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『エル・スール』(2)

2009.8.25(Tue.) 19:00~20:55
本多劇場 最前列

こっからちゃんと芝居初日の感想です。
初の下北沢、初の本多劇場。

高橋由美子さんにとってはかつて切望していた下北沢ですが、小劇場としては去年、閉館半年前のシアタートップスに登場しており、小劇場2作品目。

個人的には最前列ということでトップス最前列同様、ありえない近さで拝見することになりました。

客の入りを心配していたのですが、ちらほら空席がある程度でひと安心。
とはいえあれだけ売れてなかったから有料客は少ないんだろうなぁ・・・

舞台は昭和30年代の博多、夏を思わせる蝉の音が季節感を醸し出しています。

さて、この辺からさっさとネタバレモードに突入します。
ちなみに今作、パンフレットはなく公式チラシが8P建て。
ロビーで今作の戯曲が載った雑誌『テアトロ』(2009年9月号)を売ってます。
戯曲ですから当然ほぼ台本です。上演前に見ないように注意。

この作品、とにもかくにも台詞の多さが並ではないです。
ざっとみた感じは少年役のたかお鷹さんが短い台詞が多いのに比べ、相手役の由美子さんは長台詞が多く、しかも博多弁だらけだから、そりゃ台詞入らないと嘆くのも分かる気がします。
それに西鉄ライオンズ背番号当てゲームも結構壮絶な台詞量だったし・・・

むろん、そんなこと言っておいて初日のこの日、台詞飛ばしなんぞありはしなかったのはさすがですが。

ちょっと歌うシーンもありますが得意の作詞大会にはならずほっと一安心。

野球関係の小ネタもちょいちょい入ってまして、「南海のこのキャッチャー凄いらしいぞ。・・・・なんでもぼやきが多いらしい(会場内笑)」とか「西鉄はパは制覇しても日本一にはなれないかもしれない。巨人には背番号3の大型新人が入ったそうだからな。ものすごい勘で野球をするらしい(会場内笑)」とか。

結構客席からも自然な笑いが起こっていい感じ。主に笑いを持って行くのは長屋の主こと、松金よね子さんですが。さすが素晴らしい女優さんですね。

たかお鷹さんが少年役と言うことで、さんざ見た目をからかわれていますが(髪の毛が・・・)、なんかこの軽やかな感じがどこかで見たことがあると思ったんですが、『星屑の街』の前川清さんがこんな感じでした。(今回もお花をいただいていました。)

ということは、たかおさんと由美子さんが、『少年と憧れのお姉さん』という関係が表現できるのには何の無理もないわけで。

時にたかおさんが少年に戻り、時に由美子さんが少女に戻り、たかおさんから由美子さんへの「初めて感じる憧れ」と、由美子さんからたかおさんへの「汚れた自分からの脱出へもがく様子」が、上手く絡み合い、相性も良い感じです。

最近の由美子さんはヒロインというより、マドンナという言葉の方が合います。
まぁ、お歳を召したというか、もともとおじさんの中に混じった方がしっくりくるというか(爆)。
今回で言えば、ヒロイン的な役回りは有坂来瞳さんの方が意味合いが合っている感じ。

とはいえ、実は恋人役が有坂さん演じるヒロコなので、由美子さん演じるユカリと男とは何の関係もないのですが、そんな風に思えないぐらい、ユカリと男の2人との関係がストーリー上のメイン(時間的に言っても半分以上)を占めています。

由美子さんが痣を作っていたのは、登場シーンに何カ所か出てくる、「舞台上を自転車で走る」ためのようで、自転車で転ぶシーンもあるし、なるほど体力系の役です。

由美子さん演じるユカリは、売春婦ということで、今まで舞台で都合3度目の売春婦の役ですが、「真昼のビッチ」の時の感じが印象としては近いです(もう1回は「レ・ミゼラブル」)。
この時の役柄を評して、「汚れ役なのに汚れて見えない」と表現したコメントを拝見したことがあるのですが、今回はそこからちょっと踏み込んで、「汚れを自覚してもがく」感じがよりリアルです。

最近の巷の流行に期せずして乗ってしまったかのように、この売春婦さんは薬に溺れておりまして。
夫に先立たれた寂しさと、抜け出そうにも抜け出せない売春宿にいる中で、
心を病んで壊れているリアルさは怖くなるほどです。
右手にある包帯が、とあるシーンまでありますが、時を経てその包帯がきれいさっぱりなくなっている様が、印象的でした。
しっかし、こういったちょっと昔の日本的な空気には本当に違和感なく溶け込みますね、由美子さん。

昭和30年代の博多、赤線廃止の時を迎え、現・博多駅建築(昭和38年に高架化の現駅舎へ南方寄りに移転)に伴い、再開発で長屋が取り壊される、そんなときに唯一の皆の心の支えだった「西鉄ライオンズ」。
”昭和”という時代を切り取るには、あまりに題材に富んだ時だったんだなぁと感じます。

「昭和」のありふれた日常を懐かしんで、現代社会へ警鐘を鳴らす、というところまでのメッセージ性は実は感じなかったのだけれども、明らかに「今はない空間」を描くことによって、「簡単につかめない幸せを、でもつかもうと努力するところに尊さがある」ことは伝わりました。

ふと気になったのは、公演タイトルにもなっている「エル・スール」。
これはスペイン語で「南へ」という言葉なのですが、その後東京に移ったというたかおさん演じる男、大阪に移ったという有坂さん演じるヒロコにしても、どうみても博多は「南」じゃなくて「西」のような気がするんですが(笑)。

※ちなみに博多駅の現駅舎への移転だけは、確かに「南」へ移転でした。

公演は本多劇場は8月31日まで。その後博多、飯塚、亀戸、藤沢で9月末に終了となります。今のところ本多であと1回観劇の予定ですが、由美子さんもかつてない弾け方だし、亀戸増やそうかな。

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