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『淫乱斎英泉』(1)

2009.4.2(Thu.) 19:00~20:25/20:40~21:45
東京/東池袋・あうるすぽっと

先月はずいぶん多忙だったせいもあって、予定していた「Triangle」も今月に持ち越し、色々チケットの交通整理に追われました。

明けて4月。3月末の休日振替をいつにしようかさんざ悩んだあげく、結局この日に取得。8日の天王洲銀河劇場(「回転木馬」)と迷ったのですが、ご贔屓さんの順序を変えるわけにはいきますまい。

池袋近辺に住んでいながら、なぜか縁がなかったこの劇場。
高橋由美子さんのこの劇場初登場と同日に、初めて自分も足を踏み入れました。

2007年オープンの新しい劇場で何がいいかといえば、席と席の間隔が心なしか広いこと。劇場で観劇するとき、通路から離れたところ(つまり中央付近)だと、座っている人の前を横切る必要があるわけですが、案外に通りやすいです。測ったわけではありませんが、多分少し広いです。

入口で販売されているグッズというものはパンフレット(1部500円)ただ一つ。
うーん、潔い(笑)
普通のパンフレットとは全く違い、特製の角8封筒に入れられたカード式のもの。
ポストカードの大判というか、マキシマムカードという感じのもので、「おおっ」とちょっとびっくりします。由美子さんblogに載ってた千社札(→これ)、欲しかったんですけどね。

久しぶりに今回は役者さん別にこの作品を語ります。
若干のネタバレを含みますので、いつもながらの注意事項でございますが、真っさらな気持ちでご覧になりたい方、ぜひ回れ右でお願いします。






●浅野和之さん/高野長英役
1幕の物語が山路さん演じる英泉がメインで進行するために、主役のはずなのに出番少なし。このまま行くのかと思いきや、さすがはそうはさせじと実力派の反撃が2幕から怒濤のように進みます。

この作品のタイトルからすれば「英泉」がそれこそ主役に見えてしまいますが、内容的な主役はむしろ長英の方。
2幕はたっぷりと見せ場があります。
んで酒に逃げて狂ってるとはいえ、由美子さんに膝枕&頭なでなでされるのがうらや・・・(以下自粛)

●山路和弘さん/英泉役
1幕のほぼ主役。出てくるだけで面白い、喋るともっと面白い、動くともっと面白い。
んで、2幕ほとんど最後に台詞かんじゃったのも台詞の一部にしちゃうぐらいにフリーダム。
この人たちを指して「ちょい悪おやじ」とまとめてしまった由美子さんが何気に名言フリークぶり健在ではあったのですが。

この方の英泉役を見ていてふと思い出したのが、ビックコミックオリジナル誌上の漫画「玄人のひとりごと」の雀士氏。似てる。

「玄人は自分にだけは嘘を付かない」という言葉が印象的でした。

タイトルの「淫乱斎英泉」は英泉が春画の画家だったからで、そういう方面のシーンはごくわずかしかありません。しかも英泉がらみじゃなくて長英がらみ・・・

ちなみにこのお2人、長英がむっつりすけべ、英泉がネアカすけべ、と田中美里さんが評してます(笑)

●木下政治さん/越後屋主人役
由美子さん演じるお半の旦那氏ですが、やり手の商人そのまんま。
長英の改革的考え方を商売に利用しようとしているあたりが利に聡くていかにも商人。

「いつも気を張ってるから、(お半を指して)こんな抜けてる女あたりがちょうどいい」とか言っちゃう辺りが正直すぎ。

基本的にこの作品に出てくる登場人物は、演出の鈴木裕美さんと浅野さんがあうるすぽっと広報誌の今月号のインタビュー(東池袋駅出口や劇場内で配布中の「OWL SPOT SCHEDULE」4~6月号)で対談する中で鈴木さんが言ってる通り、「前後の関係性をまるで気にしていない、まるでちびっこたち」。→こちらが全体版

精神的には子供な登場人物が、素の人間を吐露している作品と言えるのではと思います。

●田中美里さん/お峯役
精神的に子供揃いのこの役者群の中にあって、ある意味異色な、様々な意味で「大人」。
他をコントロールするかのような存在。

山路さん演じる英泉の腹違いの妹ですが、長英にほの字。
前半はただひたすらに自分の思いを押し殺して時だけが過ぎるのですが、とある事件をきっかけに大きく様変わりし・・・

まぁ、「女って怖いなぁ」を地で行ってる役です。

最初は悪巧みをしそうではない外見だったのに、途中から

「全ては私の掌の上なのよオホホホ」

とか言い出しそうなのが素で怖いです(笑)

ちなみに美里さんと浅野さんの対談によれば、美里さん自身もこの役「怖い」のだそうです。良かった、自分の感覚が正常で(笑)
こちら

●高橋由美子さん/お半役
この作品の賑やかし役で、山路さん演じる英泉の女郎屋で働く娼婦の役。
由美子さん曰く10代だそうですが(なお、役の設定は登場時18歳で、最後のシーンが38歳)、まぁいろんな意味で年齢不詳の由美子さんらしい役です。

ちょっと抜けていて天然で、じたばた落ち着きがなくて考えなしで、あんまり役に立たなくて。
でも、必死で、ピュアで、何かしてあげたいと思うという・・・。

そんな役ってどこかであったような気がする
・・・と終演後に考えて思い出しました。

唐橋@篤姫でした(笑)

もうただひたすらにコメディキャラを突っ走ってます。山路さんとの掛け合い漫才で突っ走ってるあたりは最強に面白かったり。
足じたばたさせてるのは何か世田谷パブリックシアターの「地獄百景・・・浮世八景」で松永玲子さんの前でやってましたな。

お峯の逆鱗に触れてしまってあわてて取り繕おうとして玉砕したり、越後屋の主人(自分の旦那ですが)に「こんな抜けてる女ぐらいがちょうどいい」とか言われてみたり、雇い主の英泉に「おとぉちゃぁん」としがみついて迷惑がられてみたり。

じゃぁ嫌われているかというとそういうことは全然なくて、美里さんいわく「子犬みたいなみんなから愛される女性」という表現がぴったりで、お峯とお半はまさに完璧に好対照です。

お峯が「女であることを最大限利用している女性」なら、
お半は「女であることをただ受け入れる女性」という意味では正に好対照です。

つか完璧に愛玩動物。子犬というか猫というか、どちらにしろ「邪気のない人間」って感じではあるのかもしれません。


作品としては幕末の混乱の渦の中で、自らの立ち位置を定めようともがく人物たちの苦闘を描くわけですが、いずれの人物を取ってみても、何が正解とか何が間違いとかそういうのがわからないのですね。
むしろ、どんな人物であれ、人間であれば「自らの軸をどう定めるかが、人生であり生き方である」のだなぁということを実感させられたのでした。

東京最終日の公演を取ってはいるものの、当日券でふらり来てみてもいいかなぁ、と思うような「けっこう好きかも」公演でした。

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