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『回転木馬』(2)

2009.3.20(Fri.) 13:00~16:45
天王洲・銀河劇場 1F L列センターブロック

1幕75分+休憩15分+2幕55分
休憩20分+トークショー55分
e+貸切公演

昨日19日に開幕したこの公演、2公演目にして貸切公演という、何だかよくわからない公演日程です。

見終わった感想はといえば、あらゆる意味で「古典」だなというのがよく分かりました。名作と言われている作品に属するこの作品ですが、どこか懐古的な空気があって、ある意味「古き良き」というか、無理して今の時期に演じる理由ってどこにあるんだろう、と思ったような客席の反応でありました(正直、反応はちょっと薄めでした。)。

ホリプロが所有している銀河劇場でやっている時点で、ジュリーを笹本玲奈さんがやることに最大の意味があるのは分かりきっているわけで。
彼女が演じるジュリーは本人もおっしゃられていますが今までにない役。
耐える女の常連の彼女ですが、「自分」をしっかりと内に秘めるタイプの役は新鮮です。そういう意味で、彼女の演技の幅を広げるには良い役かな、と思います。

何しろ相手役のビリーがこれでもかってぐらい役の上ではろくでなしですからね。

かの昔、2004年当時のキム'sが「ミュージカル上3大ヘタレ」の中にクリスを挙げてましたが、ヒロインの相手役がここまでどうしようもない人間設定なのはそれに匹敵するんじゃないかと。

しっかりした女性はどこか悪いところがある男性に惚れるとかいうレベルを既に超越していますが(笑)、その辺はジュリー役の笹本さんが作品説明で触れていまして、「ビリーが表に見せていない感情がジュリーには見えている。だからこそジュリーはビリーと結婚して人生を一緒に歩んでる」と。

ただ、そういう面を表現できるシーンがあまりないので、周囲にしてみれば暴力まで振るう、浦井健治さん演じるビリーと一緒にいるジュリーのことが理解できないわけで。
ジュリーのことを皆が皆心配していて、「ジュリーがそこまで思うなら、きっと思うだけの理由があるんだろう」と見守っているように見えます。

この辺はカンパニーの空気は凄く良いこともあってとてもすっきり表現されています。

あえて言ってしまうと、ジュリーがヒロインとして抜け出ていないという面もあったりして。実はもっとジュリーがメインヒロインとして(主役として)引っ張るのかと思っていたので、正直意外です。
親友のシェリー(はいだしょうこさん)の存在の方が抜きんでることもあって。

歌の点でも基本アルト声の笹本さんは、今回のソプラノ全開の曲はやはり辛そうだし、歌のお姉さん出身(もとは宝塚)のはいださんのソプラノの歌声はありえないぐらい通りますから、その辺の対比もあるのでしょうが。

役作りという点ではそういえば2人は対照的で。

笹本さんの演じたジュリーは舞台の上で年齢を重ねた演技をしていたせいもあり、母親になった時の演技は必要以上にお年を召した感じというか、まんまマリアン@ウーマン・イン・ホワイトというか(ちなみに服装も青系統でとても似てます)。

未亡人ではないですが、舞台上で年齢を重ねるといえばナンネール@モーツァルトと系統が似た印象(演技を見ていると笹本さんと高橋由美子さんはたまに印象がシンクロするときがあったりします)。

シェリーはひるがえってまんまですね。出会ったときのまま、年が経ったことを感じさせません。

この辺は舞台キャリア故か、役どころの違いなのか判然としませんが、ジュリーが「愛する人に取り残されて年を過ごした」女性なのに対して、シェリーは「愛する人とともに年を過ごした」女性だったわけで。
おのずと”人生”の重みというものが違うのは当たり前なのかもしれません。


そういえば、SANKEI EXPRESSに笹本さんのインタビュー記事が載っていますが、笹本さんの表情はとても涼風真世さんに似ています(ちなみに「回転木馬」の前演(1995年)は帝国劇場で、ジュリーは涼風さん。ビリーは石川禅さんでした)。
同じ役やると似てくるのかな。

