍵だ」

 色々違うのは分かってます(爆)。

|

« 『アンダンテ~稲の旋律~』(2) | トップページ | 『プライド』(1) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/47382787

この記事へのトラックバック一覧です: 『ウーマン・イン・ホワイト』(6):

« 『アンダンテ~稲の旋律~』(2) | トップページ | 『プライド』(1) »