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『篤姫』(9)

2008.11.23(Sun.) 20:00~20:45 NHK総合他

第47回『大奥の使者』

 唐橋役の見せ場といえば、この第47回(その後の見せ場は最終話の第50回)。

 慶喜の助命嘆願書の行方を整理してみると、

1.天璋院→(天璋院付)唐橋→近衛家
2.静寛院→(静寛院付)土御門藤子→朝廷
3.天璋院→幾島→西郷吉之助

 となり、よく見ると、1だけ架空だったりします(2も3も実は史実)。

 この唐橋役については演じている高橋由美子さんがどのように演じているのかは、あまり漏れ伝わってこないのですが、今回は内容的に重要な位置を占めるだけに、NHKの公式HPのインタビューに出ており、そこと見比べながら見ると今回の話の意味がより分かるように思えます。

 唐橋が嘆願書を届けることを立候補するシーンがこの回にはありますが、前々回の「コメディキャラ」とは一転し、由美子さんいわく「ほかの人たちよりも遅く天璋院様に仕えることになっただけに、認めてもらいたい、もっと役に立ちたい」という面が表現されていた回と言えます。

 唐橋が「このような時にしか、お役に立てませんもので」と言うシーンは、何というか、えぐられるほど痛くて、邪推とはいえ「役として」というよりむしろ「役者として」という部分が見えてくるようで、とてつもなく悲しかったなぁ。

 「役者として何かをしたと言えるのか」という呟きが漏れてくるようで、キャスト発表された頃にはこんな思いもするとは思ってなかったなぁ。

 西郷と対するのが再登場の幾島ということもあって、事実上幾島・西郷の組み合わせで進んでいったこの回で、序盤の導入部を担ったのが唐橋ですが、考えてみると、大奥の力関係がほぼできあがった後に登場させてきた唐橋という役どころは今までは非常に微妙なポジションにありまして。

 結果からすると、大奥陣3人には見せ場がそれぞれ順に与えられた形であり、45回の「母からの文」が重野、この日47回の「大奥の使者」が唐橋、来週48回の「無血開城」が瀧山ということになります(原作としては45回だけがドラマオリジナル、47・48回は原作に忠実)。

 幾島は好きな役だし、松坂慶子さんも好きな役者さんだけど、最近失速気味の状態でのカンフル剤として使っている印象は否めなかったし、ともすれば「今いる人は役に立ちません」という流れがもっと強調されるかと実は思っていたんですね。

 ゆえに、それなりに「大奥の精一杯」を表現した唐橋と土御門藤子(ちなみにこの方も全話中最大の見せ場)の存在は良いアクセントだったかな。

 静寛院から藤子に対する「都は動乱のまっただ中、そこに突っ込む覚悟はあるのですね」と念を押した上での委任も良かったし、天璋院に至っては唐橋に一言、「済まぬ」ですべてを表現してる。

 ここで「済まぬ」の一言で終わらせたところに天璋院の大きさを見せた感じがする。

 静寛院→藤子で事情説明が済んでいるからということでもありますが、唐橋の立候補に一瞬たじろいでいますが、瀧山の口添えがあったとはいえ、余計なことを何も言わずにただ任せた辺りは、いままでの唐橋キャラを見ていた方からすると、意外なほど(笑)。

 ※ちなみに原作では天璋院が唐橋を使者に立ててますので、結果は同じですが話の進み方は全く逆です。「唐橋が天璋院にとってなくてはならない存在になっている」ことを認識した上で唐橋を使者に立てています。

 インタビューで由美子さんが語っていますが、唐橋は原作と違って「若輩の新参者が必死で天璋院様のお役に立とうと思っている」というポジションなので、無理に頼りなく見せているところがあって。

「頼りない唐橋が力を振り絞って頼りがいあるように見せるけれど、でもやっぱりちょっと力不足」

という、とてつもない難儀な役どころ、実に演じにくそうな位置づけではあります。

 今まで由美子さんの演技でここまで不器用そうな演技は見たこともないので、本人が「達成感よりも苦労」を感じたのも分かる気がします。
 その割には中途半端な評価しかされないのが忸怩たるところではありますが。

 唐橋は結局近衛家に天璋院の文を渡すことはできず、所期の目的を果たせずに江戸に戻ります。
 「誠に面目もございません」と詫びる唐橋ですが、実は天璋院にとっては一番のお土産を持って戻ります。
 大奥を束ねるために、誰にも頼れない天璋院(勝は例外)、しかし、ただひとり無条件で頼れる存在。

 幾島、ですね。

 幾島を江戸に連れてこれたのは、唐橋だからだったのか、それは描かれてはいませんが、結果的に天璋院お付きとしてきちんと結果を残しました。

 大奥育ちだと、天璋院の名がバックにあるとはいえ、外に出てまで交渉ごとなどとても無理なはずですが、大奥新参な唐橋だと、ちょっと前まで町中にいて、しかも瀧山の目に止まるほどの人物であれば、意外なやり手であってもおかしくはないわけですね。(使者が重野だとちょっと違和感はあるので。第45回の天璋院泣き落としのメインは重野の方がしっくり。)