古めかしさを随所に感じて、1幕はどことなくまだるっこしい印象を受けるこの作品ですが、2幕はとてもスピーディーに進行します。
自ら命を絶ったビリーが天国から降りてきて、娘のルイーズと再会するシーン。
最後までジュリーと言葉を交わせなかったけれども、でも思いが伝わったことが分かるシーン。
そして歌われる「一人じゃないさ」は思ったよりすっと心の中に入ってきた感じ。

作品としてリピートするようなものではないと思うけれど、でも一度見て「あぁなるほど」と思っておくにはいい作品かな、と思ったりします。

とか言っといてもう1回、スペシャルカーテンコールってことで4月8日も見るんですけど(苦笑)


んで。

この日は本編終了後に、笹本さん&浦井さんのトークショー。
夜公演がないこともあり、「時間が許す限り」とか言ってたら何と55分もの超ロングラン。

以前、確かサイゴンの小部屋の時に、「浦井さんとだとテンションが似てるからトークショーが進まないかも」と笹本さんが言っていた記憶があるのですが、それもあってかこの日は司会として助っ人が登場。

2月にシークレットライブで司会もされていたテレビ朝日の久保田アナウンサーが司会として登壇(この日は説明がありませんでしたが、この作品のテレビスポットCMのMCがこの方です)。

前回の司会の時に素晴らしい司会進行振りだったこともあったので、こういう形で再会できたのはとても嬉しかったですし、安心して見られることに心から安堵。

ロビーに置いてあった質問箱に入れられた質問に2人が答えていく形で進行しますが、たまにこんなのが。

久保田さん「ニューヨークにお住まいのロバート・マックイーンさんから質問です」
・・・2人して笑い崩れておりました。
結局キャスト陣からもはいださん、坂元さん、風花さんと3人ありましたか。

この作品のムードメーカー・坂元健児さんからは「ぶっちゃけビリーよりスノウ(サカケンさんの役名)の方が良いと思うんだけど、どうよ?」(原文まま)とか来てるし。

はいださんの質問がまさに”はいだしょうこワールド”(笹本さん命名)でした。「いつもお世話になってます。質問はありません(笑)」
「ないんだ。」と笹本さんが突っ込んでましたとさ。

印象的なトークをいくつかつらつらと。

「朝起きたら、笹本さんと浦井さんが入れ替わってたらどうしますか」という質問で、笹本さん大暴走大会で、浦井さんも久保田さんも会場もどうリアクションして良いか戸惑いまくり(笑)。

相変わらずエンジンかかると笹本節は怖いです怖すぎます女優さんとしてのイメージとかちょっとは考えないとまずいんでないとかとかとか(以下略)

答えは「全部の鏡を取り外す」でした。
それ以降の笹本さんの発言は笹本さんの名誉と役者イメージ保持のために伏せます。
うん、きっとその方が絶対いい(以下略)

ともあれ、ここで発覚したのは「笹本さんはビリーぽい、浦井さんはジュリーぽい」という話。
聞いたとたんに「あぁその通り」と納得してしまいました。
本編を見ていたときの違和感が一言で吹っ飛びました。

そう。
笹本さんは持ち味と違う内に秘める役をわざわざやってるように見えるし、
浦井さんはこれまた持ち味と違う攻撃的な役をわざわざやってるように見える、
それが本編を見たときの違和感か、とすとんと納得。

笹本さんいわく、「本当の自分だったらビリーが誘惑されてるときに『何やってんのよ!』とぶっ飛ばしに行く」(笑)だそうで、つくづく彼女らしいコメントです。

それに対して浦井さんは、「耐えるところとか、相手の意向を優先して波風立たないように生きるとか(笑)」と小心者ぶりを全開にしてました。

その2人のやりとりを見て、「その分、相手役の気持ちが分かるのかも」、とまとめた久保田さんはさすが。

その質問にも関連しますが、「他の役をやるとしたらどの役が良いか」に対して笹本さんは「ジュリー以外に考えられない」と言っていましたが、浦井さんは2幕で出てくる子役だそうです。「自分が言われてぐさっとくるのでやりたい。」と言ってましたが、何気に声色の真似がけっこう似てます。

