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『この森で、天使はバスを降りた』(1)

2009.5.23(Sat.) 12:00~14:35
シアタークリエ 12列下手側

公演開始後の評判で行くかを決めようと思っていた作品。
ですが予想以上に評判が良く、とはいえクリエ作品は単価がお高い・・・
土曜得チケが出るのを待って行ってきました。

とはいえ、いきなり午前中に仕事で会社に呼び出されるわ、終わったら用事があるわでこの日の観劇自体が危ぶまれていましたが・・・

行って良かった。
ここのところ私的にもろもろ精神的に不安定になっていたこともあったやさぐれた気持ちが安らいだ感じ。

最近、観劇していると「うっ」と瞬間的に感動がこみあげる瞬間があります。
ちょっと前の「容疑者Xの献身」もそうだったし、「淫乱斎英泉」もそうでした。自分も歳を取ったのかもしれません。

以下、ネタバレですので、いつもの通り取扱注意でお願い申し上げます。





主役のパーシー役を演じるは、ヤンキー役をやらせれば天下一品の(笑)大塚ちひろ嬢。刑務所帰りの彼女が「紅葉が綺麗」な写真に惹かれて田舎街・ギリアドに来るところからこの作品は始まっています。

パーシーが心を開き、周囲が心を開くことで空気が変わっていく物語ではありますが、まぁ何はともあれ、やさぐれモードがこれ程までに似合う若手女優さんもそうそういません(念のためですが褒めてます)。

春クールドラマで、笹本玲奈さん目当てで視聴継続している「ぼくの妹」(TBS系日曜21時)のヒロイン・長澤まさみさんは、大塚ちひろさんが審査員特別賞を受賞した年(2000年、第5回)の東宝シンデレラ。つまるところ、長澤さんが主役(ドラマ・映画畑)だとすれば大塚さんが脇(舞台畑)なわけですが。

長澤嬢がそのドラマで演じているのは「困った妹」というか、キャバ嬢だったりだめんず好きだったり、まぁ破天荒なヤンキー方面なわけですが、いい娘路線の少女がヤンキー方面演じると魅力激減で。

女優さんは適材適所であるべきというか、ちひろ嬢のヤンキー系役のハマリ方を見ていると、意外に彼女は細く長く役に恵まれるのかな、と思ってみたりします。

この作品は何だかんだいってもパーシー役に感情移入できるかどうかが全てのようなもので、刑務所から出てきた直後、雇ってくれた食堂の女主人・ハンナ(剣幸さん)に楯突くシーンがあるのですが、その実、パーシーが反抗してる期間って実はそれほど長くなくて。森という自然のなせる技なのか、案外に早くギリアドに溶け込んでいきます。

見る前は実はパーシーはずっと突っ張り続けて最後に堕ちるのかと思ってたんで、思ったより自然に受け入れられる様はちょっと意外で。ただ粗雑なだけではないパーシーの人となりが上手いことちひろ嬢に合っている気がします。言葉足らずで内気なところとか、印象がまんまです。

出ずっぱりの彼女の歌は、残念ながら上手になったわけではないのですが、何というか別に歌の上手さを求められていないヒロインなら魅力的に見せる力、をなぜだか彼女には感じます。
地味だけど、技巧より親身、とか感情というかを表現できる、意外に若手女優さんには少ない才能を持っている気がします。

今回の作品は少人数7人の作品ということで、どなたもとてもいいのですが、その中でも特筆すべきは、パーシーの最初の理解者になるシェルビー役の土居裕子さん。

「マリー・アントワネット」で初見以来、拝見するのは2作品目ですが、あの作品の時の修道女・アニエス役も、ヒロインであるマルグリット(新妻聖子さん、笹本玲奈さん)の支え役として、助言役としてとても温かい歌を聞かせていただいたわけで、今回もその役とどこかかぶるかのような役どころ。

パーシーの服役した理由が語られる2幕。過去の重さ故に安らぎを森に紅葉に求めたのかもしれません。

罪を犯したから生きることに真摯なのか、真摯に生きてきた少女を狂わせた過去が罪なのか、どちらにも思えてきますが、そんな悲しすぎる過去を柔らかく優しく包み込む土居さんの歌声は、前と変わらずまるで聖母様のようでした。

人が人に好意を持つのも、人が人を忌み嫌うのも、ほんのわずかの差なのかもしれない、とか思えて。
肩肘張って、他人と壁を作るのは、実はとても寂しいことなのかもしれないとか思ったり。

そんなことを感じていると、実際に森の中に森林浴をして心を解放しているような、そんな疑似体験を感じます。クリエという小規模な劇場にはぴったりの、なんだか「癒しのミュージカル」というかのような、ほわっとした気持ちになれる一時だったのでした。

公演は今月末まで。半券リピーター割引もあるので(千秋楽のみ対象外)、なんかもう1回見たい、センスのいい小品のような作品でありました。

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コメント

こんにちはー。私はちーちゃん(大塚さん)のコンスタンツェを観ていないので、今まで想像がつかなかったのですが、パーシーを見て、何となく大塚コンスが想像出来たような気がします。映像では真面目でちょっと地味な子の役(この舞台でのシェルビーのタイプ)が多いような気がするので、想像がつきづらかったんですよね。

投稿: ぴらふ | 2009/05/28 08:19

こんばんわ。
ぴらふさん、ずいぶんパーシーの罠に嵌ったようで(笑)

ちひろちゃんは無自覚にとんでもないホームラン飛ばすのであなどれないんですよ。
色んな意味で隙とか影があるのが特にこの役を魅力的に見せている感じがします。

ちひろコンスとパーシーの共通点と言えば、とにかくエネルギッシュということですね。「若さ」という名の「未熟さ」が上手いこといった例のように思えます。

さて週末どうしよう(笑)

投稿: ひろき | 2009/05/29 01:19

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