 というかこの時代、籠に乗っても江戸から京まで500km(当時の単位ではありませんが)、片道10日以上、往復にすれば1月近くを旅できる大奥の女は普通いないかと。唐橋さん、藤子さん、意外にタフです。
(原作だと唐橋は中山道を北に向かい浦和まで、藤子は東海道を西に向かい保土ヶ谷まで、だったはずなのでたかだか1週間ぐらいだったはずですが)

 その実、土御門藤子は朝廷への嘆願を届けることができたそうなのですが、今回の話では一切触れられず。
 唐橋は存在自体が架空ですから、近衛家への嘆願自体が存在しなかったといえ、実現しなかったことで使命を果たせず。
 ただ、唐橋が成功すると幾島の出番はなくなり、かといって幾島が西郷に届けた史実だけを使えば、唐橋の出番がなくなり、かといって土御門の活躍を描くと唐橋と幾島両方の出番がなくなる。

 結局、活躍した土御門がまったく言及されずに一番気の毒ですが、唐橋も「幾島にはぜんぜん敵わないんだな」という印象だけが残り、「やっぱり幾島だよね」という印象が残ってしまうのは、やっぱり残念なところ。

 どっちかといえば、「篤姫」は前半登場陣に役作りの自由が合ったのに比べると、後半登場陣は枠が完全に決まりきっていて、身動きがとれない印象があります。後半のどことなく澱んだ空気は、そんなところが理由にあるのではと思わせます。

 話は戻って。
 唐橋の結果を事前に聞いていた瀧山、重野は目配せして何やら目と目で通じ合っています。(ちなみにこの回のEDで、唐橋と重野が天璋院を挟む形で目と目で会話してます)

 運があったとはいえ、幾島を天璋院のもとに連れてくるとは、「唐橋、そちも意外とやるもんじゃな」と瀧山、重野が賞賛してるようにも思えます。

 なお、かくして唐橋と幾島は近衛家で出会うこととなりますが、天璋院付の唐橋は実は幾島とは初対面。
 役者さんということでは11年ぶり(大河ドラマ「毛利元就」以来)ですが、幾島はもともと近衛家に仕えていたし、ここで会うのも全く不思議ではなくて。

 近衛家が面倒事を抱えたくないから唐橋の持ってきた嘆願書を受け取るはずもないし、途方に暮れたところに幾島が現れて、実は一度会ってる小松に会いに行って、「天璋院から西郷への嘆願書を幾島から届けるしか手はない」と知恵を授けられる。

 大奥の枠に収まりきらない幾島でさえ思いつかない話を出すあたり小松はやっぱりダテではないし、幾島が江戸に一旦戻る理由付けにもなるし。
 
 天璋院の婚礼の準備をしたことで出世した西郷が江戸城攻めの責任者、静寛院(和宮)の元々の許嫁だった有栖川宮が江戸城攻めの名目上の責任者。

 「運命の皮肉」さを見せながら、「大奥一丸」の様を見せるあたりは史実通りとはいえ、実際に見るとやっぱり印象的。かつて反目しあっていた天璋院と静寛院がまさに「同じような立場」であることを見せたのは上手いなぁと思います。

 よく見ると、史実から大河ドラマなりの味付けをしまくって、回想ごった混ぜで「大奥が徳川を救うために奔走した」ことを極限まで表現し切った回に思えます。

 西郷が今までのしがらみもすべて切り捨てて突っ走る中で見せた苦悩は、幾島との対面で存分に表現されていたし、1分1秒見逃せない回は本当に久しぶりだった気がします。

 見た目も存在も重量級な幾島の存在感ですべてを持って行った感のある47回でしたが、出ていたすべての役者をお互い光らせる、上手い脚本・演出だったと思います。

 泣いても笑っても「篤姫」はこれからたった3回(+総集編)。
 まさに最後まで、見届けようと思います。生で(10月以降、日曜の夜には予定を入れていません)。

 インタビューで由美子さんが「最後のバトンを受け取って」と堺雅人さん(家定役、由美子さんとはANB系「婚外恋愛」で共演し、先日の「喧嘩農家」もご観劇いただいたそうです)の言葉を継いで言っていたのが、何だかちょっと嬉しい気持ち。

 天璋院の最後を看取った唐橋が、亡くなった人すべての御霊を語っているかのように、奈良岡朋子さんのナレーションが、聞こえてしまったりするのです。

 ・・・亡くなった人を見送る役は、いつものことですからね。
(「モーツァルト」ナンネール役、「SHIROH」山田寿庵役)

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Tracked on November 24, 2008 at 12:18 AM

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