「役作りとして何かやってますか」という問いについては、ほとんど浦井さんオンステージ。

悪に見せようとしてヒゲを生やそうとしたけど、精いっぱい生やしてこのぐらい(ちょっと生えたぐらいで上ヒゲとか全然生えない)だそうで。ちなみに脛も全然生えないそうで、何と自分でめくって見せてましたが(笑)本当に真っ白で全然生えてない。男性とは思えません。

ちなみに「ヒゲって生やしたいように生えるもんなんですか」って聞いて会場内の大爆笑を誘った笹本さん、あなたって方は(笑)。

キャスト陣からの質問で印象的な答えがあったのは風花舞さん(マリン夫人役)。

ビリーが首になるまでやっていた回転木馬の経営者で、ビリーに対してジュリーとはライバルになる役柄にあたりますが、笹本さんいわく「ビリーが自害したときに見つめ合うシーンは、お互いが同じ感情を持っているというか、重なる思いがする」そうで。

どこの作品での話だったか忘れたのですが、「同じ男を好きになる女性は、好みが似てるとも言えるわけだから、ライバルであると同時に同じ価値観を共有する、親友となる可能性を秘めている」という言葉があって、なるほどなぁと思ったのですが。

ビリーがすでにこの世からいなくなり、奪い取る、勝ち負けがなくなった時点で、「同じ悲しみ」を共有できたのかと思えて。
ジュリーとマリン夫人の間には、確かにそんな微妙な感情が上手く表現されていたように思えます。

ビリーを演じる浦井さんにしても、「経営者として、というか女性として自分を拘束する感じはたしかにあるけど、絶対的な抑圧じゃないように思う」と言っていましたが、演出ゆえにこうなっているのか、もしくは風花さんの演技観なのかはわかりませんが、「ビリーを手元に置いておきたいけど、それを強制でやることに意味はない」ことを表現しているように思えます。そのせいか嫌みが薄れて見えるのはちょっと好印象。

で最後の質問。
「将来は舞台に立ちたい」高校生からの「オーディションに通る秘訣」、実はこれ同じものが2通あったらしいのですが。

このときの笹本さんの答えが戦略家満々でして。

「衣装もメイクも役になりきって受けにいく。品定めされるような感じで「何ができるの」って思われてるから「見せてやろうじゃないの」って意地になる(笑)」だそうです。

「基本的に負けず嫌いなので、「どうせだめでしょ」とか言われると「ほらできたでしょ」と言い返したくなる」(笑)性格だそうです。

まぁ、そのぐらいじゃないと女優やってられないでしょうけれどね。
「女優さんは男です。そうじゃないとやってられません」と言ったのは誰だったか、名言だと思います。

自分のオーディション経験で「同じ役に4回も落ちたことがある」と言っていた浦井さん、笹本さんのそんなコメントを受けて「そこまでやれば4回も落ちることはないよなぁ」とつぶやき、「ある意味「熱意の現れ」でもありますからね」という上手いまとめで締めていました。


これでトークショーの一部、というぐらい長いものでしたが、最後に抽選会と写真撮影を行って終了。客席も写ってる写真ですが、幸いというかかなり後方にいたので自分の顔は分かりません。

3月29日には笹本さんトークショー(抽選)、4月2日には「別の惑星から来た」4名(笹本さん、浦井さん、はいださん、坂元さん)のトークショーがありますが、どっちも用事で都合がつかずに回避。

というか今になってサイン付CD公演チケットとか、あいかわらずホリプロさんらしいことばっかりやってますね(一応念のためですが別に褒めてなかったりします)。

本日のBGM
「The Selection From 10th Anniversary Show Jewel」(笹本玲奈さん)
ひたすらリピート中です。
何気に「SOMETHING」(イーストウィックの魔女たち)がお気に入りです。
「Only Love」(ルドルフ)も「All For Laura」(ウーマン・イン・ホワイト)も初の音源化ですが、ラジオで生で歌ったのをMP3化してたから実は持ってたんで。
FCでも頼んだのについつい山野楽器でイベント券(※)付CDを買いに行ってしまいました。

※ちなみに銀河劇場でCD購入すると抽選で山野楽器イベント(4月25日)に招待だそうです。山野楽器では先着順で招待券配布中ですが、一昨日(3/19)時点でほとんど残りがなかったようです。

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